宇宙戦艦ヤマト2199 白色彗星帝国の逆襲 作:とも2199
「魚雷戦よーい!」
「一番から四番、魚雷装填!」
「潜望鏡にて敵艦隊を捕捉」
「諸元入力、自動追尾設定よし!」
四隻の次元潜航艦隊は、魚雷発射管に、四本の魚雷を一斉に装填した。
ゲールは、各艦の攻撃準備が整うのを、じりじりと待っていた。全艦で同時に攻撃を開始するためだ。
「一番艦、四番艦、攻撃準備完了」
「二番艦、三番艦も準備完了しました!」
ゲールは、決意を新たにしていた。
これで、やっと総統の信頼に応えることが出来る……!
彼は、大きく息を吸い込んで、攻撃命令を発しようと手を振り上げた。
その時だった。科学士官が大きな声で叫んだ。
「待ってください! センサーが高速で接近する物体のエネルギーを探知! 物体の大きさから推測して、魚雷だと思われます! 物体は四つ、我々の方に接近中! 接触まで、あと三分!」
「な、なぁにい!? 敵の次元潜航艦が潜んでいるというのか!?」
「敵艦が同じ空間に存在するか不明です。異次元空間では、レーダーが正常に稼働しない為、我々は、目視、またはセンサーにより高エネルギー反応や、磁気反応を探知して、互いの位置関係を把握しています。敵も同様の方法をとっているものと想定した場合、本艦のエンジンの発するエネルギーを探知して、追尾しているものと推測されます」
「ぐぬぬ……!」
ゲールは、あと一歩の所で邪魔が入ったことに歯ぎしりした。
「物体との接触まで、あと二分三十秒!」
ゲールは、持っていた鞭を振り回した。
「ええい! タラン司令に至急繋げ!」
少しの間があってから、艦橋のスクリーンにタランの姿が映った。
「タラン司令! 敵魚雷と思われる物体が接近しております! 至急、全艦のエンジンを停止させることを具申します!」
タランは、スクリーンの向こうで、艦内の士官とやり取りしている。
「ゲール少将、了解した。こちらの科学士官も同じ意見だ。直ちに、全艦でゲシュ・ヴァール機関を停止!」
ゲールは、機関士に向かって口角泡を飛ばして命じた。
「機関緊急停止!」
「了解! 機関停止急げ!」
「電源、非常用バッテリーに切り替えます!」
四隻の次元潜航艦隊と、デウスーラのプロペラが、一斉に停止した。
赤色灯の灯った艦内は、静寂に包まれた。
ゲールは、科学士官に小さな声で囁いた。
「おい……、敵魚雷の位置はどうなっているか!?」
科学士官は、センサーの表示から目を離さずに返事をした。
「接触まで、あと一分……。コース変わりません」
ゲールは、歯を食いしばったまま、冷や汗をかいていた。
次元潜航艦は、隠密行動が前提となっている為、小型の艦艇として建造され、それほど防御が優れている訳ではない。魚雷が一発命中しただけでも、命取りになる可能性は否定出来ない。
「接触まで、あと三十秒!」
デスラー総統と共に、新たなガミラス帝国を築く為、国を捨てたというのに……。
こんな所で、死ぬ訳にはいかん……。
ゲールは、祈るような気持ちで、敵魚雷が外れることを願った。
「接近中の物体、コースが変わりました!」
「本当か!?」
ゲールは、科学士官の席にかぶりついた。
「物体は、艦隊の上方を通過していきます!」
科学士官の示す小さなスクリーンに映る四つの光点が、自分たちを示す光点に重なった。すると、それらは、更にその先に進み、右往左往し始めた。
「やり過ごしたのか?」
「はい。成功です。物体は、我々を完全に見失ったようです」
ゲールは、大きく息を吐き出すと、へなへなと床に膝をついた。
「艦首のカメラで、物体を映像に捉えるのに成功しました。スクリーンで再生します」
艦内のスクリーンには、艦隊のすぐ近くを通過する長細い物体が映っていた。
「間違いないですね。あれは……魚雷です」
ゲールは、床に座り込んだまま、映像を見ていた。
「くそう……。聞いていないぞ! 我軍以外に次元潜航艦を持っているなど!」
スクリーンの映像が切り替わり、そこにはタランが映っていた。
「ゲール少将。ガルマン帝国に潜入している最近のフラーケンからの報告では、ガルマン帝国軍が、次元潜航艦を開発しているようだ、という情報がある。まだ試験段階だったようだが。ボラー連邦側も、それに対抗する艦を開発していてもおかしくは無いだろう」
ゲールは、大きく口を開いてタランを見つめた。
「そ、それでは……我々のこれまでの優位性が……」
タランは、少し笑っている。
「仕方あるまい。敵艦は、まだ試作品の可能性が高い。我々の優位性は、まだ失われてはいないはずだ」
「では、これからどうします?」
タランは、少し思案していた。
「敵も、我々の位置を掴めず、どうするか迷っているはずだ。今のうちに、対策を練ろう」
科学士官が、そこに口を挟んだ。
「バッテリーは、それほど長くは持ちません。三十分後には、嫌でもエンジンを始動する必要があります」
「ふむ……。ならば、急がねばならないな。各艦の科学士官は、対策を至急検討し、報告してくれ」
「ザー・ベルク!」
異次元空間のガミラス艦隊から少し離れた位置に、別の艦が潜んでいた。それこそが、ボラー連邦軍の試作潜宙艦だった。
「状況報告!」
潜宙艦の兵士は、センサーの表示を確かめていた。
「我々の魚雷は、外れたようです。敵艦隊は、五隻ともエンジンを停止してしまった為、位置が掴めません」
潜宙艦の艦長、ミハイルは眉間にしわを寄せている。
「即対応してくるとは、敵もやるようだな。奴らは、ガルマン帝国か?」
兵士は、首を振って答えた。
「敵も、まだ試作段階という情報です。五隻もの艦隊を組めるとは思いません。それに、通常艦よりも大きなサイズの艦船が混じっていました」
ミハイルは、暫し考えを巡らせた。
「我軍よりも、潜宙艦の技術がかなり進んでいるということか……。敵は、もしかしたら、ガミラス軍かも知れんな」
「ガミラス軍が、こんなところに?」
ミハイルは、頷いた。
「ガトランティスの連中が、ガミラス人を捕虜にしているらしいからな。密かに救出作戦を展開しているのかも知れん。だが、我軍の潜宙艦のテスト中に現れたのが、運の尽きというものだ。我々のテストの標的になってもらおう」
ミハイルは、次の指示を出した。
「先程、敵艦隊を発見した位置に向け、全速前進! 何としても、奴らを発見しろ! 見つけ次第、魚雷攻撃で沈める」
膠着状態のまま、五分が経過していた。ゲールは、いらいらしながら、艦内をうろついていた。
「ええい、まだ良い方法は思いつかんのか!?」
ゲールの艦の科学士官は、困惑して言った。
「無茶を言わないでください。もう少し、時間をください」
ゲールは、艦長席で貧乏ゆすりをしながら考えた。
早くしなければ、デスラー総統の救出のチャンスが失われてしまう……。
何か、いい案は……。
そして、ゲールは、とっさに案を思いついた。
囮を使えばいいのだ……。
「もう一度、タラン司令に繋げ!」
スクリーンに、再びタランが映った。
「何だね? もう何か案が浮かんだのかね?」
ゲールは、にやりと笑って、タランに案を伝えた。
「一隻だけ、次元潜航艦のエンジンを始動して、囮に使います。その艦に向けて、敵がもう一度魚雷を放った瞬間、敵艦の位置が判明するはずです。そこに、攻撃を加えるのです!」
タランは、感心したような表情をしていた。
「なるほど。それはいいかも知れないな」
ゲールは、手揉みして言った。
「そうでしょう? では早速……」
ゲールは、部下の乗る別の艦に囮になるように指示を出そうと思っていた。
その時、タランが映るスクリーンに、端からスターシャが顔を出した。
「ゲールさん……。アベルトの為に、先頭に立って、危険を冒してくれるのですね? あなたのその勇気、わたくしは感動しています。申し訳ありませんが、時間があまりありません。それでは、すぐに実行して頂けますか?」
「あ、いや、その……」
ゲールは、焦ってしどろもどろになっていた。その間にも、タランが新たな命令を発した。
「ゲール少将の一番艦を除いた全艦に告ぐ。敵の魚雷発射の瞬間を見逃すな。そこに向けて、魚雷攻撃を仕掛ける。準備してくれ!」
通信が切れて、何も映っていないスクリーンを、ゲールはあ然として眺めた。
艦内では、士官たちがゲールの方を感動した面持ちで見つめている。
「ゲール少将、素晴らしい作戦です!」
「大変失礼ながら、自ら危険を冒そうとするとは、思ってもみませんでした」
「やりましょう! 敵艦を早く沈めて、デスラー総統を救い出すんです!」
「なあに、魚雷を撃たれたら、何とか回避すればいい!」
「俺たちなら、出来るさ! やろうぜ!」
「おお!」
ゲールは、蒼白になって部下たちの反応を見つめていた。
「そ、そんなつもりでは……」
小さな声でゲールは呟いた。しかし、俄然活気づいた艦内の様子は、もはやゲールが止められる状態ではなかった。既に、スターシャにも背中を押されていて、今更別の艦にやらせるとは言えなかった。
破れかぶれになったゲールは、大きな声で叫んだ。
「皆の者! やるぞ!」
「おー!」
続く…
注)pixivとハーメルン、及びブログにて同一作品を公開、または公開を予定しています。
注)ヤマト2202の登場人物は、役割を変更して登場しています。