宇宙戦艦ヤマト2199 白色彗星帝国の逆襲 作:とも2199
ランハルトたちは、ケールが言う、何者かの存在を最も強く感じる場所に立っていた。
ルカは、携帯端末に装備されたセンサーで、周囲の観測を行っていた。
「大使。ここには何もありません。地下に空洞などの空間も観測されません」
ランハルトは、黙ってケールの顔色をうかがった。彼は、疲れ切った表情で、その場に座り込んでいる。
「……一番強く感じるのは、ここに間違いありません。でも……何も無いのであれば、僕の勘違いなのかも」
ケールは、少し自信を無くしているようだった。
「……俺は、お前の感覚を信じる。少し、掘り返してみよう」
山本と揚羽は、顔を見合わせて考え込んでいる。不可思議な感覚に頼るランハルトとケールに対して、山本と揚羽は半信半疑だった。しかし、ランハルトが寄せるケールへの信頼は揺るぎそうもない。
「まったくもう……」
ため息をついた山本は、自身の通信端末を取り出した。
「装備は、乗ってきた輸送機にある。自動操縦でこの地点に呼び出そう。少し待っていて」
一方、古代たちは、アナライザーが示す建物の残骸の内部へと入って行った。建物と言っても上層階は既に存在せず、この惑星の淀んだ空が見えている。足元は、砂で埋め尽くされ、その建物の外壁と思われる囲みの中央に、地下へと続く大きな穴が空いている。
「真田さん。これ、何でしょう?」
古代の質問に、真田と新見は顔を見合わせて考えている。
「恐らく、この穴は、本来はエレベーターがあった場所では無いかな」
古代は、暗い穴の内部を眺めて、どうやって降りるべきか考えた。
「アナライザー。お前の強化外骨格には、ジェットパックが装備されていたな?」
後方に居た旧型アナライザーは、モーター音をさせながら古代に近寄った。
「ハイ。恐ラク、問題ナク降りラレるト思いマス」
古代は、真田と新見の顔を見て頷きあった。そして、身体を屈めると、新見の身体に絡みつく小さなサーシャの目を見つめた。
「この穴を降りてみようと思うけど、君はどうする? 一緒に行けるかい?」
サーシャは、新見の手を握ったまま、穴蔵の深淵を恐る恐る覗いた。そこは、まるで地の底へと続いているようだった。
「澪ちゃん。怖かったら、いいのよ。私と一緒にここで待っていても」
振り向いたサーシャの顔は、少し上気していた。
「何で!? 面白そう! サーシャも行くよ!」
真田と新見は、彼女の好奇心の強さに戸惑いつつも、やはり守の血が流れているのだなと感じて、微笑ましく彼女を見つめた。
「よし、じゃあ、皆で行ってみようか」
真田は、笑顔でサーシャの頭を撫でた。古代も、にこりと笑って立ち上がった。
「アナライザー、準備してくれ。僕たちは、お前の身体に掴まって降りる」
アナライザーは、自身の両腕を前に伸ばすと言った。
「ワカリマシタ。サーシャチャンハワタシガ抱きカカエマス。コチラへ」
新見は、サーシャを抱き上げると、アナライザーの腕の中へ引き渡した。そして、彼女と真田は、それぞれアナライザーの強化外骨格のマニピュレータに掴まった。古代は、片手でアナライザーの脚部に掴まって、もう片方の手で短銃を構えた。
「いいぞ、アナライザー。出発してくれ」
「ワカリマシタ。デは、ミナサン、手をハナサ無いヨウニ」
アナライザーの強化外骨格の背に装着されたジェットパックから炎が吹き出すと、少しづつ浮上した。そして、そのまま穴の上に移動した。そうして、アナライザーは、ジェットパックの推力を調整しながら、徐々に穴の中に降りて行った。
「わあ、アナライザー、凄い!」
アナライザーの腕の中で、サーシャは、穴の奥を嬉しそうに覗いている。彼女は、アナライザーのダイナミックな動きに感激しているようだった。
「危ないデスカラ、チャンとツカマッテ」
アナライザーは、脚部とマニピュレータに装備されたライトを付け、内部を照らしながら更に下へと降りて行った。古代は、目を凝らして穴の底を油断なく睨み、銃口を下へと向けた。
そして、およそ五分は過ぎたと思われるころ、ようやく底が見えて来た。
「見ろ。地下都市があるようだ」
確かに、穴の内部を照らすライトの明かりには、まだ朽ち果てていない都市のような建築物が多数見受けられた。
「イスカンダルの建築物に似たものが建っているみたいですね」
「確かにそのようだ。それにしても、どうして地下都市など必要だったのだろうか。実に興味深い」
真田と新見の会話を聞きながら、サーシャは目を輝かせた。
しかし、古代は更に周囲の警戒感を強めていた。しかし、アナライザーが無防備に降下していく中、特に敵意を持った何者かが近付いてくる様子は見られなかった。
「随分深いな」
古代の独り言に、アナライザーが答えた。
「ハイ。約一キロ程降下シマシタ」
アナライザーは、着地すると、ジェットパックの推力を停止した。そして、古代たちも降りると、アナライザーはサーシャを新見に引き渡した。
「アチラに、生体反応がアリマス」
アナライザーは、マニピュレータの腕を伸ばして、ドーム型の屋根のついた建物の方を示した。
「よし。では皆さん、行ってみましょう」
古代は、注意深く周囲を警戒しつつ、アナライザーと共に先頭を進んだ。
ドーム型の屋根の付いた建物の内部は、高い天井で、なんの装飾もない、滑らかにカーブした壁に覆われた真っ白な空間だった。そして、真っ暗な地下都市の中、その建物の奥の方だけは、明るくなっており、そこには人の気配があった。
古代は、アナライザーを手で制した。
「恐らく、話に聞いていたシャルバート教信者たちでしょう。まず、僕が安全か確認してきます。アナライザー、何か問題が発生したら、皆を直ちに脱出させてくれ」
「ワカリマシタ」
「オジサマ、気を付けてね」
サーシャの言葉に、古代は微笑んだ。
「ああ。きっと大丈夫だよ」
古代は、一人、ゆっくりと前に進んだ。そして、手に持っていた短銃を構えたまま行くべきか少し悩んだが、結局ホルスターに納めた。そうして、更に奥へと進んで行った。
奥には、十数人程の人影が動いていた。そのうちの一人が、近付いて来る古代に気がついて、作業の手を止めた。
「誰だ?」
その他の人々は、古代に気が付くと、彼らが持ち込んだと思われる装置類の物陰に慌てて隠れた。
古代は、大きく息を吸い込んで、出来るだけ落ち着いた声で、話しかけた。
「怪しい者ではありません。私は、地球連邦防衛軍所属の、古代進と言います。あなた方のことを、惑星エトスのザンダル将軍から窺って、ここに訪ねて来ました」
古代に話しかけた人物は、手を上げて他の人々に合図した。
「君がそうなのか。ザンダル将軍から、君たちが訪ねて来ることは聞いている。皆、危険は無い」
人々は、恐る恐る古代の様子を窺いながら、再び物陰から姿を現した。その様子を見て、古代も危険は無いと判断した。そして、後方で待たせていた真田たちに、合図を送って呼び寄せることにした。
「私の名は、シャンディスと言います。我々は、長年この星の調査を行っている、科学者集団です。私も含めて、半分がイスガルマン人ですが、他に、エトス人や、ボラー連邦の研究者もいます。この地は、かつてガルマン人とイスガルマン人が最初に居住した星だと言われています。我々は、主にシャルバート教の古文書にある、マザーの持つ強大な力の謎について調べています」
真田は、その話に少し反応していた。
「イスガルマン人の科学者……か」
波動エンジンや、コスモリバースシステムなど、イスカンダルから地球にもたらされた超科学たち。波動エンジンは、量産が出来るようになったとは言え、未だに解明されていない部品や回路が多数存在していた。特に、コスモリバースシステムに至っては、そのほとんどが謎に包まれたままだった。
真田は、頭を振った。
そう。
彼らも、ここで調査をしなければならないと言うことは、自分たちの知識と、そう大差無いであろうことが推測出来た。千年前のイスカンダルの知識は、残念なことに、どこかで喪われてしまっているのだ。
古代は、皆を代表して話をした。
「なるほど。ザンダル将軍から、お話しは少しうかがっています。今は、どんな調査を?」
シャンディスは、背後の方へ進み、古代たちにそれを見せた。
「これは……!」
彫刻が施された壁の前に、小さな祭壇のようなものがあった。その祭壇には、見慣れたカプセルが置かれていた。
「……波動コアじゃないか!?」
シャンディスたちは、驚いて古代の言った言葉に反応した。
「こ、この物体のことを、ご存知なのですか!?」
古代は、あまりの食いつきに逆に慌てることになった。
「え、ええ。まあ……」
古代は、顔を寄せて、波動コアと思しき物体を、よく眺めて見ることにした。それは、見慣れた波動コアとは少し違っていた。
「……ビーメラ星で見た青い波動コアと同じ物か……?」
古代は、その時の記憶を辿った。ヤマトではクーデターが発生し、古代はビーメラ星に置き去りにされそうになったのだ。
そして、あの時の波動コアには、亜空間ゲートの情報が隠されていた。古代は、そのことを懐かしく思い出していた。
「古代。あの時と同じ物なら、情報を収めた専用カプセルに違いない」
このタイプの波動コアは、波動エンジンの起動キーとしては使えなかった……。
真田は、彼らが波動コアのことを知らなかったと言うことで、それ以上の情報を口にするのを躊躇した。もしかしたら、ガルマン帝国では、イスカンダルの波動エンジンのことは知られていないのかも知れない。
シャンディスは、真田に迫った。
「ええ、その通りです。これには、情報が詰まっているようですが、我々は、それを解読できずにいます。どうやら、強力な暗号化が施されているようです。マザー・シャルバートに纏わる情報が取得出来るのでは無いかと期待して、我々は今回はこれを調査しています。もしや、あなた方なら、これを解読出来るのでしょうか?」
真田は、新見や古代と顔を見合わせた。古代も、確かめてみるべきだと考えていた。
「分かりました。我々も、解読を試してみましょう」
古代は、アナライザーを呼び寄せた。
「アナライザー。この物体の解析をやってみてくれないか」
「承知シマシタ」
アナライザーは、強化外骨格の装備を解除すると、ちょこんとその場に降り立った。そして、波動コアに近寄ると、それを覗き込んだ。指先のうち、四本を伸ばして波動コアに接続すると、すぐに解析を始めた。アナライザーの顔にあたる部分の機器が、様々な色に色めき立つ。
アナライザーが解析している時間に、両者は情報交換を行った。
「あなた方は、このガルマン帝国に、ガトランティスが攻めて来ているのはご存知ですね?」
古代の問いかけに、シャンディスは、頷いた。
「もちろんです。我々の同士たちは、この混乱に乗じて、一斉に蜂起する作戦が展開中です」
古代は、その話に少し落胆した。彼らに、ガトランティスの恐ろしさを伝えなければならない。彼は、使命感に駆られて話し出した。
「我々は、ガトランティスの侵攻に銀河系の戦力を結集して対抗する為、敵対するガルマン帝国軍とボラー連邦軍と一時的に同盟を結びました。そして我々の友軍であるガミラス軍も、銀河を超えて共同で立ち向かってくれています。ガトランティスは、この宇宙に住む全ての生命にとっての脅威なのです。だからこそ、まだ正式な国交も無く、信頼関係も乏しい国々であっても、協力しなければなりませんでした。分かって頂きたいのは、この混乱と言うのは、そう言う性質のものだと言うことです。水を指すようなお話をして、申し訳ないと思いますが、反乱など起こしている場合では無いのです。今は、例え敵対する勢力であっても一時的にでも協力するか、安全な所に避難すべき時です。皆さんは科学者だと言うことなら尚更、私の言いたいことは分かって頂けるのではないでしょうか?」
シャンディスは、分かっていると言う風に静かに頷いた。
「……確かに、仰る通りなのでしょう。しかし、我々は何百年にも渡り、子の世代も、親の世代も、その親の世代も脈々と圧政を受け、奴隷のように扱われ、皆苦しんで来たのです。これは、この千年間にたった一度、訪れた機会なのです。それをどうして止められると? 自分の子の世代に、もう二度と、同じ苦しみを味合わせたくない。皆、そう思っているんです。それに、死んでも良いと言う覚悟で始めたことです」
「しかし……!」
シャンディスだけでなく、そこにいた科学者たちが皆、同じ様な目をして、古代を見つめていた。その目は、静かな中にも、決意を秘めていた。
失敗するかも知れない。
死んでしまうかも知れない。
それが分かっていても、立ち上がらなければならない時がある。
それが、今だと、彼らは、無言のうちに語っていた。
古代は、何か言おうとしたが、その言葉を飲み込むしか無かった。
そう。
自分たちも、あのイスカンダルへの旅路は、そんな決意を胸に秘め、向かったのでは無かったのか?
古代は、悔しそうに口をつぐみ、何か言えることは無いかと考えた。しかし、それはそう簡単では無かった。
そんな古代の肩を、真田は叩いた。
「皆さん、仰っしゃりたいことは、私も、古代も理解しました。残念ですが、反乱を止めるのは、簡単では無いようですね。ですが……」
真田は、イスガルマン人と思われる人々の顔を確認した。
「ガトランティスの目的ですが、いくつか推測されていることがあります。一つは、イスガルマン人の絶滅です。彼らは、あなた方の祖先であるイスカンダル人が、不思議な力で立ち向かい、改心させたことがあります。しかし、今襲って来ている彼らは、その影響を遠くで逃れた者たちの生き残りのようです。その為、その末裔たるイスガルマン人を、恐れていて、この宇宙から消し去りたいと考えているようです」
シャンディスたちは、その話に戸惑っていた。
「我々には、そんな力は無い。そんな力があれば、こんなことにはなっていないよ」
新見は、彼らに言った。
「いいえ。ここにいる澪ちゃん……いいえ、イスカンダルのスターシャ女王の娘、サーシャ・ミオ・イスカンダルも、その時に協力した一人で、それは事実なのです。その時は、まだ本当に小さな子どもでしたので、本人も覚えていないでしょうけど」
「その子に、そんな力が……?」
サーシャは、彼らの会話を不思議そうに聞いていた。
「……そうなの?」
新見の顔を見上げたサーシャは、首を傾げている。
「その時は、いろいろな偶然や奇跡が重なって出来たことよ。もう一度、同じ様な奇跡を起こせるかは、誰にも分からないわ。それなのに、ガトランティスは……」
そこまで言って、新見は口をつぐんだ。スターシャのことは、まだサーシャには話していなかったのを、思い出したからだ。
真田は、サーシャの顔と新見の顔を交互に眺めた。
「新見くん。多分、今がいい機会だ。澪に、ちゃんと、お母さんのことを話そう」
新見は、今、ここで? と思っていた。しかし、このままでは、いつまで経っても話せない。不安に思いながら、彼女は頷くしか無かった。
真田は、サーシャの目線に合わせて腰を落とすと、彼女の瞳を見つめた。サーシャは、真田の真剣な目を見て、何となく、何を言われるのか、朧気ながら予想がついた。そうすると、身体が震えてくるのだった。
「……澪。君のお母さん、スターシャ女王は、デスラー総統を助けに行き、身代わりとなってガトランティスに囚われてしまった。ユリーシャと、大きい方のサーシャも、一緒に今は捕まってしまっている。君も、ギャラクシーで危なくさらわれるところだった」
サーシャは、身体をがくがくと震わせて、瞳から、涙を溢れさせた。
「やっぱり……。そうじゃないかと、ずっと考えていたの……。そうじゃなきゃ、いいなって、ずっと思ってたの……」
新見は、しゃがんで彼女を抱きしめた。
「ごめんね。今まで、黙っていて。あなたが悲しむのが、分かっていたから、どうしても言えなかったの」
サーシャは、小さく嗚咽して、耐えようとしていた。
真田は、更に話を続けた。
「私からも、謝らせて欲しい。我々は、君を守ることはもちろん、必ずや君たちのお母さんたちを助けようと考えている。だから、もう少しだけ、待っていて欲しい」
古代も、サーシャのそばにしゃがんで、言葉を掛けた。
「サーシャ……。僕も謝るよ。脱走したミルが、デスラー総統をさらったことが、君のお母さんを守れなかったことに繋がった。ギャラクシーの指揮官だった僕の責任でもある。必ず、君のお母さんを取り戻す。約束する……!」
サーシャは、新見から身体を離すと、僅かに離れた。
「……もう、いいよ。オジサマも、薫ママも、士郎パパも……。少し、一人にさせて……」
古代も、そして真田と新見も、うつむいて泣くのを堪えているサーシャに、それ以上かける言葉が無かった。
やり取りを呆気にとられて見つめていたシャンディスたちの様子に、真田はそこでようやく気が付いた。
「……申し訳無い。話を続けましょう。そして、もう一つは、今、あなた方が調べようとしているイスガルマン人の祖先たる、シャルバート教の信仰の対象たるマザー・シャルバートの秘密の強大な力のこと。ガトランティスは、何らかの方法でそれを知り、手に入れようとしているのかも知れません。もともと、彼らは銀河をさすらい、様々な星の技術を手に入れて、最強の国家たろうとしてきました。今回も、それが目的である可能性があります。我々としては、本当にここにそのような物が存在するのであれば、絶対にガトランティスの手に落ちないようにしなければなりません」
シャンディスは、そこまで聞いたことを咀嚼していた。
「我々、イスガルマン人の絶滅などと言うことを、彼らは本当に考えているのですか?」
古代は、頷いて言った。
「はい。今、真田さんが話した通り、あなた方の祖先であるイスカンダル人の王族の方々を、ガトランティスは恐れ、拉致しました。次は、その末裔であるあなた方が標的になっている可能性が高いと考えています。そうなると、ガルマン帝国中に散っているあなた方を探す為に、場合によっては、全ての星々を片っ端から滅ぼそうとするかも知れません。そう言うことを、本当にやれる力がある連中なんです」
シャンディスは、それを聞いて、だんだんと分かってきたようだった。
「そうですか……。そんなに強大な力を持つ勢力なのですね。だから、我々にも協力するか、避難するかとあなたは言っている……。ようやく、理解出来たと思います」
「では……!」
シャンディスは、手を上げて、古代の話を遮った。
「私が納得したからと言って、ガルマン帝国中、そしてボラー連邦も含む、全ての反乱組織に、それを伝え、納得させるのは難しいでしょう。あまり期待されては困ります。しかし、その努力はしてみましょう」
古代は、相手が異星人だと言うのに、思わず頭を深く下げていた。
「十分です。是非、お願い致します!」
「それに。もう一つの話も問題です。我々は、ここに必ずマザーの残した遺産があると確信して、長年捜索を続けています。それを、ガトランティスなどに渡す訳には行きません。何としても、我々が先に見つけなければ」
その時になって、ようやくアナライザーが声を掛けて来た。
「皆サン。分析ガ終ワリマシタ」
古代は、アナライザーの方を期待を込めて振り向いた。他の人々も、同じ様にアナライザーへと、一斉に注目が集まった。アナライザーは、その空気を読んだのか、少し戸惑うような反応をした。
「……様々ナ暗号解読技術ヲ使って試シテ見マシタが、確カニ、強力な暗号が施さレテイマス」
集まった人々が、がっかりとしているのが、アナライザーにも伝わった。
「……ゴ期待ニ応えらレズ、スミマセン」
真田は、アナライザーの頭を叩いた。
「いや。それが分かっただけでも十分だ。助かったよ、ありがとう」
その時、サーシャは、膝を抱えて座り込み、目を閉じて一人暗闇の中にいた。誰の言葉も耳に入らず、何も聞こえなかった。
ママは、どうしているのかな……。
捕まって、怖い思いをしているのかな……。
私は、このまま、一人ぼっちになっちゃうのかな……。
子ども扱いをされ、何も知らされず、何もしなかった自分を、サーシャは悔やんだ。しかし、真田と新見、古代たちを、恨むつもりも無かった。そんなことに意味は無いと言うことを、彼女は、幼いながらも分かっていたのだ。ガトランティスと言うのが、皆が恐れる人々だと言うのも、彼女は理解していた。
それでも、古代や真田が、スターシャたちを救出する方法を探してくれている。
そこまで分かっていたのにもかかわらず、彼女は、その不条理な事実に、やり場の無い悔しさ、悲しさを覚えていた。
……お母さんを助けられる力が欲しいの?
サーシャは、そっと顔を上げて、薄く目を開けた。
しかし、そこには、古代たちが何やら議論を続けている様子が見えるだけだった。
サーシャは、気のせいかと思い、もう一度目を閉じた。
目を閉じると、まぶたの裏には、誰か人の姿が見えて来た。
誰……?
その人物は、次第にはっきりと見えて来た。
美しく、長い金髪の女性の後ろ姿だった。
どこか、ママに似ている……?
あなたは……誰なの?
……私?
そう、あなたは、だあれ?
私は……。
その女性は、ゆっくりと振り向いた。
やっぱり、どこか、ママに似ている。
その女性は、にっこりと笑って見せた。
……私の名は、シャルバート・イスカンダル。
あなたと同じ、イスカンダルの王族。
サーシャは、再び目を見開いた。
続く…
注)pixivとハーメルン、及びブログにて同一作品を公開、または公開を予定しています。
注)ヤマト2202の登場人物は、役割を変更して登場しています。