宇宙戦艦ヤマト2199 白色彗星帝国の逆襲 作:とも2199
ボラー連邦本星――。
「参謀長官のゴルサコフからの報告で、ガミラスがガルマン帝国側につく、という情報がもたらされた。女帝ズォーダー、これは我々にとって想定外の出来事だ。あなた方の協力で、ガルマン帝国の占領作戦は、有利に進められるはずだったのだが、思いもよらぬ邪魔が入った」
首相ベムラーゼは、一人執務室の通信機で、カミラに連絡をとっていた。執務室の端末の小さなスクリーンの中に映るカミラは、余裕の笑みを浮かべている。
「それよりもベムラーゼ首相。私の息子のミルですが、先日正式な大帝とする就任式を行いました。これからは、名実ともに、彼がガトランティスの指導者です。もちろん、最初は不慣れなこともあるでしょうから、私が今後も支えていくので、ご安心を」
ベムラーゼは、興味がなさそうな顔を見せないように、努力する必要があった。
「そ、それはそれは、おめでとうございます」
カミラは、誇らしげに笑顔を見せた。
ベムラーゼは、その顔を見て、大いに落胆していた。
親ばかここに至れり……か……。
ベムラーゼは、何とか気を取り直して、カミラにもう一度話をしようとした。
「話を戻しましょう、女帝。彼らは、あなた方が、イスカンダル人を人質として、拉致していると訴えている。これは、本当のことかね?」
カミラは事も無げに、頷いた。
「本当です。既に、女王スターシャを捕え、他の二人の皇女たちを護送中です。そうそう、もう一人いましたね。スターシャの娘は、現在捜索中です」
ベムラーゼは、立ち上がって端末を両手で掴んだ。
「本当だったのかね!? 私からの提案だ。そやつらを、直ちに解放して欲しい!」
カミラは、呆気に取られた表情になった。
「何ゆえに? 私たちは、彼女たちに大事な用があるのですよ?」
ベムラーゼは、激しい口調で言った。
「我々の大いなる目的を見失ってもらっては困る! ガルマン帝国をこの銀河の宙図から消し去り、我々がこの銀河を支配するのだ! その為にも、イスカンダル人を解放し、我々の同盟を、一時的にも破棄したと宣言するのだ。そうして、ガミラスに、手を引かせる。そうしたら、再び我々は手を組み、戦争の続きをすればいい!」
カミラは、不敵な笑みを浮かべている。
「なるほど。そんなに、ガミラスが恐ろしいのですか?」
「彼らが手を組めば、戦力は圧倒的に不利になる。それに、あなた方も、一度は敗北している相手ではないか!」
「……しかし、あなたの言うとおりにするとなれば、数年、もしかしたらもっと長い間、ほとぼりが冷めるのを待つことになりますわ。そうじゃありません? 電撃的に事を進めるからこそ、私たちが優勢だったのをお忘れですか?」
「それは……そのとおりだが……」
カミラは、子供に言い聞かせるように、優しく言った。
「ベムラーゼ殿。たとえ、ガミラスが敵に回ったとしても、彼らは、マゼラン銀河の支配に手一杯の状態。大した戦力は、こちらには派遣しないでしょう。あまり時間をかけずにやれば、必ずや、我々が勝てます。もし、あなたがご心配なのであれば、イスカンダル人も解放するし、同盟も破棄すると言って、彼らを油断させてほんの少し、時間を稼ぎましょう」
ベムラーゼは、落ち着きを取り戻すと、もう一度椅子に座り直した。
「……ふむ。確かに、あなたの言うとおりかも知れん。それで、時間を稼いでどうするのかね?」
カミラは、少し間を開けて、ベムラーゼが冷静に話を聞けるか見定めていた。
「……間もなく、スカラゲック海峡星団での戦闘が始まります。ここで、ガルマン帝国の戦力を大幅に削り、彼らが混乱している間に、一気に本星を突く……。当初の予定通り、事を運べばよろしいかと」
ベムラーゼは、腕組みして思案した。
「いいだろう……」
スカラゲック海峡星団から数光年の宙域――。
ガルマン帝国北部方面軍は、ボラー連邦の越境に対して、一進一退の攻防を繰り広げていた。
侵攻を抑えることが出来なかった一部の宙域では、北部方面軍は敗走を続け、西部、東部方面軍からの支援を受けて、艦隊の再編をしようとしていた。また、手薄だった一部の宙域では、ボラー連邦軍の侵攻を受け、勢力圏の星系一つを占領されていた。
しかし、いくつかの宙域では、これを押し返すことに成功し、逆に敵の敗走を確認していた。敗走したボラー連邦艦隊は、集結して約一万隻からなる艦隊となり、国境付近のスカラゲック海峡星団へと逃げ込もうとしていた。これを好機と捉え、ボラー連邦軍の一万隻の艦隊を殲滅すべく、北部方面軍は艦隊を再編成し、第一艦隊から第四艦隊までの、総数二万五千隻からなる大艦隊で追撃させていた。
ここで、ボラー連邦軍の一万隻の艦隊を全滅させることが出来れば、一気に形勢を逆転出来ると、北部方面軍は士気も高かった。
北部方面軍司令長官グスタフ中将は、大型空母バーニアスの作戦指揮所から、艦隊の配置などを確認していた。
「グスタフ中将、敵は占領されたザイスーラ星系に集結しています。およそ、三万隻程度の艦隊がいると推測されます」
グスタフは、三次元スクリーンに映る宙図に艦隊配置を重ねた映像を眺めていた。
「我が方の艦隊は、あちこちからの敵の侵攻に対応しなければならず、集結させることが出来ん。東部、西部方面軍の援軍の到着はいつになる?」
宙図を用意した士官は、資料を確認して、スクリーンに更に重ねて表示した。
「援軍は、今は、ここと、この位置です。東部方面軍の方が先に到着しますが、三日後になります。西部方面軍は、五日後の到着になる見込みです」
グスタフは、ため息をついた。本星の会議で援軍の要請をしてから、かなり時間が過ぎていた。その間にも、戦線を維持するのが困難になり始めており、援軍の到着が遅くなれば、更に領土の奥深く、彼らが目指そうとしているであろう本星への侵攻を許しかねない。そもそも、国土が広すぎるのだ。端から端への移動に、場所によっては一ヶ月以上は必要となる。
グスタフは、別の戦線について確認した。
「スカラゲック海峡星団へ向かわせた艦隊の現在位置は?」
スクリーンは、別の宙域に素早く移動し、スカラゲック海峡星団が拡大表示された。そして、敵艦隊のおおよその位置と、自軍の位置が映っている。
「既に、星団のある宙域に到達しています。作戦行動に向け、艦隊配置を行っている最中です」
スカラゲック海峡星団には、第一艦隊から第四艦隊を再編し、全軍の指揮を第一艦隊司令のウォーゲンに任せていた。彼は、グスタフが最も信頼している部下だった。
そこに同席していた科学士官のヘルマイヤー少佐は、スクリーンを指差した。
「グスタフ中将。スカラゲック海峡星団ですが、どうも特殊な環境の宙域があるようです。ここです。四重連星の太陽があり、レーダーによる観測が困難な宙域が所々に存在しています。また、そのうちの一つは白色矮星で、非常に不安定な宙域です。ボラー連邦艦隊は、ここに逃げ込んだようですが……。司令、どうも罠の匂いがします」
グスタフは、複雑な表情でその宙図を見つめた。
「君の忠告は、私も理解しているつもりだ。ウォーゲンならば、やってくれると信じているが、様子がおかしいと判断したら、迷わず艦隊を撤退させるように伝えてある。しかし、ここで、ボラー連邦艦隊を撃破すれば、奴らの戦意を大幅に下げることが出来るだろう。そうなれば、占領されたザイスーラ星系を奪還するのも容易になる。この戦いは、絶対に負けられん」
グスタフの意思は固く、仕方なくヘルマイヤーは、不安げに宙図を見つめていた。
帰還中のデウスーラ――。
帰還中のデウスーラⅢ世と、次元潜航艦隊は、ギャラクシーに向けて移動を続けていた。既に、ボラー連邦宙域を抜け、ガルマン帝国領内を移動していた。スターシャがガトランティスに捕まったことは、ようやく通信が届くようになり、宇宙基地ギャラクシーへも伝えていた。
デスラーは、彼に用意された司令官用の執務室にいた。静かに彼はグラスを傾けて、ぼんやりとしていた。
スターシャ……。
彼は、彼女を奪還する方法をタランと検討を行ったが、中々いい案は浮かばなかった。あのガトランティス大要塞へと連れて行かれたのは間違いなく、救出は困難を極めるだろう。
それに、前のガトランティスとの戦争でイスカンダル人が彼らにしたことを思えば、それこそ彼女が殺されてもおかしくはない。しかし、彼らが殺さずに捕まえようとしていることだけが、唯一の救いだった。
隠密行動で、次元潜航艦で接近して、密かに潜入するのが最も可能性がある作戦だったが、ボラー連邦が開発中の次元潜航艦の存在が明らかになった今では、それも難しい。
そんな時、小さな呼び出し音がして、誰かが部屋を訪れていた。
「入りたまえ」
ドアがスライドして、一人の男が入って来た。
「ご無沙汰しています、総統」
その男は、ガルマン帝国領内に戻ったところで合流した、フラーケンだった。
「久しぶりだね。そこにかけたまえ」
フラーケンは、黙ってデスラーのデスクの前の椅子に座った。
「総統、ガルマン帝国とボラー連邦は、かなり本気の戦争をやっています。どうも、ボラー連邦の方が優勢なようです」
デスラーは、あまり興味がなさそうな表情で聞いている。
「続けたまえ」
「はい。このままでは、ボラー連邦がガルマン帝国に雪崩込むかもしれません。ガトランティスが、ボラー連邦に協力しているという情報は、さっきタラン閣下にうかがいました。新兵器のゴルバとか言うのを使っているとか」
「……そのようだね」
フラーケンは、元気のなさそうなデスラーの顔色に気がついた。
「スターシャ女王が、ガトランティスに捕まったというのも、さっき聞きました。……大丈夫ですか?」
デスラーは、頭を振った。
「大丈夫な訳がない……。しかし、気にするな。スターシャを助け出すヒントがないか、新たな情報を求めている。続けてくれたまえ」
「……は、はあ。実は、ガルマン帝国内で、この状況を好機と見て、武装蜂起しようという動きがあります」
「ほう?」
「どうやら、我々の地道な支援活動が上手くいったのではないかと考えています。シャルバート教の信者が中心となって、あちこちの星系で、一斉に反乱を起こそうとしています。俺としては、今は、そんな場合じゃないと言っているんですが、ガルマン帝国軍がボラー連邦の相手をして混乱している今がチャンスだと、話を聞いてもらえません」
デスラーは、その話を聞いて、考えを巡らせた。
「ふむ……。何かの助けになるかもしれないな。すまないが、引き続き様子を探って、情報を集めておいて欲しい」
フラーケンは、頷いた。
「構いません。では、任務に戻ります」
立ち上がったフラーケンに、デスラーは声をかけた。
「シャルバート教と言ったね……。そういえば、信者はボラー連邦にもいたはずだね?」
フラーケンは、立ち止まって振り返った。
「はい。信者同士のネットワークがあるようです。もしかしたら、向こうにも同じ動きがあるかもしれませんね」
デスラーは、暫し考え込んでいた。
「ならば、そっちの様子も探ってみてくれないかね?」
フラーケンは、にやりと笑ってガミラス式敬礼をした。
「ザーベルク!」
続く…
注)pixivとハーメルン、及びブログにて同一作品を公開、または公開を予定しています。
注)ヤマト2202の登場人物は、役割を変更して登場しています。