宇宙戦艦ヤマト2199 白色彗星帝国の逆襲   作:とも2199

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宇宙戦艦ヤマト2202とは別の世界線を歩んだ宇宙戦艦ヤマト2199の続編二次創作小説「白色彗星帝国の逆襲」です。「白色彗星帝国編」、「大使の憂鬱」、「孤独な戦争」、「妄執の亡霊」、「連邦の危機」、「ギャラクシー」の続編になります。


白色彗星帝国の逆襲30 交換

 デウスーラの艦首デスラー砲は、大きな光球を形作ると、真っ直ぐそのエネルギーが前方に放出された。

 眩い光の束が宇宙空間を進み、その途中に存在したボラー連邦の艦船を一瞬で蒸発させ、そのまままっしぐらに機動要塞ゼスパーゼへと到達した。艦長アンドロホフは、何か大きなエネルギーが接近していることを認識したが、それも一瞬だけのことだった。デスラー砲は、ゼスパーゼ全体を貫くと、それを瞬時に蒸発させた。

 

 デウスーラでは、敵を全滅させたことを知り、歓喜に包まれていた。

「やった! やりました! 敵艦隊は、消滅しました!」

 タランも、拳を握りしめて、この戦いの勝利を噛み締めていた。しかし、彼がスターシャを見ると、彼女は、デスラー砲の発射装置の銃座につかまったまま、膝をついていた。

「女王……! やりましたよ。脅威は取り除けました。すぐに、デスラー総統を救出しましょう」

 スターシャは、髪は乱れ、疲れ切った様子で、タランの方を少しだけ振り返った。

 彼女は、自らの手で、大量殺戮をおかしてしまったことや、長い間イスカンダルで禁じていた波動砲を使ってしまったことに対して、自己矛盾から精神的に追い詰められていた。しかし、デスラーを救う為に、手を汚さずに誰かにやらすわけにはいかなかった。これは、彼女自身でやらねばならないことだった。そして、自らの手で、過去の呪縛から逃れることもまた、彼女が通らねばならない道だったのだ。

「……はい。そうですね……。では、急ぎましょう」

 タランは、艦内の乗員に再び指示をした。

「この場を離れ、潜航する! 各員、急いでくれ!」

 そうしているうちにも、マイクロブラックホールは、少しづつ消滅していった。

「ふむ……。あのブラックホールは、あまり長い時間、存在し続けることが出来ないようだ」

 タランは、興味深く、その事象を眺めていた。彼に、艦橋にいた士官が、神妙な様子で近寄って来た。

「タラン司令。先程の戦闘で、次元タンクに損傷があります。現在、応急修理を進めています」

 タランは、それを聞いて急いで指示を出した。

「分かった。しかし、ここで長居は出来ない。修理の時間を稼ごう。すぐにこの星系を脱出する。ジャンプ準備!」

 

 その時だった――。

 

「タラン司令! 付近に、ジャンプで多数の艦船が現れています!」

「何!? 急げ! 脱出出来なくなるぞ!」

 デウスーラのスクリーンには、レーダーで捉えた周囲の様子が映っていた。そこには、次々に無数の光点が現れて、囲まれていた。

「だめです! 囲まれました! ガトランティス艦隊です!」

 スクリーンの光点は、まだ増え続けていた。タランとスターシャは、絶望的な表情でそれを見つめた。

「ガトランティス艦隊、約三百隻! 更に後方から、ボラー連邦艦隊が多数接近しています!」

 タランは、通信士に叫んだ。

「至急、ゲール少将に連絡! 次元潜航艦隊全艦のパワーで、我々を牽引ビームで、異次元に引き込ませるんだ!」

「待って下さい! ガトランティス艦隊から通信が来ています!」

 タランは、スターシャと顔を見合わせた。スターシャが、小さく頷いたので、タランは通信士に指示した。

「通信を繋ぎたまえ!」

「はっ!」

 デウスーラのスクリーンには、カミラとミルの姿が映っていた。

「ミルさん……!」

 スターシャは、思わず声に出していた。スクリーンに映るミルは、沈痛な面持ちで、画面から目をそらしている。そして、カミラは、スターシャの方を見て、微笑を浮かべていた。

「私は、ガトランティス帝国の女帝ズォーダー。汝らに尋ねる。こんな所で、何をやっているのか? この機動要塞ゴルバの砲門が、汝らを既に捉えている。もう逃げることは出来ない」

 タランは、レーダー手の方を確認した。レーダー手の士官は、タランに頷いている。レーダーで、ガトランティスの大型艦が付近に捉えられており、武器システムが稼働する高エネルギー反応も確認されていた。この通信も、その艦から入って来ているらしい。

 タランは、仕方なく、それに答えることにした。

「私は、元大ガミラス帝星国防相のヴェルテ・タランです。我々は、そこにいるミルという男に、総統デスラーを拉致され、ここまで救出にやって来た。デスラー総統さえ、救出出来れば、我々は、ここを立ち去る。あなた方とことを構える気はない」

 カミラは、少し怪訝な表情で言った。

「ここにいるミルは、間もなく新たな大帝ズォーダーになる者。言葉を慎んでもらいたい……」

 タランとスターシャは、驚いてそのミルを見た。しかし、それでも彼は目をそらしていた。

 カミラは、話を続けた。

「そのことは、今はいい。ならば、汝らに選択をしてもらう。デスラーと、イスカンダルのスターシャ女王とを交換するか、ここで皆で死を選ぶか……。さあ! 選びなさい! スターシャ女王を引き渡せば、汝らがここを立ち去るのを許してやろう。私は、慈悲深いのでな……」

 そこでカミラは、笑い出した。可笑しくてたまらないというように。

「タラン! そんな要求は、飲んではならん!」

 突然通信に、デスラーが割り込んできた。

「総統……」

 スターシャは、スクリーンに映ったデスラーの悲痛な表情を見つめた。そのデスラーも、スターシャへの悲しみに満ちた顔を向けていた。

「アベルト……。どうやら、言うことを聞くのが、合理的な結論。私ひとりが行くことで、あなたと、ここにいる、全員が助かるのなら……。それが一番良いと思います」

 デスラーは、感情を抑えることもせずに言った。

「だめだ、スターシャ。君を差し出すくらいなら、私は、ここで死ぬことも厭わぬ……! タラン! デスラー砲を使え! それで道を開き、ここを脱出するのだ! 私は、ここに置いて行って構わん!」

「アベルト……」

 そのやり取りを聞いていたカミラは、再び大声で笑った。

「それは出来ないでしょう? つい先程、デスラー砲とやらは、使ったばかり。暫くは、使えないはず。そうだな? タランとやら」

 タランは、拳を握りしめて、それには答えなかった。

「ヴェルテ。私が行きます。シャトルの用意を」

「スターシャ……!」

 デスラーの悲痛な叫びに、スターシャは、そちらを振り返った。

「アベルト……。あなたが失われたら、皆はどうすればいいのですか? 皆、あなたを慕って、国を捨てて着いてきてくれた人たちです。ここは、私が行くべきなのです。そうでしょう?」

 デスラーは、唇を噛んで黙り込んだ。

 そこで、初めてミルが口を開いた。

「スターシャ様……。このようなことになり、申し訳なく思っています。大人しく、こちらに来て頂ければ、私があなたの身の安全を保証します。そして、ガミラスの方たちが、ここから去る間の安全も。私を信じて頂けますか……?」

 スターシャは、ミルの姿を見た。彼は、苦渋の選択をしたのが見て取れた。また、横にいる女帝と名乗る女が、嫌な顔をしていることから、内情はいろいろあるのが透けて見えた。

 そして、彼は、あの時の誠実な彼のままだ。

 スターシャは、そう思うと、彼に向かって微笑した。

「ミルさん……。分かりました。私は、あなたを信じます」

 それを聞いたミルは、目を再びそらして体を震わせていた。

 スターシャは、タランにもう一度言った。

「ヴェルテ……。行かせて下さい。ミルさんは、きっと約束を守ってくれるでしょう」

 タランは、スターシャと見つめ合って、相手の心の内を探ろうとした。

 タランは、大きく息を吸い込むと、艦橋の士官に向かって指示をした。

「シャトルを用意したまえ!」

「タラン! 何をやっているか!」

 デスラーが、叫んでいたが、タランは無視を決め込んだ。代わりに、スターシャがデスラーに言った。

「アベルト。ありがとう……私のために。時間はかかるでしょうが、必ず、もう一度会えると信じています。その時が来るのを、私は待っています」

「スターシャ……! 私は、私は……。君がいなければ……!」

「必ず、会えるわ。お願い……。今は、皆を助けさせて」

 そう言うと、スターシャは、カミラに向かって言った。

「女帝ズォーダー。私は、そちらにこれから向かいます。どうか、私たちの船が去る間、攻撃を控えて頂くよう、約束して下さい」

 カミラはにっこりと笑顔を浮かべて言った。

「いいでしょう。私は、ガミラスには興味が無い。あなたが、こちらに来ればもう用はありません。どこへでも好きに行くが良い」

「その言葉、必ず守って下さい」

 スターシャは、そう言い残すと、デウスーラの艦橋から出て行った。

「スターシャ!!」

 スターシャの後ろ姿に向けた、デスラーの悲痛な叫びが、こだましていた。

 

 通信を切ったカミラは、ミルに向かって苦言を言わねばならなかった。

「ミル……。イスカンダル人に、なぜあのような態度を?」

 ミルは、辛そうにしている。

「私は……。スターシャ様に、助けて頂いたのです。ご恩があるのです」

 カミラは、いきなり彼を平手打ちした。大きな音がして、ミルは打たれた頬を背けたまま、暫く固まっていた。

「あなたは、大帝になるのです。二度と、そのような姿を皆に晒してはいけません!」

 ミルは、カミラに背を向けて、こっそり涙を流した。

 そこに、ボラー連邦艦隊から通信が入っていた。

 カミラは、何事も無かったように、静かにそれに応じた。

「繋ぎなさい」

 スクリーンには、ボラー連邦軍総司令官のチェコロフの姿が映っていた。

「カミラ殿。何をやっているか。ガミラスの連中を、黙って返すつもりではないか?」

 カミラは、大きな声で笑った。

「まさか。我々は、イスカンダル人を手に入れたいだけ。その目的は、運良く向こうからやって来てくれたのでもうすぐ達成されます。そうしたら、ガミラス艦隊は、あなた方の好きにすれば良い」

 チェコロフは、安心して頷いた。

「それは良かった。我軍の艦隊だけでなく、せっかく開発した機動要塞までやられてしまった。流石に、ただで返すわけにはいかない。しかも、この本星でこのような、暴挙を許して、そのまま返したのでは、皆に示しがつかない」

 ミルは、振り返ってそのやり取りを聞いていた。

「母上! それでは、先程の彼らとの約束を破ることになるではありませんか!」

 チェコロフは、目を細めて、スクリーンの向こうから、ミルを睨んだ。

「約束……とは?」

 ミルは、チェコロフを無視して、カミラを憎々しげに睨んでいた。

 スターシャ女王と交わした約束を、舌の根の乾かぬうちに反故にするとは……。

 ミルは、母親を許せなかった。そもそも、なぜ優しかった母が、このような、残忍な人物になってしまったのか。だが、そのような詮索は、後でやればいい。

 ミルは、スターシャへの恩に答えるべく、どうすべきか必死に考えた。そして、思いついた策を試すことにした。

「チェコロフ総司令官……」

「……何かね? ミルくん」

 そこで、ミルは息を大きく吸い込んだ。

「私に対してその言い方は、無礼であろう。チェコロフ総司令官」

 それを聞いたチェコロフの表情は曇った。

 ミルは、努めて冷静さを保ちながら、出来るだけ自分を大きく見せようとした。

「奴らは、我々にとってまったくもって価値が無い。そもそも、ガミラスの正規軍ですら無いゲリラ組織のような連中だ。そのような者たちに貴官らが敗北したなどと、恥を晒す様なものではないのかね?」

「む……」

 ミルは、相手に自分の言葉が響いた事を、チャンスだと思った。

「あの機動要塞は、まだ試作品だというではないか。ここは、試験中の事故として処理した方が、あなたにとっても都合が良いのではないか? ここで、更に無用な戦闘行為を行って、被害が拡大したとすれば、あなたの立場に更に傷がつくと言うもの。あのような、者どもは、放っておけばよい。だから、私は、彼らを逃してやると約束した。あなた方が失った機動要塞ならば、我々のゴルバの工場を使って、建造してやっても良いぞ?」

 チェコロフは、それは一理あると考えていた。このままベムラーゼに報告しても、本星防衛の要衝にて、無様を晒すことにもなりかねない。彼は、にやりと笑った。

「なるほど。なかなか、頭が切れるようですな……。いいでしょう。ここで見たことは、全員が忘れることとしよう」

 チェコロフは、艦内の乗員に睨みを効かせた。

 ミルは、してやったりと微笑んでいた。

 通信が切れると、ゴルバの乗員に大きな声で言った。

「スターシャの乗ったシャトルが間もなくやって来る! 艦内に収容する準備をしろ!」

 カミラは、ミルが唐突に指導者らしい力を発揮したことに安堵して微笑していた。スターシャとの約束を守ろうとしてやったことというのは分かっていたが、それよりも、相手の軍の高官を丸め込んだ話術に感心する方が先に立っていた。

「……ガミラスの連中に、早くこの場から消えろと伝えてくれ」

 そう言い残すと、ミルはスターシャを迎えるべく、艦橋から出て行った。

 

 タランは、スターシャの乗ったシャトルが、ゴルバに収容されて行くのを、苦々しく見つめていた。しかし、相手が気が変わらないうちに、この場を立ち去らねばならない。仕方なく、彼は指示をした。

「ゲール少将に連絡……。我々を、異次元に引き込むよう伝えてくれ」

 艦内のスクリーンは、デスラーの姿に変わった。デスラーは、先程までの取り乱した姿は影を潜め、冷静さを取り戻していた。デスラーは、静かにタランに言った。

「タラン……。私は、屈辱を忘れぬ男だ。必ず、スターシャを助けに行く。作戦を一緒に検討してくれるかね?」

「はっ! もちろんです」

 その後、デスラーが黙り込んだ為、タランは、小さくため息をついた。

 

続く…




注)pixivとハーメルン、及びブログにて同一作品を公開、または公開を予定しています。
注)ヤマト2202の登場人物は、役割を変更して登場しています。
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