宇宙戦艦ヤマト2199 白色彗星帝国の逆襲   作:とも2199

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宇宙戦艦ヤマト2202とは別の世界線を歩んだ宇宙戦艦ヤマト2199の続編二次創作小説「白色彗星帝国の逆襲」です。「白色彗星帝国編」、「大使の憂鬱」、「孤独な戦争」、「妄執の亡霊」、「連邦の危機」、「ギャラクシー」の続編になります。


白色彗星帝国の逆襲44 転換点

 その頃――。

 

 桂木透子は、捕らえられていたラスコー級巡洋艦の艦橋で、腰に手を当てて立ち、スクリーンを見つめていた。

 スクリーンには、連絡を受けて救援に駆けつけたと思われる新たなガトランティス艦隊が、遠く映っている。その艦隊は、数こそ百隻規模がいたが、彼らを取り囲む地球艦隊とガミラス艦隊合わせて二百数十隻の艦隊には遠く及ばない。彼らは、双方攻撃する訳でも無く、ただそこで睨み合っている。

「軍は、救援にゴルバも出してくれたようだ。だが、火星で地球艦隊に一撃で撃破されたゴルバが、たかだか一隻いても、役に立つとは思えない」

 艦長ゼールは、透子のそばに来て言った。透子は、薄っすらと笑みを浮かべると、彼を諭すように耳打ちした。

「いいえ。それこそが、脱出のチャンス。そう地球艦隊が動くように仕向ければ、ここを安全に抜け出す機会が生まれるわ」

 彼は彼女にため息混じりに言った。

「君の案に乗ろう。しかし、何故、裏切る気になったのだ?」

 透子は、長い黒髪を翻して小さく笑っている。

「こんな所で死にたく無いわ……。それに、あなた方にも少しは興味があったからよ」

「我々に……?」

 ゼールは、彼女の報告により、艦内に潜入していた地球人二人を捕えることに成功したことで、監視付きで解放することを決めた。彼女をすべて信用した訳では無いが、地球人の行動を理解している彼女を利用しない手は無い、と判断した。

「まあいい。通信士、艦隊に連絡! こちらの作戦を伝える!」

 

「あの……! そこのあなた! 星名は、星名はどうなったの!?」

 ユリーシャは、拘禁室のドアの外にいるガトランティスの兵士に大きな声で叫んでいた。先程から、繰り返しそのようなことをしていたので、彼女の声は、枯れていた。

「ねえ……!」

 相手のガトランティス兵は、ユリーシャを気にしてはいたが、一言も発することは無かった。

「ねえったら、ねえ!」

 そんなユリーシャに、サーシャは、近づいて肩を抱いた。

「少し休んだ方がいいわ、ユリーシャ」

「でもっ!」

 振り返った彼女の顔は、酷い焦燥の色に染められていた。

 サーシャは、優しく彼女を抱きしめると言った。

「大丈夫。彼らの存在を近くに感じるもの。死んではいないと思うわ」

 ユリーシャは、サーシャの胸で泣き始めた。彼女の背を擦りながら、サーシャは考えた。

 桂木透子……。

 彼女は何者なのかしら。

 本当に、彼女は地球人なの……?

 

 少し離れた別の拘禁室では、星名と斉藤が捕らえられていた。斉藤は、酷い怪我を負って意識を失ってベッドで寝ていた。

 星名は、拘禁室のドアの近くに立って、離れた部屋から、星名の名を呼ぶユリーシャの声を聞いていた。

「ユリーシャ……」

 彼は、救出に失敗したことに落胆しつつも、彼女が自分を心配して叫び続けていることに、逆に心配を募らせていた。

 斉藤は、そっと目を開けると、拘禁室のドアの外を眺める星名の姿を目の端で捉えた。斉藤は、力無く声を出した。

「くそう……。奴らを十人は倒したとこまでは覚えているが……。結局、捕まっちまったか……」

 斉藤が気がついたので、星名はドアから離れて斉藤の近くに移動した。

「隊長。大丈夫か?」

 斉藤は、ゆっくりと体を起こすも、体中に痛みがあるようだった。

「いてて……! なあに、このぐらい」

 星名は、彼が頑丈な体をしていることに、少しほっとしていた。

「少し休んだ方がいい。次のチャンスが来た時の為にも」

 斉藤は、体をどうにかベッドの端に起こして座ると、血の乾いた頭の傷を確認していた。

「どうだかな。ま、お前が、冷静なんで安心したよ」

 斉藤は、星名が焦って捜索していた時のことを暗に言っていた。

「まだ、諦めた訳じゃない。全員で、必ずここを脱出しよう」

 星名は、絶望せず、まだチャンスを狙おうと決意していた。だが、桂木透子が裏切ったせいで捕まったことは、彼らも聞かされていた。

 経歴に不審な点があったことと、今回の一件で、更に疑惑は深まっていた。脱出する時には、出来れば彼女も連れて行かなければ、事の真相は掴めないだろう。

 星名は、部屋の中を眺めつつ、次の行動を思案していた。

 

 一方、新たに出現したガトランティス艦隊に背後を取られた形になったバーガー率いるガトランティス残党狩り艦隊は、陣形を変更して背後の敵に対峙しようとしていた。

 戦闘空母ダライアスでは、バーガーが慌ただしく指示を出していた。

「直ちに艦載機を発艦させて周囲を警戒させろ! 奴らがこっちに近づくようなら、攻撃して構わねえ!」

「了解」

 ダライアスの艦長、メルキは、バーガーの指示を艦内に伝達していた。

 艦橋のスクリーンには、空母ミランガルのネレディアと、山南の姿が映っている。

「ネレディア、山南、ちょうど退屈してたとこだったんだ。奴らを血祭りにしてもいいか?」

 ネレディアは、特に表情を変えずに黙っている。彼女は、山南がなんと言うか予想しているようだった。

「ちょっ……。血祭りって……。それは、容認出来ない。向こうは、我々の包囲の外で待機しているだけだ。向こうがこっちを攻撃してくるって言うならいざしらず」

 山南の発言に、バーガーは、いらいらをますます募らせていた。

「どうせ、そう言うと思ってたぜ! テロン人ってのは、どうしてそう逃げ腰なんだ!」

 山南は、子供を諭すように優しく言った。

「バーガー大佐。我々地球人は、先のガミラスとの戦争から学んだんだ。簡単に、戦争なんてするものじゃ無いってね。もちろん、向こうから仕掛けて来るなら話は別だ」

 それを黙って聞いていたネレディアが口を挟んだ。

「奴らには、既に火星で攻撃を受けているではないか」

「そうだ、そうだ!」

 山南は、聞こえないようにため息をついた。

「だからと言って、今は、戦闘状態には無い。戦線をむやみに拡大するような真似はしない。これが、地球連邦防衛軍の、最も基本的な考え方だ」

 バーガーは、自分の背後の方に指を指した。

「あれが見えねえのか? 火星に出たあのでかぶつが、一隻来てるぞ。あれが先に攻撃を仕掛けて来るのを待っていたら、大勢やられちまうぞ!」

 山南は、そこで少し真剣な表情になった。

「だからこそだ。既に、地球を出る前に、人質救出を妨げる脅威を確認した場合は、波動砲の使用許可ももらっている。敵さんが、攻撃しようとしたことが分かったら、こっちも黙っちゃいないさ」

 バーガーは、山南の自信に満ちた表情を見て、少し気持ちを抑えた。

「分かった……。そうしたら、あれの始末は、あんたに任せる。あんたの船の拡散波動砲とやらで、一撃で奴らを全滅させるのを期待してるぜ」

 山南は、再びため息をついた。

「……拡散モードを使うと言う事は、もはや戦争と言うより虐殺だよ。そんな簡単には使えない。そこは、理解して欲しいもんだな」

 

 同じ頃、スカラゲック海峡星団――。

 

 ガルマン帝国北部方面軍第一艦隊の艦隊司令官ウォーゲン准将は、スカラゲック海峡星団内のダリウス星系の外で、艦隊旗艦である高速巡洋艦の作戦指揮所にいた。

 スクリーンには、ダリウス星系の特殊な四重連星の星系図が映し出されていた。それぞれの恒星ダリウス1からダリウス4が、互いに公転しながら、それぞれが抱える惑星を従えて、複雑な公転軌道を描いている。

 そこでは、重力場と太陽風が複雑に干渉しあい、レーダーも正常に機能しない宙域がそこかしこに存在していた。

「第一艦隊から、第四艦隊、それぞれ星系内に潜んだと思われるボラー連邦艦隊の捜索を開始しました」

 報告を受けたウォーゲンは、スクリーンに映る、それぞれの艦隊の位置を示す光点を、眼光も鋭く見つめていた。既に、第一艦隊だけでなく、第二艦隊から第四艦隊までの艦隊を再編して、敵艦隊撃滅の為にウォーゲンの指揮下に置いていた。レーダーが正常に機能しないこの星系は、一万隻からなる敵艦隊を隠すのにはうってつけの場所だった。艦隊はこの星系内をくまなく捜索して、発見次第戦闘を始める事になっている。

 ダリウス1は、星系外から観測しても、その大きな青白い輝きが肉眼で見えている。恐らく、そう遠くない将来、この星系は白色矮星と化したダリウス1に飲み込まれて消滅してしまうだろう。既に、大きく肥大化したダリウス1は、自身の抱えていた惑星たちの大半を飲み込み、ダリウス2をも飲み込もうとしているようである。

「罠が仕掛けられている可能性も否定できない。各艦隊の指揮官には、くれぐれも注意するように伝えてくれ。おかしな動きがあれば、躊躇なく撤退する!」

「承知しました」

 ウォーゲンは、慎重かつ、大胆な作戦を信条とする指揮官だった。北部艦隊司令のグスタフも、そんな彼を信頼して、彼に二万五千隻の大艦隊を彼に任せたのだった。

  

 その頃、ギャラクシーでは――。

 

「敵艦隊、撤退して行きます!」

 ギャラクシーの司令室にいた古代は、スクリーンに映るガトランティス艦隊を示す光点が、遠ざかって行くのを確認していた。

「どうやら、守りきれたな……」

 古代は、ほっとして、同じく司令室で戦闘の指揮をとっていたカーゼットに言った。

「カーゼット大佐。ありがとうございました」

 カーゼットは、にやりと笑って古代の方を向いた。

「どうにかなったな。これから、我々は大破した艦艇の救助活動を始める。イセとヤマトにも手伝ってもらえるかね?」

 古代は、彼と同じように笑顔で言った。

「もちろんです」

 古代は、戦闘に出ていた艦隊に連絡をするように相原に指示をした。そして、スクリーンには、島と北野、そして真田が映っていた。

「皆、ご苦労だった。戦闘が終わったばかりですまないが、これから、ガミラス回遊艦隊と共に、大破した艦艇からの救助活動を始めてほしい。こっちは、佐渡先生に頼んで怪我人を治療する臨時の治療所を設置しておく」

 島は、笑顔でおどけて言った。

「お前、人使い荒いな。分かったぜ、司令官殿」

 北野は、ほっとした様子だった。

「ヤマトは、もう波動砲の発射用意を解除してもいいでしょうか?」

 古代は、少しだけ思案したが、レーダースクリーンに映るガトランティス艦隊の光点は、まだわずかに残っている。

「あと、五分待ってくれ。ガトランティス艦隊がここからいなくなるのを確認してから解除したい」

「分かりました」

 真田は、サーシャを抱き上げて、笑顔を見せていた。

「志郎パパ、かっこ良かったよ」

「そうかね?」

 そうサーシャに言われた真田は、まんざらても無さそうだった。真田の横には、雪や新見、そして徳川が集まって、皆笑顔を見せていた。

「ムサシの波動防壁は、あと二分は保つだろう。限界までこのまま維持しておく」

 古代も、サーシャが再び真田に抱きつく様子を笑顔で見守った。

「お願いします」

 その時だった。古代は、レーダースクリーンに、新たな光点が近づいて来るのに気がついた。

「あれは……?」

 

 ギャラクシーから撤退して離れて行くガトランティス艦隊を横目に、その巨大な艦は、逆に近づいて来ていた。

 機動要塞ゴルバは、その威容を誇示しつつ、更にギャラクシーへと接近して行った。

 

続く…




注)pixivとハーメルン、及びブログにて同一作品を公開、または公開を予定しています。
注)ヤマト2202の登場人物は、役割を変更して登場しています。
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