宇宙戦艦ヤマト2199 白色彗星帝国の逆襲 作:とも2199
白色彗星は、今まさに、ボラー本星の月軌道を越え、更に惑星に接近しようとしていた。
ボラー本星の気象状況は、激変し、激しい嵐と竜巻が巻き起こっていた。観測史上、最大の竜巻と風速が、ボラー本星の街や自然を容赦なく襲っていた。
激しい叩きつけるような風雨が降り注ぎ、海は荒れ、川は氾濫した。洪水が街を襲い、多くの人々が被災していた。
ボラー本星の首都に住む人々は、強風に襲われながら、天上にもう一つの太陽のような輝きが、次第に大きく迫るのを目撃した。
「何だあれは!」
「こっちに落ちて来るぞ!」
「いったい、何か起こっているんだ!」
「世界の終わりだ……!」
人々には、あまりに突然のことで、避難する暇さえ与えられていなかった。
本星軌道上で待機していた本星防衛艦隊の一部の約二千隻の艦隊は、首相ベムラーゼからの直々の退避命令を受けていた。彼らは、酷く混乱して、まだその場に留まっていた。
その時、第五惑星に向かっていたチェコロフ艦隊総司令から、緊急通信が入っていた。
「全艦隊に告ぐ! ベムラーゼ首相の退避命令は、一旦私が保留する! これは、ボラー連邦始まって以来の国家存亡の危機である。全艦隊の火力を持って、ガトランティス本隊、及び白色彗星を撃滅する! 全艦攻撃準備!」
その号令で、艦隊の混乱は収まり、各艦は隊列を再編成して、攻撃準備を行った。中でも、本星の地上に配備された惑星破壊ミサイルサイロは、白色彗星へのミサイルによる再攻撃の用意を始めた。そして、チェコロフの艦隊においても、ガトランティス大要塞と、ガトランティス艦隊への攻撃準備を始めた。
チェコロフは、大きな声で、全艦へ指示した。
「全艦、攻撃開始!」
チェコロフの三千隻の艦隊は、一斉攻撃を開始し、要塞都市帝国や、それを守る守備艦隊が、次々に被弾して行った。ガトランティスの駆逐艦や巡洋艦は、大爆発を起こして大破し、宇宙の藻屑と化して行った。要塞都市帝国にも、陽電子砲やミサイルの攻撃が命中し、表面に多数被弾して炎を上げていた。
「行けるぞ! 攻撃の手を緩めるな!」
チェコロフの艦隊は、血気盛んに突撃し、ガトランティス艦隊は、大きな被害を受けていた。
そして、後衛に控えていた惑星破壊ミサイル艦隊九隻が、腹に抱えるミサイルを発射すべく、発射用意を行っていた。
「惑星破壊ミサイル艦隊、敵大要塞への攻撃準備完了しました!」
チェコロフは、即座に反応した。
「よし、直ちにミサイルを発射し、敵要塞を沈めろ!」
その命令で、すぐに九基のミサイルが一斉に放たれると、弧を描いて要塞都市帝国へと飛んで行った。
「命中すれば、確実にあれを破壊できる。本星が守れなくとも、せめて刺し違えることが出来るのであれば……!」
チェコロフは、祈るような気持ちで飛び去るミサイルの航跡を見つめた。
一方、同じ頃、ボラー本星の防衛艦隊二千隻は、白色彗星に対する一斉攻撃を開始していた。
陽電子砲とミサイルの雨が、本星に接近する白色彗星に集中砲火を浴びせて行く。しかし、白色彗星には、何の効果もない。
「駄目だ。突破される……!」
「地表は、環境が激変して異常気象で酷いことになっている。あれをこれ以上近づけたら、俺たちの星は……!」
「我が隊は、突撃して至近距離から攻撃を加える!」
「待て、接近するのは危険だ!」
艦隊の各分隊は、それぞれの指揮官の命令で、思い思いの攻撃を行い、大混乱となっていた。
突撃した艦隊は、至近距離から攻撃を加えるも、白色彗星を止めることは出来なかった。そして、ついには、その超重力に捕まり、艦隊が引き込まれて行く。
無事だった艦からは、牽引ビームが放たれ、仲間の艦を救おうと動いた。しかし、それらの艦も、やがて白色彗星に捕まると、一緒に引き込まれて行った。そうして、数百の艦が白色彗星に吸い込まれて制御不能となり、最終的には押しつぶされ、ばらばらに分解して爆発した。
「見ろ、近づいたら危険だ!」
「全艦、退避だ、退避!」
白色彗星に攻撃を加えていた防衛艦隊は、蜘蛛の子を散らすように、その周囲から急いで離れて行った。
「駄目だ、どんな攻撃もあれには通じない」
「ベムラーゼ首相の言うとおり、撤退するしかないのか!?」
「皆、このまま距離を取れ! 本星から、最後の攻撃が始まるぞ。本星から退避するのだ!」
その時、本星のミサイルサイロから、すべての惑星破壊ミサイル、約百基が次々に打ち上げられ、白色彗星へと向かって行った。ボラー本星の大気圏外へと、ミサイルの航跡は伸びていく。人々は、祈るような気持ちで、それを見つめていた。
そしてそれは、ベムラーゼを始めとした、ボラー連邦の首脳や、高官たちも同じだった。もはや、逃げることも叶わず、その攻撃が効果をあげるのを祈るしか無かったのだ。
惑星破壊ミサイルは、次々に白色彗星に命中し、辺りは新たな太陽が生まれたかのような眩しい輝きに包まれた。それは、すぐに収まることは無く、激しい爆発がいつ絶えるのかと思われるほど長い時間続いた。
そして――。
白色彗星は、遂に被弾し、更に大きな爆発を起こした。まるで、月が爆発したような衝撃が地表に響いた。空は、真っ白な光に包まれた。
その光の中から、白色彗星だった鋼鉄の塊は、炎に包まれながら地表に落下して行った。その塊は、数千度の高熱を発しながら、空から落ちて来る。
ベムラーゼは、自分たちのいる首都の真上に、それが雲の間から、燃えて落ちて来る様子を見守った。
ベムラーゼだけで無く、首都にいた人々は、これで死ぬのかと絶望的な気持ちでそれを見つめていた。
落下した白色彗星の残骸は、地表で巨大な爆発を起こした。首都だった街は一瞬で激しい爆風に吹き飛ばされ、何物もそこに残らなかった。宇宙からも見えるほどの巨大な炎の塊は、やがて大きなきのこ雲になった。少し遅れて、地表のあちこちの地域で巨大な地震が発生し、巨大な津波が地表という地表を襲った。
この未曾有の災害は、ボラー本星に住む殆どの生命を奪い、わずかに生き残った人々は、それを後悔するような恐ろしい光景が広がっていた。
「惑星破壊ミサイル、着弾まであと三十秒!」
「敵、要塞に高エネルギ反応!」
チェコロフは、スクリーンに映る要塞都市帝国を見つめた。
それは突然、爆発したかのような大きな光に包まれた。
「どうした!? ミサイルが命中したのか!?」
「いえ……! まだ航走中です。命中まで、あと二十秒!」
チェコロフは、スクリーンでは無く、直接艦橋の窓から外を見に行った。虚空に、まるで太陽のような青白い光の輝きがあった。その光は、周囲の艦隊を明るく照らしている。
「ま、まさか……!?」
チェコロフは、後退った。そんな彼に、追い打ちをかけるように、科学士官が報告をした。
「総司令、あれは、先程の白色彗星とほぼ同じ特性を持っています。外部を覆うプラズマの輝きは、直径百五十キロにも及び、表面温度は約五千度……!」
「総司令、間もなく着弾します!」
だが、それは無駄なことだった。九基のミサイルは、周囲の超重力に捕まると、加速して吸い込まれるように飲み込まれた。そして、爆発もせず、そのまま溶けて消えていった。
「ミサイル、全基消滅しました! 全く効果ありません!」
その時、要塞都市帝国の王座の間にいたゲーザリーは、冷酷に指令を出した。
「進撃せよ! 敵艦隊を殲滅する!」
巨大な白色彗星は、エンジンを始動して、ゆっくりと前進した。
「何としたことか……!? は、母上……。これはいったい……」
カミラは、驚愕するミルに言った。
「これこそが、我がガトランティス帝国が開発した究極兵器、白色大彗星です。これが完成した我々には、もはや敵はありません。白色彗星に守られた帝国は、これからは、さしずめ、白色彗星帝国となるのです」
驚きのあまりに、あ然とするミルに、カミラは、諭すように話した。
「もう、先程のような甘さを見せてはなりません。ガトランティス帝国は、宇宙最強の国家なのです。その王であるあなたは、あらゆる宇宙の生命の頂点に立つのです。歯向かうものに容赦せず、負け犬には、それ相応の立場であることを分からせてやるのです。そうして、我々に逆らうことなどありえないと諦めさせるのです。それが、長きに渡って生き延びて来た、我々の生き方、やり方なのです。あなたも、ガトランティス人であれば、分かっているはず。ここへ戻ったからには、あなたもそのような生き方を取り戻さなければ、ここで生きて行くことは出来ません」
そうだった……。
カミラは、母として、ミルの出世と、その晴れ姿を心から望んでいるのだ。彼を愛するが故、ガトランティスとしての厳しい生き方を思い出させようとしているのだ。
その生き方と、スターシャらに感じた恩義、そしてサーシャに対する愛情、ガミラス人との間で育んだ仲間との友情。ミルの心は、冷酷なガトランティスとして、もしくは仲間を思う心を教えられたイスカンダルやガミラスの人々との狭間で、引き裂かれそうになっていた。
「私は……。私は、いったい、どうすれば……!」
巨大な白色彗星は、速度を上げて前進し、チェコロフらの艦隊は、その超重力から逃れようと逃げ惑っていた。そこに、ガトランティスの守備艦隊は、背後から攻撃を加え、どんどん戦力が失われて行く。
白色大彗星に、遂に飲み込まれた艦は、押しつぶされ、高熱に焼かれて多数が失われて行った。
「もはやこれまでだ……! 各艦は、任意のタイミングでワープしてこの宙域から脱出してくれ!」
チェコロフは、苦渋の決断をしていた。先程、本星において白色彗星の撃破に成功するも、残骸が地表に衝突し、既に本星の都市や街が消滅してしまったことが報告されていた。そして、連絡が取れないベムラーゼ首相を始めとした、ボラー連邦政府が完全に機能を失ったことも。
チェコロフの艦を含む艦隊は、白色彗星から逃れると、次々にワープして本星から離れて行った。本星防衛艦隊は、この戦いで多数の艦艇を失い、残存艦艇は、たったの三百隻程度まで激減していた。ばらばらにワープして散った艦隊が去ったあと、白色大彗星は、しばらくの間、その輝きを漂わせていた。
ゲーザリーは、ミルの王座の前に膝をついていた。
「大帝。先程は失礼しました。これから、我々はボラー連邦支配下の星系を殲滅しつつ、ガルマン帝国を目指します。ガルマン帝国本星を落とした後、イスガルマン人を絶滅させる作戦を開始します。これは、我が帝国の存亡をかけた戦いなのです。どうか、理解して頂きたい」
ミルは、心の中の二つの思いを抱えたまま、迷っていた。
私は、もうガトランティス人として生きていくのは難しいのかも知れない。しかし、だからと言って母を見捨てることも出来ず、ミルは、大帝の間の宙空に浮かぶスクリーンに映る、宇宙を漂うボラー連邦の艦隊の残骸や、炎に包まれるボラー本星の姿を心に刻んだ。
続く…
注)pixivとハーメルン、及びブログにて同一作品を公開、または公開を予定しています。
注)ヤマト2202の登場人物は、役割を変更して登場しています。