宇宙戦艦ヤマト2199 白色彗星帝国の逆襲   作:とも2199

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宇宙戦艦ヤマト2202とは別の世界線を歩んだ宇宙戦艦ヤマト2199の続編二次創作小説「白色彗星帝国の逆襲」です。「白色彗星帝国編」、「大使の憂鬱」、「孤独な戦争」、「妄執の亡霊」、「連邦の危機」、「ギャラクシー」の続編になります。


白色彗星帝国の逆襲49 女帝の寵愛

 数時間後、ミルはカミラと共に執務室に戻っていた。会議では、ボラー本星への攻撃作戦が決定され、血に飢えていたガトランティスの軍人たちは、作戦行動を起こす為、それぞれが準備に向かった。

 執務室には、先程から、ボラー連邦の首相、ベムラーゼからの連絡が何度も入っていた。恐らく、スカラゲック海峡星団で発生した超新星爆発と、自軍の艦隊一万隻が帰らぬ事への問い合わせであろうと予想された。カミラはそれを無視するように侍女のシーラに指示していた。シーラは、一礼すると、そっと部屋を出ていった。

 ミルは、執務室の自分の席に腰掛けると、腕を組んでカミラを睨んでいる。そのカミラはというと、ミニバーで、アルコールの入ったボトルを手に、グラスを二つ並べて酒を注いでいた。カミラに手渡されたグラスを、ミルは不機嫌そうにデスクに置いて、口をつけようとしなかった。カミラは、ため息をついて、デスクの端に腰をかけてグラスを傾けた。

「母上。そろそろ、これまで何があったのか、ちゃんと話してくれませんか? なぜ、あなたが女帝などという立場になれたのか。そして、今回の作戦になぜ至ったのか……。それに、なぜ私を大帝の座につけることにしたのか……。そういった、すべてのことについて」

 しかし、カミラは、デスクの上の大和の模型を、しげしげと眺めて黙っている。

「母上……!」

 カミラは、グラスを持ったまま、立ち上がって、部屋の中を歩き始めた。

「いいでしょう。まずは、今まで何があって、なぜ、私が女帝になったのか……、ですね」

 カミラは、少し遠くを見るような目つきで宙を眺めている。

「あれは、ある銀河の文明を滅ぼした後のこと。サーダやシーラのいた二重銀河を支配していた帝国のことね。その戦いで、ガトランティス帝国は、激しい戦いを繰り広げ、一度は負けそうになったと伝えられています。最終的に勝利を収めたとはいえ、戦力を大幅に失ってしまったそうです。そうして、弱体化した我が帝国は、戦力を蓄える為に、しばらく戦いを控えていた時期があったそうです。数百年の時を経て、ある程度戦力を回復した頃に、私たちは、小マゼラン銀河にやって来ました」

 

 小マゼラン銀河について間もなく、先代の大帝が亡くなると、その息子だったズォーダーは、若くして大帝の座についた。ズォーダーは、まずは、この要塞の建造を始め、小マゼラン銀河で勢力を拡大する事を画策する。しかし、当時マゼラン銀河は、デスラー家が支配するガミラス帝国が銀河の覇権をかけた統一戦争を行っている最中だった。ガトランティスは、ガミラスに比べれば、外宇宙からやって来た弱小民族に過ぎず、建造中の要塞を守るのが精一杯の状態だった。若き日の大帝ズォーダーは、いつの日か、ガミラス帝国を倒す事に執念を燃やし、小マゼラン銀河の様々な種族を滅ぼしながら、戦力の増強に努めていた。

 大帝ズォーダーは、妻を持つことは無かったが、その代わりに、愛人は何人もいた。まだ若かったカミラは、大帝に仕える侍女として大帝の間で仕事をしている時に、彼に見初められ、愛人の一人になった。いつしか、彼の子を身ごもった彼女だったが、戦いに夢中のズォーダーは、邪魔になった愛人を、子もろとも処分しているとの噂を聞いていた。カミラはそのことを恐れて自ら身を引き、一般市民になった。そうして、生まれたのがミルだった。

 カミラは、それはもう溺愛して彼を大切に育てた。その愛情に包まれて、ミルは、優しくも、立派な青年へと成長した。いつしか、彼が自らの意思で、軍人になると言った時には、カミラは嬉しくもあり、しかし同時に複雑な思いに駆られていた。ガトランティスは、他の種族からすべてを奪い、利用価値の無い者は、残らず滅亡させるのがその戦い方だ。自分の子が、そのような軍人の一員となってしまうことを誇らしくもありながら、母として恐れていたのだ。

 それから暫くして、ガミラスに大きな変化があった。デスラー政権が崩壊し、マゼラン銀河中の様々な種族が、ガミラスに反旗を翻したのだ。デスラー政権下で、圧政に苦しめられてきた人々は、ここぞとばかりに立ち上がり、あちこちで、ガミラス軍との小競り合いが起きていた。ズォーダーは、ガミラスとの戦いの時が近づいていたのを感じていた。

 ちょうどその頃、静謐の星を探させていた部隊の一つから、ある信じ難い報告が入った。銀河間宙域にて、デスラー総統自身と、その部下たちが作戦行動を行っているとの報告だった。ガミラスで失脚したデスラーが、少数の部下たちと何かやろうとしているらしい。

 ズォーダーは、これに興味を持った。ガミラスを追われて行く場が無くなったのだろう、と彼は推測した。敵の敵は、味方になると彼は思い至り、デスラーを仲間に引き入れられないかと考えた。一度は、この銀河を支配した程の男のこと、必ずや何かの役に立つと、彼はデスラーをガトランティスへと迎えるように部下たちに指示をした。

 こうして、デスラー総統とその部下タランらをガトランティスへと迎えることに成功した。しかし、デスラーは意識を失ってひどい怪我を負っていた。ちょうど、タランという男が優秀な科学者だったことに目を付け、デスラーが目覚めるまでの間、彼と科学奴隷たちとで、新たな兵器開発を試みてみることになった。

 サーダらは、タランの発案により、新型の戦艦の建造を行ったり、彼が作った人工太陽について、兵器に転用する為の、研究開発を行った。そうして生まれた試作兵器、人工太陽爆弾は、実際に戦線に投入してみると、思いのほか優秀な兵器になることが判明した。

 サーダらのかつての本星は、外郭で惑星全体を覆うダイソン球を構築するほどの、高度な科学力を持っていた。サーダらは、その技術を応用し、人工太陽の問題点でもあったエネルギー効率の悪さを改善する為、人工太陽を外郭で覆って、エネルギーを循環させることで、莫大なエネルギーを発生させることに成功した。こうして誕生したのが、後に、その外観からズォーダーが命名した白色彗星だったのである。

 こうして、最初の試作機も含めて、四機の白色彗星が用意されたころ、デスラー総統は目覚めた。ズォーダーは、白色彗星の圧倒的な防御と攻撃力に心酔しており、もはや、ガミラス帝国など敵では無いと考えるようになっていた。それよりも、マゼラン銀河の様々な地域で、イスカンダルの伝説を耳にしていた。彼はイスカンダルに、恐るべき未知の科学力の存在を感じ取り、それを奪う為、遂にイスカンダル、そしてガミラスへと進軍させることを決定した。

 その頃のズォーダーの元には、若くして丞相に抜擢された参謀長官のサーベラーが近くにいるようになっていた。彼に常に付き従う美女の存在は、新たな愛人ではないかと、帝国内でも噂が流れていた。カミラは、彼が決して、本気では人を愛さない事を知っていた。だからこそ、サーベラーも、自身と同じ様に、哀れな末路を辿るに違いないと、カミラは蔑んで見ていたのだった。

 大帝ズォーダーは、結局ミルが自身の息子だと知ることは無かったが、ミル自身の努力によって、デスラー総統を利用したガミラス攻略作戦を任されるまでになっていた。

 要塞から、ズォーダー自身や、多くの高官らが戦いに趣き、残されたのは、要塞防衛隊と、一般市民、そして科学奴隷たちだけだった。

 カミラは、ガミラスとの戦争から、無事にミルが帰って来るのを待っていた。しかし、待てど暮らせど、ミルどころか、ガミラスへ向かった誰もが戻っては来なかった。そうして、しばらくして、戦闘から生きて戻った一部の兵からの報告で、ガトランティスが敗北したことを、皆知ることになる。その上、ズォーダーや、サーベラーなどの高官たちは、行方不明になり、生存しているのかどうかすら、分からなくなっていた。しかし、敗北の原因が、イスカンダル人による精神攻撃だったことは、戻った兵からの報告で、判明していた。

 要塞に残っていたガトランティスの人々は、これからどうすべきか、自分たちがどうなってしまうのか、不安な日々を過ごすことになった。大佐だったゲーザリーは、その時に残っていた軍人の中でも最高位だった為、周囲から帝国の舵取りを期待されることになった。しかし、彼は、自身でもそのような才覚があるとは思っておらず、混乱した帝国内の権力闘争に巻き込まれ、困り果てていた。

 彼は、古くからガトランティスに仕えていた科学奴隷たちに、助言を仰ぐことになる。科学奴隷の中でも、最も優秀と言われていた、サーダらの種族を招き、これからどうすべきかを相談した。それこそ、藁をも掴む気持ちだったのだ。しかし、思いの外、彼らは政治や戦略にも明るく、彼に的確なアドバイスをすることになる。

 その一つが、新たな大帝ズォーダーを立てることだった。もともと、世襲で政権を継いだズォーダーに皆が従ったように、彼の実の子が見つかれば、権力闘争に終止符を打つことが出来るというものだった。

 もう一つは、これからの明確な目標を立てることだった。サーダは、自身の帝国が滅び、ここへ連行された時にも、今と同じように疲弊した状態のガトランティスの様子を見てきたという。時の大帝は、宇宙侵略の手を休め、戦力の立て直しを最大の目標として、暫く星に降りて休んでいたことがあったらしい。いつの日か、再び旅立つことを約束し、暫く休むのは、今なら受け入れやすい話ではないだろうか、ということだった。

 ゲーザリーは、素直にその案に乗り、まだ中佐だったユーゼラーと共に、暫定政権を運営を始め、まずは大帝の子がいないかを探すことにした。

 しかし、大帝の子は中々見つからなかった。カミラの元に、その捜索の手が及ぶのは、だいぶ時間が経ってからのことだった。そして、残されていたミルのDNA鑑定により、遂に大帝の実の子が発見された。

 しかし、その時既に、ミルはガミラス戦争で行方不明になっていた。それを知ったゲーザリーは、酷く落胆をすることになる。しかし、そんなゲーザリーに、カミラは、懸命に説得をした。

 息子は、必ず生きているはずだと。

 もともと、デスラー総統を利用する任務で出撃したミルは、その裏切りに合い、デスラーに囚われて生存している可能性があった。そして、そのデスラー総統自身も、どうやら生きていて、マゼラン銀河を離れたことは、最初の報告で分かっていたことだった。

 ゲーザリーは、それならばと、ズォーダーの愛人だったカミラ自身を、ズォーダーのかつての妻ということにして、女帝ズォーダーを名乗らせることにした。ミルが見つかるまでの間、彼女を暫定的に指導者として祭り上げることで、権力闘争を止めさせることが目的だった。

 ゲーザリーは、それらを素早く実行すると、初めこそ、一部の者たちには、反発され、大いに批判も浴びていたが、その他の多くのガトランティス人たちは、混乱を収束させる救世主を待っていたのだ。こうして、瞬く間に権力闘争は収まっていった。ゲーザリーは、戸惑うカミラを説得して、帝国を再建する時間を稼ぐのに協力するように言った。カミラは、息子が生還すれば、大帝の座につけることが出来ると思い、これに応じて女帝として振る舞うようになる。

 しかし、分からないもので、ただの一般市民でしか無かったカミラは、その立場を与えられたことで、次第に指導者としての力を発揮するようになった。立場は、人を変えると言うが、まさにその言葉通りになったのだ。

 カミラの元には、サーダと同じ種族のシーラを侍女として置いた。彼女の頭脳は科学者としてだけで無く、政治や戦略を立てるのにも大いに役立ったからだ。そんな彼女を、カミラは副官のように扱っていた。

 こうして、政権が安定した後、再び力を蓄えるまでの間、帝国民に約束した定住先を探すことになった。そうしている時に、今度はデスラー総統の行方が分かってきた。デスラー総統は、天の川銀河にいるという情報が入って来たのだ。そして、なんとそこには、イスカンダルの女王が一緒にいることも判明した。

 カミラは、もしかしたら、そこで、ミルが見つかるかも知れない、見つかるに違いないと考えるようになった。

 カミラとゲーザリーは、要塞を改造し、天の川銀河に移動させることを決めた。帝国民には、天の川銀河に、暫く定住し、暫しの休息をとることを約束した。

 しかし、時間をかけて、ようやく天の川銀河に辿り着くも、そこには二大星間国家が存在することが明らかになった。カミラとゲーザリーは、調査の末、両国が長い年月星間戦争を行っていること、そして驚いたことに、一方のガルマン帝国が、ガミラス人と、イスカンダル人の移民が興した国であることが分かった。

 帝国が復活を遂げるには、ズォーダーらを敗北させたイスカンダル人の存在は、危険でもあり、そして邪魔でしかなかった。それまでは、いつの日か、イスカンダルの女王と、その姉妹の生き残りを無力化すれば十分と考えていたが、もしかしたら、それでは済まないのかも知れなかった。カミラは、シーラとも話し合った結果、イスカンダル人は、根絶やしにするべきだ、という結論に至った。

 そこで、ガルマン帝国と対立する、ボラー連邦と協力することで、一時的な定住先を確保することと、ガルマン帝国のイスカンダル人を滅ぼすのが早道であると結論づけた。

 他の銀河からやって来たガトランティス帝国は、当初こそ、ボラー連邦には信用されていなかったが、ガルマン帝国との戦争が膠着状態だったボラー連邦は、少しづつ、この同盟を前向きに検討するようになった。

 カミラとゲーザリーは、首相ベムラーゼとの幾度かの会談を経て、協力して天の川銀河を支配することに同意した。

 ボラー連邦の支配圏で、そこで定住しつつ、戦力の増強を図ったガトランティスは、戦力が回復するにつれ、そこに定住する案に賛成していた者も、帝国がそのような安定した暮らしをいつまでも続けるのはどうか、などと議論が活発になっていた。カミラとゲーザリーは、定住に拘っていたわけでも無く、十分な戦力が整った所で、ガルマン帝国に痛手を負わせ、最終的には、ボラー連邦もろとも滅ぼしてしまうことに決めた。

 ボラー連邦に取り入る為に、白色彗星以外の強力な兵器を欲したカミラたちは、サーダが発案した機動要塞ゴルバを開発した。白色彗星の存在を、ボラー連邦に悟られないようにしたのだ。

 こうして、ボラー連邦との同盟関係を維持しつつ、裏では、決戦兵器である新たな白色彗星の建造、そして、ミルの捜索と、イスカンダル人たちの拉致計画を推進して行った。

 

「……あなたが見つかったとの知らせを受けた時には、本当に嬉しかったんですよ、ミル」

 カミラは、少し涙ぐんでいる。

 ミルは、彼が不在の間のガトランティスの混乱した時期や、その復興に奔走したカミラの努力を知り、感銘を受けていた。そして、彼女が、母として、自分を本当に大切に思っていたことにも。

「あなたは大帝の隠し子として、不遇の人生を生きるはずでした。しかし、このようなチャンスをものに出来るのなら、なんとかあなたにそれを与えたいと思っていたのです。でも、あなたは、イスカンダル人と過ごす間に変わってしまった。だからこそ、暫くは、私の女帝としての立場を、最大限利用して、今後もあなたを支えなければと思っています。決して、あなたを蔑ろにしようとした訳ではないのをわかって欲しい」

 ミルは、少しこそばゆい感覚を覚えながら、彼女の瞳を見つめた。

「分かりました、母上……。そういうことでしたら……」

 二人は、ひしと抱き合った。カミラは、彼の背を優しく擦った。

 カミラは体を離すと、急に優しげだった表情を豹変させた。

「ところで……。新たに連れてきたイスカンダル人たちに、あなたが会いに行くと言っていると、シーラに聞きました。いったい、何をするつもり?」

 ミルは、少し戸惑ったが、言うべき時が来たと悟った。

「母上。今、ここに連れてきたイスカンダル人たちの処遇ですが、これからどうするおつもりか? 先程の、イスカンダル人を根絶やしにするとの話を聞き、私はとても驚いています。彼女たちに、私は恩があるのです。せめて、彼女たちだけでも、私たちに危害の及ばぬ場所へと、連れて行くのではいけませんか?」

 カミラは、その話を暫く考えていた。そして、小さくため息をつくと、返答をした。

「いいでしょう。でもね、この作戦が終わるまでは、出来ない相談です。それでどうかしら?」

 ミルは、笑顔でそれに応じた。

「母上……! ありがとうございます。本当によかった……」

 ミルは、急ぎ足で執務室から出ようとした。

「では、母上、イスカンダル人を連れてきた士官が、私に話があるということなので、行ってまいります」

 カミラは、それには返事をしなかったが、ミルは、一礼すると、部屋からすぐに出て行った。

 カミラは、彼がいなくなった扉の方をじっと見つめていた。その時、彼と入れ替わりに、シーラが再び部屋に戻って来た。

「女帝ズォーダー」

 カミラは、彼女の方を憮然とした表情で眺めた。

「私は、前から言っているように、彼は大帝に相応しく無いと考えております。それに、あなたが、既にその立場を果たしていますから、彼がいなくても、帝国には何の影響もありません」

 カミラは、シーラを睨みつけた。

「はっきりと言うのね……。あの子は、私の大切な子。こうなることは、私の長年の夢だった。例え、あなたの助言だろうと、聞くつもりはないわ」

 シーラは、無表情のままだ。

「私たちの種族は、子を生むことは出来ませんから、あなたの気持ちは、分かりそうにありません」

「そう……。長命でも、幸せとは限らないと言うことね」

 シーラは、首をひねってカミラの顔を覗き込んでいた。

 

続く…




注)pixivとハーメルン、及びブログにて同一作品を公開、または公開を予定しています。
注)ヤマト2202の登場人物は、役割を変更して登場しています。
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