宇宙戦艦ヤマト2199 白色彗星帝国の逆襲   作:とも2199

40 / 149
宇宙戦艦ヤマト2202とは別の世界線を歩んだ宇宙戦艦ヤマト2199の続編二次創作小説「白色彗星帝国の逆襲」です。「白色彗星帝国編」、「大使の憂鬱」、「孤独な戦争」、「妄執の亡霊」、「連邦の危機」、「ギャラクシー」の続編になります。


白色彗星帝国の逆襲40 ギャラクシー強襲Part1

 翌日――。

 

 ギャラクシーに密かに潜入していた三人のガトランティスの兵士たちは、朝から行動を開始した。

 ハモーラは、保育所の近くで、子供が連れて来られて集まるのを待っていた。母親や父親に連れられ、ガミラス人や地球人の子供たちが、次々に保育所に入っては、親だけが出てきた。

 ハモーラは、出入する人が途絶えた頃合いを見て、小型の近距離通信機で仲間に連絡をとった。

「ターレス、ヒル。そろそろ中に踏み込む。そっちの首尾はどうだ?」

 ノイズが流れ、中々応答が無い。ハモーラは、じりじりと連絡を待った。艦隊に連絡がついていなければ、いざという時にどうにもならなくなるからだ。

 そうしている間にも、基地内の警備と思われる兵士たちが巡回している姿が遠くに見えた。最近、より一層警備が厳しくなっていた。頻度や人数が明らかに増えている。

「やはり潮時だな……」

 ハモーラは、独り言を口にして、仲間からの連絡を待った。

 そうしてしばらくすると、ようやく通信機に着信があった。

「こちらハモーラ」

「こちらターレス。基地内の人気の無い通信設備の一つの前にいる。そっちの確認が終わったら、すぐに知らせてくれ」

「わかった。では、私も保育所に向かう。そのまま少し待て」

 

 保育所の中には、保育士に混じって雪と西条未来、そして土門竜介がいた。古代からの警備強化の指示を受けて、雪が選抜したメンバーだ。三人は、ここ数日保育士の仕事をして、だいぶ板に付いてきたところであった。

 土門の周りには、常に子供がまとわりついており、かなり好かれているようだった。

「ねぇねぇ、遊ぼう」

「駄目だよ、どもんは今日は僕らと遊んでよ」

「ずるいぞ」

「そっちこそ」

 土門は、エプロンを四人ほどの子供に引っ張られて困り果てていた。

「だ、だったら、皆で出来る何かゲームをしようか」

「えー!」

 真琴は、子どもたちが使う遊び道具の準備をしている途中だったが、土門の姿を目に止めた。

「な……何であんなに子供に好かれてるの? ここに来てまだ数日だっていうのに」

 近くで他の子供の相手をしていた西条は、真琴に言った。

「土門くんって、ほら、ちょっと可愛い感じじゃない? それで優しそうに見えるから好かれてるんだと思うよ」

「わ、私の方が先輩なのに……! ってか、私の方が優しそうじゃん!」

 納得いかないと真琴は、憤慨していた。

 そんな様子を、サーシャを見守っていた新見も気づいて少し笑っていた。そのサーシャは、お姉ちゃん風を吹かせて美雪の面倒を見ている。

「あー、美雪ちゃん、そっちに行っちゃ危ないよ」

「むー! あっち、いくの!」

 サーシャは、別の子と走り回っている翼の後を追おうとしていた美雪を捕まえると、端の方へと連れて行った。

「危ないよー。美雪ちゃん、まだ小さいんだから。それに、男の子って乱暴なんだよ」

 美雪は、不満そうに頬を膨らませている。

 そんな時、保育所の出入口の清掃をしていた雪は、中を恐る恐る覗く一人のガミラス人女性に気が付いた。

「あら、何か御用ですか?」

 ハモーラは、挙動不審だっただろうか、と思い、堂々としなければと気を引き締めた。

「ちょっと、よろしいですか?」

「はい。なんでしょう?」

「実は……。自分の子を預けたいと思っていて、少し中を見学させて欲しいのですが」

 雪は、ハモーラに近づくと、笑顔で言った。

「構いませんよ。お子さん、おいくつ?」

 ハモーラは、それを聞いて、取り敢えずお腹をなでた。

「まだ、あまり目立たないんですけど、お腹の中なんです」

「まあ! そうだったんだ! 分かりました。こちらへどうぞ」

 今の、怪しまれなかっただろうか?

 ハモーラは、内心の不安を隠して、無理矢理笑顔を見せた。

「ありがとうございます」

 雪は、ハモーラを保育室の中へと招き入れた。ハモーラは、中の様子を素早く確認した。しかし、彼女が探すイスカンダル人らしき子供は、やはり見当たらなかった。これまで、外から観察していた子供しかいない。

 ハモーラは、落胆しつつも、少し探ってみることにした。

「ガミラス人だけで無く、他の星の子もいるんですね」

 ハモーラは、翼を見てそう言った。

「ええ、特に制限はありません。ガミラス人が一番多いけど、マゼラン銀河から来た人や、私たち地球人の子もいます。私の子もそこに」

 雪は、美雪を指差した。その美雪は、サーシャが抱っこしている。

「あら、可愛い子ですね。おいくつですか?」

「ありがとう。今年、二歳になるの」

「そうですか……」

 それから、いくつかの質問をしたり、子供たちの様子を監視してみたが、やはり見つかりそうも無い。

 ハモーラは、改めて、どう報告するか考えた。

 既にこの基地を出てしまって、行方不明だ、とするのが妥当だろう。

「案内、ありがとうございました。この子が生まれたら、こちらにお世話になりますから、よろしくお願いしますね」

 雪は、にっこりと彼女に笑顔を見せた。

「ええ、その時はよろしくね」

 その時、サーシャに抱かれていた美雪がぐずりだした。

「あっち、行くの!」

「駄目よ。大人しくしてなさい」

「ねーちゃ、きらい!」

 サーシャは、言うことを聞かない美雪に、少し腹を立てていた。

 見兼ねた雪は、サーシャのそばに行くと、美雪を抱き上げて優しく話した。

「澪ちゃん。大丈夫だよ。心配してくれて、ありがとうね」

「美雪ちゃん、翼くんがお気に入りみたいなの。でも、翼くん、危ないことするから」

 そこに、真琴と新見もやって来た。真琴は、苦笑いしている。

「うーん、うちの子、お父さんに似て、元気すぎるからねぇ。澪ちゃんの懸念も分からなくもないかな」

「え? 僕、何かした?」

 自分の名前が聞こえたので、翼もそこにやって来た。真琴は、彼の両肩を掴んで言った。

「ううん。澪ちゃんが、美雪ちゃんの心配をしてるの」

 新見は、サーシャの頭を撫でて言った。

「澪ちゃん、とっても優しいね。ママも嬉しいかな」

 サーシャは、不満そうにして、少し涙ぐんでいた。

「薫ママ……。私、悪いことしてないよね?」

 新見は、彼女を抱き寄せた。

「うん。とっても良い子よ」

 ハモーラは、他愛も無い子供同士のいざこざだと、そのやり取りを黙って眺めていたが、少しだけ引っ掛かりを感じていた。

 薫ママ……?

 普通、母親にそんな呼び方をするだろうか……?

 色々な星の異星人がいるし、文化の違いかも知れず、ハモーラは疑念を感じるに留めるしか無かった。

 しかし、その疑念を確信に変えることが、その直後に起こった。

 雪の腕の中でぐずっていた美雪が、大きな声で叫んだ。

「ママ! みゆ、ねーちゃ、きらい!」

 雪は、目を丸くしている。

「そんなこと言わないで。澪ちゃんは、美雪のことを心配してくれただけなんだよ」

「みお、ちがう。サーシャねーちゃだもん!」

「な、何言ってるの? ちょっと、向こうで話そっか」

 雪は、慌てて美雪を抱きかかえたまま、部屋を出ていこうとした。

 その時、ハモーラは、澪と呼ばれていた女の子を凝視した。

 偽名……?

 サーシャという言葉の響きは、確かに他のイスカンダル人の名前に似ている。黒い髪だから完全に見逃していたが、彼女を隠す為に染めているのかも知れない。

 そして、今の一言で、周囲の大人たちの慌てようは、彼女の名前を部外者である私に聞かれたことから来るものではないか?

 そうしてハモーラは確信を持ち、軽くにこやかに会釈して、そっと保育所を後にした。

 

「発見した」

 ハモーラは、保育所を出ると、物陰に隠れて通信機で仲間たちに連絡をした。

「何だと?」

「間違いない。変装させていたようだ。保育所の外で帰宅時を待ち受けて、そこを襲う。これまでの観察から、帰宅する時間の見当はついている」

「分かった。では、その時間に艦隊に陽動作戦を展開するように連絡を入れる。俺たちは、武器と脱出手段を確保するから、お前はそのまま見張っていてくれ」

「了解した」

 

 数時間後――。

 

 古代は、基地の司令室の横に設けられた会議室で、北野と島、そしてデスラーやタランらが不在の間ガミラス回遊艦隊を指揮するカーゼット大佐とミーティングを行っていた。

 その会議室に、血相を変えた相原が駆け込んで来た。古代は、怪訝な表情で彼に尋ねた。

「どうした? 相原」

 一同が相原に注目する中、彼は早口でその情報を告げた。

「古代司令! 緊急事態です。多数の艦隊が付近に現れました!」

「艦隊?」

 相原は、即座に言った。

「ガトランティスです!」

 島と北野は、顔を見合わせて驚きを共有していた。ガミラス人のカーゼットは、比較的冷静に尋ねた。

「数は?」

 相原は、真っ青な顔をしている。

「レーダー手が確認中ですが、百隻以上は間違いなく」

 古代は、真剣な表情で、急ぎ足で会議室から司令室に移動した。

 司令室の中央のスクリーンに、レーダーで捉えた多数の光点がギャラクシーの周囲に映っていた。

「……ギャラクシー、及び全艦隊に戦闘配置を通達!」

 古代は、急いでカーゼットの方を向いた。

「カーゼット大佐。ガミラス艦隊に至急迎撃体制をとって頂きたい」

「承知した」

 カーゼットは、静かに頷くと司令室の通信機を使って連絡を始めた。

 古代は、続いて島と北野の方を向いた。

「ヤマトとイセは、ガミラス艦隊の後方で、戦闘配置で待機! 島! 艦載機の発艦準備をして、指示があり次第航空隊を出して欲しい」

「ああ、任せてくれ!」

 島は、頷いて駆け足で司令室を出ていった。そして、古代は続いて北野に言った。

「北野、ヤマトは後方で波動防壁の展開準備をしてくれ。イセと共に、基地の盾になってもらうかもしれない」

「分かりました!」

 部屋を出ようとした北野に、古代は声をかけた。

「待て! 北野!」

 北野は、足を止めて振り返った。

「いつでも、波動砲を撃てる様に準備してくれ。これから、防衛軍司令部に使用許可をもらう」

 北野は、少し青ざめて言った。

「波動砲を使わなければならなくなるとお思いですか?」

 古代は、重々しく頷いた。

「もし、あの機動要塞が現れて、砲撃を受けたとしたら、この基地はひとたまりもない。それを防ぐには、こちらが先に波動砲を使うしかない……!」

 北野は、ごくりとつばを飲み込んだ。

 火星で山南が波動砲を使用した問題については、防衛軍内部の兵士同士でも大きな議論を呼んでいた。山南が撃った波動砲は、地球防衛で敵に直接撃った使用例となったのだ。その是非については、イスカンダルとの約束も踏まえて、本当に必要だったのかどうかがその議論の焦点だった。自分がその立場に置かれた時どうするかというのは、北野も艦長として考えを巡らせていた。

 古代の決断は、それを更に一歩進めて、直接的な被害を被る前に、先制攻撃も辞さないということだ。

「北野。辛い決断を君に迫ることになってすまない。だが、沖田艦長と旅した時から何も変わってはいない。波動砲は、我々の身を守るためにある……! この基地に住む大勢の非戦闘員を守る為なら、躊躇なく使用するべきだ。分かったら、準備を頼む」

「……分かりました!」

 北野は、短く敬礼して、その場を走り去って行った。

 古代は、改めてスクリーンに映る光点を睨んだ。

「基地内に、緊急警報発令!」

 大きな警報音が鳴り響いた。間もなく、基地にいるすべての人が、何か大きな問題が起きたことを認識するだろう。

 古代は、緊張感から、拳を強く握りしめた。

 

続く…




注)pixivとハーメルン、及びブログにて同一作品を公開、または公開を予定しています。
注)ヤマト2202の登場人物は、役割を変更して登場しています。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。