宇宙戦艦ヤマト2199 白色彗星帝国の逆襲 作:とも2199
ボラー連邦のとある星系――。
「行くぞ、みんな!」
「おう!」
「やってやるぞ!」
「この時を、ずっと待ってたんだ!」
「マザー・シャルバートは、俺たちを見守っているぞ!」
男たちは、ある者は雄叫びを上げ、ある者は歓喜の笑い声を上げていた。武装した彼らは、一団となって、宇宙艦隊にそれぞれ乗り込んで行く。
そこは、彼らの母星のある星系の外縁部にある、準惑星の小さな基地だった。長い年月をかけて、着々と装備や艦を手に入れ、いつの日か反乱を起こしてボラー連邦を追い出そうと、密かに画策していたのだ。シャルバート教の過激派組織は、これを長年支援し続け、ついに反乱を起こすに至ったのである。
彼らに発破をかけていた男たちのリーダー、ヒネルは、艦隊へ順調に乗組員が乗り込んで行くのを見守り、ほっとしたように背後に控えていた男を振り返った。
「そろそろ俺も行く。短い間だったが、お前と会えて良かった」
背後にいた男、フラーケンは、複雑な表情で彼を見つめた。
「……ヒネル、どうしても行くのか」
「ああ」
「俺は警告した。ガトランティスは、お前たちの味方じゃないと」
「分かっている」
「分かっていて、それでもやるというのか」
「今しか無いんだ。今やらなければ、俺たちは、永遠に俺たちの星を取り戻すことは出来ない。俺たちは、何百年にも渡って、ボラー連邦に支配されてきた。自由な発言も出来ず、監視され、搾取されて来たんだ。こんなことは、もう終わりにしなければならない。それが、今なんだよ」
「ガトランティスがここへ来たらどうするつもりだ」
「そいつらも、戦って追い出すまでさ」
「ボラー連邦の本星が落とされたんだぞ。敵う相手だと思っているのか?」
「やってみなければ、わからんさ。フラーケン、心配してくれてありがとう。それに、色々な情報も、本当に助かった。お前には感謝している」
彼は、ガミラス式の敬礼をした。
「確か、こうだったよな。合っているか?」
フラーケンは、沈痛な表情で、それに答えた。
「ああ、合っているぞ」
フラーケン自身も、ガミラス式敬礼のポーズを取るため、右腕を上げた。
「……もう、俺は何も言わん。健闘を祈る」
ヒネルは、にやりと笑うと、踵を返して去って行った。
「……隊長、いいんですかい。あいつらを行かせちまっても」
フラーケンの隣に立っていたハイニは、おろおろとしている。
「……」
「隊長……?」
フラーケンは、ハイニに手で合図すると、彼らとは反対方向に停泊させていた次元潜航艦へ向かって歩き始めた。ハイニは、慌てて後を追う。
「マゼラン銀河でも、デスラー総統が統治している時代に、俺たちは彼らのような人々を大勢見てきた。だが、俺たちは命令に従い、彼らを鎮圧する為に戦ってきた。バレル大統領が統治する今でこそ、そんなことはほとんどやらなくなったとは言え、その事実は消えない。俺たちがこれまでやって来たことは、ボラー連邦の連中と何ら変わらん」
フラーケンは、前方を睨んだまま、ゆっくりと進んで行く。
「ハイニ、もう俺たちが出来ることは無い。彼らの戦いぶりを見守ろう」
「へ、へい!」
二人の姿は、次元潜航艦のハッチから中へと消えた。
数時間後――。
反乱を蜂起したヒネル率いる三十隻の艦隊は、彼らの母星に駐留するボラー連邦艦隊向かって進軍していた。
「見ろ、奴らは大幅に数を減らしている。情報通り、ガトランティスの侵攻で、守りが手薄になっている。奴らを叩くのは今だ!」
「おう!」
その号令とともに、艦隊は速度を上げ、ボラー連邦艦隊に襲いかかって行った。
不意を突かれた形となったボラー連邦の艦隊二十隻は、陣形を整える間もなく、反乱軍の攻撃を受けて被弾した。しかし、ボラー連邦の艦隊も、慌てて反撃を始め、反乱軍の艦隊も被弾して、戦闘不能になる艦が、隊列を離れて行った。
「怯むな! 我々の方が数で勝っている! 突撃!」
ボラー連邦の艦隊の中央に突撃した反乱軍は、至近距離から砲撃を加え、双方の被害が広がって行った。
そんな中、ヒネルの艦も遂に被弾してしまい、隊列から離れて行った。
「大破! 艦のあちこちから火が出ています! 死傷者多数!」
「くそ……! みんな、後は頼んだぞ! 勝利は目の前だ!」
ヒネルは、大破した艦を戦場から少し離れされ、そこから戦況を見守った。
「隊長……!」
ヒネルは、レーダー手の青ざめた顔を見て、ダメージコントロールの指示の手を止めた。そして、レーダー手の座席に行くと、彼の指す表示を眺めた。
「見てください。何か大きな物体がワープアウトしました。こいつは、ボラー連邦艦隊ではありません!」
「それじゃあ、何だか分からんぞ」
彼は、センサーを操作し、その物体の様子を急いで調べた。
「物体は、三十キロほどの大きさで、表面温度は約五千度。プラズマの輝きで覆われています。こちらに、急速に接近中です!」
ヒネルは、それを聞いた途端、真っ青になった。
「こ、これは……! ガトランティス!」
レーダー手は、呆気にとられている。
「フラーケンから聞いていた彗星だ。まずいぞ、艦隊に、退避命令を出さなければ……!」
ヒネルは、艦長席に戻ると、通信マイクを掴んだ。
「全艦、直ちに戦闘を中止し、この宙域から退避しろ!」
「隊長! だめです、通信アンテナが破損しています。通信は届きません!」
ヒネルは、絶望感に襲われていた。
「ば、ばかな……。もう一息だったというのに。こんなことが……!」
戦闘中だった反乱軍も、ボラー連邦艦隊も、少し遅れて白色彗星が接近するのに気がついた。しかし、思いの外、白色彗星は高速に接近して来ており、退避は間に合いそうもなかった。
そうしている間にも、艦隊は次々に白色彗星の超重力に捕まり、操舵不能になって周囲を浮遊し始めた。艦と艦とが衝突し、爆発した破片が、白色彗星に飲み込まれて行く。
ヒネルは、何も出来ないまま、ただそこに大破した艦を漂わせ、その様子を見ているしかなかった。
「物体は、すべての艦を飲み込んでしまいました! 我々の母星へ向かって行きます!」
ヒネルを始めとした彼らは、自らの故郷へと、白色彗星が接近するのを見守った。
白色彗星が最接近した辺りを中心にして、母星の雲は異常な高速で消し飛び、海が波立つのが、宇宙から見ても分かった。
「途轍もない強風と、津波が荒れ狂っているぞ……。あ、あれでは、我々の母なる星は……」
その言葉通り、地表には、信じられないほどの強風と竜巻が発生し、津波は都市に襲いかかっていた。白色彗星が最も近づいた地表では、その高熱に焼かれ、あらゆるものが炎を上げていた。
ほんの僅かの時間で、あっという間に彼らの母星のすべてが失われて行った。
それから数時間後――。
白色彗星は、徹底的にその惑星の文明を破壊すると、静かにその場を立ち去って行った。
十分な時間が経ったと判断したフラーケンは、部下に指示をした。
「浮上しろ! 生存者を捜索する!」
「了解、次元タンクブロー!」
次元の狭間から浮上した次元潜航艦は、先程までボラー連邦と反乱軍が戦っていた宙域をゆっくりと移動した。
一隻の船から、投光器を使った通信らしきものを探知したフラーケンは、そこに艦を移動させ、生存者の捜索を行った。
そうして、ヒネルを始めとした僅かに生き残った乗員を、そこから救い出すのに成功した。
ぼろぼろに変わり果てていたヒネルは、フラーケンの差し出す手も取らず、ただそこで動かずに泣いていた。
手を引っ込めたフラーケンは、彼に言った。
「辛いだろうが、お前には、まだやってもらいたいことがある。気持ちが落ち着いたら、教えてくれ」
「俺たちは、何もかも失ってしまった。俺たちが、何が出来るって言うんだ」
フラーケンは、少し黙って彼の様子を見た。絶望に打ちひしがれる彼に、希望となってもらわなければと、考えていた。そして、優しく彼に声をかけた。
「俺たちと一緒に、この銀河を救うのさ」
続く…
注)pixivとハーメルン、及びブログにて同一作品を公開、または公開を予定しています。
注)ヤマト2202の登場人物は、役割を変更して登場しています。