宇宙戦艦ヤマト2199 白色彗星帝国の逆襲   作:とも2199

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宇宙戦艦ヤマト2202とは別の世界線を歩んだ宇宙戦艦ヤマト2199の続編二次創作小説「白色彗星帝国の逆襲」です。「白色彗星帝国編」、「大使の憂鬱」、「孤独な戦争」、「妄執の亡霊」、「連邦の危機」、「ギャラクシー」の続編になります。


白色彗星帝国の逆襲45 撤退

「ギャラクシーヘ機動要塞ゴルバと思われる物体が接近中。あと五分で射程圏内に到達します!」

 その報告は、そこにいた全員に衝撃を与えた。

「古代……。ムサシの波動防壁は、あと一分で消失する」

 真田の警告に、古代は「分かっています」と言うように頷きで返した。そして彼は、相原の方を見た。その相原は、残念そうに首を振っている。

 古代は、まだスクリーンに映っていた北野に真剣な表情で言った。

「北野……。防衛軍司令部に波動砲の使用許可の確認は取れていない状況だ。しかし、もはや許可を待っている場合では無いと判断した。ゴルバの侵入方向へ艦を回してくれ」

 北野は、少しだけ青ざめている。古代も、その命令を口にするのを少しだけためらった。しかし、そのようなためらいは、ギャラクシーにいるすべての人の命を危険に晒す事になる。ためらうべきではないと、古代は決意を固めた。

「……北野、僕の責任に於いて、正式に許可を出す。波動砲を使おう!」

 北野は、古代のためらいを感じ取っていた。許可なく現場の判断で波動砲を使用することは、地球連邦政府が決定した法をおかすことになるだけでなく、スターシャと沖田艦長が交わした約束を反故にすることにもなるのだ。だからと言って、そんなルールを優先すれば、大勢の非戦闘員を巻き込んだ犠牲者が出てしまう。

 北野は、古代の苦渋の決断を胸に、敬礼をして返答した。

「分かりました。これよりヤマトは、波動砲の砲撃位置に移動して、敵機動要塞を撃破します」

 古代も同じように敬礼を返した。

「頼んだぞ」

 古代は、そこでスクリーンに映る、真田に抱かれている小さなサーシャが、自分をじっと見つめているのに気づいた。彼女の視線は、これから大人たちが、何かいけないことをするのを知っているかのようだった。

「オジサマ……?」

 古代は、少し無理をして優しい表情でサーシャの方を見た。

「なんだい?」

 サーシャは、虚ろな目つきで古代を見つめている。

「みんなを守ろうと頑張っているんだよね?」

「……そうだよ」

「じゃあ、何でそんなに辛そうな顔をしてるの?」

 古代は、心の中を見透かされているように感じていた。まるで、誰かに叱られるような、そんな気持ちが一瞬胸の内を渦巻いた。情けない表情を見せてはいけないと、古代は奥歯をぐっと噛み締めた。

「……これから使う波動砲という武器は、厳重に使用を管理されているんだ。絶対に、勝手に使ってはいけないって言われてる。でも、今使わなきゃ、みんなを守ることが出来ないんだ」

 サーシャは、目を閉じて祈るように言った。

「分かった……。なら、絶対にみんなを守ってね。オジサマ」

 古代は、背中にのしかかっていた重しが、少しだけ軽くなったように感じていた。スターシャの娘、サーシャの言葉は、彼にほんの少し勇気を与えてくれていた。

「……もちろんだ。ありがとう」

 その頃ヤマトは、艦を動かして、ギャラクシーを背に、ゴルバと相対する位置に移動すると、ゆっくりと回頭した。

 ヤマトの艦内は、再び波動砲の発射準備を行っていた。

 レーダー席の西条は、刻々と近づいてくるゴルバの位置を報告していた。

「敵、機動要塞、あと二分で射程圏内に入ります!」

 北野は、彼女と顔を見合わせて頷き返した。そして、続いて徳川に声を掛けた。

「徳川機関長?」

 徳川太助は、自席のパネルを操作して報告した。

「波動砲の発射準備は、既に完了しています。エネルギー充填、百二十パーセントのまま維持しています」

「よし、土門、二分後に敵艦が射程圏に到達した瞬間に、波動砲発射だ。照準を合わせ、カウントダウンを始めてくれ!」

「了解……! ターゲットスコープ、オープン」

 土門は、戦術長席のスイッチを操作して、波動砲のトリガーと、ターゲットスコープを目の前に露出させた。

 その土門の手は、緊張から少し震えていた。

 しかし、その時西条は、新たな発見をして、青ざめていた。

「北野くん……!」

 西条の動揺した声を聞いた北野は、彼女の方へ注意を向けた。

「もう一隻、ゴルバと思われる物体を、長距離レーダーで探知しました。別の方向から接近してきます……!」

「な、何だって!?」

 それは、ギャラクシーでも同じように古代に報告があった。

「何? もう、一隻……!?」

 古代は、恐れていたことが起こってしまったと青ざめていた。彼は、スクリーンに映る真田と雪の方を見た。

「真田さん……!」

 真田は、冷静に頷いた。

「古代、敵は、やはり波動砲の弱点を知っている。一度使用したら、すぐには連射出来ないという、弱点を……」

 その時、雪は古代の心の内を慮っていた。万策尽きたと考えているに違いない。彼女は、そっとサーシャを見つめたが、以前、スターシャやユリーシャと共に起こした奇跡を、この子に期待するというのは、酷と言うものだ。

 ムサシのスクリーンに映る古代は、目を閉じてどうするべきか、必死に考えているのが手にとるようにわかる。

「古代くん……」

 そして、古代は決意したように目を開けた。

「北野を、至急もう一度、呼び出してくれ!」

 ギャラクシーの司令室のスクリーンには、再び北野が映し出された。

「古代司令……」

 北野も、既にこの事態が何を意味するか悟っていた。

「北野、そろそろ波動防壁をもう一度使用することは可能か?」

「はい。もう使えます」

「島、イセの方はどうだ?」

「ああ、こっちも使えるはずだ」

「分かった……」

 古代は、全員を見回してから、その決断を口にした。

「二隻の敵機動要塞の出現により、この基地を、これ以上防衛するのは不可能と判断した。これより、ギャラクシー基地を捨て、全員でここを脱出する! ヤマトとイセは、波動防壁を展開して再び盾となり、時間を稼いでくれ。ムサシと、ガミラス艦隊の輸送船に、ギャラクシーから脱出する人員を乗せてほしい。完了次第、ワープでここから退避する!」

 その決断に、カーゼットは、古代に近寄って猛然と抗議した。

「な、何を言うか! この基地は、デスラー総統の居城! ここを捨てて脱出するなどあり得ん!」

 古代は、冷静に彼に諭した。

「カーゼット大佐。お気持ちは分かります。しかし、私は、タラン閣下から、ここの司令官を任されております。それに、タラン閣下が不在の今、ガミラス回遊艦隊は、私の指揮下にある。私の指示は、タラン閣下のご命令も同然のはず! あなたも、それは理解していると思いましたが……?」

 カーゼットは、突然の古代の決然とした反応に、少し気後れしていた。

「しかし……!」

 古代は、少しトーンを落として優しく言った。

「ここには、ガミラスやマゼラン銀河から移住した、大勢の非戦闘員も居住しています。そのような犠牲は、タラン閣下も、デスラー総統も望んではいないはず。どうか、分かって頂きたい」

 古代は、彼に頭を下げた。

 カーゼットも、それが彼らの精一杯の謝罪を示すジェスチャーだということは知っていた。そして古代も、司令官自らの謝罪に、彼がやむを得ず従ったという大義名分が部下に対して立つことを知っていた。血気盛んなガミラス軍人に対して、精一杯の体面を保てるように手を差し伸べたのだ。

「そ、そこまで言うのなら、仕方が無い。分かった。全艦隊に、脱出準備を指示する」

「ありがとうございます」

 雪は、話の区切りがついた所で割り込んで言った。

「古代くん、美雪が保育所に残っているの!」

 古代は、頷いた。

「大丈夫。僕が連れて行くから」

 古代は、改めて、もう一度指示を発した。

「基地に住む全員に、脱出準備を通達!」

 

 ヤマトでは、北野が古代の指示を受けて、新たな命令を発していた。

「波動砲の発射準備は、中止する! 直ちに、波動防壁を展開して、ギャラクシーの盾になる! 急げ!」

 桐生美影は、その命令に慌てていた。

「か、艦長。ヤマトとイセが、別々の位置で一隻づつ波動防壁を展開するのでは、基地全体を守るのは無理です!」

「全体が守れなくてもいい! 出来るだけ、ギャラクシーの中央部の居住区に命中しないように位置取りをするぞ! 太田、出来るか!?」

「は、はい! やってみます!」

 

 そして、同じようにイセが別の方向から接近するゴルバと相対する位置につき、それぞれ波動防壁の展開を開始した。

 その数十秒後、ゴルバからの砲撃が開始された。

 ゴルバが放った大口径の砲火は、ヤマトとイセに命中して跳ね返したが、基地の上部と下部に命中し、大爆発を起こしていた。

「うわあ!」

 基地の内部は、激しく揺れていた。司令室にいた古代も、床に転がる羽目になっていた。

 古代は、転がった際に頭をぶつけて、血が流れていた。しかし、それを気にしている暇は無く、彼は無理矢理体を起こすと、そこにいたみんなに声を掛けた。

「司令室の人員も、直ちに避難! 宇宙港へのゲートに、住民を誘導してくれ!」

「はっ、はい!」

 同じように床に倒れていた相原は、立ち上がって、率先して他の人員を連れて、すぐに司令室を出ていった。

 だが、カーゼットは、まだそこを出ていこうとしていない。

「カーゼット大佐、あなたも脱出するんだ!」

「あなたがまだ行かないのに、私が先に行くわけにはいかない」

「……なら、僕の手伝いをしてくれないか?」

「手伝い?」

「保育所の子供たちが心配だ。一緒に避難を手伝って欲しい」

「保育所か……!分かった」

 

 二人は、揺れる基地に足を取られながらも、走って保育所へと急いだ。

 ようやく保育所の前に到着すると、そこでは、佐渡が怒号を浴びせてきた。

「こら! 古代! お前、な~にをやっとるんだ! 子どもたちを殺す気か!?」

「す、すみません! 今から、この基地から子どもたちを連れて脱出します。佐渡先生も手伝って下さい!」

 怒りを顕にする佐渡を横目に、古代とカーゼットは急ぎ足で中に入って行った。

 中に入ると、真琴と、残っていたガミラス人の保育士が、小さな子どもたちを散歩用のカートに乗せようとしていた。

「あっ、古代さん! いいところに!」

「真琴さん、大変なことになってしまって申し訳ありません! 僕らも手伝うので、今すぐ脱出しましょう!」

 古代の足元には、美雪が勢いよくぶつかってきた。

「パパ〜!」

「美雪! 無事だったか! 良かった……」

 古代は、彼女をひしと抱きしめたが、再び大きな揺れが起こった。しかし、古代の不安をよそに、美雪はけらけらと笑っていた。

「おも、しろい!」

 古代は、太い神経をしている美雪に暫しあ然としたが、慌てて彼女を先程のカートに乗せた。美雪は、不安がって泣いている子どもたちを尻目にけらけらと笑っている。

「誰に似たんだろう。僕か? いやあ……これは、雪の方だな……」

 

 それから暫くして、ギャラクシーに接舷していたムサシとガミラスの輸送船は、ロックを解除して、少しづつ離れていった。

 真田は、ムサシの第一艦橋から、他の艦へと連絡をした。

「基地の住民は、全員乗せた。これより、ムサシはこの宙域からの脱出ルートに移動する。ガミラス艦隊の護衛をお願いしたい」

 そう話している間にも、古代が美雪を抱いて第一艦橋に現れた。

「古代くん! 美雪!」

 雪は、席を立つと、小走りに古代のそばに近寄った。

「ママ〜」

 古代から美雪が体を伸ばしたので、それを雪が受け取った。

「無事で良かった、美雪」

「真琴さんや翼くんも一緒にムサシに連れてきた。誰一人、残った者はいないはずだ」

 雪は、古代の体も抱きしめた。

「お疲れ様、……あなた」

「君の方こそ……。無理をさせてすまなかった」

 真田は、二人に近づくと、済まなそうに言った。

「家族の無事を確かめ合っている所を申し訳ないが、ここから脱出する作業を進めたい」

 古代は、雪と美雪から離れると、真剣な表情になった。

「そうですね。真田さん、ゴルバの砲撃の死角をついて、一気に加速して脱出させて下さい」

 真田は、微笑して両腕で周りを指し示した。

「古代、周りをよく見てみるんだ」

 古代は、真田が指し示す第一艦橋の様子を見回した。

 補助航海士の座席には、旧型のアナライザー、AUO5が操艦を行っていた。そして、レーダー手の座席のそばには、雪と美雪の姿があった。更には、技術課の座席には、新見薫が。機関長の席には、にこにこと美雪に愛想笑いを向けておどけている徳川彦左衛門がいた。

 一緒にギャラクシーから脱出してきた相原は、いつの間にか通信士の席に陣取って、既にあちこちに連絡をとっているようだった。

 古代は、その光景に、思わず笑いだしてしまっていた。

「こ、これって……。まるで、イスカンダルへ行った時のヤマトに帰って来たみたいだ」

 真田は、最後に艦長席に行くように促した。

「この基地の最高司令官は君だ。そして、今、この船の最上位の階級の軍人は君だ。君が、ムサシの指揮をとってくれ」

 古代は、それには躊躇した。

「し、しかし、この船は、科学技術省所属の非武装の科学実験艦です。真田さんか、ギャラクシーから一緒に脱出した藤堂早紀さんが指揮をとるべきです」

 そこへ、徳川が古代を諭すように言った。

「何を馬鹿なことを言っておるんじゃ! この戦闘のさなかに、軍の人間がやらなくてどうする!」

 古代は、それでも躊躇していた。

「し、しかし……」

 真田は、古代の背を押して、渋る彼を艦長席に歩かせた。

「真田さん……!」

「古代。この船は、ヤマトの改装で取り外したパーツから出来ている。そこの艦長席だって、あの時、沖田艦長が座っていた座席そのものさ。今、沖田艦長がここにいたら、何と言うと思うかね?」

 そう言われて、古代は、艦長席を凝視した。確かに、かなりくたびれて傷も残るその座席は、あの時の物に違いなかった。古代の脳裏には、あのイスカンダルの航海の時の沖田が蘇っていた。

 

 古代、お前が指揮をとれ。

 し、しかし……。

 復唱はどうした!

 は、はい……!

 

 自然と、そんな風に怒鳴られている自分の姿が思い浮かんでいた。

 確かに、この非常時に、つまらない遠慮などしている姿を見たら、こっ酷く怒られるに違いない。

 古代は、真田の顔を見て頷いた。

「分かりました。それでは、ムサシ艦長代理の任を務めさせて頂きます」

 雪が、真田と新見が、そして徳川と相原が、持ち場は任せろと言うように頷いている。古代は、不思議な高揚感の中、艦長席に腰を据えた。そして、すぐに相原に指示をした。

「相原、島と北野に、ムサシとガミラス回遊艦隊が、ギャラクシーから十分に距離を取るのを確認した後、彼らも我々と同じ方面に脱出するように伝えてくれ」

 相原は、嬉々として返答した。

「了解です、艦長!」

 続いて、雪にも指示を出した。

「雪、長距離レーダーで、我々の脱出方向の周囲に、敵艦隊がいないか警戒してくれ」

「はい、艦長!」

 雪は、美雪を膝に乗せて、レーダー席に一緒に座った。

「徳川機関長、補助エンジン出力二分の一で進み、合図したら波動エンジンの全力運転。そして、その後はワープに備えて下さい」

「了解じゃ」

 最後に、古代はアナライザーに言った。

「アナライザー、徳川機関長と連携して、船を動かしてくれ。出来るか?」

 アナライザーは、頭だけを後ろに回した。

「ハイ。トクニ問題アリマセン」

 古代は、最後に技術課の座席に移動した真田とサーシャ、そして新見の方に頷いた。そして、前方を向くと、その命令を発した。

「ムサシ、二時方向へ向け発進……!」

「了解、ムサシ、発進シマス」

 補助エンジンを吹かしたムサシは、ゆっくりと、そして確実にギャラクシーを離れて行った。その周りを、ガミラスの民間人を乗せた輸送船と、ガミラス艦隊が共に行動していた。

 ムサシは、波動エンジンを咆哮させると、一気に加速して行った。背後では、ヤマトとイセも、遂にギャラクシーを離れて急速に加速を始めていた。

「ワープ十秒マエ。カウントダウンヲ開始シマス!」

 ムサシの天井のスクリーンには、後部の映像が映っていた。

 ギャラクシーは、二隻のゴルバの砲撃を受けて、巨大な火の玉と化していた。その光は、退避しようと先を急ぐ艦隊を明るく照らしていた。

「我々の家が……!」

 相原の寂しそうな声が、静まり返った第一艦橋に響いていた。

 真田は、それに努めて冷静に返した。

「確かに、もう、長く住んだあの基地が失われるのは、私も残念だ。だが、生きてさえいれば、基地はまた作ればいい。我々は、まずは何としても生き延びよう」

 相原はもちろん、古代も、雪も徳川も、そして新見とサーシャも、そんな真田の言葉を噛み締めていた。

 古代は、そんなしんみりした空気を諌める為に口を開いた。

「行こう。真田さんの言う通りだ。基地が失われたのは、もはや仕方が無いことだ。まずは、我々の安全を確保する為にも、山南さんの第二艦隊と合流しよう。アナライザー、ワープを開始してくれ。然る後に、第二艦隊に向かうコースをとってくれ」

「了解シマシタ」

 ギャラクシーを脱出した艦隊は、次々とワープを開始して、その宙域を去って行った。

 

続く…




注)pixivとハーメルン、及びブログにて同一作品を公開、または公開を予定しています。
注)ヤマト2202の登場人物は、役割を変更して登場しています。
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