宇宙戦艦ヤマト2199 白色彗星帝国の逆襲   作:とも2199

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宇宙戦艦ヤマト2202とは別の世界線を歩んだ宇宙戦艦ヤマト2199の続編二次創作小説「白色彗星帝国の逆襲」です。「白色彗星帝国編」、「大使の憂鬱」、「孤独な戦争」、「妄執の亡霊」、「連邦の危機」、「ギャラクシー」の続編になります。


白色彗星帝国の逆襲50 大帝の行方

「お見えになったぞ!」

「整列しろ!」

 要塞都市帝国の艦船の格納デッキでは、ユリーシャとサーシャを連れてきたラスコー級巡洋艦が着地していた。ハッチから降りてきた乗組員の一部は、その場で整列して、やがて来る女帝ズォーダーを迎えようと待っていた。広い格納デッキには、他にも多数の艦船が鎮座している。

 艦長のゼール中佐は、整列した乗組員の一歩前に出て待っていると、そこにようやく女帝の一団と思われる、近衛兵団が現れた。

「ゼール中佐であります! 女帝ズォーダーにお目にかかろうと、ご命令に従って、こちらで待機していました」

 ミルは、頭を下げる彼を一瞥すると、一言声をかけた。

「頭を上げなさい。君がいない間に、私が新たに大帝の大役を引き継いだ」

 ゼールは、顔を上げると、自分よりもずっと年下の、若い彼の姿に少し驚いていた。噂のズォーダー大帝の実子が見つかったと言う話は本当だったのかと、彼を興味深く眺めた。

「……し、失礼しました! 知らなかったこととはいえ……申し訳ありません! そ、それでは、大帝。ご命令のあった、イスカンダル人姉妹の奪取に成功し、ここへ連れて参りました」

 ミルは、特に気にしても仕方が無いと思い、それ以上、何か言うのは止めることにした。

「……ご苦労だった。イスカンダル人には、私から直接話がある。地下へは私も一緒に行こう」

「はっ! しかし、その前に、お目にかけたい人物がいます」

 ゼールは、後ろで整列していたうちの一人を呼び寄せた。

 長い黒髪の、切れ長な瞳が印象的な一人の女が、ミルの前に立った。

「……お初にお目にかかります。桂木透子と申します」

 透子は、ミルにうやうやしく一礼をした。

 ミルは、その人物が、ひと目で地球人だということに気づいた。近衛兵たちが、一斉にミルの前を取り囲んだ。ミルは、その者たちに、下がるように言うと、ゼールの方を向いた。

「これは、どう言うことだね……?」

「はっ。実は彼女は、地球連邦から我がガトランティス帝国への亡命を希望しております。今回の任務の成功は、彼女の協力を得られたことが一助になっております。今後、地球艦隊と一戦交える場合には、大いに役に立つと思い、彼女の扱いについて確認させて頂きたく、ご挨拶の時間を頂きました!」

「ほう……?」

 ミルは、透子をしげしげと眺めた。ガミラスと同盟関係にある地球人が、何故ガトランティスに亡命すると言うのか? 考えれば考えるほど、不思議に思えた。しかし、顔を眺めているうちに、何となく見覚えがあるような気がした。地球人との関わりは、殆ど無い。記憶にある限り、地球人の女性と会った覚えも、あの射的屋の店主ぐらいだった。しかし、目の前に立っている女は、自分よりも少し年上で、妙な色気を醸し出している。

 透子は、ミルに更に一歩近づき、顔を寄せた。そして、彼にしか聞こえないように、そっと囁いた。

「私は、この宇宙で、最強と言われるガトランティス帝国に、以前から興味があったんです。……あなたが、偉大な前の大帝、ズォーダーのご子息なのですね……?」

 ミルは、必要以上に近づく彼女を警戒した。それと同時に、何故か逆らえない圧力のようなものも感じる。不気味な緊張感が体を走っていた。そのような彼の恐れを感じ取ったのか、透子はにこりと余裕の笑みを浮かべている。

「これからが大変ですわね。頑張ってくださいね、若い大帝さん……」

 そう言い残すと、何事もなかったように、透子は後ろに下がった。ミルは、唖然とした表情で、透子を見つめていた。そして、彼女に何故か飲まれてしまっていた自分を恥じた。しかし、たった一人で、何かことを起こすにも限界がある。泳がせて様子を見てもいいだろう。

「……ゼール中佐。地球人の女をそう簡単に信用してはならない。彼女がスパイである可能性だって否定出来ないだろう。君が、監視して見極めたまえ。本当に、地球を捨てる気があるのかどうかを」

「はっ……! 承知しました!」

 透子は、悪びれるでも無く、恐れるのでも無く、微笑してそのやり取りを見守っている。

 ゼールは、振り返って、背後にいた艦の乗組員に指示した。

「捕虜をここに連れて来い!」

 艦の乗組員の兵士たちは、ユリーシャとサーシャを連れて船から降りて来た。その後ろからは、斉藤と星名も現れた。いずれも手錠をされ、ガトランティスの兵が、銃で小突いて歩かせている。ユリーシャは、怒った表情で、銃を持つ兵士をひと睨みすると、足早にミルの前に進んできた。もう一人のサーシャは、逆に微笑を浮かべて、ゆっくりと歩んでいる。後ろから来た斉藤と星名はと言うと、斉藤が抵抗した為、兵士に銃床で殴られていた。

「痛えな、この野郎!」

「貴様、反抗するな! いいから、きりきり歩け!」

 そうして、ミルの前に、四人の人質が立たされることになった。近衛兵たちは、警戒を強めて再び周囲を取り囲んだ。

 そんな中、星名は、ユリーシャの方を見て、ほっとしたように声をかけた。

「良かった。無事だったんだね。何もされてないかい?」

 ユリーシャは、そんな星名の優しさに触れ、怒っていたはずなのに、みるみる表情を緩ませた。そして、星名の目を見つめて、安心したように呟いた。

「私は、大丈夫。星名も、怪我は無い?」

「捕まった時に少しね。僕よりも、斉藤隊長の方が酷かったかな」

 斉藤は、頭や腕や足に、包帯を巻いていた。

 星名は、横に立っていたガトランティス兵に頭を小突かれた。

「勝手に喋るな!」

 サーシャは、ユリーシャや星名たちの方を眺めて、成り行きを見守っていたが、ゆっくりとミルの方を向いた。

「あなた、前にどこかでお会いしましたかしら?」

 ミルは、黙って彼女の方を見た。一人で彼女のことを気にしていた自分に、自嘲することになった。

 さすがに、あれだけでは、覚えていてくれなかったか……。

「うそよ……。あなたの名前は、ミル。ちゃんと、覚えていますわ。ガトランティスでは、偉い方だったんですね」

 サーシャは、首をかしげて彼のことを見ている。ミルは、彼女に忘れられていた訳では無かったことに、小さな喜びを感じていた。しかし、大勢の目が集まるこんな所では、下手な話は出来ない。

「……では、ゼール中佐。下へ連れて行こうか」

 ミルは、ゼール中佐と桂木透子と、他に近衛兵たちを伴って、人質の四人を連行して行った。

 艦船格納庫を出て、中央の大型エレベーターに乗った。エレベーターは、高速に移動して、あっという間に最下層へ着いた。ここから、科学奴隷たちの研究所を通って、スターシャも入れた拘禁室へと向かうのだ。

 その道中、サーシャは、ミルの近くに近寄ろうとして、兵士に止められていた。その兵士を遮り、ミルは彼女を近くで歩かせた。サーシャは、ミルの横に並ぶと、顔を覗き込んで、小さな声で質問をしてきた。

「……ミルさん、私たち、これからどうなってしまうのかしら? 良かったら、教えてくださらない?」

 ミルは、唇を噛んだ。

 今回の作戦が終わるまで、彼女たちは拘束することが、既に決まってしまっている。しかしその後は、どのように彼女たちが扱われるか、彼にも良く分かってはいないのだ。それが、どうしても歯痒かった。

「……ここで、暫く過ごして頂きます。最終的には、私が、責任を持って、あなた方の安全を守るつもりです。少し、窮屈な思いをさせてしまうかも知れませんが、どうか、お許し下さい」

 ユリーシャは、彼を睨みつけている。

「ねえ、お姉さまは? スターシャお姉さまも、ここにいるの? お姉さまは、無事なの?」

 矢継ぎ早の質問に、ミルは、頷いた。それはそうだろう。不安になるのも当然のことだ。

「問題ない。スターシャ女王は、こちらにいらっしゃる。少し、眠っていてもらっているがね。これから、あなた方も、そこへ連れて行く」

 ユリーシャは、それを聞いて憤慨している。

「眠らせているって……どういうこと? 何か、薬物を使って眠らせているのね?」

 ミルは、心苦しいと感じていた。ミルも、薬物を投与しているのか、それとも、サーダが管理していたあの装置の何らかの仕組みなのか、何も分かってはいなかった。ミルが、答えに躊躇していると、サーシャが言った。

「レベルはすごく低いけど、お姉さまの意識は何となく感じる。この、通路の先の、ずっと先の方にいるみたい。とても穏やかな感じよ。大丈夫よ、ユリーシャ」

「サーシャ姉さまは、この人の言うことを、信用するの!?」

 サーシャは、ユリーシャから、ゆっくりとミルの方へ視線を巡らせた。

「ええ。だって、この人は、本当は、心の優しい方だもの。私には分かりますわ」

 ミルは、サーシャの言葉に戸惑った。そうだ。いくら、ガトランティス人らしく残酷そうに、冷酷そうに振る舞おうと努力しても、彼女には、心の奥底を見抜かれてしまっている。ほんのわずかの時間しか、会っていないのに。

 その時、斉藤がぽつりと言った。

「おい、嬢ちゃん。そいつはガトランティス人だ。前の戦争で、あんたたちに酷い目に合わされたって、こいつらは、恐れているんだよ。だから、幽閉して、何も出来ないようにするつもりなんだろうさ」

 ミルは、その話でふと気がついた。

 そうか。ズォーダー大帝たちがどうなったのか、この者たちは知っているのだろう。そのことは、カミラもゲーザリーも、ユーゼラーも知らないのか、隠しているのか、誰も詳しくは語らない。ならば、今ここで、私が確認してもいいだろう。

「……大帝ズォーダーや、サーベラー丞相たちがどうなったか、知っていることを、私に教えてはくれないか? 私は、デスラー総統に捕まっていて、事の顛末を知らぬのだ」

 斉藤は、口をへの字にしている。

「さあな。俺は、その時は地球にいたから、詳しくは知らねえ」

 どうやら、本当に知らないようだ。

 ミルは、次に星名の方を向いた。

 星名も、その瞬間に何があったのかは、直接は見ていないが、すべてを知っていた。しかし、星名としては、彼らがそれを知らないことが意外であり、事実を話してもいいものか躊躇した。

 しかし、その間に、ユリーシャが口を開いた。

「星名は、知らない。それに、サーシャ姉さまも。だって、二人とも、その場にはいなかったから」

 ミルは、ユリーシャの方に目線を向けた。サーシャに似て、美しい女だと彼も認めていた。しかし、サーシャの世間ずれした雰囲気に比べれば、彼女は地球人のように、人間的で、感情的だった。そして、彼女こそ、ガトランティスを敗北に導いた張本人なのだ。

「君たちイスカンダル人の精神攻撃にあい、戦意を喪失したことが、敗北の原因だと言うことは我々も知っている。しかし、その後、どうなったのかが伝わっていないのだ」

 ユリーシャは、周囲を見渡した。そして、最後に星名の目を見つめた。星名は、不安そうに彼女の方を見つめていた。

 そう。ズォーダーたちがどうなったのかは、彼らは知らない方がいいのだ。彼らが生きていることを知れば、見捨てられたと思うかも知れない。下手をすれば、復讐に駆られる可能性もある。

 ユリーシャは、嘘をつくことにした。

「……ズォーダーや、サーベラー。あなた方のかつての幹部たち。彼らは、みんな死にました。彼らは、それまでの罪深い生き方を悔い改め、イスカンダルの女王によって罪を許されました。にもかかわらず、彼らはその罪を悔やみ、自ら命を断ったのです……」

 ミルは、寂しそうな表情になっていた。

「やはりそうか。そうではないかと思っていた……」

 父上は亡くなったのか……。

 ミルは、実の父と聞いても実感は湧いていなかった。こうして、死んだことを聞いても、何の感情も動かない。それはそうだろう。父親として何もしてくれ無かったのだから。

「ありがとう。これで、気持ちがすっきりしたよ」

 ユリーシャは、ミルの表情の変化に戸惑った。姉が言う、彼が良い人だと言うのは、本当かも知れない。

 

 その時、星名はそっと透子に気づかれ無いように様子をうかがった。今のやり取りを、微笑んで眺めている。経歴を詐称している可能性があった彼女は、地球連邦を裏切り、ガトランティスに亡命したいなどと驚くべき事を言っている。いろいろな可能性があった。その可能性を、あれこれ少し考えて見たが、まだ情報が足りず、考えはまとまらなかった。

 

続く…




注)pixivとハーメルン、及びブログにて同一作品を公開、または公開を予定しています。
注)ヤマト2202の登場人物は、役割を変更して登場しています。
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