宇宙戦艦ヤマト2199 白色彗星帝国の逆襲   作:とも2199

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宇宙戦艦ヤマト2202とは別の世界線を歩んだ宇宙戦艦ヤマト2199の続編二次創作小説「白色彗星帝国の逆襲」です。「白色彗星帝国編」、「大使の憂鬱」、「孤独な戦争」、「妄執の亡霊」、「連邦の危機」、「ギャラクシー」の続編になります。


白色彗星帝国の逆襲31 サーダ

 ゴルバの艦載機格納庫に駐機したガミラスのシャトルから、スターシャは、ゆっくりと姿を現した。

 ガトランティスの兵士たちは、スターシャと、後から現れたガミラス兵のパイロットを取り囲み、一斉に銃を構えた。

「手を頭の後ろにして、跪け!」

「スターシャ様……」

「言うことを聞きましょう」

 スターシャとパイロットは、顔を見合わせて頷くと、大人しくそれに従った。ガトランティス兵たちは、電磁ロックの手錠を取り出すと、二人の腕を取り、無理やり後ろ手に手錠を嵌めた。そして、二人を立たせると、何処かへ連行しようとしていた。

 そこへ、ミルが急ぎ足でやって来た。ミルは、スターシャの姿を認めると、胸が傷んで挫けそうになった。しかし、ここは尊大な態度で、余裕を持って臨むべきだと思い直して、表情を引き締めた。

「何をやっておるのか?」

 ミルが現れると、ガトランティス兵たちは、慌てて整列して彼の前に並んだ。

「ミル様! 人質を拘禁室へ連れて行く所です!」

 ミルは、スターシャの前に出ると、努めて冷静に兵士たちに言った。

「スターシャ女王には、手錠など必要無い。すぐに外して、丁重に扱うのだ」

「はっ! しかし、ミル様……」

 ミルは、反論しようとした兵士を睨んだ。

「ほう? 私が、まだ大帝ではないので従えぬと申すか?」

 言われた方の兵士は、青ざめていた。

「め、滅相もない。すぐに手錠を外します。しかし、もうひとりはガミラスの兵士。手錠を外すのはお勧めできません」

 そのガミラス人は、ミルを睨みつけてぼそっと言った。

「よお……。お前、随分と偉くなっちまったんだな」

「そなたは……!」

 ミルは、そこまで言いかけて、そのガミラス兵のパイロットが、ギャラクシーの農園などで一緒に作業を行っていた人物なのに気がついた。

 そんな……! 何故彼がここに……!

 その彼とは、共に一年ほど同じ仕事をして、打ち解けあった仲だった。ミルは、スターシャだけでは無く、その彼らの信頼をも裏切ったのだ。

 ミルは、その男の顔を、どうしても正面から見ることが出来なかった。しかし、周囲の兵たちに、これ以上弱みを見せる訳にはいかない。出来るだけガミラス人に対して冷酷な姿を見せなければならなかった。ミルは、悩んだ末、意を決して言った。

「その男は、そのままでよい。二人を連れて行け!」

「はっ!」

 ガトランティスの兵士たちは、スターシャと彼を連れて、艦載機格納庫から出て行った。スターシャは、その間際、ミルを振り返って寂しそうな表情をしていた。

 ミルは、一人艦載機格納庫に残り、自責の念で身体を震わせていた。

 その後、ガトランティス艦隊は、ボラー星系第五惑星に集結している本隊のもとに帰還した。そして、月軌道に浮かんでいるガトランティス大要塞に、ミルたちを乗せたゴルバは帰還した。

 

 数時間後――。

 

 カミラとミルは、要塞内部の中央エレベーターの前にいた。

「スターシャは、この最下層の特別な拘禁室に入れました。様子を見に行きましょう」

 二人は、エレベーターに乗って、最下層に移動した。

 ミルは、エレベーター内で二人きりになると、先程のパイロットがどうなったか気になった。

「母上。もう一人のガミラス人のパイロットもそこに?」

 カミラは、一瞬目を丸くすると、突然笑い出した。

「な、何が可笑しいのです?」

 カミラは、笑うのをやめると真顔で言った。

「科学者でもない限り、ガミラス人は必要ないの、ミル。既に処刑するように指示しました」

 ミルは、激しくショックを受けていた。その表情を見透かされ、カミラは不機嫌な顔をしていた。

「あのギャラクシーとか言う基地にいる間に、あなたは腑抜けにされてしまった。スターシャのせいで、異星人にそのような情を抱くように仕向けられたということね。しっかりしなさい。あなたは、明日には大帝ズォーダーを名乗るのですから」

 エレベーターは停止し、ドアが開くと、カミラはすたすたと歩いて行った。

 ミルは、母親の後ろ姿を睨んで、暗い殺意のような感情を抱いていた。

 最下層の通路を進むと、すぐに広いスペースが広がっていた。そこでは、多数の端末や、様々な実験設備、大型の工作機械のような設備が、部屋を埋め尽くすように設置されていた。そこでは、異星の人々が大勢仕事をしていた。今まで、見たことの無い種族もちらほら見受けられる。

 ミルは、当惑してデスクが並ぶ間の通路を進んで行った。先に行くカミラは、時々人々に声をかけながら進んでいる。ミルは、足早にカミラに追いついて聞いた。

「母上……。ここは、いったい?」

 カミラは、少し後ろを振り返ると言った。

「ここは、我が帝国でも、限られた者しか入るのが許可されていません。科学奴隷の研究所ですよ」

「なんと……! こんな所にあったとは!」

「知らぬのも無理はありません。ここは、非常にセキュリティが厳しい場所でした。私も、今の立場になるまでは、容易に入るのは許されていませんでしたから。そうそう、以前、ズォーダー大帝らがいなくなり、ガミラス人がこの要塞を捜索した時に、皆でここへ隠れたのです。彼らは、この最下層の存在自体を見つけることが出来なかった」

 カミラとミルは、更に奥へと進んだ。数百メートルは歩いたはずだが、まだまだ奥に続いている。やがて、奥に頑丈そうな大きな鋼鉄で出来た扉が見えて来た。

「あの扉を進み、もう少し先です」

 カミラは、扉の脇の小さな端末に顔を寄せた。小さな端末には、ボタンとカメラのような装置がついており、光がカミラの目を照らしている。

「網膜スキャンです。あなたも、正式に大帝となれば、登録させます」

 扉のロックは、大きな金属音を立てて外れたようだった。警報音が鳴り響き、扉が内側に重々しく開いた。扉の開口部を見ると、およそ、厚さが一メートルほどはあるようだ。

 何と頑丈な扉なのか……。いったい、何故、このような、扉が必要なのか?

 ミルは、内心の不安を隠して、更に奥へと進むカミラの後を追った。

 内部をしばらく進むと再び扉があり、そこを抜けると、長い通路だけがある場所に出た。通路の両脇には、暗い奈落が広がっていた。通路の下を覗くと、そこは暗く底は見えなかった。

「は、母上……!?」

 ミルは、あまりの光景に思わずカミラを呼び止めた。

 カミラは、ふと笑っていた。

「最初にここを見た時は、私もそのように驚かされました。この下は、この要塞都市帝国の中心部、コアがあります」

「コア……?」

 カミラは、ミルと同じ様に下を覗き込んだ。

「この要塞都市帝国の動力源があるのです」

「下は、真っ暗で見えません。どれぐらいの深さがあるのでしょうか?」

「私も知りません。一キロか、二キロか……きっとそんな所でしょう」

 そう言うと、カミラは、更に通路を奥へと進んで行った。

 長い通路の端には、再び鋼鉄の扉があった。カミラは扉のロックを解除して中へと進んだ。ミルも、遅れまいとその後から中に入った。

 

 中に入ると、通路があり、両脇に所々同じ様な扉が設けられており、それぞれ中は部屋になっているようだった。カミラは、特に迷うことなく、一つの扉の前に行くと、扉の脇の壁面に設けられたスイッチを操作した。すると、扉はスライドして開き、カミラはその中に入って行った。

 そこは、内部が十メートル四方程度の部屋になっていた。壁沿いに、何らかの動力源となる装置がならんでいた。数人の科学者らしき人々がおり、それらの装置をチェックしていた。そして、中央には椅子があり、そこにスターシャが座っていた。

「スタ……!」

 ミルは、スターシャの名を叫びそうになっていたが、カミラの目を気にして、口をつぐんだ。スターシャの椅子の背もたれには、頭の部分に円型の装置があり、彼女の頭部に被さるようになっていた。そのスターシャは、目を閉じて動かなかった。彼女は、眠らされているように見えた。

 そして、スターシャの座る椅子の脇には、一人の女性が立っていた。青く長い髪をした彼女は、スターシャの頭部の装置のケーブルなどに触れて、確認をしているようだった。彼女は、部屋に入って来たカミラたちに気がつくと、軽く会釈をした。

「カミラ様、イスカンダル人は、この通り意識レベルを低下させて大人しくさせました」

 カミラは、スターシャを目を細めて眺めると、頷いた。

「ご苦労さま。装置の方は問題なくって?」

「はい。今は、出力は抑えていますが、見たところ、これで十分かと」

 青い髪の女は、スターシャの頭部の装置から伸びるケーブルが繋がった装置の表示を指差している。そこには、何やらグラフが表示されており、ほとんど横にまっすぐ伸びている。

「後は、この部屋全体に張り巡らせるフィールドを張れば、万が一、意識を取り戻すことがあっても、ここから出ることも、外部へ意識を飛ばすことも不可能です」

「それは良かった。これで、ひとまず安心ですね」

 ミルは、スターシャの座っている椅子以外に、他に三席の椅子があるのを眺めた。

 他の椅子は、サーシャたちを連れてきた時に使う気だな……。

 彼は、このようなことをする母に対して、悲しみと怒りに満ちた感情を、内に秘めていた。

 青い髪の女は、カミラとのやり取りを終えると、ミルの方を怪訝な表情で見つめた。

「そのお方は、どなたですか?」

 カミラは、微笑してミルの肩に触れると言った。

「そうね、紹介しましょう。ミルです。ミル、あちらは、異星の科学者のサーダ」

 サーダと呼ばれた女は、眉をひそめている。

「彼は、大帝ズォーダーの実の子です。生存が確認され、ここへ連れ戻しました。これから、新たなズォーダー大帝としてガトランティス帝国を任せるつもりですよ」

 サーダは、ほんの少し目を見開いていたが、冷静だった。

「と、言うことは、カミラ様。あなたの子でもあると言うことですね?」

 カミラは、嬉しそうな素振りを隠さずに返事をした。

「そうですね」

 サーダは、何か考え込んでいるようだった。

「……分かりました。てっきり、カミラ様が今後もガトランティス帝国を率いるものと思っておりました。子というのは、特別な存在なのですね?」

 ミルは、サーダの言動を不思議に感じていた。

「……そなたは、私が大帝には相応しくないと申すのか?」

「そのようなことは私は申しておりません」

 ミルは、サーダと暫し見つめ合った。美しい女だとは思ったが、サーダの瞳からは、ほとんど感情を感じ取れなかった。その様子を見兼ねたカミラがミルに諭した。

「ミル。彼女は、数百年前に我がガトランティスが滅ぼした、とある星間国家から連れてきた科学奴隷です。彼女は、首から下は機械の体で、身体のメンテナンスを続けることで、とても長命な種族ですが、そのせいか、あまり感情というものを顕に出来ません。そして、そのような身体を持つ彼らには、子を残す、という概念を理解するのが難しいようです。彼女の言動を、あまり気にしてはいけません。我がガトランティスで、最も優秀な科学奴隷の種族なので、大事にしてやるのですよ」

 ミルも、その話に思い当たることがあった。

「母上。私も聞いたことがあります。確か、ガトランティスがこれまで最も苦戦した敵だったとか。連れてきた科学奴隷も、これまでで、最も優秀だという話は聞いておりました。しかし、実在するのかどうかすら、私は疑っていました」

 サーダは、特に気にする様子もなく、ミルの言うことを聞いていた。カミラは、サーダの背に手を触れると言った。

「白色彗星も、彼女たちの種族が作り出したもの。彼らがいる限り、ガトランティスは永遠に無敵なのです」

 ミルは、サーダに一瞥すると小さく頭を振った。

「なるほど、分かりました。これからもよろしくな、サーダとやら」

 サーダは、会釈してその場を離れて行った。

 ミルは、改めてスターシャの様子を見た。瞳を閉じて、小さく呼吸しているので、生きているのは間違いがない。彼は、スターシャの椅子のそばに膝をつくと、彼女の手を握った。

 申し訳ありません……。スターシャ様。

「母上……」

「何ですか?」

 ミルは、カミラの方を見ずに、スターシャを見つめたまま話した。

「なぜ、イスカンダル人を生かしておくのですか? 母上は、イスカンダル人のせいで、ズォーダー大帝らは敗北したと仰っていた。論理的には、生かしておく理由がありません。もしや、私がスターシャ女王に恩義を感じていることを、多少でも気にかけて下さっているのですか?」

 カミラは、突然大きな声で笑い出した。

「母上……?」

 ミルは、笑い続ける母の方を見た。

「……これから起こることを、彼女たちにも知ってもらいたいからです」

 ミルは、カミラが言うことが理解できなかった。

 この銀河系で定住する、というのは本当なのだろうか?

 何らかの企みがまだあるのだろうと、ミルは推測したが、今の母に尋ねてもまともな返事はもらえない気がした。

「ところでミル。我が軍の掴んだ情報によれば、スターシャには、娘がいたはずですね。娘も、あのギャラクシーとか言う基地にいるのですか?」

 ミルは、記憶を辿った。確かに、スターシャから娘の話題を聞いたことがあったような気がする。

 しかし、母がなぜそのようなことを聞いたのか考えると、彼はぞっとした。

「恐らくは……。まさか、母上?」

 カミラは、スターシャを見下ろしながら、笑みを浮かべている。

「イスカンダル人は、皆でここで仲良く過ごしてもらうのが良いでしょう。家族一緒の方が、幸せでしょう?」

 カミラは、再び大きな声で笑っている。

 ミルは、心の中で考えた。

 このまま、母の暴走を放置することは出来ない。スターシャはもちろん、これから連れてくるというサーシャたち、そしてスターシャの娘を、何とかして、助けてやらねば……。

 ミルは、しばらくそこで頭を悩ませた。

 

続く…




注)pixivとハーメルン、及びブログにて同一作品を公開、または公開を予定しています。
注)ヤマト2202の登場人物は、役割を変更して登場しています。
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