宇宙戦艦ヤマト2199 白色彗星帝国の逆襲   作:とも2199

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宇宙戦艦ヤマト2202とは別の世界線を歩んだ宇宙戦艦ヤマト2199の続編二次創作小説「白色彗星帝国の逆襲」です。「白色彗星帝国編」、「大使の憂鬱」、「孤独な戦争」、「妄執の亡霊」、「連邦の危機」、「ギャラクシー」の続編になります。


白色彗星帝国の逆襲41 ギャラクシー強襲Part2

「こちらヒル。シャトル格納庫で、一機シャトルを確保した。既に要請した艦隊による陽動作戦が始まっている。こっちも始めよう!」

「了解した。こちらはターレスと合流して、武器も入手した。間もなく保育所の中の人間も出てくるだろう。確認次第、決行する」

 基地内には、大きな警報音と共に、ガトランティス艦隊来襲のアナウンスが響いている。

「頼んだぞ、ハモーラ。時間がかかれば、このシャトル格納庫にも人が来るかもしれない。急いでくれ」

「わかってる」

 ハモーラは、通信を切ると、ハンドガンを運んできたターレスの方を見た。

「よくこんな武器が手に入ったな」

「俺が入れ替わったガミラス人の部屋に、以前から置いてあったんだよ」

「なるほど」

「おい、それより出てきたぞ!」

 少し保育所から離れた物陰にいた二人は、中から慌てた様子の保育士やその子供が出てくるのを見守った。

 しばらく眼を皿のようにして様子をうかがっていると、新見が急ぎ足でサーシャの手を引いて中から現れた。

「ターレス、あの黒髪の少女だ!」

「本当か? 事前に聞いていたイスカンダル人と姿形がかなり違うようだが?」

「髪を染めているのさ。間違いない。後を追うぞ。人気が少なくなったところを襲って拉致する」

 

 その時、新見の後から保育所を出てきた西条と土門は、足早に立ち去ろうとする彼女に声をかけた。

「待って、新見さん! 危ないから私たちが護衛でついていきます!」

「そうですよ、僕らと一緒に行きましょう! その為に、警備についていたんですから!」

 新見は立ち止まると、二人を叱責した。

「何を言ってるの! ヤマトは緊急発進するはずよ。あなた達が乗らなくてどうするの!? すぐに、ヤマトに向かいなさい!」

「し、しかし……」

 新見は、真剣な表情で言った。

「私は大丈夫。この子は私が守り抜くから。これでも元軍人ですからね」

 西条と土門は、顔を見合わせて一瞬考えた。

「……わかりました。くれぐれもお気をつけて!」

「すいません、ではご無事で!」

「あなた達もね!」

 両者は、反対方向を目指してそこで別れた。

 雪は、保育所から出てくると、ちょうど立ち去った新見の後ろ姿を確認した。その後ろから、真琴が困り果てた様子で現れた。

「どうしよう、まだ迎えに来ない人がたくさんいて、ここを離れるわけにいかないし……」

 雪は、真剣な表情で真琴に言った。

「ごめんね、真琴さん。私も行かなきゃ。美雪や、残った子供たちのことはお願い」

 真琴は、少し怯えたような素振りをみせていた。

「うん……。分かってるんだけど……。うちの旦那も出撃するよね。やだなあ、大丈夫だよね?」

 本当は不安なのは雪も一緒だった。それでも雪は、真琴の為に気丈にも笑顔を見せた。

「大丈夫! 今までだって、何度もこんな修羅場を私たちは潜ってきたじゃない? 必ず乗り越えられる!」

 雪はそう言うと、真琴に手を振ってから、新見の後を追った。

 

 司令室では、カーゼットが、レーダー手の報告を受けながら、ガミラス艦隊に次々に指示を出していた。

「二時の方向からガトランティスの駆逐艦十隻が接近!」

「こっちの駆逐艦を二時の方向に二十隻向かわせろ!」

「六時の方向から、ガトランティスの駆逐艦と巡洋艦二十隻が接近して来ます!」

「巡洋艦と戦艦で固めろ。ガイペロン級空母から艦載機を緊急発艦!」

「上からガトランティス艦載機多数来ます!」

「基地の砲台で弾幕を張れ! 駆逐艦を急いでそっちへ回せ!」

 一方古代は、基地内の連絡を急いでいた。

「相原、基地内に残っている兵士に、保育所と居住区の守りを固めるように連絡してくれ。基地内に潜んでいるガトランティス兵が動き出す恐れがある!」

「はい。しかし、戦闘中でかなり手薄な状態になってしまっていると思いますよ」

「確かにそうだが……。すまないが、出来るだけ声をかけてかき集めてくれ」

「分かりました」

 古代は、雪に携帯させた、小型の通信機と同じ物を取り出して、彼女に連絡をとってみた。

「……雪。僕だ。サーシャはどうなっている?」

 だが、雪は通信に応答しない。通信機は、小さなノイズを放っているだけだ。古代は、急に不安になって、サーシャの護衛を雪に任せたのを後悔しそうになっていた。

 僕がこんな弱気になっては駄目だ。雪は、勇敢で優秀な士官なのだから……。

 古代は、スクリーンに映るレーダーの光点を睨んでいた。ガトランティス艦隊は、接近したかと思えば、射程圏内に入る寸前で引いていき、再び別の角度から接近するのを繰り返していた。さすがに冷静だったカーゼットも、焦りが見えていた。

「くそ! 奴ら、俺たちをからかっているのか!?」

 カーゼットは、対抗して矢継ぎ早に指示しているが、目まぐるしく動くガトランティス艦隊に翻弄されていた。

 古代は、司令室の中央で、立ったまま戦況を確認していた。

「ゴルバの姿は、今のところ無いか……。相原! 防衛軍司令部の藤堂長官か芹沢長官はまだか!」

 相原も、通信機の調整に躍起になっているところだった。

「上手く繋がりません! もしかしたら、周辺の亜空間リレーに障害が発生しているのかも……」

 それを聞いた古代は、唇を噛んだ。

 司令部に確認が出来なければ、波動砲を使用することが出来ない。地球から遠いこの基地では、このような有事の時のみに検討される許可制度の運用には限界がある。

 許可が無いまま、もしもの時はどうする?

 先ほど、北野に迫った決断は、自分自身の決断でもあるのだ。そして、火星で山南も同じ様に迫られた決断だった。それが自分に出来るのか……?

「……よし。亜空間リレーを、緊急配備しよう。基地から予備の亜空間リレーを発射する。至急準備させてくれ!」

「了解です!」

 

 ヤマトでは、西条と土門が第一艦橋に到着していた。

「二人とも、来てくれたのか! 保育所の方はいいのか?」

 北野は、レーダー手と戦術長の座席にいた乗組員に交代するように指示した。

「はい。雪さんと新見さんにも、ヤマトに行くように言われまして」

「分かった。早速だが、土門。波動砲の発射用意をしてくれ!」

 土門は、席につくなり、立ち上がって艦長席を振り返った。

「い、いきなり、波動砲ですか!?」

 北野自身も、彼の立場なら全く同じ様に思っていただろう。彼は、そんな思いを押し殺して、出来るだけ堂々と振る舞わなければならなかった。

「復唱はどうした!」

 土門は、それを言われると、慌てて座席にもう一度座った。

「は、はい! 波動砲、発射準備を行います! 機関長!」

 機関長の席にいた徳川太助は、冷静に応答した。

「了解。波動砲、エネルギーの充填を開始します」

 北野は、西条にも指示を出した。

「西条さん。レーダーの反応に注意してくれ。もしも、ゴルバが現れたのを発見したら、すぐに報告を頼む」

「は、はい!」

 西条は、ちらりと北野の方を見た。冷静なふりをしているが、艦長席の肘当てを指でとんとんと叩いている。彼が動揺している時の仕草だった。今の指示は、ゴルバが現れたら、波動砲を撃つつもりでいるに違いない。

 彼は、大丈夫だろうか?

 西条は、心の中で彼の不安を思いつつも、自身も別の不安で押しつぶされそうになっていた。

 雪から、サーシャの警備を依頼された時は、真田と新見が夫婦のふりをしてまで、その所在を隠そうとしていたと聞かされ、土門と二人で驚いたものだった。しかし、そうまでして守ろうとしていたにもかかわらず、本当に警備を止めてしまってよかったのかどうか。ガトランティス兵が基地に潜んでいる可能性があるというのなら、基地の兵士が戦闘に借り出されて、手薄な今が正に最も危険な時間だ。

 

「亜空間リレー、射出しました!」

「分かった」

 古代は、報告を受けてレーダーの表示を確かめた。小型の亜空間リレー装置は、恐らくガトランティスにはデブリにしか見えないはずだ。あれが地球までの間に多数ばらまかれており、無事に他のリレーと接続出来れば、この超長距離通信が回復する。

 古代は、寄せては返す波のように、一進一退を繰り返すガトランティス艦を示す多数の光点を見つめた。やはり、基地に攻撃を加える気は無いようだ。ガトランティスのこの行動は陽動作戦で、サーシャの誘拐を目的としている可能性が高い。だからといって、基地防衛を止めるわけにはいかない。火星でも、ユリーシャたちの引き渡しか、亡き者にすると向こうの指揮官が言っていたらしい。ならば、サーシャも同じようにしてもおかしくはない。

 古代は、指揮官としてここを動く訳にもいかず、行動を起こせずにいることに苦痛を感じていた。

 

 その時、雪はわざと新見とサーシャから遅れて後をつけていた。もし、サーシャを狙うガトランティス人が基地に入り込んでいるとしたら、この混乱に乗じて行動を起こすかもしれない。

 居住区の入口付近まで新見たちが辿り着くと、自室でじっとしているようにと、基地全体に指示が出ていた為、人通りもほとんど無い状態になっていた。急遽警備を任されたと思われる地球人の若い兵士二人しか、そこにはいなかった。

 新見は、サーシャの手を引いて彼らに目で合図して、居住区への通路へと入って行った。

「もうちょっとでお部屋だね。お部屋の中なら安全だよ」

「薫ママ、ガトランティスって何? 怖い人たちなの?」

 新見が、それに答えようとした、その時だった。

 背後で二発の銃声が響いた。

 新見は、とっさにサーシャを自分の身体で覆い隠してから振り返った。居住区の入り口にいた、先ほどの二人の地球人の兵士が、床に倒れて呻いている。

 そして、一人のガミラス人のような風貌をした男が、銃を構えたまま近づいて来た。

 新見は、サーシャを自分の背後に隠したまま、後ずさった。サーシャは、彼女の背後でしがみついている。

「あなた……ガトランティス人ね?」

「察しの通り。その子を大人しくこちらに渡せ」

 新見は、男を睨んだまま、じりじりと後ろに下がった。

「なぜ、あなたに私の子を差し出さなければならないの?」

 その男、ターレスは、銃を新見の額に向けて構えた。既に、額にくっつきそうなほど、銃口は近づいていた。

「見え透いた嘘だな。その子は、イスカンダルの女王の子だ……!」

 新見は、それでもとぼけて見せた。

「あら、人違いだわ。間違えて連れ帰ったら、あなた、お仲間にどんな目にあうの?」

 それを聞いたターレスは、明らかに少し動揺の色を見せていた。ガトランティスの文化は分からないが、ひどい罰を受けるとも考えられる。彼は、少し躊躇したことで、すきが出来ていた。

 今だ……!

 新見は、一瞬で足を高く蹴り出すと、男の手から銃を弾き飛ばした。銃は、天井にぶつかり、跳ね返ってターレスの背後の床を滑って行った。

 新見は、踵を返して、サーシャの手を掴むと、居住区の奥へと逃げ込もうとした。しかし、ターレスに、サーシャのもう片方の腕を掴まれてしまった。

「捕まえたぞ!」

 新見は、とっさに体当たりで相手を倒そうとぶつかって行った。しかし、ターレスはそれを軽々と避けてかわした。その為、彼女は勢いで床に倒れ込んだ。

 新見は、振り返って男を決死の表情で睨みつけた。

「あなたなんかに、澪ちゃんは絶対に渡さない!」

 彼女は、立ち上がると、もう一度、男に飛び掛かった。

「……動くな!」

 新見の背後から、何者か女の声がした。

 新見が振り返ると、そこにいたのは、日中保育所を訪ねてきた女だった。

「あなた……!?」

 先ほど、新見が男から弾き飛ばした銃は、今は、彼女の手の中にあった。

 ハモーラは、声を落して言った。

「抵抗をやめて。ターレス、その娘は、イスカンダル人で間違いない。こっちに連れて来て」

「わ、分かった」

 ターレスは、サーシャの手を無理矢理引っ張って引きずった。

「は、はなして!」

「澪ちゃん!」

 その時、ハモーラの背後に何かが押し付けられていた。ハモーラが、わずかに後ろを振り返ると、激しい怒りを溜めた顔をした雪が、銃を押し付けていた。

「……銃を捨てて、その子を離しなさい!」

「くっ……!」

 ハモーラは、苦渋の表情で、ゆっくりと銃から手を離した。雪は、床に落ちた銃を素早く足で、すぐには届かない場所へと蹴った。

「そちらのあなた。その子を離して投降しなさい」

 雪は、銃をハモーラに押し付けたまま、今度はターレスを睨みつけた。

 ターレスは、サーシャを盾にして背後に回ると、彼女の首を締めた。

 新見は、慌てて男に飛びかかろうとしたが、男の手は、今にも首をへし折りそうだった為、思い留まった。

 雪は、ターレスに銃を撃とうとしたが、誤ってサーシャに当たってしまうかも知れず、発砲するのを躊躇した。

「拉致するのが不可能なら、殺してもいいと言われている。それが嫌ならそっちが銃を捨てるんだ」

 雪が動揺しているすきに、今度はハモーラが振り返って雪の両腕を掴んで持ち上げた。

 雪とハモーラはそこで激しくもみ合った。

「はっ、離しなさい!」

「そっちこそ、銃を捨てろ!」

 ターレスは、サーシャの首に更に力を込めた。

「く、くるしい……!」

 サーシャが苦しむ姿を見て、新見はもう一度、飛びかかるべきか焦って考えた。しかし、ターレスの背後に、忍び寄る影を見た彼女は、急にあ然とした表情になっていた。

 それに気が付いたターレスは、少し後ろを振り返ろうとした。しかし、その瞬間、背後からサーシャの首を掴んでいた両手首を掴まれた。万力のような強い力で掴まれた彼は、激しく呻いた。

「あああっ!」

 両手首の骨の折れる音がしたかと思うと、ターレスは、サーシャから離れると、床を転げ回った。

「澪、大丈夫かい?」

 そこにいたのは、全身に何か金属の骨格のような物を装着した真田だった。

「けほっ、けほっ……」

 サーシャは、激しく咳き込んでいた。 

「ターレス!」

 ハモーラは、その騒ぎに、一瞬気を取られていた。雪は、その瞬間を逃さず、彼女の片腕を掴むと、腰を入れて思い切り投げ飛ばした。ハモーラは、空中で体を回転させると、勢い良く床に叩きつけられた。

 そして、床に転がった彼女は、完全に意識を失っていた。

 真田は、床で痛みで転げ回るターレスを、足で思い切り踏みつけた。そうすると、彼も意識を失って、動かなくなった。

「澪ちゃん!」

 新見は、サーシャに駆け寄ると、彼女を強く抱きしめた。

「薫ママ……。私、怖かった……」

 サーシャは、新見の腕の中で泣きじゃくっていた。

「もう大丈夫だから、大丈夫だからね。ごめんね、怖い思いをさせて……」

 新見も安堵して瞳から涙を溢れさせた。

 雪は、真田のそばにやって来ると、その装備を凝視した。

「真田さん、助かりました。いったい、それ何です?」

 真田は、よくぞ聞いてくれたと思っているのか、腕を動かしながら解説を始めた。

「今度の我々の調査で使おうと思ってね、空間騎兵隊で使われているパワードエグゾスケルトンを参考に、強化外骨格の装備を作っておいたんだよ。銃声が聞こえたから、慌ててこれを装着して駆け付けたんだが、間に合って良かった」

 真田は、抱き合う新見とサーシャを気遣って話しかけた。

「新見くん、澪を守ってくれてありがとう。君が時間を稼いでくれなければ、今頃どうなっていたことか……」

 新見は、真田の言葉を聞くと、思わず飛びつく様に、真田の体に抱きついた。

「せ、先生……。私も、怖かったんですよ……」

 サーシャもそこに一緒に抱きついて来た。

「パパ〜!」

 三人は、そのまま抱き合って、互いの無事を確かめ合った。

 雪は、その姿を眺めてぽつりと言った。

「何だか、本当に家族みたい」

 そして、そこでやっと古代から渡された通信機に、着信があるのに気が付いた。通信機を取り出すと、彼女は古代に報告した。

「古代司令。サーシャを襲って来たガトランティス人二人を無力化しました。まだ、他にもいるかも知れないから、このまま私は護衛を続けます」

 古代は、すぐに応答して来た。

「雪! 怪我は無いかい!?」

 雪は、古代の慌てた顔が浮かんで、思わず微笑んだ。

「古代くん……。せっかく、仕事モードで連絡したのに。大丈夫、怪我は無いから、安心して。そっちはどう?」

「今の所、大丈夫だ。だが、ガトランティス人は、やはり潜入していたんだな……。彼らが捕まったことが、向こうが把握したら、今度こそ攻撃して来るかも知れない」

「分かった。あなたも頑張ってね」

「ありがとう!」

 雪は、通信機をしまうとガトランティス人たちの拘束をしていった。

 

「遅いな……」

 シャトル格納庫で待機していたヒルは、そろそろ時間切れだと考えて焦り始めていた。

 

続く…




注)pixivとハーメルン、及びブログにて同一作品を公開、または公開を予定しています。
注)ヤマト2202の登場人物は、役割を変更して登場しています。
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