宇宙戦艦ヤマト2199 白色彗星帝国の逆襲   作:とも2199

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宇宙戦艦ヤマト2202とは別の世界線を歩んだ宇宙戦艦ヤマト2199の続編二次創作小説「白色彗星帝国の逆襲」です。「白色彗星帝国編」、「大使の憂鬱」、「孤独な戦争」、「妄執の亡霊」、「連邦の危機」、「ギャラクシー」の続編になります。


第四章 飢えた銀河
白色彗星帝国の逆襲32 包囲網


 ギャラクシーから十数光年離れた銀河系中央部――。

 

 地球艦隊とネレディア率いるガミラス艦隊は、火星から逃げたガトランティス艦隊にようやく追いついていた。そして、ギャラクシーから出発して待ち伏せしていたバーガー率いる艦隊が、反対側から接近し、これを完全に包囲していた。

 

「ゼール中佐、約二百五十隻からなる艦隊に、完全に包囲されました。ジャンプで脱出するにも、加速する為の空間がありません」

 ユリーシャとサーシャを拉致したガトランティス艦隊のラスコー級巡洋艦では、艦隊指揮を取るゼール中佐が腕組みして考え込んでいた。

「ふむ。本隊への連絡はどうだ?」

「だめです。通信リレーがこの宙域には無いため、連絡つきません。取り敢えず、連絡用の発信機を搭載した小型ロケットを射出しました。しかし、これが本隊に連絡がつくには、かなりの時間がかかるはずです」

 ゼールは努めて冷静に乗組員に話した。

「我々には、人質がいる。奴らが大事なイスカンダル人が我々の手の内にある限り、うかつには手は出せないだろう。イスカンダル人をここに連れて来い!」

「はっ!」

 

 ネレディアとバーガー、そして山南は、スクリーン越しに、それぞれの艦から通信でやり取りしていた。

「おい、どうすんだよ! このまま、ただじっとしてろって言うのかよ!」

 バーガーは、苛ついた様子で怒鳴っていた。

「フォムト。少しは落ち着け」

「ネレディア! これが落ち着いていられっかよ! ガトランティスの奴らを全員八つ裂きにしてやる!」

 ネレディアは、バーガーの苛つきにため息をついていた。

「……私だって、同じ気持ちだ。だが、ガゼル提督が命を掛けて守ろうとしたイスカンダルの皇女たちを見殺しにする訳にはいかない。必ずや、救出するんだ。奴らを皆殺しにするのは、それからでも遅くは無い」

 山南は、二人のやり取りを苦笑いで見守っていた。そして、ぼそっと独り言を言った。

「二人とも、いちいち、言うことが過激なんだよなぁ……」

「山南准将。聞こえているぞ」

「てめえ、何か文句あんのかよ!?」

 慌てた山南は、笑顔で二人に言った。

「ま、まぁまぁ、落ち着いて」

 山南は、両手を動かして、冷静になるように促すポーズをとっていた。しかし、地球人同士なら通じるポーズが二人に通じるはずも無かった。

「てめえの、そのふわふわした態度、俺は気に入らねぇな!」

 バーガーとは違い、ネレディアは黙っていたが、その顔が同じことを考えているのは明らかだった。

 山南は、困り果てた表情で息を吐き出すと、出来るだけ真面目な顔で、二人に話しかけた。

「ライアン外務長官と、デスラー大使が中立地帯で交渉して来るまでは、ここで待機だ。焦る気も分かるが、下手に動けば、人質の身の危険がある。だから、もうしばらくは、我慢だ」

 バーガーは、胡散臭いと思っているのが、顔に出ている。

「だがなぁ、そんな交渉、あんた、本当に上手くいくと思ってんのか? あの二国とはまともな国交すらねぇんだぞ。そんな面倒くせえことをするよりもだなぁ……!」

「俺だって、そんなに上手く行くとは思って無いさ。だが、地球連邦としては、穏便に済むのなら、まずは試してみてからでなければ、世論が納得しない」

「あんた、奴らに波動砲をぶっ放したって言うじゃないか。何が穏便にだよ。もう遅えんじゃねえのか?」

 山南は、それを言われてしまっては、ぐうの音も出なかった。

「フォムト、それに山南准将。我々は、交渉の結果を取り敢えず待つ。だが、交渉が上手く行かなければ、我々は独自に動く。ガミラス軍としてな……」

 ネレディアは、冷静に言った。

「そりゃあ参ったな……」

 山南は、血気盛んな二人を抑え込むのは、無理だと思った。

 せめて、潜入している星名と斉藤に連絡がつけばなぁ……。

 

 その頃、その星名と斉藤は、ラスコー級巡洋艦の食料庫に潜入していた。

 星名は、食料庫の影で、食料の入った箱を開封し、食べられそうな物を探していた。

「食えそうなもん、あったか?」

 斉藤は、あたりの様子を睨みながら、背後にいる星名に尋ねた。

「うん。これなら、食べられるかな」

「だったら、もう戻ろうぜ。長居は無用だ」

「まぁ、待って。箱を元に戻すから」

「急げよ」

「分かってるさ」

 星名は、箱の蓋を閉じて、元あった場所へと戻した。

「行こう」

 二人は、食料庫の隅にあったメンテナンス用通路へと再び入って行った。

 しばらくして、二人は落ち着いた所で、食料を口にしようとしていた。

「おい、星名よぉ……。何だこりゃぁ? 犬の餌じゃないのか? 何か変な匂いがするぞ。もう少し、ましなの無かったのかよ」

 星名は、斉藤が犬の餌と呼んだそれを食べ始めていた。

「嫌なら、食べなくてもいい。しかし、食べなければ、僕たちの目的は果たせない」

 斉藤は、仕方なく、諦めてそれを食べ始めた。

「まじい……。まったく、ガトランティスの奴らの味覚は信用できねぇってことが分かったよ」

「……」

 星名は、このあとどうするかを考えていた。

 既に、ここへ来てから二週間がたち、艦載機の格納庫のあった艦内の下部の方のほとんどを捜索していた。今度は、上の方を捜索すべきだろう。しかし、上の方は居住区や戦闘に関連する施設が多く、乗組員に発見される可能性は高まる。それに、ユリーシャたちを発見した所で、どうやって脱出するかもまだ分からない。

 それでも……!

 星名は、ユリーシャが不安な表情で、助けを待っているであろうことを、想像すると、胸が張り裂けそうになった。しかし、そのような焦りは禁物と、斉藤に諭されたのを忘れた訳では無い。

 まずは、どこにいるかを見つけることだ。それから、脱出方法を考えればいい。

 星名は、自分にそう言い聞かせると、食料の残りを無理矢理飲み込んだ。

 そうして、その後上層階へと捜索の手を広げた矢先、二人は、ユリーシャたちを遂に発見するのだった。

 斉藤は、小声で星名に言った。

「見つけたな」

「ああ、良かった。皆んな、無事だったみたいだ」

 二人は、メンテナンス通路の隙間から、艦内の通路を見つめていた。ちょうど、五人のガトランティス兵に促され、拘禁室からサーシャとユリーシャが出てきた所だった。そして、遅れて桂木透子も現れた。

「わたくしたちを、どこへ連れていくおつもり?」

 サーシャは、ガトランティス兵に尋ねている。

「艦隊司令のゼール中佐がお呼びだ。今から艦橋へ連れて行く。大人しく来るんだ」

 ユリーシャは、不安げな顔をしていたが、気丈にもその男に聞いた。

「私たちを、どうするの?」

「俺たちには分からない。上で、ゼール中佐に聞け」

 桂木透子は、涼しい顔で、すたすたと先に歩いて行った。

「艦橋は、こちらですね? 行きましょう」

 ガトランティス兵たちは、少し呆気に取られていた。

「よ、よし、お前たちも歩け!」

 そうして、彼女たちは、通路を遠ざかって行った。

「おい、星名。行っちまうぞ。どうする?」

 斉藤は、せっかく発見した彼女たちを見失うのを恐れていた。

「……今、あの連中を襲って救出するのは、可能かも知れないが、通報される恐れがある。やはり、密かに連れ出して脱出するべきだ。それには、あの部屋に囚われているのが分かって、無事なのが確認出来ただけでも、今は良しとするしかない。あの部屋への侵入方法が無いか探って見よう。その後、脱出経路を検討して計画を立てよう」

 

「ゼール中佐、連れてきました!」

 兵士たちは、人質の三人を艦橋へと連れて来ていた。

「ご苦労。三人とも、私の近くに連れて来たまえ。通信士! 地球とガミラスの艦隊に、映像通信で繋いでくれ」

 艦橋中央に、三人は連れて来られて、跪かされて、銃を突きつけられた。ゼールは、彼女たちを一瞥すると、通信が繋がるのを待っていた。

 ゼールは、桂木透子と目が合った。彼女は、彼ににこりと笑って話しかけた。

「中佐。人質がいるから、道を開けろと言って、強行突破するおつもり?」

 ゼールは、眉を少しつり上げると、透子の方を見た。

「人質は黙っていてくれないか」

 透子は、特に萎縮することもなく、笑みを浮かべている。

「地球人ならともかく、ガミラス人には通用しませんよ。彼らは、あなた方のせいで、火星で提督クラスの人物を失っていますから、相当な怒りを溜めていることでしょう。あなた方を黙って見逃すぐらいなら、最悪人質の命を諦める選択だって考えている可能性がある。そうなれば、あなた方は多勢に無勢。あっと言う間に全滅させられることでしょう」

 透子の背後にいた兵士が、透子の後頭部に銃を押し付けて叫んだ。

「貴様! 黙らんか!」

 ゼールは、透子に興味をもってその兵士に下がるように手で合図した。

「ほう。ならば、君ならどうするのかね?」

 透子は、妖艶な笑みをして、ゼールを見つめている。

「そうですね……。私なら、何とか本隊への連絡をして、応援が駆け付けて来るまでは、この状態を維持します。その方が、助かる可能性が高いと思いますわ」

 ゼールは、少し考えた。確かに、彼女の言うことももっともだと感じた。だが、人質の発言とは思えず、彼女に対する疑問を尋ねた。

「面白い。君の言う事にも一理ある。ならば聞くが、我々を助けて、君に何の得がある?」

 透子は、余裕を持って答えた。

「簡単ですわ……。ここで、対応を間違えば、私たちも一緒に死ぬかも知れませんから」

 サーシャとユリーシャは、不思議そうな顔で透子を眺めている。透子は、周りを見回してそれぞれの表情をうかがった。

「あら、私、変なこと言いました?」

 ゼールは、腕組みして少し笑っている。

「いや。貴重な意見だった。通信士! 通信はやめる。もうしばらく、このまま様子を見よう」

「賢明なご判断ですわ。こちらの出方がわからず、向こうも困っているはずです」

 ゼールは、ため息をついた。

「調子に乗るな。君たちは、人質だと言うことを忘れるな」

 ユリーシャは、透子から、サーシャの方へ視線を向けた。サーシャも、不思議そうに首をひねっていた。

 

 そうして、それから何時間もの間、その膠着状態は続くのだった。

 

続く……




注)pixivとハーメルン、及びブログにて同一作品を公開、または公開を予定しています。
注)ヤマト2202の登場人物は、役割を変更して登場しています。
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