宇宙戦艦ヤマト2199 白色彗星帝国の逆襲 作:とも2199
白色彗星帝国の逆襲149 エピローグ(最終回)
それから三ヶ月後、地球――。
帰還した地球艦隊の兵士たちは、その労をねぎらわれ、戦勝記念パレードや、戦勝祝賀会などがワシントンで行われた。
その後、兵士たちは交代で長期休暇を取得し、戦いで疲弊した心と身体を癒やしていた。日本では、先に帰還した多数の負傷兵が入院しており、帰還して健康な者たちは、見舞いに訪れ、互いの無事を確かめあった。
結局、戦争を引き起こしたガトランティスも含め、その彼らを操った暗黒星団帝国を名乗る敵自体が、何者かに操られていたという情報は、大統領のダグラスを始めとした多くの閣僚を困惑させるのに充分だった。
この情報が世間一般に公開されると、あの戦争は、何だったのか? ということが、マスコミはこぞって検証を始めた。人々は、それぞれの立場で議論し、それぞれが何らかの結論を導いていた。
しかし、そのような喧騒は兎も角、地球連邦政府は、ガルマン帝国との正式な同盟を結ぶことに合意する所までこぎつけた土方に対して、勲章を授けた。
その土方は、今回の戦争の後処理を終えた所で、引退をほのめかした。流石の土方も、今回の戦いは、心と身体に多くの癒やし難い傷が残り、自身の進退まで考えるようになっていた。
ガミラス戦争後に建設された、新東京市郊外の宇宙戦争被害者を祀る神社に、古代と雪が美雪を連れて訪れていた。
特別に作られた沖田艦長の墓標に献花した三人は、彼の霊へと手を合わせ、沖田への報告をした。
「沖田さん。なかなか、こちらに来られなくてすみませんでした。今回の任務は、本当に大変でした。結果的に、銀河全体を守る戦いにまで発展し、多くの死傷者が出てしまいました。しかし……、その敵が何だったのかわからずじまいで、世間では、皆そのことでいろいろな議論をしています。しかし、少なくとも、今まで通りの平和を今のところは維持出来たことが、唯一の希望です。僕らは、これからも、銀河を超えた仲間と協力し、この宇宙の平和を守って行くことになるでしょう。だから、安心して休んでいて下さい」
三人は、それぞれの想いを胸に、沖田への祈りを捧げた。
古代は、落ち葉が舞う、あたりの様子を眺めた。
沖田の墓標のそばに、多くの宇宙戦士たちの名が刻まれた大きな慰霊碑が立っている。
「……テレサの名も、ここに刻んでくれないかな」
雪は、美雪を抱き上げて、あやしている。
「そうね。テレサがいなければ、今の平和は無かったかもしれない」
古代は髪をなびかせてこれまでの事に思いを馳せた。
「……この世界に、もしも神様がいたとしたら、それはきっと僕らにとっては、永遠にテレサのことを指すと思う。でも、そのテレサももういない。僕らは、僕らだけの力で、平和を勝ち取って行かなきゃならない」
「私たちなら、きっと大丈夫よ」
古代は、雪の顔を覗き込んだ。
「美雪が、幸せに生きられる世界にするのが、私たちの仕事だよ?」
古代と雪はにっこりと笑い合った。つられた美雪も、笑顔になっている。
「おーい、古代さーん!」
遠くから、近付いてくる人がいた。
そこには、車椅子に乗った北野と、それを押す西条の姿があった。
「北野じゃないか! 病院を抜け出していいのか!?」
古代と雪は、二人を迎えに行き、古代は西条に代わって車椅子を押した。
「西条さんは、腕の骨折の方はもういいの?」
雪は、西条の身体を気遣った。
「ええ、私の方は、もうギブスも取れましたし。今日は、古代さんたちがお参りをするって話を伝えたら、どうしてもここに行くって聞かなくて」
古代は、北野の身体を眺めた。
「北野も、腕のギブスは取れたんだな? 足の骨折の方は、まだ治るまでかかるのか?」
北野は、笑顔で言った。
「もう、足の方もほとんど治っています。今は、リハビリ中なんです。もう少ししたら、また任務に戻れますよ」
「任務、任務って。こんな大怪我してるんだから、少しゆっくりすればいいのよ」
「俺は、ヤマトを預かる身としてだなぁ。また、何かヤバいことがあったら、俺が戦いに行かないと」
「まったくもう……。古代さん、何とか言ってやって下さいよ」
西条は、そんな彼に呆れていた。
「そうだな……。僕らの勤務地だったギャラクシーは無くなってしまったからな。僕も、次の任務はまだ聞いてない。噂では、中立地帯にあるアマール星と交渉して、我々の前哨基地を付近に新たに作るという話も持ち上がっている。ボラー連邦とガルマン帝国だけでなく、これからは、デスラー総統の新国家も誕生することだし、我々は、その三国の中立的な立場で、立ち回る役割を与えられるかも知れない。でも、まだ噂レベルだから、話半分で聞いてくれよ? それに、皆と一緒かどうかもまだ分からない」
雪は、風で流された髪を抑えた。
「そう……。また、宇宙で長期勤務になるかも知れないんだね。この風景も、今のうちに見ておかないとね」
五人は、神社の醸し出す、純日本的な風景を眺めた。
「古代さん、日本政府に、沖田艦長の銅像を作るように働きかけませんか? あの辺の海岸沿いの土地が、眺めが良くていいと思うんです。名付けて、英雄の丘。何か、いいと思いません? そこに、沖田艦長の命日には、皆で集まるんです。ヤマトの仲間、皆で」
北野の発案に、古代と雪は、呆気に取られていた。
「もう、そんなの無理に決まってるでしょ。日本の今の財政は大変なのよ」
西条は、北野をたしなめている。
古代は、想像してみた。沖田艦長の像の下で集まる皆の姿を。
「うーん。北野、それ、いいかもしれないな。日本政府と言わず、皆で費用を出し合って作らないか?」
「じ、自腹ですか!? えーと、いくらぐらい、かかりますかねぇ……」
「実物大ぐらいの大きさなら、何とかなるんじゃないか?」
雪は、大きな声で、古代に釘を刺した。
「そんなお金、うちにはありません! これから、美雪のことでお金も必要だっていうのに! なに、馬鹿なこと言ってるの!? だいたいね、沖田艦長が、そんなもの作って喜ぶとでも、思ってるの!?」
雪は、くどくどと、古代に説教を始めた。その古代は、どうやら頭が上がらないようだった。
北野と西条は、顔を見合わせた。そして、ひそひそと話をした。
雪は、二人の様子にも気が付くと、指を差して大きな声を出した。
「そこ!」
北野と西条は、びくっと身体を震わせた。
「言いたいことがあるなら、はっきり言いなさい!」
その時、美雪が泣き出した為、その話はそこで立ち消えとなった。
古代は、こっそり土方にでも相談してみようと、心の中で考えていた。
更に三ヶ月後、ガミラス――。
ローレン・バレルは、大統領選挙と同時に行われた所属政党の選挙戦を戦い、難なく勝利を収めていた。ガミラス連邦構想は、多くのマゼラン銀河の星々にも支持され、彼の基盤は更に盤石なものとなっていた。
大統領として、二期目の任期を務めることになった彼の目の前に、ようやくランハルトの姿があった。
天の川銀河の騒乱の影響により、彼の帰国予定は大幅に遅れ、結局選挙には間に合わなかった。
「……いろいろなことがあったのは知っている。是非とも、詳しく聞きせて欲しいものだね。今夜、一緒に食事でもどうかね?」
ランハルトは、会釈して応えた。
「もちろんです。私も、いろいろな相談事もありますので、助かります」
バレルは、ランハルトの態度の変化に気がついた。いつもの慇懃無礼な態度が、鳴りを潜めている。
「おや、いつの間にか、随分丸くなったようだね?」
「そうでしたか?」
「……まぁいい。早速だが、君には、すぐに仕事に就いもらいたい。選挙に間に合わなかった君には、私の特権で仕事を与える。大統領首席補佐官になって欲しい」
大統領首席補佐官とは、大統領の予定を決めたり、彼に代わって様々な調整や交渉をする立場である。正に、彼の右腕となり、左腕となり、あらゆることを、一緒にやって行くことになる。
「そんな大役を、私に……」
「黙りたまえ。君は、私との約束を破って、選挙戦に出なかった。だから、私が相応しい役割を、君に与えることにした。その立場で、顔を売っていけば、よほどの失態が無ければ、確実に選挙で勝てるだろう。君に、拒否権はない」
ランハルトは、バレルが本気で政治家にしようとしていることを悟った。
ユリーシャとの約束もある。
ランハルトは、にこりと笑った。
「……承知しました。微力ながら、お手伝いをさせて頂きます」
「お手伝い……?」
バレルは、ランハルトを睨んだ。
「そんな生半可な考えでは駄目だ。君は、いつの日か、大統領になるんだ。そのつもりで、私の仕事を一緒にこなして行くんだ」
ランハルトは、その彼の迫力に押されていた。
「分かったかな? では、早速だが……」
地球から帰ってきたばかりのランハルトは、そんな疲れを癒やすこともなく、仕事を次々に振られていた。
イスカンダル――。
シャルバートとサーシャ、そしてユリーシャの三人は、イスカンダルの墓地を訪れていた。
そこには、惑星ファンタムから連れてきた、多くのイスカンダル人たちが、それぞれの親類の墓を訪ねていた。
「こんなに人が居るの、初めて見るかも」
ユリーシャは、感慨深く、その光景を見つめていた。
「眠っていた期間が私たちは長い。皆も、様変わりしたイスカンダルの様子に戸惑っているわ。皆、やることも無いし、墓を訪れるのが日課になっている」
シャルバートは、寂しそうに人々を眺めた。
サーシャは、シャルバートの背中を叩いた。
「それなら、やるべきことを、皆で見つけないと。私もそうだけど」
シャルバートの表情は暗い。
「イメージライフのこの身体では、子孫も残せないから。皆に、この話をしたら、絶望して命を断つ者も出てしまうかも知れない」
ユリーシャも、シャルバートの背を撫でた。
「そんなに絶望しては駄目。蘇った科学者の人も沢山いる。まだ、諦める時じゃない。きっと、希望はあるはず」
「そうかしら……」
「そうですわ。わたくしたちは、一人じゃない。ついこの間まで、わたくしとユリーシャと、スターシャ姉様のたったの三人しか居なかったのよ。こんなに大勢の仲間がいるのですから、皆で力を合わせれば、奇跡を起こすことだって不可能ではないと思いません? それに、イメージライフの身体は、半永久的に生きられるはず。それだけの時間があれば、誰かが、きっと道を見つけてくれる。わたくしは、そう信じています」
「そう……そうですね。私が諦めては、亡くなったシャンバルにも、申し訳が立たない。もう少し、頑張ってみますわ」
「その意気。……そうだ! シャルバートが、イスカンダルの女王になればいい。サーシャ姉様は、どう思う?」
「わたくしは、それでも構わないわ」
「私が、この本国の女王に……? しかし……」
「スターシャ姉様が権利を放棄した今、あなたが一番相応しい。ここにいる皆も、きっと喜んでくれるはず」
シャルバートは、悩んでいる様子だった。
「今すぐ決めなくてもいい。皆で、決めよう。ね、お姉様」
「分かったわ……。考えてみるから」
シャルバートは、大勢の民をイスカンダルに連れ戻すと約束した。そして、彼らが絶望しないように、導くのは、確かに自分の役目だった。彼女は、悩みながらも、皆の為に、生き続ける。その希望を、本当にする為に。
「……ところで、ユリーシャ。地球人とは、その後どうなったのかしら?」
ユリーシャは、その話を急に振られ、またも咳き込んでいた。
「教えてくれたっていいじゃない」
ユリーシャは、サーシャがしつこく迫ってくるのが目に見えていた為、しぶしぶ話をすることにした。
「……お別れを言ってきた」
サーシャは、がっかりとしていた。
「えー? どうして? お互いの気持ち、分かっていたんでしょう?」
「止めて。その話は。そのことは、放っておいて。せっかく、忘れようとしてるんだから」
そして、代わりに交わしたランハルトとの約束を、ユリーシャは思い出した。
「……私も、負けていられないから。イスカンダルの皇女として、私も相応しい人になるんだから」
三人の行く手は、前途洋々とは行かないものの、新たな一歩をそれぞれが歩み出そうとしていた。
数ヶ月前、ガルマン星系――。
ガルマン帝国の科学者の調査団は、新たに出現した第四惑星の調査に訪れていた。既に、調査を始めてから、一週間が過ぎようとしていた。
調査団のリーダーの元に、ある報告が届いていた。
血相を変えたその報告者の情報を、リーダーは信じられない思いで聞いた。
彼らは、報告のあった場所に、慌てて急行した。
山々が広がる山岳地帯の草原の近くに、森が広がっている。その、森の中でそれを発見していたのだ。
鬱蒼と茂る草木をかき分けながら、科学者たちは進んだ。木々の木漏れ日が、彼らの行く手を照らしている。
「見て下さい。あれです」
そこには、小型の宇宙船と思われる機体が鎮座していた。木々は、その周囲がなぎ倒されており、宇宙船は一部が破損して黒焦げになっている。草木の一部が燃えたことが、あたりの様子からも明らかだった。
彼らは、その宇宙船の周囲をセンサーで調べた。
「この金属は、成分分析の結果からも、ガトランティスで作られた物に酷似しています」
彼らは、宇宙船のハッチと思われる扉の前に立ち並んだ。
「開けて、中を調べてみよう」
ハッチは、上手く開かず、彼らは結局レーザーカッターなどの道具を使って、開けるまでしばらく時間を必要とした。
そして、やっとのことで開いた扉から、科学者たちは、中に入った。コックピットと思われる区画まで、彼らは進み、それを発見した。
「これは……!?」
コックピットの隅に、震えている二人の子供の姿があった。二人は、まだ十五、六歳といった少女であった。
「き……君たち、どうしてこんなところに? 名前を聞かせてもらえるかね?」
しかし、二人は、怯えたまま、何も話してはくれなかった。
科学者たちは、話が通じていないと思い、翻訳機をガトランティス語に設定して、改めて話しかけた。
「……私は、サーダ」
科学者たちは、その名を聞いて、真っ青になった。
「……そっちの子は?」
その少女は、もう一人の少女を庇うように抱きしめた。
「シーラ。ここは、何処なの? 皆は、誰なの?」
科学者たちは、一様にそれぞれの顔を見合わせた。そして、とにかく怖がらせないことが重要だと、ひそひそと会話をした。
「……我々は、ガルマン帝国の科学者だよ。君たちを助けに来たんだ。お腹、空いてないかい?」
二人の少女は、頷いた。
「お腹空いた……」
科学者のリーダーは、彼女たちに手を伸ばした。
「おいで。食べ物もあるから。一緒においで」
二人は、その伸ばされた手を取った。
ガルマン帝国では、正式に発足したキーリングを総統とした暫定政権が立ち上がったばかりだった。
その報告を聞いたキーリングも、やはり青ざめていた。
「逃亡したサーダが見つかっただと? もう一人の女は、シーラと名乗ったのか? シーラは、死んだと報告があったはずだ」
報告をしてきた部下は、キーリングの混乱ももっともだと思っていた。何しろ、自身もそうなのだから。
「記憶が無い? しかも、少女の姿になっているだと……? いったい、どういうことなんだ……?」
キーリングは、撮影された二人の映像を確かめた。
それは、食べ物を与えられ、食事をしている時の映像だった。
「……確かに、この女は、サーダと名乗った女に似ている……。何が起こったんだ……」
「身体検査も行いました。栄養失調の症状が見られますが、その他は至って健康です。それから……彼女たちは、身体が機械になっているという情報でしたが、検査の結果、普通の人間の肉体でした」
キーリングは気付いた。
これは、コスモリバースシステムと、テレサが起こした奇跡の一つに違いないと。
キーリングは、この情報を、最重要機密として扱うように指示をした。あの戦争を引き起こした張本人である。この情報が漏れれば人々は、彼女たちに責任を取らせるように言うだろう。
だが、記憶の無い少女に、それを求めるのは無理があった。
「私が、一切の責任を取る。私の私邸に、彼女たちを連れて来てくれ。内密に、世話をさせて監視する」
キーリングは、部下が去った後で考え込んだ。
あの日、コスモリバースシステムが起動した時から、周囲では、おかしな報告が続いていた。
亡くなった筈の兵士が生き返って戻って来た、とか、枕元に、死んだ親類が現れて会話をした、などといったものである。
キーリングは、ふと笑った。
「奇跡か……。神は、この世界のどこかに、存在しているのだろうか……?」
………………
…………
……
テレサは、現世との繋がりを完全に断たれ、高次元の海に漂う記憶の波動の一つになっていた。
そこには、宇宙の始まりから、終わりまでの様々な命の記憶が混沌として漂っている。彼女は、静かにそこで世界を見守っていた。
そして、二人の少女が見つかるように祈りを捧げ、発見される未来が、様々な分岐から確定するのを見届けた。それから何が起こるか、彼女はあらゆる可能性を知っていた。今はただ、彼女たちが平穏を取り戻し、いつの日か真実を突き止めてくれることを願った。
宇宙の平和は、まだ遠く、テレサの祈りは、人知れず続いていた。
いつの日か――。
宇宙戦艦ヤマト2199 白色彗星帝国の逆襲
完――
注)pixivとハーメルン、及びブログにて同一作品を公開、または公開を予定しています。
注)ヤマト2202の登場人物は、役割を変更して登場しています。
本作品は、これで完結です。
長らくお付き合い頂き、ありがとうございました。
今後の新作等の最新情報は、ブログやTwitterにて発信していきます。
ブログ 〜 Ooh La La
http://tomo2199.blog.jp/
https://twitter.com/tomo20192199
本作品のあとがき
「白色彗星帝国の逆襲」は、これで完結です!
それでは、また会う日まで。
どうもありがとうございました。
2021年6月5日
とも2199