宇宙戦艦ヤマト2199 白色彗星帝国の逆襲   作:とも2199

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宇宙戦艦ヤマト2202とは別の世界線を歩んだ宇宙戦艦ヤマト2199の続編二次創作小説「白色彗星帝国の逆襲」です。「白色彗星帝国編」、「大使の憂鬱」、「孤独な戦争」、「妄執の亡霊」、「連邦の危機」、「ギャラクシー」の続編になります。


白色彗星帝国の逆襲58 ムサシ発進

 翌日、惑星アマール月軌道――。

 

「オーライ、オーライ!」

 掌帆長の榎本は、ヤマトからムサシへと、魚雷を移送する作業の指揮をとっていた。ヤマトとムサシは、すぐ隣に停船し、物資移送用のコンテナに、クレーンでぶら下げた魚雷を固定していた。これを、コンテナのスラスターで、ムサシへと運び、待ち受けるムサシの旧型のアナライザーと、機関長の徳川彦左衛門が、船外作業で受け取る手筈である。

「榎本、もっとゆっくりやってくれんか。爆発でもしたらどうするんじゃ」

 徳川のぼやきが、榎本の宇宙帽の通信機から聞こえてくる。

「徳川のおやじさん。爆発なんてしませんよ。安全装置が付いているんで」

「そんなこと言ってもだなぁ」

「ま、もしも爆発したら、俺も徳川さんも、お陀仏ってことで」

「縁起でもないことを言うな!」

「ほら、今からそっちに渡しますぜ。ちゃんと受け取って下さいよ!」

「あ……、こ、こら、ゆっくりと言っただろう!」

 

 その頃、ムサシの艦内では、古代と真田、そして藤堂早紀は、発進準備をほぼ終え、後部シャトルデッキで来客を迎えていた。

「お久しぶりです。イリヤ次官」

「ええ、ご無沙汰しております」

 古代と真田、早紀の三人は、代わる代わる惑星アマールの異星交流担当事務次官のイリヤと地球式の握手を交わした。

 早紀は、古代とイリヤに不思議そうに尋ねた。

「お二人は、お知り合いだったんですか?」

「前に初めてここへ来た時に、我々にいろいろな便宜を図って頂いて、かなりお世話になったんだ」

「そうだったんですね」

 そして、早速古代は、イリヤを心配するように話しかけた。

「先程、あなたを同行させたいとの連絡を、アマール政府から受けています。本当によろしいんでしょうか?」

 イリヤはにこやかに頷いた。

「はい。あなた方は、シャルバート教信者たちに、今回の危機を伝えに行って頂けると伺いました。私は、あなた方よりもガルマン帝国の土地勘がありますので、お役に立てると思います」

 真田も、彼女を気遣うように言った。

「しかし、彼らは、あのような過激派集団がやったような、武装蜂起を企てている状況です。危険を伴う任務になりますよ?」

 そう言われたイリヤは、複雑な表情になった。

「我々、惑星アマールの住人は、中立地帯が設定されるまでは、ガルマン帝国と、ボラー連邦に、交互に占領されてきた歴史があります。この、二大星間国家の圧政に苦しんで来たのは、私たちも同じなのです。彼らの気持ちは、痛いほど分かります。だからこそ、今回のことは放ってはおけません。恐らく、ガトランティス帝国のお陰で、政権を引っくり返すチャンスが巡って来たと考えているのでしょう。ガトランティス帝国が、どんな恐ろしい勢力かも知らずに。彼らに伝えて、思い留まらせ、今までの軋轢を超えて、共に戦う時だと知らせなければなりません。それほど長い時間をかけずに、あなた方を、武装蜂起しようとしているシャルバート教信者の拠点の一つにご案内出来ると思います。私自身も信仰を同じくしておりますので、いくつか心当たりがありますので」

 古代は、イリヤの話を聞いて、素直に申し出を受けるべきだろうと考えた。既に、真田によって、アマールを襲った過激派組織の宇宙船の空間航跡を追跡する案を持っていたが、途中で見失う可能性もあったからだ。

「そういうことでしたか。分かりました。それでは、是非、ご協力をお願い致します」

 古代は、そのまま話を終えようとしかけていたが、彼女には、もう少しちゃんと説明をしておくべきだろうと話を補足することにした。

「ところで、イリヤさん。ご存知ですか? シャルバート教は、そもそもマゼラン銀河にあるイスカンダル人の移民、つまり後のイスガルマン人が興したものだそうです。今では、ボラー連邦にもガルマン帝国にも、人種を超えた大勢の信者たちが隠れて信仰を続けているといいます。彼らが信仰する対象であるマザー・シャルバートは、移民当時のイスカンダルの女王だろうと我々は考えています」

 イリヤは、頷いた。

「そのことでしたら、ガミラスから来たというデスラー総統が、国内の反乱を誘おうと隠れて喧伝しているのは、存じております。何でも、イスカンダルの女王こそ、現代のマザー・シャルバートだとか。本当なのかどうか、皆半信半疑なのです。それでも、反乱を企てようとした勢力は、その話を少しでも信じたからこそ、ことを起そうとしたのだと思います。いつの日か、マザーが現れ、強力な力で皆を救ってくれるという伝説を信じて」

「それなら話が早い。我々も、この話が事実かどうかは、確信がある訳ではありません。しかし、その伝説の一致性から、確度の高い情報だと思っています。しかし、そのイスカンダルの女王の末裔である、スターシャ女王が、王族の二人の妹と共に、現在ガトランティスに拉致されています。我々は、彼女たちの救出も、今回の大きな任務の一つなのです。これを、彼らに訴えれば、マザーを助けようと団結してもらえるのではないかと考えています」

「彼らの目的を、ガルマン帝国の政権転覆ではなく、マザーの救出へと変えようという訳ですね?」

「その通りです。ただ、このイスカンダルの女王が、マザー・シャルバートその人であるという話に、信憑性を持たせるには、何か証拠があった方がいいと思いますが、それは、今回の旅の途中で見つけられないかと思っています」

 イリヤは、くすりと笑った。

「あなたは、思ったより、随分と楽天家なんですね」

 古代は、苦笑することになった。

「そ、そうでしょうか? しかし、いずれにせよ、彼らにはガルマン帝国政府や、ボラー連邦政府との対立を、今は思い留まってもらうように、何としても分かってもらわなければ。そうしなければ、ガトランティスとの戦いに、一丸となって立ち向かうことが出来ません。ガトランティスは、それほど恐ろしい敵なのです。私も、一度は戦いましたが、結局武力ではどうしても勝てなかった」

 イリヤは、古代の遠くを見る目の先にあるものが何なのか、少し興味をそそられた。

「あなた方の波動砲を持ってしても?」

「そうです。しかし、今度は前の時とは違い、数十隻の波動砲を搭載した艦隊が我々にはあります。そんなに簡単に負けることは無いでしょう。それでも、あの時の絶望感を思うと、私は不安を覚えるのです」

 イリヤは、目を閉じて、それ以上の質問を控えることにして、口をとじた。

 しかし、話を聞いていた藤堂早紀は、古代のその言葉に不安になっていた。

「古代さんが、そんなことを言うなんて……大丈夫なんでしょうか?」

 それには、古代は何と答えるべきか迷い、黙っていた。そして、彼女の前で、不安を口にしたのは間違いだったと考えていた。

 代わって、真田がそれに回答した。

「藤堂くん。だからこそ、古代たち防衛軍が戦えるように、協力しようじゃないか。我々にも、科学者として、何か出来ることがあるはずだ」

 早紀は、おずおずと頷いた。

 

 一方、ガミラス艦隊でも、戦いの準備を行っていた。

 戦闘空母ダライアスでは、ガトランティス残党狩り艦隊総司令官のバーガーは、いらいらと艦長メルキに当たり散らしていた。

「ったく、何だって俺たちが地球連邦の指揮下に入らなきゃなんねえんだ!」

 メルキは、苦笑して言った。

「仕方ありません。大統領からの直々のご命令ですから。階級が上の、土方宙将に敬意を払い、その命令に従え、というのがその命令です」

「それが、納得行かねえって言うんだよ! テロン人の軍隊の階級なんて、俺たちには関係ねえじゃねえか!」

「ここは、我々が治めているマゼラン銀河ではなく、天の川銀河ですから、諦めましょう。それに、土方宙将は、あのヤマトの艦長だった沖田十三の盟友なんだそうです。きっと、優秀な指揮官なんでしょう」

「言われなくても分かってるよ! だがなぁ、おかしな作戦で俺たちの艦隊を犠牲にするようなら、従う気はないからな」

「それは、ごもっとも。私も、同じ意見です」

 バーガーは、なんだかんだ言っても、命令には従う気らしい。それでもまだ、ぶつぶつと不満を垂れていた。

 その時、通信士が報告をしてきた。

「艦長、司令。ガミラス回遊艦隊のルッツ・カーゼット大佐から通信が入っています」

「あーん? あいつか……。繋げ!」

 スクリーンには、カーゼットの姿が映しだされた。

「バーガー大佐。カーゼットだ。我々は、今からここを離れ、旧銀河方面軍基地……通称ギャラクシーのあった座標に向かう。間もなくデスラー総統たちが、帰還するのでな。我々は、それを迎えて合流するつもりだ」

 バーガーは、カーゼットにも、不機嫌な様子を隠さなかった。

「さっさと行きやがれ! 目障りだ」

 カーゼットは、怪訝な表情をした。

「随分と嫌われているんだな」

 バーガーは、かっとなって大きな声を出した。

「お前は、親衛隊の生き残りで、ガミラス正規軍の裏切り者で反乱軍だった。それに、お前らは、ガトランティスの犬に成り下がって、俺の艦隊を襲ったこともあったよなぁ。俺は決して忘れてねえからな!」

 カーゼットは、ため息をついた。

「なるほど。だが、我々も、スターシャ女王救出のため、デスラー総統と共に戦いに参加することになるだろう。その時、あなたが、後ろから撃たないことを祈る」

「うるせえ、さっさと行け!」

 スクリーンから消える間際に、一瞬カーゼットが苦笑いするのが見えた。

「ったく、どいつもこいつも……!」

 艦長メルキは、バーガーをなだめながら言った。

「もうすぐ、土方宙将との最初の打ち合わせの時間です。くれぐれも、失礼の無いようにしましょう」

「分かってるって!」

 再び、通信士がバーガーに声をかけた。

「司令、今度は空母ミランガルのリッケ大佐から通信です」

 バーガーは、それを聞いて、いらいらを収めようと、大きく息を吐き出した。

「よし、繋げ」

 スクリーンには、ネレディアとランハルトの姿が映っていた。

「フォムト」

「よう、ネレディア。それに、デスラー大使」

 ネレディアは、彼の様子から、先程までいらついていたであろうことを察した。

「……大丈夫か?」

「何でもねえよ」

 ネレディアは、彼が何かに不満を持っていることを察していたが、敢えて触れないようにした。感情的になりやすい彼が、自分で抑えようとしているのがわかったからだ。

「私たちは、シャルバート教信者の拠点を探すと言う、ムサシの護衛を要請された。我々は、デスラー大使と話し合って、これに同行することにした。なるべく早く戻り、戦闘に参加する。それまでは、頼んだぞ」

「任せろって」

 ランハルトは、バーガーに向かって口を開いた。

「既に、四国の一時的な同盟条約を結んだ。我々の任務は、ガトランティス艦隊の露払いと、イスカンダル人の救出だ。そして、この戦いの要である、地球の波動砲搭載艦艇を守り、対白色彗星戦に備えることだ。それを忘れるな」

「分かってますって。俺は、ガトランティスの野郎どもを叩きのめせればそれでいい」

 ネレディアは、バーガーのことを急に心配になった。

「フォムト……。お前、まだ妹のことで、ガトランティスにこだわっているのか?」

 バーガーは、頭を振った。

「そうじゃねぇ。だが、俺たちと同じような思いをする奴を、これ以上増やしたく無いだけだ」

 ネレディアは、バーガーの言葉に、満足そうに頷いた。しかし、横にいたランハルトは、複雑な表情をしている。

「だが俺は、空母ダレイラと、ガゼル司令やバルデス艦長たちを殺られたことを忘れることは出来ん。これは、彼らの弔い合戦でもあるのだ。必ず、任務を成功させる。しかし、問題は、ガトランティスに囚われたスターシャ女王たちの救出だ。彼女たちを助け出さない限り、全力で戦うことは出来ない。ボラー連邦軍からの情報によれば、奴らはあの大要塞を白色彗星化することに成功したらしい。そこに、スターシャ女王たちは囚われていると考えるのが妥当だろう。つまり、そこにいきなり波動砲を撃ち込むわけにはいかないということだ。奴らは、その為に、女王たちを殺さずに拉致したのだろう。困難な任務になるのは間違いない」

 バーガーは、それに大きく頷いた。

「ところで、どうして大使はネレディア……リッケ大佐と同行することに?」

 ランハルトは腕を組んだ。

「俺の秘書ケールは、元々ガルマン帝国出身だ。彼が言うには、シャルバート教には、不思議な伝説があると言う。かつて強大な力を持っていたシャルバートは、その力で銀河に平和をもたらしていたと言う。そして、滅び行く星ぼしに救済の手を差しのべ、あまねく星ぼしに平穏をもたらしていたと。人々が願うとき、マザー・シャルバートはその姿を現し、皆を救ってくれると信じられている……らしい。この話を聞いて、何か感じないか?」

 ネレディアも、バーガーもそれを聞いて思い浮かぶのは、たった一つしかなかった。

「イスカンダル……」

 ランハルトは頷いた。

「そうだ。ケールや、叔父のアベルトは、マザー・シャルバートとは、イスカンダルの女王のことに違いないと考えて、それを信じて行動している。今回のシャルバート教の拠点捜索と言うのは、古代が言い出したことだが、彼の性格から言って、純粋に人々を助けたいとの思いから出たことだろう。しかし、この話の裏には、イスカンダルの大きな秘密が絡んでいるように俺は思う」

「大きな秘密とは……?」

「まだ俺も分からない。だが、ガルマン帝国中に散ったイスガルマン人を、ガトランティスが危険な存在だとして狙っているとしても、それを完全に根絶やしにするのは、はっきり言って無理だ」

 ネレディアとバーガーは、ランハルトが何が言いたいのか、掴みかねていた。

「奴らは、これまで、宇宙のテクノロジーの奪取を大きな目的としていた。それで、各地で科学者を拉致して、科学奴隷などと言うものを抱えて、様々な兵器開発を行っている。ひょっとすると、奴らの本当の目的は、イスカンダル人そのものでは無く、イスカンダルのテクノロジーが狙いなのかも知れない。地球へ赴任する前に、ユリーシャ様に確認した所では、イスカンダル星には、ガトランティスが狙うようなテクノロジーは何も無いと言う。そうであれば、イスカンダル人が移民した時に運び出したのかも知れない。そして、シャルバート教の伝説は、このことと、何か関係があるのかも知れない。俺は、それを確かめてみようと思う」

 ネレディアも、バーガーも、雲をつかむような話で、どう受け止めて良いか分からずにいた。

「まあいい。俺だって、確信がある訳じゃない。だが、念の為、少しだが、まだ確かめてみる時間はある」

 

 その後、ムサシの周囲に移動した接近したミランガルには、複数の航宙機が接近していた。

 ヤマトから、揚羽が乗るコスモタイガーと、第七艦隊から、空母シナノに一度戻って機体を乗り換えた山本のコスモタイガーだった。複座式の山本の機には、後席にルカを乗せていた。

「あんた、揚羽っていうの? いい腕のパイロットだって、篠原から聞いているよ!」

 揚羽は、通信機越しに突然話し掛けられて、戸惑っていた。

「は、はい。隊長がそんなことを?」

「篠原がそう言うなら、信用してやるよ。ムサシの護衛で、私もルカと一緒に行くから、よろしく」

「もしかして、ルカもそっちに乗ってるんですか?」

 山本は、少し後ろを振り返って、ルカに返事をするように合図した。

「……久しぶりだな、アゲハ。またよろしく頼む」

 揚羽は、ルカとの再会に少し高揚していた。彼女の乗艦が撃沈されたが、生き残ったということは知っていた。その後、彼女がどのような心中でいるのか心配していたが、どうやら元気そうなので、彼はほっとしていた。

「じゃあ、そろそろ、ミランガルに着艦するよ! しばらく、あの空母が、私たちの家だ」

 

 それからしばらくして、ムサシと、ネレディアの空母ミランガル、そして彼女が率いる駆逐艦十六、巡洋艦五の艦隊が、惑星アマールから旅立って行った。

 

続く…




注)pixivとハーメルン、及びブログにて同一作品を公開、または公開を予定しています。
注)ヤマト2202の登場人物は、役割を変更して登場しています。
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