宇宙戦艦ヤマト2199 白色彗星帝国の逆襲   作:とも2199

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宇宙戦艦ヤマト2202とは別の世界線を歩んだ宇宙戦艦ヤマト2199の続編二次創作小説「白色彗星帝国の逆襲」です。「白色彗星帝国編」、「大使の憂鬱」、「孤独な戦争」、「妄執の亡霊」、「連邦の危機」、「ギャラクシー」の続編になります。


白色彗星帝国の逆襲48 女帝の真意

 ガトランティス、要塞都市帝国――。

 

 ミルは、大帝として祭り上げられてから、大帝の間の隣に設けられた執務室を与えられていた。そこは、かつて大帝ズォーダーがいた場所である。豪華な調度品に囲まれたその部屋は、ミルにとっては落ち着かない場所だった。

 その日は、自室から持ち込んだ模型をどこに飾ろうかと思案していた。デスクに置いて見たり、グラスが並んだミニバーの隅に置いたり、どこが最も相応しいか考えては、別の位置に移動していた。

 散々悩んだ挙げ句、彼は結局デスクの隅に模型を飾った。位置を調整し、最も見栄えが良いと思った角度に配置すると、満足気にミニバーにあった冷蔵庫から水を取り出して、グラスに注いだ。そして、デスクの椅子に腰掛けると、水を口にしながら、しげしげとその模型を眺めた。

 それは、ギャラクシーにいる時に、射的で入手した大和の模型だった。もちろん、ガトランティス人である彼が、その船の意味する所など知る由も無い。しかし、それが洋上艦であることは、模型が入っていた箱に描かれていた海と戦艦の絵で分かっていた。そして、大和と言う名と、この模型の実物が、ギャラクシーに配備されていたヤマトのルーツであることも。

 ガトランティス人は、その人生のほとんどを、宇宙船や基地の中で過ごすのが当たり前のことだった。その為、海というものは、知識としては知っていたが、実際に触れたことは無い。

 地球人との交流は、ほぼ無いに等しかった為、あの射的をやった時が初めての関わりと言ってもいい。ミルは、店主の若い女が、悔しそうにその模型を渡して来た時の顔を思い出すと、思わず顔がほころんでしまっていた。

 陽気な、面白い女だったな――。

 ミルはその時のことを、微笑ましい思い出として振り返っていた。

 そんな時、執務室を訪れた人物がいた。

「失礼します、大帝」

 ミルは、その女を見て、不機嫌な表情になった。

「シーラ。出来れば、勝手に入る前に、入っても良いか聞いてもらいたいのだが。前にもそう言っただろう?」

 シーラは、カミラが大帝の身の回りの世話をする侍女としてあてがった人物だった。見た目は、まだ若い女の彼女は、まるで喪服のような全身真っ黒な衣装に身を包んでいる。深々と一礼した彼女は、顔を上げると相変わらずの無表情だった。

「申し訳ありません」

 彼女は、科学奴隷として、サーダと共に働いていた科学者の一人だ。サーダと同様に、彼女もサイボーグの身体を持つ機械化人だった。彼女も、既に数百年は生きており、本当の年齢は誰も知らない。カミラからは、彼女から、帝国の持つ数々の新兵器のことを学び、戦術を検討する際の相談相手にするように言われている。

「急ぎのお知らせが二つあります。一つは、イスカンダル人の姉妹のことです。この要塞都市帝国に、二人を連れた艦が、つい先程到着しました」

 ミルは、それを聞いて大きく目を見開いた。

 サーシャは、ついにここに来てしまったのか……!

 その表情の変化を、シーラは黙ったまま覗き込んでいる。ミルは、小さく咳払いすると、彼女に釘を刺すことにした。

「分かった。私から姉妹に少し話がある。それまでは、意識がある状態を保っていてくれ」

「承知しました。その作戦の指揮をとったゼール中佐が、是非大帝にお目通りしたいと申しております。いかがなさいますか?」

 ミルは、なんのことかと一瞬考えたが、サーシャに会いに行く理由を、カミラに何と説明するかを考慮すれば、それを理由にする方がスムーズだろうと気がついた。

「分かった。イスカンダルの姉妹と一緒に待たせておけ」

「承知しました。もう一つは、間もなく臨時の帝国最高会議の時間です。準備をお願いします」

 ミルは、少し嫌そうな顔になっていたが、それを誰にも気取られる訳にはいかない。しかし、シーラは、黙って彼の表情の変化を見つめている。

「……それも相分かった。すぐに準備して、議場に向かおう」

「お願い致します」

 一礼したシーラは、彼のデスクに置かれた新たな物体に気がついたようだった。

「失礼ながら、大帝。そちらは……?」

 シーラの瞳は、まるで感情を顕にしたかのように、興味深く大和の模型を見つめている。

「……地球人からの戦利品だ。この戦艦大和は、ガミラスとの戦争で我々に大打撃を与えたと言う、宇宙戦艦ヤマトの設計の元になった洋上艦だそうだ。何かの参考になればと思ってここに置いてみたのだ」

 説明に、違和感は無かっただろうか?

 本当は、単なる土産として、ギャラクシーにいた時の思い出を振り返る為に置いただけだった。

「……左様ですか」

 シーラは、にっこりと笑顔を見せた。しかし、その目は、とても笑っているようには見えない。

「それでしたら、サーダにも報告して、その船を研究させましょうか?」

 ミルは、頭を大きく振って言った。

「その必要はない。これは、単なる模型に過ぎない。準備をするので、この部屋から出ていってくれ」

 シーラは、再び無表情に戻ると、顔を上げたまま一礼した。

「承知しました。では、外でお待ちしています」

 彼女は、そう言うと、後ろに後退しつつ、部屋から出ていった。

 ミルは、思わず椅子の肘掛けに拳を振り下ろした。

 これでは、まるで監視されているようではないか……!

 

 大きな会議場には、カミラを始めとした、新たな帝国政府を仕切る高官たちが既に集まっていた。遅れてシーラと共に議場にミルが入ると、彼らは一斉に立ち上がって、彼を迎えた。ミルは、少し気恥ずかしさを覚えながら、中央に設けられた自分の席に座った。隣に座るカミラは、息子の立派な姿に感動しているようだった。カミラと目が合うと、彼女は目で彼に訴えかけてきた。それを受けて、ミルは宣言をした。

「これより、臨時の帝国最高会議を行う。ユーゼラー提督、議題を説明してくれ」

 ミルがそう言うと、カミラは満足そうに頷いている。

「はい」

 ガトランティス艦隊の艦隊運用責任者であるユーゼラー提督は、立ち上がると議場の中央の大きな会議卓の上に、立体映像を映し出した。

「これは、先日のスカラゲック海峡星団のダリウス星系で発生した超新星爆発の映像です」

 映像は、ダリウス1が爆発寸前の兆候を見せ、撮影した艦隊がワープで脱出する様子が映っていた。そして、ワープ終了後、そこにも重力震が迫って来て、乗組員が慌てて、二度目の緊急ワープを敢行する一部始終が映っていた。

 議場には、どよめきと共に、超新星爆発の映像に皆驚いていた。長い年月宇宙をさすらってきたガトランティス人であっても、超新星爆発のような天文学的な事象を観測したことがあるものはいなかった。

 映像が終わると、ユーゼラーは次の映像を映した。

「今度は、ダリウス星系における超新星爆発直前の艦隊配置図です」

 映像には、四重連星のダリウス星系に、自軍と、ガルマン帝国艦隊、そしてボラー連邦艦隊がそれぞれ集まる光点が映っていた。

 ユーゼラーは、指し棒を使ってその図を指しながら、発言した。

「ここには、ガルマン帝国艦隊、二万四千隻、そしてこちらには、ボラー連邦艦隊一万隻が集まっていました。ボラー連邦軍には、この星系にガルマン帝国艦隊を誘い込めば、我軍のゴルバ四、五隻を含む大艦隊を派遣して、ガルマン帝国艦隊を包囲して殲滅すると話していました。一方で、サーダを始めとした科学奴隷たちからは、予めこの星系で超新星爆発がいつか起こる可能性があるとの報告を受け、決戦の場をここにするように誘導していました。我軍は、ガミラス戦争時に開発された殲滅兵器を、ここで使用することを決定していました」

 ユーゼラーは、ダリウス星系外縁付近にいた自軍の光点の近くに、少し大きめな光点を表示させた。

「これです。白色彗星」

 ユーゼラーは、その光点が動く映像を次に示した。

「今回は、新たに遠隔操縦可能な改良を施しています。そして、このように、白色彗星をガルマン帝国艦隊の中央に放ちました。この攻撃で、白色彗星単艦での出撃だけで、ガルマン帝国の数百隻の艦隊が沈んだと聞いています。更には、ガルマン帝国艦隊の最強の兵器、惑星破壊プロトンミサイルの猛攻にも耐えられることがこの戦闘で証明されました」

 ユーゼラーは、次の映像を表示した。

「このミサイルの破壊力により、星系全体が不安定になりました。これは予定していた訳ではありませんでしたが、確実に超新星爆発を誘発出来る環境が整ったと現場の科学士官が判断し、作戦を最終フェーズに移行しました。白色彗星をダリウス1付近で自爆させ、超新星爆発が起こった結果、ガルマン帝国艦隊二万四千隻をこれに巻き込み、全滅させることに成功しました。これで、大幅にガルマン帝国艦隊は弱体化しました。総数、十万隻はいようかというガルマン帝国の艦隊は、広い領土を維持する為に散らばっており、彼らが北部方面軍と呼ぶボラー連邦との国境を担当する艦隊は、もはや半数以下しか存在しません。直ちに、彼らの領土に攻め込めば、ガルマン帝国を容易に占領することが可能だと思います」

 ミルは、作戦の概要は事前に聞いており、特に驚くような報告は無かった。ここは、彼が恩を感じているイスカンダル人や、ガミラス人たちに何の影響も無い。自身のこのような感情を覆い隠すには、ことさらに冷酷に振る舞うことが必要だったが、それは比較的容易に出来ることだった。

 ミルは、感情を抑えて短く言った。

「良くやった。予定通り、この後は、ガルマン帝国の占領作戦に移行するだけだな」

 ユーゼラーは、大きく頷いた。

「その通りです。ただ、ボラー連邦艦隊一万隻も一緒に巻き込んで全滅させてしまったのは、予定外でしたが、大勢に影響はありません。大帝のご命令があれば、直ちに白色彗星を含む主力艦隊を、ガルマン帝国に侵攻させることが可能です」

「待ち給え、ユーゼラー提督」

 ミルの左隣に座っていた人物が、話に割り込んできた。ユーゼラーは、その男に素直に従うと、自分の席に戻った。

 立ち上がった中年の男は、ミルに向かって言った。

「大帝、ここからは、私の話を聞いて下さい」

 ミルは、訝しげな表情で、その男に頷いた。

「ゲーザリー参謀長官。いいだろう、話してくれ」

 ゲーザリーと呼ばれた男は、静かに議場を歩きながら、集まった軍の高官たちを眺めて回った。

「ボラー連邦艦隊をわざと巻き込むように指示したのは私だ」

 これには、議場にいた者たちは、ざわめきを持って聞いていた。

 ミルも、これには険しい顔で応じた。

「ほう……。大帝である私も聞いていないのだが?」

 ゲーザリーは、両手を広げて言った。

「申し訳ありません。この作戦は、あなたが大帝になる前から決まっていた事で。女帝と私とで、以前から決定していたのです。誰にも気取られる訳には参りませんでしたので、大帝に就任したあなたにも、お知らせすることが出来ませんでした」

 ミルは、右横に座っているカミラを睨みつけた。そのカミラは、涼しい顔で、前を見ている。

「申し訳ありません、大帝。ゲーザリーの話した通り、この作戦は、現時点で知るものは、ごく少数の者たちだけでした」

 カミラは、身振りでゲーザリーに話を続けるように促した。

「我々の、本当の作戦をこれから説明します。ボラー連邦艦隊は、現在ガルマン帝国に侵攻するため、ガルマン帝国との国境付近に、多くの艦隊を派遣しています。ガルマン帝国との戦いで、戦力が削られた彼らは、今回のスカラゲック海峡星団の戦いでのガルマン帝国艦隊の弱体化した隙きを突き、更に艦隊を増援してガルマン帝国へと侵攻する作戦を展開します。本星を防衛していた艦隊の半数を、これにあてることになっており、既に艦隊は出撃しました。彼らはまだ、我々との共同作戦を信じており、本星の防衛は手薄になっています。今こそ、ボラー連邦本星に侵攻し、敵の中枢を一気に殲滅します」

 ミルは、目を見開いて、ゲーザリーの顔を見つめた。

「どういうことだ……? 我々は、ボラー連邦と協力して、この天の川銀河で定住する計画ではなかったのか?」

 カミラは、口元を抑えて、静かに笑っている。

「大帝、我々ガトランティス帝国が、どこかの星系に住み、定住することなどあり得ません。ボラー連邦側に、このことを気取られぬようにするため、これまで本当のことを話せませんでした。これについては、本当に申し訳ないと思っていますよ」

 カミラは、立ち上がると、集まった高官たちに、冷静に説明した。

「皆の者。聞いた通りです。これまで、この銀河系への定住計画に反対だった者も多かったのは、私も認識しています。そこで、我々は今まで通り、宇宙をさすらい、異星人たちの文明を滅ぼし、その力を自らのものに取り込んで勢力を拡大する政策を継続していきます。その手始めに、ボラー連邦を潰します。そしてその後、ガルマン帝国本星にも侵攻し、彼らの中枢を全滅させます」

 これには、議場にいた半数以上の参加者が拍手を送っていた。

 ミルは、心の中で愕然となっていた。

 これでは、私は、大帝とは名ばかりで、何の決定権も無い。ただの、お飾りではないか……!

 ミルは、憮然とした表情で、カミラに尋ねた。

「他に、私に隠していることがあるなら、今、ここで話してくれ!」

 カミラは、再びにっこりと笑っていた。

「ガルマン帝国は、ガミラス人とイスカンダル人の末裔が興した国です。そして、ガルマン帝国には、多数のイスカンダル人の末裔たる、イスガルマン人と呼ばれている民族があちこちの星系に住んでいます。我々は、我々に害を及ぼす可能性のあるイスガルマン人を根絶やしにするのが、第一目標です。ボラー連邦は、私たちがガルマン帝国でこの作戦を進める邪魔になるだろうと判断し、仲間になったふりをして油断した所を突いて殲滅することにしました。これが、私とゲーザリーがこれまで進めていた作戦の概要です」

 ミルは、そこで初めてイスガルマン人、つまりイスカンダル人の末裔が、ガルマン帝国に存在していることを知った。なぜ、あのような場所にスターシャたちが住んでいたのか、その理由が今、はっきりと分かったのだ。同胞を解放しようとしていたのに違いない。ガルマン帝国を我々が侵略し、蹂躪すれば、恐らく心を痛めるのは、スターシャに違いない。

 ミルは、他の者には聞こえないように、小さな声でカミラに抗議した。

「私に何の説明も無く、そのような作戦を進めるなど、無礼極まりない。例え、実の母といえど、看過できぬぞ……!」

 カミラも、同じように小さな声で、彼に言った。

「……少し、話し合いが必要のようね。会議の後で、少しお話ししましょうか」

 ミルは、唇を噛んで母を睨んだ。

 

続く…




注)pixivとハーメルン、及びブログにて同一作品を公開、または公開を予定しています。
注)ヤマト2202の登場人物は、役割を変更して登場しています。
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