宇宙戦艦ヤマト2199 白色彗星帝国の逆襲   作:とも2199

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宇宙戦艦ヤマト2202とは別の世界線を歩んだ宇宙戦艦ヤマト2199の続編二次創作小説「白色彗星帝国の逆襲」です。「白色彗星帝国編」、「大使の憂鬱」、「孤独な戦争」、「妄執の亡霊」、「連邦の危機」、「ギャラクシー」の続編になります。


白色彗星帝国の逆襲71 同盟の危機Part2

「敵艦隊の待ち伏せです! 敵艦隊、ボラー連邦、ガルマン帝国、ガミラス、地球連邦の連合艦隊です。総数、約三千隻!」

 カミラとゲーザリー参謀長官、そして艦隊運用責任者たるユーゼラー提督の三人は、白色大彗星の航行制御室で、それぞれに用意された座席に座り、戦況を見守っていた。彼らの背後には、侍女としてシーラが立ったまま待機していた。

「たったの三千隻。それでも、私たちが出現する座標を予想してそれだけ揃えただけでも、頑張った方ね。ガルマン帝国領はもう目の前。彼らを踏み潰して進みなさい!」

 カミラは、大きく笑いながら、口元に手を当てた。白色大彗星を有する自軍の艦隊は、約二万五千隻からなる大艦隊で、圧倒的に有利だった。

 しかし、ユーゼラーは、同じように笑うことは無く、航行制御室の兵士に命じた。

「地球艦隊の位置を捕捉しろ!」

 カミラは、怪訝な表情でユーゼラーの顔を覗き込んだ。

「ユーゼラー?」

「彼らは同盟を結び、連合艦隊を構成しています。地球艦隊の波動砲は、我々にとって脅威の対象。この白色大彗星と言えども、波動砲の攻撃を受ければひとたまりもありません。それに、我々の艦隊は、数こそ多いが、その多くが自動人形で運用する無人艦隊です。用心するに越したことはありません」

 しばらくすると、レーダー手が報告して来た。

「敵艦隊の中央に、地球艦隊は固まっています。その側面を、ボラー連邦とガルマン帝国艦隊、そして前面をガミラスの艦隊が取り囲んで守っているようです」

 ユーゼラーは、続けて指示を出した。

「よし、予定通り対地球艦用の機動要塞を移動させ、攻撃用意! 敵艦が波動砲を使用する兆候を見逃すな!」

 カミラは、ほほほ、と笑い出した。

「ユーゼラー、心配し過ぎ。何の為に、イスカンダル人を生かしたまま、ここに置いていると思っているの? 地球人とガミラス人は、この白色大彗星には攻撃出来ない。そんなことをすれば、彼らの敬愛する聖なるイスカンダルの皇族たちが失われてしまうのよ? 絶対に私たちに攻撃なんて出来ないわ」

 ユーゼラーは、仕方なく、そこで一旦指示するのを止めた。

「女帝のご命令とあらば……。各員、今の指示を中断!」

 それまで黙っていたゲーザリーは、そこでようやく口を開いた。

「カミラ様。ここは、ユーゼラーに任せよう。彼の言うとおり、用心するに越したことは無い」

「あなたがそう言うなら……」

 ゲーザリーと顔を見合わせたユーゼラーは、小さく頷いて再び指示を出した。

「先程の指示を再開する! 各員、もう一度準備急げ!」

 そんなやり取りを、背後からシーラは黙って見つめていた。

 

 その頃、土門は、ヤマトの戦術長席で波動砲の発射準備を進めていた。艦内には、波動砲のエネルギーが充填される音が鳴り響いている。

 航海長の大田は、土門の方を見て言った。

「土門、艦の操艦を渡す。頼むぞ!」 

「任せてください!」

 土門は、ターゲットスコープの中央に白色大彗星を捉えた状態で、艦を動かした。そして、その狙いを斜め上方の端へと動かして固定した。

「艦長、白色彗星の向かって左上方に狙いをつけました!」

 徳川太助も、北野に報告した。

「波動砲のエネルギー充填は、既に完了しています」

 北野は、彼らに頷くと、通信マイクを掴んで全艦に指示した。

「これより、ヤマトは白色彗星の左上方へ波動砲を発射する。その効果が認められなければ、主力戦艦各艦の拡散波動砲攻撃に切り替える。各艦、そのまま待機!」

 ヤマトの横に主力戦艦四隻が並んで少し前方に進んだ。ヤマトと四隻の主力戦艦は、それぞれ波動砲の発射準備を整えようと、波動砲口が光を放っていた。北野の号令があり次第、続けて波動砲を撃つ為だ。

「よし、土門。十秒後に波動砲発射だ。カウントダウンを開始してくれ」

 北野の命令で、土門は発射体制へと移行した。

「了解。総員、耐ショック、耐閃光防御。波動砲発射十秒前。セーフティロック解除!」

 ヤマトの艦橋の乗組員は、全員耐閃光ゴーグルを頭からかぶって準備した。そして、土門が安全装置を解除した為、波動砲の突入ボルトが発射口へ押し込まれ、甲高い波動砲の充填音が鳴り響いた。

「五、四、三……」

 土門は、白色彗星の左上方をターゲットスコープの中心に捉えたまま、波動砲のトリガーに指をかけた。

 この攻撃で、もしも白色彗星を破壊してしまったら?

 取り返しのつかないことをヤマトが行ってしまうかも知れない。あのスターシャを、彼らの手で殺めてしまう可能性が頭をよぎる。

 誰もが、その不安を心の奥底にしまって、前方の白色彗星を見つめていた。

「二、一……!」

「発射!」

 土門は、波動砲のトリガーを力一杯引いた。

 

「ユーゼラー提督! 敵の波動砲が発射される兆候を捉えました!」

「何!?」

 ユーゼラーは、対波動砲用兵器の準備が、あとわずかで完了するところが、間に合わなかったことに焦りの色を見せた。そのわずかな遅れは、先程のカミラの指示が原因だった。それでも、最後まで対策を打つことを、ユーゼラーは諦めなかった。

「敵の攻撃に備えよ! 保護シールドの展開用意!」

 

 ヤマトの波動砲口に、大きなエネルギーの塊が発生した。そしてそれは、轟音を発すると、前方に向けて放たれた。

 波動砲のエネルギーは、次元を切り裂くように真っ直ぐに白色彗星へと向かっていった。

 その輝く大きな光の束を、ボラー連邦艦隊も、ガルマン帝国艦隊も、唖然として眺めていた。

 まだ、双方の砲撃が始まってもいなかった静かなその空間に、波動砲の光だけが伸びて行く。

 そして、土門の狙い通り、白色大彗星の左上方にかすめるように、波動砲の光は通り過ぎて行く。

 白色大彗星に波動砲がかすめた場所は、大きな爆発と共に、稲妻のような輝きが覆った。白色大彗星の表面は、その稲妻が次第に全体を覆っていき、オレンジ色の輝きが全体を包んで行った。

 土門は、耐閃光ゴーグルを外すと、前方の様子を肉眼で見つめた。

「ああっ……! 白色彗星が、崩壊してしまう……!」

 北野は、歯を食いしばってその様子を睨んだまま、動けなかった。

 

「見ろ!」

「あれが、波動砲の威力か!」

 ボラー連邦艦隊、そしてガルマン帝国艦隊でも、波動砲が白色大彗星を一撃で致命傷を与えたと思っていた。

「恐るべき兵器だ。あれが、我軍の手に入れば、戦いの形が大きく変わる……!」

 ハーキンス中将も、ガイデル提督も、その光景を見て、同じことを考えていた。

 

「被弾!」

 白色大彗星の内部は、大きな揺れが襲っていた。

 カミラとゲーザリーは、椅子から弾き飛ばされて、床に転がっている。

「ああっ……! な、何ということ!」

 ユーゼラーは、それでも椅子にしがみついて、大きな声で叫んだ。

「直撃は免れた! 直ちに、隔壁閉鎖! 保護シールドを展開しろ!」

「はっ、被弾した箇所に、保護シールド展開します!」

 白色大彗星の本体である大要塞の表面では、人工太陽が放つブラズマエネルギーが、破損した箇所で内部に侵入し、内部が高温に焼かれていた。

 しかし、ブラズマエネルギーから守る保護シールドが緊急展開されたことにより、高温に焼かれた破損箇所からの内部へのエネルギーの逆流が抑えられた。そして、隔壁が閉鎖したことにより、次第に被害は収まって行った。

 それを確認したユーゼラーは、すぐに次の指示を発した。

「次弾が来るぞ! 直ちに対波動砲用兵器を使う!」

 

「見て!」

 西条未来の叫びに、北野は目を凝らした。白色大彗星を覆っていたオレンジ色の輝きが次第に収まって行くのが見て取れる。

 土門が、嬉しそうに言う。

「よ、良かった……。てっきり、白色彗星を壊してしまったかと思っていたよ……」

 北野も、彼と同じように、ほっとして安堵した。しかし、白色彗星が崩壊しなかったことに、安心する自分を再び鼓舞しなければならなかった。

「シンマイ! 白色彗星の様子を確認してくれ。あのブラズマエネルギーが消滅しそうか知りたい」

「はい。今確認中です!」

 新米は、センサーで白色大彗星の変化を大急ぎで探っていた。

「駄目です! 一時的に、プラズマエネルギーの逆流と思われる現象が起こっていましたが、今は安定し、元に戻っています!」

 やはり、直撃させなければ、あれを沈黙させるのは出来ないのでは……。

 北野の脳裏に、嫌な考えがよぎった。しかし、彼はまだ、試してみなければならなかった。

「……分かった。ヤマトの収束波動砲による攻撃では、効果が無いものと判断した。主力戦艦の拡散波動砲による攻撃に切り替える。主力戦艦一番艦は前へ! 合図したら波動砲発射だ」

 

 その頃、ユーゼラーが指示した対波動砲用兵器を搭載した機動要塞は、慌ただしく準備を進めていた。

「攻撃準備!」

 それは、白色大彗星の影から現れた。球体が複数接続された、全体的に丸みを帯びた形状の巨大な物体だった。球体に刻まれた溝の光が急速に回転している。

「陽子シンクロトロンブースター正常稼働、陽子ビーム加速中。発射五秒前! 五、四、三、二、一!」

 ユーゼラーは、その機動要塞へと命じた。

「ブラックホール砲、発射!」

 その機動要塞の二門のビーム発射管から、眩い光の帯が射出された。

 

「高エネルギー反応! 敵、機動要塞から、陽子ビームが艦隊の前方に向かって来ます!」

 西条の報告に、北野は、慌てて確認した。

「着弾座標は!?」

「我々のかなり前方、ガミラス艦隊の更に前です! 命中することはありません!」

 北野は、その攻撃が意味するところを一瞬考えたが、波動砲の攻撃準備を優先することにした。

「主力戦艦一番艦は、そのまま攻撃用意!」

 

 陽子ビームは、地球艦隊を守ろうと前方にいたガミラス艦隊の目前に着弾した。

 ガミラス艦隊のメルキ中佐は、固唾を飲んでそのビームの様子を眺めていた。

「メルキ艦長! ビームが着弾した空間に、空間の揺らぎが観測されています!」

「何だいったい!? 確認急げ!」

 そうしている間にも、前衛の駆逐艦の一部が、空間の揺らぎに引き込まれて行く。

「あ、あれは! 艦長! マイクロブラックホールが前方に生成されています! 直ちに退避命令を!」

「何だと!?」

 メルキ中佐は、目を見開いて、前方の様子を見つめていた。

 

 それに驚いていたのは、彼らだけではなかった。

 ボラー連邦のハーキンス中将は、その兵器のことをよく知っていた。

「あ、あれは……本星で建造していた試作機動要塞ゼスパーゼではないか……! なぜ、ガトランティスがあんな物を使っている!? 一隻しか建造されていなかった筈だ。それも、試験運用中に事故で失われたと聞いていたが……?」

 ハーキンスは、その理由を考えていて、一つの可能性に気がついた。

「そう言えば、ガトランティスの奴らには、ゴルバの建造の為の資源惑星を与えていたはずだ。ゴルバを建造する目的の工場をフル回転させて、ゴルバの量産をさせていた……。まさか、そこで、我々の機動要塞を新たに建造したのか? しかし、どうやって? あれを建造する技術情報など、奴らに開示していないぞ……?」

 

 ユーゼラーの横には、シーラが立って助言していた。

「ユーゼラー様。ブラックホール砲を、次はこの座標に。これでもう、波動砲は役に立ちません」

 ユーゼラーは、彼女に頷き、艦内の兵士に伝達した。

「ありがとう。ボラー連邦の科学奴隷は、君らにあれの正しい製造法を明かしてくれたようだな」

 シーラは、少し首をひねっている。

「いいえ。彼らは、どうしても明かさなかったので、サーダは、直接脳から情報を引き出して製造法を入手しました」

 ユーゼラーは、その話に少し驚いていた。

「そ、そうだったのか……。ならば、正確なコピーが作ることが出来たということだな」

「いいえ。あれは試作品で、問題点がいくつかありましたので、設計を変更して完全に機能するようにしました」

 ユーゼラーは、彼女たちの科学奴隷の筆頭としての暗い一面を知り、少し恐れを成した。

 

「主力戦艦の拡散波動砲、発射準備完了したと報告がありました!」

 北野は、報告を受けて通信マイクを掴んだ。

「待ってください!」

 新米は、北野に大きな声で言った。その剣幕に、北野は、手を止めて新米の方を見た。

「どうした、シンマイ?」

 新米は、前方に展開したマイクロブラックホールを分析し、波動砲を発射した場合の影響をシミュレーションしていた。

「艦長。波動砲を前方に撃つと、あのマイクロブラックホールの超重力によって捻じ曲げられた空間の影響で、波動砲は直進出来ません。恐らく、空間の歪みに沿って方向が変わりこちらの方角へ行くでしょう」

 新米は、スクリーンを使って波動砲の行方を指し示した。

「む……。これは、ガルマン帝国艦隊のど真ん中に向かってしまうのか!? 方角を変更して、影響を受けないように出来るか?」

「艦長! 再び、敵の機動要塞から陽子ビームが来ます!」

 そうして話している間にも、陽子ビームによって作られる新たなマイクロブラックホールが生成されていた。

「これでは……。どの方角に飛ぶか、シミュレーションをやり直す必要があります。それに、その間にまた新たにブラックホールが生成されてしまえば、また計算し直しを……。このままでは、波動砲を撃つことは出来ません!」

「ああっ……!」

 今度は、西条が声を上げた。

「今度はどうした!?」

 北野は、彼女の様子を確認した。彼女は、スクリーンに、それを映し出した。

「見てください! ボラー連邦艦隊が、この宙域から離脱して行きます!」

 スクリーンに映る千隻はいたはずのボラー連邦艦隊の光点は、次々に消滅して行った。

「こっ、これは……! 市川、ボラー連邦艦隊から、連絡はあったのか?」

 通信士の市川純は、首を振った。

「何も連絡はありません……。あ、ガミラス艦隊のメルキ中佐から通信です!」

「スクリーンに出せ!」

 スクリーンが切り替わり、そこにメルキ中佐の姿が映った。

「北野艦長。波動砲による攻撃は、不可能になったと見受けられるが、どうなっている?」

 北野は、残念そうに頷くしかなかった。

「はい。その通りです」

 メルキは、頷き返した。

「分かった。我々の前衛艦隊の一部が、マイクロブラックホールに捕まり、航行不能になっていた。先程、どうにか牽引ビームで救出には成功したが、このままでは、間もなくガトランティス艦隊の射程圏内に到達してしまう。敵艦隊の数はあまりにも多い。白色彗星の撃破に失敗したのであれば、もう勝ち目は無い。私は、撤退すべきだと思う。ま、ボラーの連中は、先に逃げ出したようだがね」

 北野は、目前に迫りくる白色大彗星と、数万のガトランティス艦隊のことを考えた。

「……仰る通りですね。ガルマン帝国艦隊にも連絡します。すぐに撤退しましょう」

「よし、ではまた後で会おう。お互い無事にな」

 スクリーンから、メルキ中佐が消えた。

 北野がガルマン帝国艦隊に連絡を取ろうとしたその時、相手から連絡が入って来ていた。

 今度はスクリーンに、ガイデル提督の姿が映っていた。

「北野艦長! 波動砲の攻撃は、どうなっているか!?」

「ガイデル提督。敵が放ったブラックホールを生成する兵器により、波動砲を撃つことが出来なくなりました。申し訳ありませんが、ここは撤退しましょう。体制を立て直し、増援を受けた上で対策を立てましょう」

 ガイデルは、憎々しげに迫りくるガトランティスの方を見つめている。

「ここを突破されれば、もうガトランティスは我が国の領土に侵入してしまう。だが、このままでは、確かに我々は全滅だな。撤退は了解した。しかし、先に逃げ出したボラー連邦のハーキンスには失望させられた。恐らく、もうあいつらは我々に協力することは無いだろう。事実上、ボラー連邦との同盟関係は、さっきの敵前逃亡で終わりになると思う。君らは、それでも一緒に戦ってくれるのだろうな?」

 北野は、少し躊躇して言った。

「我々は、政府の決めた方針に従うまでです」

 ガイデル提督は、その言葉を受けて頷いた。

「うむ。それで良い。後でまた会おう」

 そう言い残すと、ガイデルの姿は、スクリーンから消えた。

「艦長! ガトランティス艦隊の射程圏内まで、あと三分です!」

 北野は、通信マイクを掴むと、全艦に指示をした。

「全艦隊に告ぐ。作戦は失敗と判断した。撤退する。直ちにワープでの脱出を用意!」

 迫りくるガトランティス艦隊と白色大彗星を目前に、ガルマン帝国艦隊、ガミラス艦隊、そして地球艦隊は、ワープで次々にその宙域を離れて行った。

 

続く…




注)pixivとハーメルン、及びブログにて同一作品を公開、または公開を予定しています。
注)ヤマト2202の登場人物は、役割を変更して登場しています。
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