宇宙戦艦ヤマト2199 白色彗星帝国の逆襲   作:とも2199

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宇宙戦艦ヤマト2202とは別の世界線を歩んだ宇宙戦艦ヤマト2199の続編二次創作小説「白色彗星帝国の逆襲」です。「白色彗星帝国編」、「大使の憂鬱」、「孤独な戦争」、「妄執の亡霊」、「連邦の危機」、「ギャラクシー」の続編になります。


白色彗星帝国の逆襲25 ベムラーゼ

 カミラに連れられて、ユーゼラーとミルは、屋上から最上階の部屋へ通されていた。

 そこは、殺風景な狭い会議場で、中央に年代物の円卓が設置されていた。そして、議場には、既に数名のボラー連邦の高官が席について彼らを待っていたようである。カミラたちがそこへ入室すると、中央にいた肉づきの良い中年の男が椅子から立ち上がった。

「よく来てくれた。ガトランティスの友人たちよ」

 カミラは、静かに軽く会釈をした。

「こちらこそ、ベムラーゼ殿。紹介させてください。我が帝国の新たな指導者として迎える私の息子です。まだ若い彼を、皆で支えるつもりです。ご挨拶が済みましたら、帝国に戻り正式な就任式を行います」

 ミルは、母親に促されて前に進んだ。戸惑いを隠すのは難しかったが、彼女に恥をかかす訳にはいかないと、努めて冷静なふりをした。

「ミルと申します。どうぞお見知りおきを」

 ミルも、軽く会釈をしてから、胸を張った。

「これはこれは。私は、ボラー連邦首相のベムラーゼだ。皆さん、どうぞお掛けください」

 ベムラーゼ自ら、円卓の席につくように促され、カミラが最初に腰をかけた。続いて、ミルとユーゼラーも同じ様に腰掛けた。

 同じ円卓にいた人物が、最初に口を開いた。

「私は、ボラー連邦軍総司令官のチェコロフといいます。早速ですが、現在の戦況と、今後の動きについて認識を合わせたい」

 チェコロフは、円卓に設置された端末を操作して、天井に設置された三次元ディスプレイを起動させた。すると、円卓の中空に、銀河系中心部の宇宙図が表示された。

「我が国の南部方面軍は、四万隻の全軍で現在ガルマン帝国に侵攻中です。第一艦隊から第十艦隊が、それぞれ三千から五千隻程度の艦隊を組み、ガルマン帝国の国境付近の十箇所から侵攻しています。全軍で侵攻すると思っていなかったガルマン帝国の油断をつくことで、いくつかの戦線で我が軍は優勢に戦闘を進めています。ここと、この戦線では、既にいくつかの敵の星系の制圧に成功し、そこを拠点として、ガルマン帝国本星の侵攻作戦に備えています。これも、あなた方ガトランティスの協力があって初めて可能になったことです。我々とガルマン帝国の双方とも、戦力の均衡によって、長い年月本格的な侵攻が困難でした。その均衡は、あなた方が提供する戦力によって、既に崩れています。このまま、正面から彼らの軍を突破し、ガルマン帝国全体を制圧するのも時間の問題でしょう」

 ベムラーゼは、微笑んで言った。

「あの機動要塞ゴルバだが、本当に強力な兵器だ。あれ一隻で、数百の敵艦隊に対抗可能になった」

 カミラは微笑して頷いた。

「お役に立てて光栄ですわ、首相。あれは、我が帝国が侵略した星間国家で、その昔使用していた兵器です。その時、我が帝国も、あのゴルバには手を焼いたと伝えられています。あれは、そこから連れてきた科学者に開発を指導させています。あなた方に、あれを量産する為の資源となる星系と、多くの人材を提供頂いたお陰ですよ。今も、まだ数十隻のゴルバを建造中です」

 ベムラーゼは、満足そうに頷いた。

「あなた方から、あれの技術供与をして頂くお約束、期待してるぞ」

 カミラは、目を細めてベムラーゼを眺めた。

「この銀河の半分を我が帝国に頂くお約束もお忘れにならないで頂きたいですわね」

 ベムラーゼは、豪快に笑い声をあげた。

「もちろんだ! まずは、あの忌々しいガルマン帝国を葬ってからの話だが。あなた方がそれに協力してくれるなら、我々は約束を守る」

 カミラも、口元に手を添えて笑い出した。

「それを聞いて安心しましたわ」

 ミルは、母親の様子を信じられない思いで見つめた。優しかった母が、このような野心を顕にする姿は、違和感しかなかったのだ。それに、違和感はそれだけではなかった。ガトランティス帝国が、他の国と手を組み、領土を欲するなど、これまでにはありえないことだった。もう一人のユーゼラーの様子を見ると、彼は表情ひとつ変えずに、黙ってやり取りを見つめていた。

 二人のやり取りが終わるのを待っていたのは、チェコロフも同様だった。彼は、笑い声が収まるのを待って、続きを話した。

「現在、国境付近のスカラゲック海峡星団へと、ガルマン帝国艦隊を誘導中です。わざと敗走させた一部の艦隊を殲滅しようと、彼らは追ってきています。ここで、ガトランティス軍に迎え撃ってもらい、大幅に彼らの戦力を削ります。その後、彼らに態勢を立て直す暇を与えず、一気にガルマン帝国本星をついて、これを制圧します。可能なら、総統ボルゾンを始めとした政権の中枢を捕らえ、見せしめに処刑します。これで、その後は戦わずして、ガルマン帝国は戦意を喪失するでしょう」

 カミラは、黙って頷きながら聞いていた。

「このスカラゲック海峡星団での戦いが、すべてを変える大事なものとなります。改めてお願いします。ぜひ、貴国の力を貸して頂きたい」

 カミラは、にこやかに頷いた。

「その作戦は承知しています。現在、新たに完成したゴルバ五隻を、スカラゲック海峡星団へと移動させています。どれほどの数の艦隊が来ようが、必ずや勝利出来るでしょう」

 ベムラーゼとチェコロフは、相好を崩して穏やかに笑っている。

「頼もしい限りだ。貴国が我が連邦に侵入して刃を交えたのが、随分と昔のことのようだ」

 カミラも、穏やかに話をした。

「長い間、我々は宇宙をさすらってきた戦闘国家です。我々は、先のガミラスとの戦争で破れ、大帝ズォーダーを失ったことから、帝国の人民は疲弊し、何処かで定住して国家を築くことを望んでいます。あなた方と同盟を結べたことに、我々は、安堵しているんですよ」

 その時、会議場に飲み物を運ばれた。給仕をするボラー連邦軍の制服を着た男女が、円卓にそれぞれグラスを配置した。そして、酒をグラスに注ぐと、彼らは会議場を出ていった。

 ベムラーゼは、グラスを掲げて言った。

「我らの友情に乾杯しよう」

 皆、グラスを手にとった。ミルも、周りを見て、慌ててグラスを掴んだ。

「我らの同盟に」

「同盟に」

 そう言って、彼らは皆、グラスの酒を口にした。

 

 ガトランティスとの会合を終えたベムラーゼは、古びた質素な執務室にチェコロフと共にいた。二千年の歴史を持つボラー連邦は、遠い昔の祖先の建築したこの建物や、調度品の数々を大切に補修、修復しながら使い続けていた。

「ベムラーゼ首相。ガルマン帝国に勝利した時、恐らくガトランティスは、我々に牙を剥いて来るでしょう。決して気を許してはなりません」

 チェコロフは、執務室で座るベムラーゼのデスクの前に立っていた。

「分かっておるよ。だが、我々の悲願でもあるガルマン帝国に勝利するまでは、この協力体制は維持しなければならん。その為に、奴らの機動要塞の建造に密かに軍人を配置させている。今は、どうなっている?」

 チェコロフは、頷いた。

「彼らに与えたモスコーバ星系のゴルバの建造工場は、いざとなればいつでも破壊できます。あれがなければ、ガトランティスなど我軍の敵ではありません」

 ベムラーゼは、にやりと笑った。

「気取られるなよ」

 

 ミルたちは、屋上に戻ると、再びシャトルで出発していた。ミルは、その機内でカミラに話しかけた。

「母上。何ゆえ、彼らに協力しているのです? 本当に、この銀河系に定住するおつもりで?」

 カミラは、にこやかにミルを見つめていた。

「そうですね。これからは、戦いに明け暮れる日々は終わりにします。そう、私が宣言して、内部抗争に揺らいだ帝国を収めたのです。それには、このような同盟も必要と私が判断しました。我軍は、ガミラスとの戦争で疲弊し、大幅に戦力を失いました。それを再び増強する意味でも、この同盟は重要なものでした」

 ユーゼラーも、ミルの方を見て、話し始めた。

「科学奴隷に、強力な兵器の開発を迫ったところ、あのゴルバの建造が始まりました。たった一隻で、数百、数千の敵に対処出来ます。あれがあったからこそ、この同盟は成り立ちました」

 カミラは、思い出したように言った。

「そうそう、何故、帝国はガミラスとの戦争に敗北したか、知っていますか?」

 ミルは、当惑して首を傾げた。

「知りません。私も、それは疑問でした。いったい何故ですか?」

 カミラは、少し黙っていたが、しばらくすると、静かに語り始めた。

「ガミラスに敗北などしていないのです。我軍の白色彗星による攻撃作戦で、勝利寸前のところまで行きました。我軍が敗北したのは、本当は、イスカンダル人のせいです」

 ミルは、心底驚いていた。

「イスカンダル人? 彼女たちが、何か超兵器を持っていたのですか?」

 カミラは、ミルの方から視線を外し、外の宇宙空間を見つめていた。

「イスカンダル人は、昔、凶悪な侵略者の顔を持っていたそうです。ある時、テレザートという異星人の精神攻撃を受け、突然性格が変わってしまったといいます。その能力を代々受け継いでいたイスカンダル人は、ズォーダー大帝らの軍に、同じ精神攻撃を仕掛けました。その結果、大帝たちは戦意を失い、敗北したのです」

 ミルは、あのスターシャや、サーシャがそのような力を持っていることに驚きを隠せなかった。

「な、なんと……そのような、ことが……」

 カミラは、笑顔で言った。

「あの女たちは大変危険です。ですが、心配は入りません。今、あの女たちを拉致してどこかに監禁する作戦を展開中です。同じ様な邪魔が入らないようにね。今、イスカンダルの生き残りの妹二人の拉致に成功して、連れてくる最中です」

 ミルは、思わず声が出そうになるのを堪えた。

 それは、あの、サーシャのことだと、ミルはすぐに分かった。彼は、ギャラクシーで、彼女と初めて会話した時に、一目惚れをしてしまったのだ。あの美しい彼女と、再び会えるという気持ちと、そのような、恐ろしい目に合わせた帝国のしでかしたことに、複雑な気持ちになっていた。

 しかし、そこでミルははっとした。

「スタ……いや、イスカンダルの女王は、どうするおつもりか?」

 カミラは、妖艶な笑みを浮かべた。

「もちろん、どうにかして、連れて来ます。ミル、あなたが連れてきたあのデスラー総統……。良くやりました。あの男と、イスカンダルの女王は、深い関係にあるという情報があります。もしかしたら、向こうからやってくるかも知れませんね」

 カミラは、大きな声で笑っていた。

 ミルは、恩人であるスターシャが、そのようなことになることに、激しい焦燥感に駆られた。

 

続く…




注)pixivとハーメルン、及びブログにて同一作品を公開、または公開を予定しています。
注)ヤマト2202の登場人物は、役割を変更して登場しています。
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