宇宙戦艦ヤマト2199 白色彗星帝国の逆襲   作:とも2199

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宇宙戦艦ヤマト2202とは別の世界線を歩んだ宇宙戦艦ヤマト2199の続編二次創作小説「白色彗星帝国の逆襲」です。「白色彗星帝国編」、「大使の憂鬱」、「孤独な戦争」、「妄執の亡霊」、「連邦の危機」、「ギャラクシー」の続編になります。


白色彗星帝国の逆襲39 前夜

 宇宙基地ギャラクシー――。

 

 そのガミラス人と思しき男女は、ギャラクシーのガミラス人が運営するバーの隅の席に陣取り、ひそひそと話をしていた。

「お二人とも、グラスが空いていますが、ご注文は?」

 店内の店員が、飲み物が空になった二人の男たちに声を掛けた。

「俺たちは、同じものを。ハモーラはどうする?」

 ハモーラと呼ばれた、そのテーブルにいた女は、半分ほど飲み物が入ったグラスを指差して言った。

「あたしはまだいいよ」

 注文を確認した店員は、手元の注文用の端末に入力すると、笑顔で言った。

「どうぞごゆっくり」

 男女は、店員が去って行くと、再び続きを話し始めた。

「ハモーラ、ヒル、もう、この基地内で捜索可能な場所はすべて確かめた。それらしい子供は居ない」

「ターレス。俺の方もだ。ハモーラ、保育所には、本当に居ないのか?」

「あの保育所は、しばらく見張って見たけど、見つからない。イスカンダル人の見た目は、ここにいる住民のどれとも違うから、居ればすぐに分かるはずじゃないか」

 ターレスは、腕組みして悩んでいた。彼の仲間たちは、半ば諦め気味だった。

「しかし……。女帝ズォーダーからの命を受けて、俺たちは危険をおかして移民船を降りてここにいる。何とか見つけるまでは、帰れんだろう」

 ヒルは、新たに運ばれて来た酒の入ったグラスを掴むと、一気に半分ほど喉の奥に流し込んだ。

「だがなぁ、さすがに俺も限界だ。こんなガミラス人の変装だって、いつばれるかわからんしな。そろそろ、ここには居なかった……。と報告してもいい頃合いじゃないのか? 帰ろうぜ、本隊に」

 仲間うちの唯一の女性だったハモーラは、大いに悩んでいた。しかし、自分ももう限界だというのは同じ気持ちだった。

「あたしも、それには同意するよ……。だったら、こうしよう。あの保育所に踏み込んで、中を調べよう。それでも見つからなければ、帰還しよう」

 ターレスは、怪訝な表情をしている。

「だが、俺たちが入っても、すぐに怪しまれるかも知れん。そうなって警備に追われるようなことになれば、逃げられない」

 ハモーラは、不本意ながら密かに考えていた案を話した。

「私一人で行く。妊娠して保育所を利用しようと相談に訪れた女……、と言うストーリーだ。二人は、この基地の通信設備を押さえて、密かに近くに待機している味方の艦隊に連絡を付けてくれ」

 ハモーラの見た目は、短髪で筋肉質の体型であり、とても男っぽい雰囲気を醸し出していた。二人の男たちは、彼女のそのような嘘が通用するかどうか、不安げな表情で彼女を値踏みした。

「何だ。何を考えているんだ? 二人とも」

 二人は、ハモーラから目をそらし、酒のグラスを口にしていた。

「そ、そいつはいいアイデアだ」

「艦隊に連絡をつける方は任せてくれ」

 ハモーラは、目を細めて男たちを睨みつけた。

「まあいい……。では、明日、保育所に踏み込んで中を確認する。その結果、子供を発見してもしなくても、ここを出よう。連絡を付けるのは、よろしく頼む」

 

 その夜、新見薫は、自室で藤堂早紀と連絡をとっていた。

「来週に予定していた星系の調査の件、準備が整いましたよ。いつでも、出発出来ます」

 新見は、通信機の小さなスクリーンに向かって頷いた。

「早紀さん、本当にお疲れ様。私たちも、明後日には合流出来るから」

「分かりました。スタッフ一同、真田さんと新見さん……いいえ、薫さんがいらっしゃるのをお待ちしています」

 新見は、苗字ではなく、名前で呼ばれることに、こそばゆい感覚があったが、それを顔に出さないように努力する必要があった。

 そして、早紀は、思い出したように、少し言いにくそうに話を続けた。

「そのう、……お二人の結婚式の件ですが、本当にやらないおつもりですか?」

 新見は、その話に思わず咳き込んだ。

「あ、あぁ。その話?」

「ごめんなさい……。皆で、話してたんですよ。やっぱり、皆で集まってお祝いしたいねって」

 新見は、早紀の顔をまともに見ることが出来なかった。一部の人を除き、真田と新見が結婚したことは、事実だということになっていた。これが、スターシャの娘サーシャを隠す為の隠れ蓑だという本当のことを知っているのは、雪と古代だけだった。建前上、地球から身寄りのない子供を引き取ったことになっている。しかし、保育所を訪れる子供たちやその母親たちには、彼女がサーシャだということを隠すことは出来ないため、澪という彼女のミドルネームを名乗らすことで、定着させることに真田と新見は苦心した。その為に、交代で毎日保育所に通っているのだ。

「い、いいのよ。時が来たら、やるかもしれないけど……。今は、ほら、これから忙しくなるし……」

 少ししどろもどろにはなっていたが、早紀は特に疑いを持たなかった。

「確かにそうですよね……。ああ、でも、調査には、澪ちゃんも連れていくんですよね?」

 早紀は、咄嗟の思い付きで、ムサシ艦内でサプライズパーティーをするのはどうか? と考え始めていた。

「そ、そうね。さすがに仕事だからといって、長期間放ってはおけないから」

 その時、部屋の入口のドアが開く音がした。

「今、帰ったよ」

 そんな声が、入口の方から聞こえていた。新見は、慌てて早紀に言った。

「じゃ、じゃあ、また明日!」

「あ、旦那さんがお帰りですね。では、これで切りますね。失礼します」

 通信は、そこで切れた。

 新見は、立ち上がって真田を迎え入れようとした。真田に手を引かれていたサーシャは、勢いよく部屋に駆け込んで来た。

「薫ママ、ただいま!」

 サーシャは、新見に思いきりぶつかるように抱きついた。相変わらず、子供は元気だと、新見はその勢いに押されていた。

「おかえりなさい。いっぱい遊んでもらった?」

 サーシャは、満面の笑みで、新見に向かって頷いた。

 サーシャにオバサマと呼ばれて、彼女との関係に当初はぎくしゃくしていたが、特に他意はない子供の言うことだと新見が気が付いてからは、関係はとても良好だった。彼女も、スターシャが居ない間守ってくれる大人たちだということを理解してくれているようである。

 そして、新見は、後から部屋に入ってきた真田が、疲れた様子も見せず、元気なのに気が付いた。

「あら。先生も、子供と遊ぶのにはだいぶ慣れたみたいですね」

 真田は、首の後ろに腕を回して、こりをほぐすように首をひねっている。

「どうやらそのようだ。当初のように、疲れきることもなくなったしね」

 真田と新見は、件の偽装結婚の話が出てから、子供のいる夫婦にあてがわれる広い部屋に引っ越していた。同居生活をし始めてから、はや一か月になり、それこそまるで本当の夫婦のような生活を送っていた。

「じゃぁ、晩御飯にしましょうか」

 新見は、部屋に備えられた小型のオムシスを操作して、食事の準備をした。中央の部屋は、リビングとして利用していたので、テーブルに料理を並べてそれぞれが席についた。

「いただきまーす」

 サーシャは、お腹が空いていたのか、もりもりと食べ始めた。

「ところで、新見くん。今度の調査の件だが……」

「あら……? か・お・る、でしょ、センセ?」

 新見は、意地悪くにこりと笑って真田の方を見た。真田は、困ったような顔をしている。

「……新見くん、ここでは、誰も聞いていないのだから、そのように呼ぶ必要は無いのではないかね?」

「でも、だいぶ慣れて来たところじゃありません? 癖をつける為にも、変えないほうがよろしいかと。その方が、論理的だとお思いじゃありません?」

「それはそうだが……」

 新見はにっこりと笑って、真田が何か反論しようとするのを遮った。

「では! もう一度やり直してみましょうか」

 真田は、話が進まないので、仕方なく観念したように言った。

「か……かおる……、こほん。こ、今度の調査の件だが……」

 新見は、サーシャの方を見て言った。

「ねぇねぇ、澪ちゃん。今のどうだった?」

 サーシャは、もぐもぐと食べ物を咀嚼していたのを飲み込んでから言った。

「うーん、三十点!」

 真田は、点数にがっかりとして、話を止めて食事に手を付けた。

 

 しばらくして二人は、寝室でベッドに入ると、小さなサーシャを真ん中にして、両隣で寝ていた。サーシャの小さな寝息が聞こえている。

「澪は……寝たかね?」

「寝ましたね」

 真田は、天井の方を見つめながら言った。

「スターシャだが、ガトランティスに捕まったと言う話、君も聞いたと思うが、困ったことになったね」

 新見は、身体を少し起こして、肘を枕に乗せると、手のひらに頭を乗せた。

「そうですね。澪ちゃんにはまだ伝えて無いんでしょう?」

「ああ……。話さなければならないね。どう話すか、考えておかなければ」

 二人は、そのまましばらく黙り込んだ。暗くライトを落とした部屋には、静かにサーシャの寝息だけが響いていた。このおかしな夫婦もどきの生活にも慣れ、最初こそいろいろ意識していたが、真田の方に気にしている素振りは見られなかった。

 新見は、何となく不満が無いわけでは無かったが、彼の様子は、らしいと言えばらしい感じだった。きっと、本当に夫婦になったとしても、恐らくこんな感じなのだろう。少し残念に思うと同時に、不思議な安心感があった。

 そんなことを、新見が考えていると、ぽつりと真田が言った。

「このまま、スターシャが戻らなかった場合だが……」

 真田の声は、そこで止まった。新見は、天井を眺める彼の話の続きを待った。

「澪を本当に引き取って、ずっと面倒をみても良いな、と考えている。君さえ良ければ、一緒に手伝ってもらいたいんだがね」

 新見は、絶句した。またしても、プロポーズのような言葉に、彼女はまたか、と半ば諦めつつも、少し動揺していた。

 

続く…




注)pixivとハーメルン、及びブログにて同一作品を公開、または公開を予定しています。
注)ヤマト2202の登場人物は、役割を変更して登場しています。
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