宇宙戦艦ヤマト2199 白色彗星帝国の逆襲   作:とも2199

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宇宙戦艦ヤマト2202とは別の世界線を歩んだ宇宙戦艦ヤマト2199の続編二次創作小説「白色彗星帝国の逆襲」です。「白色彗星帝国編」、「大使の憂鬱」、「孤独な戦争」、「妄執の亡霊」、「連邦の危機」、「ギャラクシー」の続編になります。


白色彗星帝国の逆襲72 反乱の兆し

 その男たちは、鉱山の横穴の暗い穴ぐらにいた。

 

 その惑星の過酷な自然環境により、地熱から来る高熱が、宇宙服を装着した男たちの身体にも容赦無く襲い掛かっていた。真っ白だった宇宙服は、いつしか熱に焼け、泥にまみれて薄汚れていた。

 男たちは、原子力ジャンボーのドリルを回し、巨大なショベルカーで、採掘された鉱物をひたすら大きな地上走行車両の荷台に載せる作業を行っていた。

 これらの採掘された資源は、同じ星系に設けられた兵器工場に運ばれる。そこでは、宇宙戦闘用の艦船の建造を始めとした、様々な兵器生産が行われるのだ。

 このような資源惑星と兵器工場惑星は、ボラー連邦でも、ガルマン帝国でも複数の場所を確保しており、双方とも兵器生産に励んで、戦力の維持に努めていた。

 もっぱら、そのような資源惑星は、劣悪で過酷な環境であることが多く、普通でも、地位の低い人間しか雇うことは出来なかった。そうして、イスガルマン人や、帝国の劣等国民が、その役割を負う場合がほとんどだったのだ。

 ここでは、帝国に反抗的だと言う理由で逮捕されたイスガルマン人や、帝国の劣等国民が働かされていた。そして、やがて死刑にする可能性が高い者たちが集められ、作業に従事させていた。過酷な環境であるが故、酷く体調を崩したり、場合によっては事故で命を落としたりする者が多い。そうやって、欠員が出れば、帝国は新たに罪を冒した者を連れて来るのである。本当に罪を冒したのかどうかは、話は別だが。

 

 原子力ジャンボーを操作していた男は、突然ドリルが動かなくなり、悪態をついていた。

「くそ! このポンコツが! また故障しやがった!」

 助手席にいた男は、驚きのあまり声も出なかった。

 投光器の光が瞬き、原子力ジャンボーのコックピットが照らされた。

「そこの! 故障したのなら、すぐに修理しろ! 今日のノルマに影響するぞ! 早く車外に降りて作業にかかるんだ!」

 ガルマン帝国の作業管理官が、拡声器を使って指示をしていた。

 助手席の男は、震え上がっていた

「ど、どうします? 車外に長時間出ていると、放射線にやられて病気になるって聞いたんですが」

 運転席の男は、怒りに震えていた。

「ああん!? これだからイスガルマン人は!」

 コックピットの足もとに、突然大きな音が鳴った。その男が、思い切り蹴ったからだ。

 イスガルマン人と呼ばれた男は、ますます萎縮している。

「死にたく無けりゃ、早く外に出るんだ。やらなきゃ、放射線にやられるよりも先に、あの管理官に殺される。俺も出るから早くしろ!」

「は、はいっ!」

 二人は、車外に出るとあっという間に宇宙服が高熱に曝された。そして、宇宙服のセンサーが、外気が危険な放射線に満ちている状況だと、狂ったように警告音が鳴り続ける。

「音を消せ。気が散る」

「はっ……はい!」

 イスガルマン人の男は、慌てて腕に装着された宇宙服の制御パネルを操作して警告音を消した。だがそれは、放射線に曝される時間が、わからなくなることを意味していた。

 ようやく音が消え、二人はドリルの状態を見に行った。

「これ、見てください」

 イスガルマン人の男が指差した先で、原子力ジャンボーの油圧式のアームが折れ曲がっている。

「これはもう使い物にならねえな。恐らく、硬い岩盤にぶち当たっちまったんだろう。交換するしかねえ。車の後ろから、交換用のアームとドリルを持って来い。俺は、この溶接機のバーナーを使って、アームを切断しておく」

 男は、背中に背負って来た溶接機のバーナーを取り出すと、早速火をつけた。それを見たイスガルマン人の男は、慌てて後部に走って行った。

 周りでは、他の仲間が操作する原子力ジャンボーの轟音が鳴り響いている。

 その時、突然甲高い大きな音が響くと、他の原子力ジャンボーが、ひっくり返って横倒しになっていた。地響きがして、まるで巨大地震に襲われているような大きな揺れが襲っていた。

「い、いったい何か起こったんだ!?」

 揺れに尻もちをついたイスガルマン人の男は、それでも立ち上がって、後部に括り付けてあった交換用のアームとドリルを掴むと、急いで元の男のいる場所へと戻っていった。

 男は、嬉しそうに笑っている。

「おい、遂に始まったぞ」

「なっ、何がですか!?」

「予定通りだ。反乱軍が行動を起こしたのに違いない。既にアームは切断した。車でここを出るぞ!」

 そこにいた男たちは、一斉に車を動かして、鉱山から出ようと動き出した。横倒しになった車の乗員は、別の車に乗せてもらっている。

「おい! お前たち、勝手な行動をすれば、処罰することになるのがわかっているのだろうな!」

 ガルマン帝国の作業管理官の拡声器の声が、暗い穴ぐらに響き渡っている。

「知るかよ! 俺たちは、自由になるんだ!」

 男は、原子力ジャンボーのギアをバックに入れて、アクセルを思い切り踏み込んだ。

 男たちが運転する複数の車両は、一斉にバックで鉱山の穴ぐらを脱出して行った。

「教えてください! 何が起こっているんです!?」

 男は、後方を確認しながら、大きな声で返した。

「反乱軍は、この鉱山や鉱物の集積所を襲っている。そこに、ガルマン帝国の軍港があるだろう? そこに駐機している軍艦をすべて破壊するか乗っ取る手筈になっている! 同じタイミングで、別働隊が工場惑星の制圧にも動いている筈だ。俺たちは、やっとここを出られるんだよ!」

 イスガルマン人の男は、信じられないといった面持ちで、彼を見つめている。

「ほ、本当に?」

「本当だ! その為に、仲間が時間をかけて準備してたんだ。ガトランティスとか言う奴らが襲ってくるって、ガルマン帝国軍の配備が手薄になった今を狙ってな! 俺たちは、もう自由だ!」 

「自由……!」

 イスガルマン人の男も、満面の笑みで返した。

 男たちの原子力ジャンボーの車列は、暗い鉱山の穴から抜け出した。恒星に近いこの惑星は、昼間は灼熱地獄で、強風が吹き荒れている。この時間は明るい陽の光に包まれている筈だった。

 しかし、実際に外に出てみると、空は暗く、いつもは大きく見える太陽が見えない。大きな爆発音が断続的に響き、どこかで戦闘が行われているようだった。

「どうなってるんだ?」

 男たちは、バックギアを戻し、車を前進させながら、フロントガラスから見える空の方を見上げた。

「あ、あれは……!?」

 空には、複数の巨大な宇宙船が低空で大気圏内を飛行していた。あれが陽の光を遮っていたのだ。見上げた空には、低空で静止する大きな宇宙船の腹が見えている。それが、三隻ほど見えた。

「反乱軍だ! 見ろよ、俺たちが脱出するのを手伝ってくれている!」

 宇宙船は、空から、彼らを追って鉱山から出てきたガルマン帝国の管理官の車両に、機関砲による砲撃を加えている。管理官の車両は、あっという間に機関砲で撃ち抜かれ、横倒しになると炎上した。車のコックピットから、管理官と思われる人々が数名降りてきて、蜘蛛の子を散らすように車両から離れて逃げ出して行った。

「ざまあみろ! 俺たちを奴隷のように扱った罰だ」

 しかしその時、真上にいた宇宙船は、突然中央部から真っ二つに裂けて、金属の擦れる大きな音が鳴り響いた。そして、分断した船体は、炎を上げながらまるでスローモーションのように、地上へと落ちて来た。

「うわああ!」

 男たちの車両の真上に、みるみる宇宙船だった物が迫って来た。

 イスガルマン人の男は、迫る死の恐怖に頭を抱え込んで、ぎゅっと目を閉じた。

 しかし、コックピットの男は諦めておらず、再びバックギアに入れると、アクセルを力一杯踏みしめた。

「うおお!」

 原子力ジャンボーの車体は、ギアの軋む音をさせながら、急速に後退していた。他の車両も、右へ左へと最後の足掻きで落下する宇宙船の残骸から逃れようと逃げ惑っている。

 しかし、落下した宇宙船だったものは、次々に車両を下敷きにして行った。バックで後退した車両だけは、辛くも間一髪、下敷きになるのを逃れた。

 宇宙船の残骸は、小爆発を起こしながら、火の手があちらこちらから上がっていた。

 男は、ブレーキペダルを踏み込んで、車両を急停止させると、眼前の大惨事を呆然と見つめていた。

「いったい、どうなってやがるんだ!?」

 イスガルマン人の男も、そこでようやく目を開けて、辺りの様子を確認した。

「た……助かった……?」

 しかし、助かったと思ったのも束の間だった。空に浮かんでいた反乱軍の宇宙船は、次々に高空からの攻撃で撃ち落とされ、ばらばらになって地表に落ちて行くのが見える。

 男は、その様子を眺めて悔しそうにハンドルを両腕で叩いた。

「くそ! 反乱は失敗だったのか!?」

 彼らのいた場所の上空には、多数のガルマン帝国軍の戦闘機隊の航跡が伸びて行った。あれが、反乱軍の宇宙船を撃破したのは間違いなかった。

「戦闘機が、鉱物集積所の方へ向かって行きます!」

「もう駄目だ。このままでは、集積所を襲っている宇宙船も撃破されてしまう。くそう、情報が漏れていたのか。作戦は、失敗だ……!」

 

 同じ頃、宇宙空間では、ガルマン帝国軍の二十隻からなる艦隊は、反乱軍の宇宙船を追い詰めて取り囲んでいた。資源惑星と工場惑星を襲撃した反乱軍の十余隻の宇宙船は、追い立てられて一箇所に集結させられていた。

 反乱軍のリーダーのグワジルドは、苦渋の表情で、自分たちを取り囲む帝国艦隊の姿を見つめていた。

「どうして、作戦が漏れたんだ。我々の中にスパイが、紛れ込んでいたのか……?」

 そうしている間にも、ガルマン帝国艦隊は、砲撃を開始していた。別の仲間の船が砲撃を受け、撃沈する大きな光が、彼の船の艦橋を明るく照らした。

「我々も応戦しろ!」

 そのグワジルドの号令で、反乱軍の宇宙船からも、一斉に砲撃が開始された。

 激しい撃ち合いが行われ、一隻、また一隻と、味方の船が撃沈されて行く。

「もはや、これまでか……」

 グワジルドは、揺れる船体の中で、絶望感に見舞われていた。

 

 ガルマン帝国艦隊の方では、資源惑星の警備隊隊長は、反乱軍の宇宙船団が、少しづつ撃沈して行く様子を眺めていた。

「ふん。この程度の戦力で、我々を欺けると思っていたのか」

 警備隊隊長は、横に立つ男に微笑んだ。

「お前のお陰だ。よく、仲間を裏切って反乱軍が蜂起しそうだと報告してくれたな。約束通り、貴様を解放し、家族の安全も保証してやろう」

 その男は、苦渋の表情を浮かべている。

「はい……。ありがとうございます」

 その時だった。レーダー手は、意外な発見を慌てて報告して来た。

「隊長! 我々の後方から、急速に接近する複数の物体を探知! 魚雷です!」

 隊長の男は、艦長席から立ち上がると、大きな声で確認した。

「後方に敵が潜んでいたのか!? 貴様、レーダーのどこを見ていた!」

 レーダー手の男は、真っ青になっている。

「いっ、いいえ。レーダーには何も映っていません。どこからとも無く、魚雷だけが現れたのです!」

 そんなやり取りをしている間にも、僚艦が至近距離で爆発を起こした。

「魚雷が僚艦に命中しました! 駆逐艦一隻が大破!」

「ええい! 敵の姿を探せ!」

 再び、もう一隻が後部エンジンに被弾して、大爆発を起こして消滅した。

「早く探すんだ!」

 そこで、はたと隊長は気がついて、額から冷や汗を流した。

「まさか……。もしや、これは潜宙艦からの攻撃では……? そうだとすれば、これはボラー連邦軍の仕業か?」

 

 潜望鏡を眺めていたフラーケンは、顔を離すと後ろに振り返った。

「あんたの情報のお陰で、攻撃は成功だ。あとは、俺たちの艦隊に任せよう」

 振り返ったフラーケンの目の前に、ボラー連邦領内で救出した反乱組織のリーダー、ヒネルがいた。ヒネルは、嬉しそうに頷いた。

「ありがとう……」

 

 ガルマン帝国艦隊のグワジルドは、新たなレーダー手の報告を、顔面を蒼白にしながら聞いていた。

「長距離レーダーが、ワープで出現した敵と思われる艦隊を捉えました! 艦隊の数は……約、二百を超えています……! 艦種識別の結果、ガミラス艦隊だと思われます。しかし、敵味方識別信号は、この艦隊は敵だと示しています!」

 グワジルドは、呆然として後ずさった。

「が……ガミラスは、今は同盟国の筈だ。なぜ、我々を攻撃しようとするのだ??」

 

 デウスーラ三世の艦橋で、デスラーはスクリーンに映し出されたガルマン帝国艦隊の光点を眺めていた。

「タラン。あれが、フラーケンの報告にあった、反乱軍を鎮圧しようとしているガルマン帝国艦隊かね?」

 タランは、彼のすぐ横で頷いた。

「はっ。そうです」

 デスラーは、目を細めて尋ねた。

「反乱軍には、イスカンダルの同胞もいるのかね?」

「はい。フラーケンの調査によれば、かなりの人数が参加していると言うことです。しかし……。ガミラス政府は、現在ガルマン帝国と同盟を結んでいますが、どうされますか? 総統」

 デスラーは、小さく笑い声を上げた。

「我々は、正規軍では無いからね。それよりも、イスカンダルの同胞を守ってやらなければ」

 デスラーは、タランの方を見つめると、余裕に満ちた表情で言った。

「すまないが、軽く、ひねって来てくれるかね?」

 タランは、口元を緩めると、ガミラス式敬礼で応えた。

「はっ、承知しました。お任せください。全艦、戦闘配置! 目標、敵、ガルマン帝国艦隊!」

 

 デスラー率いるガミラス回遊艦隊は、タランの号令を受け、前衛の駆逐艦艦隊三十隻が、一斉に高速機動で突撃を開始した。

 急速にガルマン帝国艦隊に接近すると、隊列を組んだ駆逐艦の全砲塔から火を吹いた陽電子砲の光跡が、ガルマン帝国艦隊の横っ腹を薙ぎ払って行った。

 ガルマン帝国の艦船は、次々に被弾して航行不能になって行く。

 警備隊隊長は、慌てて反撃の指示を出したが、それは遅すぎた。目の前を通過するガミラス駆逐艦から発射されたミサイルが、彼の乗る艦にも一斉に着弾し、艦橋が吹き飛んだ。

 こうして、ガミラス回遊艦隊が攻撃を開始してから、わずか一分程で、ガルマン帝国艦隊は、全滅する憂き目にあっていた。

 

 反乱軍のリーダー、グワジルドは、あっという間の出来事に、呆然としていた。しかし、気を取り直すと、指示を発した。

「どうやら、彼らは味方らしい。後で礼を言おう。これは好機だ。もう一度資源惑星と工場惑星の占領作戦を再開しよう! 全艦、発進せよ!」

 反乱軍の宇宙船団は、一斉にエンジンに点火すると、それぞれの持ち場へと散って行った。

 

続く…




注)pixivとハーメルン、及びブログにて同一作品を公開、または公開を予定しています。
注)ヤマト2202の登場人物は、役割を変更して登場しています。
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