宇宙戦艦ヤマト2199 白色彗星帝国の逆襲   作:とも2199

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宇宙戦艦ヤマト2202とは別の世界線を歩んだ宇宙戦艦ヤマト2199の続編二次創作小説「白色彗星帝国の逆襲」です。「白色彗星帝国編」、「大使の憂鬱」、「孤独な戦争」、「妄執の亡霊」、「連邦の危機」、「ギャラクシー」の続編になります。


白色彗星帝国の逆襲46 間隙を縫って

 一方、その頃――。

 

「敵、機動要塞の武器システム起動を探知!」

「望遠カメラにより目視確認! 機動要塞は、砲門を一門開口しています!」

「何だと!?」

 バーガーは、応援に駆けつけたと思われるガトランティス艦隊の中の一隻、ゴルバの動きを探知した情報に反応していた。バーガーの座乗する空母ダライアスでは、通信を切らずに山南とネレディアがまだスクリーンに映っている。

「山南! 言わんこっちゃねえ! 奴ら、攻撃準備を始めたぞ!」

 レーダーに捉えられたガトランティス艦隊は、ゴルバを守るようにその周囲を固めていたが、射線を確保する為か、陣形の変更を始めていた。

「撃たれる前に、こっちから攻撃を加えるぞ! 艦隊に通達!」

 ネレディアは、黙って山南の反応をうかがっている。

 その山南は、軍帽を取ると、額の汗を拭っている。

「……バーガー大佐、待ち給え」

 バーガーは、怒りを顕にしている。

「いい加減にしねえか! 黙ってりゃあ、俺達がまずはやられるって言ってんだよ!」

 山南は、帽子を被り直して、いつもの飄々とした雰囲気を消し、眼光も鋭く言った。

「波動砲の発射準備を行う!」

 バーガーは、「おっ」と言うように、少し驚いていた。

「何だよ、やっとやる気になったのかよ」

 山南は、バーガーを無視して艦内の乗員に指示を出した。

「南部、直ちに波動砲の発射用意にかかれ!」

「了解!」

 南部は、嬉々として準備を始めた。

 山南は、バーガーを睨みつけて言った。

「俺だって、黙ってやられるのを待つ気はないさ。バーガー大佐! アンドロメダの前を開けるんだ! 波動砲の射線から、君たちの艦隊をどけてくれ!」

 ネレディアも、にやりと笑っている。

「フォムト。やっと、面白くなってきたな」

 山南は、憮然とした表情になった。

「面白い? 冗談じゃない! 俺たち地球人は、波動砲なんて使うのは、これっぽっちも望んじゃいない。だが、君たちの艦隊に甚大な被害が出るのが分かっているこの状況で、やらない訳には行かないと言うだけだ。さあ、早くどいてくれ!」

 バーガーは、それでも口角を上げている。

「いいぜ、お手並みを拝見させてもらうぜ。全艦隊に通達! アンドロメダの前を開けろ!」

 バーガー率いるガトランティスの残党狩り艦隊の一部は、陣形を変更して、波動砲の射線を空けようと移動を始めた。

 そして、ガトランティス側も、ゴルバが移動を開始して、射程圏内に入ろうと前に進み始めていた。

 山南は、矢継ぎ早に指示を出した。

「佐藤、全艦隊に通達! アンドロメダは、敵、機動要塞撃破の為、これから波動砲を使用する!」

「了解です! 第二艦隊及び、北米第七艦隊全艦に連絡します」

「仲村航海長! アンドロメダを艦隊の前に出せ! ゴルバを射程圏内に捉えるんだ」

「了解です。よーそろー!」

 南部は、波動砲の発射準備を進めながら、機関長の海原に声をかけた。

「海原、状況報告を頼む」

「波動エンジン内、圧力上昇中。エネルギー充填、八十パーセント。艦首波動砲への回路開きます」

 

 その時、ユリーシャたちが捉えられているラスコー級巡洋艦で、桂木透子はレーダー手の座席に近寄って、彼が捉えた艦隊配置を見つめていた。

「ゼール艦長。ほら、見てご覧なさい」

 ゼールは、透子のそばにきて、レーダーの表示を確かめていた。

「言ったでしょう? ここから逃げ出すチャンスが来るって」

 レーダーの表示は、地球とガミラス艦隊の間に、まっすぐ一直線の隙間が出来ていることを示していた。その隙間は、彼らの支援要請を受けてやって来たガトランティス艦隊に向けて続いている。

「確かに、君の作戦通り、ゴルバが砲撃する可能性を示しただけで、地球艦隊は波動砲の発射用意を始めたようだ」

 透子は、レーダーの表示の、その隙間を指でなぞった。

「そう。ここが私たちの唯一の脱出路。どうなさる? 艦長。私を信じる気になったかしら?」

 ゼールは、透子の瞳を覗き込んだ。二人はいっ時見つめ合って、相手の心の内を探った。

 ゼールは、目を反らすと、航海士の方へ命令を発した。

「エンジン始動! 艦をこの隙間に向けて発進させろ!」

 ラスコー級巡洋艦は、エンジンを始動すると、少しづつ、その隙間へと移動し始めた。

 

「ターゲットスコープ、オープン!」

 南部は、ターゲットスコープの明度を調整して、敵を捉えようとしていた。

「な、何だ? 波動砲の射線に、ガトランティス艦が!」

 山南は、その報告を受けて、慌ててレーダー手に尋ねた。

「橋本! 射線上に移動した艦は、どの艦だ!?」

 橋本は、レーダーを操作してその艦がどの艦かを確認した。

「あれは……。イスカンダル人を拉致した艦です!」

 山南は、敵の目的を、その瞬間に悟った。

「いかん! バーガー大佐にすぐに知らせてくれ! 人質を乗せた艦が逃げる気だ!」

 しかし、その時、既にラスコー級巡洋艦は、エンジンを全開にして、バーガーの艦隊の中央の隙間に突っ込んで行った。そして、同じ艦隊の残りの十五隻も、ラスコー級巡洋艦の後ろを、数珠繋ぎで加速して行った。

「何!?」

 バーガーが、山南の報告を聞いている最中にも、空母ダライアスの艦橋の窓から、高速で移動するガトランティス艦隊を目視で捉えていた。

「ふざけんな! 奴らを逃がすんじゃ無い! 攻撃しろ!」

 ガミラス艦隊は、遅れて砲撃しようとした。

 しかし、艦隊の中央の隙間をぬって突破しようとするガトランティス艦隊を攻撃すれば、味方に当たる可能性があった。

 艦長メルキは、バーガーに大声で言った。

「だめです、バーガー大佐! 攻撃できません!」

「ばかやろう! だったら、艦を移動させろ! 同士打ちにならないようにするんだ! 他の艦にもすぐに連絡しろ!」

 

「ワープ可能な速度に間もなく達します。あと、十秒、九、八、七……」

 ゼールは、透子にそっと言った。

「桂木さん。あなたに感謝する。本隊に戻ったら、ぜひ、女帝ズォーダーに会わせたい」

 透子は、薄く笑っていた。

「女帝……。 ズォーダーの名を名乗るその方はどなた?」

 ゼールは、簡単にだけ説明した。

「本名は、カミラ様という。ガミラスとの戦争で行方不明になった、ズォーダー大帝の隠し子を育てたのだそうだ。上の方が、なぜそれを信じて指導者に据えたのかは、私のようないち士官には、わからんがね」

 透子は、不思議そうな表情でそれを聞いていた。

「大帝に、隠し子……。そう。とても、興味深いわ。もっと詳しく教えてくださる?」

「ここから出て、安全なところに行ってからな……。よし、ワープを開始しろ!」

 ゼールのその命令で、ラスコー級巡洋艦はワープした。そして、その宙域をまんまと逃げ出したのだった。

 透子は、ワープ中の歪んだ艦内の様子を見ないように目を閉じていた。

「隠し子……ね。ふふふ……」

 透子は、声を殺して笑っていた。

 

「何て、こった!」

 バーガーは、艦橋にあった自分の座席を力一杯蹴った。

「バーガー司令! ガトランティス艦隊は、全艦ワープしてこの宙域を去って行きます!」

「ばかな、新しく来た奴らもか!」

「そうです!」

 バーガーは、怒りを通り越して半ば呆れていた。

「スクリーンに、ネレディアと山南を出してくれ」

「はっ」

 スクリーンには、すぐにその二人が呼び出されていた。

 バーガーは、腕組みして、憮然とした表情で言った。

「やられたぜ」

「ああ、まったくだ」

 山南とバーガーは、落胆した様子で話している。ネレディアは、ため息をついて言った。

「私は……。更に追跡を続けたいのだが」

 山南は、がっかりした顔で彼女に言った。

「そいつは、無理だ。この先は、ガルマン帝国領だ。そして、少し進めばもうボラー連邦領内だよ。この先に進めば、俺たちもただでは帰れない」

 ネレディアは、寂しそうな顔をしていた。

「それでは……。ガゼル提督の犠牲が……。なんの意味も無くなってしまう」

 山南は、彼女を元気づけようと話した。

「まあ、待ってくれ。ライアン長官と、デスラー大使の交渉は、まだ継続している。それに賭けて俺たちはここで待とう」

 その時、アンドロメダのレーダー手の橋本が、山南に報告をした。

「艦長! 長距離レーダーが艦隊を補足! 少なくとも、二百隻以上の艦影を捉えました!」

「まさか、ガトランティスか!?」

 橋本は、レーダーを操作して確認している。

「艦種識別……! これは……。ヤマトとイセがいます! それに、ガミラス艦隊が多数! ギャラクシーに配置されていた艦隊だと思われます!」

 バーガーは、意外そうな表情でそれを聞いていた。

「古代たちが? どうなってんだ? 基地を空にしていいのかよ?」

 山南は、嫌な予感がして、早口で通信士の佐藤に言った。

「おい、古代を呼び出せ! スクリーンに出すんだ」

「す、少しお待ちを……」

 それから、しばらくして、古代がスクリーンに映し出された。

 山南は、浮かない表情をしている古代に尋ねた。

「古代、どうした。何があった?」

 古代は、何と話すか少し考えていたのか、すぐに答えなかった。そして、間を開けて口を開いた。

「山南准将。ギャラクシーがガトランティスに襲撃され、残念ながら基地を放棄して脱出して来ました」

 それを聞いた山南はもちろん、バーガーとネレディアに、動揺が走った。

「な、何だって!?」

 古代は、山南に頭を下げた。

「敵は、サーシャを拉致することが目的でした。それが失敗すると、今度はギャラクシーを破壊しようと攻撃をして来ました。一度は、撃退に成功しましたが、二隻のゴルバが現れた為、基地の防衛が困難と判断し、全員を脱出させました。本当に申し訳ありません」

 山南は、驚きのあまり少し黙り込んでいた。

「ギャラクシーを破壊するとはねえ……。分かった。至急、地球防衛軍司令部に、このことを報告しよう。ガトランティスの一連の行為は、もはや戦争を仕掛けられたも同然だ。こっちも、たった今、奴らにしてやられたところさ。ユリーシャとサーシャを乗せた船に逃げられた。もう、ガルマン帝国かボラー連邦領内に入っているため、これ以上追うことも出来ない」

 今度は、古代が驚く番だった。

「そ、そんな! ユリーシャたちが……!」

 山南は、古代に言った。

「……今から、アンドロメダに来てくれ。地球連邦防衛軍として、これからどうすべきか、司令部も交えて話し合おう」

「わ、分かりました」

 山南は、同様にガミラス人同士で話し合うというネレディアの話を受けて、そこで一旦通信を終了した。

 山南は、立ち上がると艦橋の人員に言った。

「俺は艦長室にいる。古代が来たら、艦長室に来るように伝えてくれ」

 そう言い残すと、彼は艦橋から急ぎ足で出ていった。

 

続く…




注)pixivとハーメルン、及びブログにて同一作品を公開、または公開を予定しています。
注)ヤマト2202の登場人物は、役割を変更して登場しています。

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