宇宙戦艦ヤマト2199 白色彗星帝国の逆襲   作:とも2199

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宇宙戦艦ヤマト2202とは別の世界線を歩んだ宇宙戦艦ヤマト2199の続編二次創作小説「白色彗星帝国の逆襲」です。「白色彗星帝国編」、「大使の憂鬱」、「孤独な戦争」、「妄執の亡霊」、「連邦の危機」、「ギャラクシー」の続編になります。


白色彗星帝国の逆襲33 交渉Part1

 ボラー連邦とガルマン帝国の中立地帯――。

 

 山南がガトランティス艦隊を足止めして膠着状態に陥っていた頃、北米第七艦隊の主力ミサイル巡洋艦シャイローと、護衛の駆逐艦五隻は、艦隊を離れてボラー連邦とガルマン帝国の中立地帯であるサイラム恒星系の第四惑星アマールへ向かっていた。

 ボラー連邦とガルマン帝国の長い戦争の中で、数年前に休戦協定が結ばれた。ちょうど両国が接する東部の端に位置したサイラム星系は、両国の休戦協定によって自治権が認められ、中立の非戦区域として設けられたものである。ここでは、両国の唯一の交流の場として、貿易なども行われ、当初は両国の和解、共存への第一歩として期待されていた。

 しかし、現実は程遠く、サイラム星系の自治権が認められたのには、両国が結んだ休戦協定と、アマールを含めた三国で結んだ平和条約があった。その条約によれば、アマールの独自の防衛軍の戦力の五パーセントまでは、それぞれの軍が駐留することを認めていた。事実上、両国が睨みをきかす中での自治権であり、しばしばアマール星を舞台とした衝突もあった。

 そのような中でも、アマールは自由貿易を標榜し、ボラー連邦やガルマン帝国だけでなく、その他の宙域のあらゆる種族が自由に出入国が可能だった。そうして様々な異星人たちがそこに集まり、銀河の貿易の要として発展を始めていたのである。

 ただし、戦闘艦が出入りすることは厳しく制限されており、第七艦隊の一部である六隻の艦隊も、そのうちの一隻だけの星系への進入が許可されていた。

 ミサイル巡洋艦シャイローに移乗して同行していた艦隊司令のスコークは、同艦を星系に進入する艦艇と決めた。

 

「スコーク司令、惑星アマールのガルマン帝国大使館と連絡がとれました。我々との会談の要求を受諾するそうです。地球を出発した時に送った書簡の電文は、ちゃんと届いていたようです」

 艦長席に座っていたスコークは、通信士の報告に、満足そうに頷いた。そして、席から立ち上がると、艦橋に控えていた外務長官ライアンと、ランハルトに向かって言った。

「ライアン長官、デスラー大使。間もなく惑星アマールに到着します。シャトル格納庫に向かいましょう」

 ライアンは、外務次官のキャッスルと、ランハルトは、秘書のケールと共にそこで立っていた。

 スコークは、ライアンとランハルトの背を押して、艦橋から出ていこうとした。最後に振り返って、艦長のデイビスに声を掛けた。

「デイビス、後は任せたぞ。艦と乗組員の安全を最優先で考えて行動してくれ」

「問題ありません。よい旅を」

 スコークは、最後に少しだけ笑って、要人を連れて艦橋を出て行った。

 彼らが出て行った後、副長のロナルドは、デイビスに近寄って囁いた。

「艦長。今回の任務、どう思います?」

「どうとは?」

「こんな交渉が、本当に上手くいくのかってことですよ」

 艦長デイビスは、更に声を潜めた。

「何でも、餌を用意しているらしいぞ」

「餌?」

「奴らが、前に欲しがったものだよ」

「何のことです?」

「さあな。これ以上は、機密事項だ」

 デイビスは、大きな声で艦橋の乗員に向かって言った。

「ここからは、警戒態勢で進む! シャトル格納庫に、間もなく発艦してもらうと伝えてくれ!」

 

 ミサイル巡洋艦シャイローは、日本艦隊から遅れて復興した北米艦隊に配備された、初めて波動エンジンを搭載した主力艦だった。波動砲は搭載されておらず、また、日本艦隊とは作りが異なり、波動エンジンは、艦体後部下に設けられていた。エンジンの上部は、大きなシャトル格納庫となっており、ガミラスの重爆撃機から着想を得て開発された戦闘攻撃機コスモイーグルが四機、そして大小のシャトルも四機搭載されていて、多目的の運用を可能にしていた。波動砲が搭載されていないことから、艦隊中央部の広いスペースには、乗組員の居住区画だけでなく、ジムやレクリエーションデッキなども備えていた。乗員のほとんどは、北米出身のアメリカ人で占められている。

 そのシャトル格納庫では、ライアンたちの護衛で同行する海兵隊員たちが、装備を確認して出発の準備を行っていた。そして、スコークのたっての希望により、火星での空母ダレイラの生存者の救助活動で空母エンタープライズに乗ることになったルカと山本も、護衛任務に同行する為、機体の整備を行っていた。

「ルカ、どう? やれそう?」

 山本は、コスモイーグルのコックピットにいたルカに声を掛けた。コックピットから顔を覗かせたルカは、笑顔を見せた。

「問題ない。玲にこの二週間、特訓してもらったからね」

 ルカは、そう言うと、コックピットに伸びていたタラップを降りてきた。

「整備は問題ない。これ、なかなか、いい機体だと思う」

 山本は、酷く落ち込んでいたルカを心配し、ここへ来るまでの間に地球の戦闘機の操縦方法を教えたりしながら、かなり打ち解けていた。彼女は、随分と立ち直ったように見える。

「私は、今回初めて乗ったんだけど、悪くないね。元々は、これは私が前に乗っていたコスモゼロとコスモファルコンの技術をベースにして、更にガミラスの重爆撃機を参考にして、アメリカで開発したものなんだ。対艦攻撃が主な任務の機体だけど、対艦ミサイルを積まなければ、運動性能も悪くない」

 ルカは、それを聞いて不思議そうに尋ねてきた。

「前から気になってはいたんだけど……。地球では、地球の中で国がいくつもあるのか?」

 山本は、言われてみて、確かにガミラスのような星間国家から見たら、おかしなことだろうな、と考えた。

「あなたの国に比べたら、まだまだ地球はひよっこってことなんだろうね。地球連邦という名前だって、地球の色々な国がやっとひとつの政府を持つようになったということを意味しているだけで、昔からある国家の形は残ったまま。ほんの少し前まで、地球人同士で争っていたんだからね。私も、地球人同士の戦争で、住むところを追われた過去がある。今は、ガミラス戦争がきっかけで、協調路線は強固になってはいるけど、将来はまだ分からない」

 ルカは、感心して聞いていた。

「そういえば、ガミラスでも、かなり昔にそう言う時代があったと歴史で学んだ」

 山本は、ガミラスの学校の事に興味を持って、いろいろ聞き出そうとした時、彼女たちに近寄って来る二人の乗員がいた。

「よお、お二人さん。これから出発だよな」

「お前ら、俺たちの機体を壊すなよ」

 彼らは、この巡洋艦シャイローのパイロットだった。それも、山本とルカが使おうとしていた機体の本来の持ち主と言う事だ。

「お前は、空母ダレイラのエースだったんだって? そっちは、かの有名な元ヤマトの英雄さんだよな?」

「戻ったら、俺たちと模擬戦闘で勝負しろよ」

 山本とルカは、顔を見合わせて、若いアメリカ人のパイロットに少し呆れていた。

「私たちは、実戦でも構わないよ。ま、実戦経験がほとんど無い、あんたたちに勝ち目は無いと思うけど?」

 山本は、わざと挑発的な言い方をして、彼らを煽った。言われたアメリカ人のパイロットは、途端に頭に血がのぼって、山本に掴みかかろうとしていた。

「何だと!? もう一度言ってみろ!」

 その時、号笛が鳴り、海兵隊員の一人が叫んだ。

「注目!」

 ちょうど、シャトル格納庫へスコークたちが入って来たのだった。海兵隊員たちは、その場で直立不動となり、彼らを敬礼で迎えた。山本に掴みかかろうとしていた男も、渋々敬礼すると、小さな声で言った。

「運が良かったな。後で、勝負だぞ。忘れるな」

「いつでもどうぞ」

「そこ! 静かにしろ!」

 山本も、少し笑みを浮かべながら、静かに敬礼の姿勢をとった。

 スコークは、周りを見渡しながら、軽く敬礼して、その手をすぐにおろした。彼の後ろを、同じように、ライアンたちが敬礼して通った。

 スコークは、シャトルの機体に向けて手を伸ばし、ライアンを招き入れた。

「ライアン長官は、こちらの機体にどうぞ。デスラー大使は、あちらの隣の機体に乗って下さい」

 ライアンは、シャトルに乗り際にスコークへ尋ねた。

「二機で行くのかね?」

 スコークは頷いた。

「はい。一機でも十分乗れますが、不測の事態に備えて念の為二機に分かれて行きます。次官の提案で、念の為護衛で、イーグルも二機飛ばします」

 ライアンは、後ろにいた外務次官のキャッスルを振り返った。

「ほう? 少々、挑発的には映らないかね?」

 キャッスルは、眉を上げた。

「かも知れません。しかし、お言葉ですが、前にここへ来た時に、いろいろありましたので、念には念を入れた方がよろしいかと思いまして」

 ライアンは、初めてここへキャッスルを送った時の事件を思い返した。

「ふむ。今回は、あんなことにならないようにしなければな」

 ライアンは、キャッスルにちくりと言うと、前を向いてシャトルに乗り込んだ。後から、キャッスルとスコーク、そして護衛の海兵隊員が乗り込んだ。

 ランハルトは、隣のシャトルへとケールと共に進んだ。海兵隊の隊長であるディランが敬礼して待ち受けていた。その隣に、山本とルカも並んで立って敬礼している。皆、ランハルトに敬意を表してガミラス式敬礼をしていた。

 ランハルトも、ガミラス式敬礼で答えた。彼は、コスモイーグルで出る事になっていた山本とルカに、真剣な表情で話しかけた。

「ルカ少尉。護衛任務感謝する。……空母ダレイラの件は、本当に残念だと思っている。たぶん、俺は君と同じ気持ちだ。君が、無事に生還したことは、本当に良かったと思っている」

 ルカは、ランハルトの言葉に、思わず胸が詰まってしまっていた。

「ありがとうございます。ダレイラの仲間のことを、私は誇りに思っています。何としても、デスラー大使の任務が何事も無く成功するように、微力ながら支援させて頂きます」

 ランハルトは、優しく微笑している。

「彼らの犠牲を無駄にしない為にも、この任務を成功させるのを手伝って欲しい。頼むぞ」

「はい!」

 ランハルトは、続いて山本に話しかけた。

「山本一尉。君は、地球連邦でも、一、二を争うエースパイロットだと聞いている。何かあれば、存分にその腕を見せてくれ」

 山本は、ランハルトの顔を凝視した。

 やはり彼は変わってしまった。

 人を褒めそやすなど、今までの彼の態度からは想像も出来ない事だった。それが、大使を退任する事が決まったことからなのか、それとも、この五年の歳月を共に過ごしたガゼル提督への鎮魂からなのか。

 そんな疑念を抱えていた山本に、ランハルトはごく自然に言った。

「この任務が無事に終わったら、帰国する前に、また前のように一杯やろう。今度は、ユリーシャ様だけでなく、サーシャ様も誘ってな」

 山本は、それには地球式に敬礼して答えた。

「ああ、そうですね。その時はぜひ」

 ランハルトの後ろに隠れていたケールは、ちょこんと顔を出すと、にっこりと笑顔を見せた。

「お別れ会って事ですよね? では、帰ったらすぐに僕が手配しておきますね」

 山本とランハルトは、前回の宴が悲惨な事になったのは、彼がみんなに酒を飲ませ過ぎたせいなのを思い出した。

 ランハルトは、咳払いをしてから言った。

「ま、まぁ。まずはこの任務を成功させる事が先だ。では、また後でな」

 山本は、それに苦笑いで答えた。

「あ、あれ? 僕なんか変な事、言いました?」

「何でもない。行くぞ、ケール」

 二人は、そんな風に言い合いながら、シャトルの機内へと消えた。

 彼らを見送った山本とルカは顔を見合わせた。ルカは、少し怪訝な表情をしている。

「玲は、デスラー大使とは旧知の仲だったのか?」

 山本は、そう言われて思い出してみたが、初めてあった時は、ヤマトの医務室のベッドで寝ている時にほんの数分会話しただけだ。そして、次に会ったのは、古代と雪の結婚式の後の、メルダとユリーシャとの飲み会でのことだった。

 どうだろう? ちゃんと話したことがあるのは一度だけ。それも、お互いかなり酔っていたから、ちゃんと話したと言えるのかどうか……。

 少し考え込んでいた山本は、不審そうな顔で覗き込むルカの視線に気が付いた。

「ほんの少しね。さ、私たちも行こう!」

 

 それから少し後で、ミサイル巡洋艦シャイローは、アマール星の衛星軌道に到着した。艦の後部シャトルハッチがゆっくりと大きく開くと、最初に、山本とルカのコスモイーグルが発艦した。そして、そのすぐ後に、ライアンとランハルトを乗せたシャトル二機がただちに飛び立った。

 こうして、シャイローから飛び立った四機は、編隊を組んでアマール星へと降りて行った。

 

続く…




注)pixivとハーメルン、及びブログにて同一作品を公開、または公開を予定しています。
注)ヤマト2202の登場人物は、役割を変更して登場しています。
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