宇宙戦艦ヤマト2199 白色彗星帝国の逆襲   作:とも2199

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宇宙戦艦ヤマト2202とは別の世界線を歩んだ宇宙戦艦ヤマト2199の続編二次創作小説「白色彗星帝国の逆襲」です。「白色彗星帝国編」、「大使の憂鬱」、「孤独な戦争」、「妄執の亡霊」、「連邦の危機」、「ギャラクシー」の続編になります。


白色彗星帝国の逆襲82 ガトランティスの策略Part2

「ミルさん……いいえ、ガトランティスの大帝ズォーダーを名乗るあなたが、スターシャさんたちを助けるとは、どう言うことです? 我々を、からかっているんですか?」

 古代の疑問ももっともだと、これには、ランハルトも同調した。

「お前は、俺たちを欺こうとしているんだな? その手には乗らんぞ! それより、お前をここで拘束すれば、人質の交換で、女王たちを助けられるというもの。山本一尉! 奴を拘束しろ!」

「駄目だ、大使! 彼の話を聞こう」

「古代! お前こそ、俺の話を聞け!」

 二人は、その場で睨み合いを始めた。その後ろで、山本は、目を細めて二人のやり取りに困惑していた。

 同じ様に、そんなやり取りを眺めていたシャルバートは、サーシャに言った。

「これは、あなたが確認するべきね。だって、ママを助ける手助けをしてくれるみたいよ? あなた、心を読むのは、出来るのかしら?」

 新見に抱き抱えられたサーシャは、きょとんとしている。

「……心を、読む?」

 シャルバートは、頷いた。

「私たちは、テレザートの洗礼を受けて、心の漏れる声をうっすらとだけど聞くことが出来るようになった。遠い子孫のあなただって、少しぐらいは、出来るんじゃない? そうしたら、彼の言っていることが本当か、皆が判断出来るもの」

 サーシャは、そういえばと思い出していた。スターシャや、ユリーシャが、そんなことをやっているのを見たことがあったからだ。

「うん……。やってみる」

 新見は、血相を変えて、サーシャを抱きしめた。

「駄目! 危険よ! あっちに行っては駄目! 彼らは、あなたを拉致しようとした、敵なのよ!」

 サーシャは、新見の顔を見て笑顔で言った。

「うーん。分かんないけど、皆が居てくれるから、大丈夫だと思うよ?」

 古代は、ミルから視線を外し、サーシャの方を見た。

 そして、サーシャの決意が硬いことが、表情で分かった。

「サーシャ。君次第だ。試してみるかい? 僕が、全力で君を守る」

「オジサマ……。何それ、かっこつけ過ぎじゃない?」

 新見の腕からするするとサーシャはすり抜けると、古代の横へ走った。

「澪ちゃん、待って!」

 サーシャは、振り返って手を伸ばす新見に言った。

「大丈夫だから。そんなに心配しないで」

 前を向くと、その目の前に、ミルが立っている。

 古代の横にいるランハルトは、途轍もなく、不機嫌な顔をしていた。

「古代……。何かあったら、貴様の責任だぞ」

「僕と、あなたが二人で彼女を守る。それでいいでしょう?」

「ふん」

 古代は、彼女の頭を撫でた。

「どうすればいいか、知ってるのかい?」

「ママが時々、私にやってくれたの。だから、知ってるよ」

 サーシャは、ミルに向かって手を伸ばした。

「私と、手を繋いでくれる?」

 ミルは、小さなサーシャに、ぎこち無い笑顔を向けた。

「君は……スターシャ女王の娘さんだったね。そういえば、君もサーシャと言う名だったね。手を……?」

「そう、手を繋ぐと、あなたの気持ちが、何となく分かるの」

 そういえば……。

 ミルは、ギャラクシーで出会った大きい方のサーシャに、手を握られた時のことを思い出した。

 あの時、彼女は彼の手を握って言った。

 

 また、お会いしましょう。正直で、心の綺麗なミルさん――。

 

 あの時。彼女は、確かにそう言っていた。

 多分、私の本当の気持ちを知っていてくれたのに違いない。

 

 それを知ると、彼の心は穏やかで温かいものに包まれた。

 しかし、彼の背後では、ゼール中佐がはらはらしているのが、後ろを向かなくても分かった。

 だが、今はそんなことよりも、真剣だと言うことを分かってもらいたい、とミルは心の中で願っていた。

「いいよ。こうだな?」

 ミルは、そろそろと、手を伸ばした。そして、サーシャの指に触れると、決意したようにその手をそっと握りしめた。

「……!」

 サーシャは、その手を通じて、彼の思いが伝わった。

 愛していた母が、残酷なことを平気で出来るように、変わってしまったことへの苦悩。

 穏やかな平穏の大切さを教えてくれ、慕っていたスターシャを、拉致して意識を奪ったことへの罪悪感。

 

 そして――。

 

「……ママは、無事なのね?」

 ミルは、手を繋いだまま、頷いた。

「大丈夫。傷つけたりはしていない」

 サーシャは、首をひねった。

「ミルは……サーシャが好きなの?」

 ミルは、それには目を丸くして赤面した。

「なっ……!」

 ミルは、その発言で、本当に彼女が心を読めることを知った。

 ランハルトは、途端にサーシャの身体を抱いて、ミルから引き離した。

「きっ、貴様。サーシャ様を好きとは、どう言うことだ!」

「い、いや、それは……」

 しどろもどろになったミルに、ランハルトは、食って掛かった。

 サーシャは、血相を変えたランハルトの服を引っ張った。

「違う、違う。私じゃ無くて、大きい方のサーシャのことだよ」

「む……サーシャ・イスカンダル様のことか?」

「そうそう」

「それはそれで、あってはならないことだ! 高貴なイスカンダルの第二皇女に、好意を寄せるなど!」

 サーシャは、ランハルトのことは放っておいて、古代に言った。

「オジサマ、大丈夫。この人の言っていることに、嘘はないよ」

 古代は、笑顔で応えた。

「ありがとう、サーシャ。では、ズォーダー大帝。我々も、あなたと腹を割って話し合いたい。先程のお話は、どう言うことなのでしょうか?」

 ミルは、真剣な表情で頷いた。

「説明させてもらおう」

 

 ミルは、古代たち一行だけで無く、ゼール中佐や透子にも、思いを語った。

 スターシャを、心の底から慕っていたこと。しかし、ギャラクシーに潜入した兵士に聞いた、自分がズォーダー大帝の実子だということ。それで、ガトランティスに戻らずにいられなくなったこと。母親が、人が変わったようになり、女帝を名乗り、ガトランティスを支配する立場についていたこと。そして、名ばかりの大帝の座に据えられたこと。反対するミルを無視して、スターシャと、ユリーシャ、サーシャを拉致し、監禁したこと。降伏しようとしたボラー連邦の人々を、非道にも残酷に殺したこと。

 そういった、これまであったことを、ミルは詳らかに語った。

「……私は、女帝を名乗る母カミラの言うことに、これ以上従う気は無い。スターシャ女王たちを解放し、ガトランティスの非道な侵略行為を止めたいと考えている。それもこれも、そのような気持ちを教えてくれた、女王への恩を返す為だ。そして……スターシャ女王の為にも、この銀河に平和を取り戻すのが、私の切なる願いだ。だが、私はガトランティスの名ばかりの大帝。何の力もない。どうか、私に力を貸して欲しい。これが出来るのは、地球連邦艦隊だけなのだ」

 これには、全員が呆然としていた。既に、サーシャが嘘をついていない事を確認している為、彼らは、話を信じるしか無かった。

 しかし、ゼール中佐だけは、自らの立場や立ち位置を、どうして良いか分からずにいた。

「私は、白色大彗星の内部から、人質の女王たちを混乱に乗じて解放する。君たちに支援して頂きたいのは、白色大彗星を、停止させ、元の要塞に戻すことだ。そうしなければ、宇宙船を飛ばす事も出来ず、彼女たちを要塞から脱出させることは困難だ」

 古代は、眉をひそめた。

「あなたは、本当にそれで良いのか? 僕たちには、ガトランティス内情のことは良くわかっていないが、あなたの言っていることは、冷静に考えて、重大な背信行為だ。この戦いが終わった後、あなたはどうするつもりなんだ?」

 ミルは、その事について想いを馳せた。

「……分かっている。だが、ガトランティスのやり方は、間違っていると、私は知ってしまったのだ。今、行動を起こさなければ、私は、一生後悔することになるだろう。例え、居場所が何処にも無くなったとしても……」

 苦痛に満ちたミルの顔は、様々な思いが去来していることを表していた。しかし、それでも、大切な人の為に反旗を翻そうとする彼の気持ちは、確かなものだった。

 古代とランハルトは、互いに顔を見合わせ、彼が本気だと悟った。透子も、ミルの表情を窺って、黙って見ている。

 そんな中、ゼール中佐は、まだ酷く混乱していた。敵に、ぺらぺらと機密情報を喋り、反乱を企てようという人物を、通常なら直ちに処分すべき所だが、相手は大帝なのだ。

「待ってください、大帝。あなたの言っていることは、私は……報告しなければならないのだが……」

 ミルは、ゼール中佐を目を細めて見つめた。

「……そうだろうな。君の立場なら、そうすべきだろう。だが、すまないが、私も、邪魔されるわけにはいかない」

 ミルは、ゼール中佐を正面から睨んだ。彼は、冷や汗を流し、敵に囲まれたこの状況で、どう動くべきか迷っていた。

 そんな緊迫した空気の中、透子はゼール中佐に言った。

「中佐。あなたは、部下思いの良い士官だっていうことを、私は知っている。ガトランティスでも、あなたみたいな人は稀有だってこともね。そんなあなただから、私はこうして無事にいられた。だから、感謝してるの。そんなあなたに、私からもう一度、助言させてもらえないかしら」

「助言……? なんだ?」

 透子は、妖艶な笑みを浮かべると、彼に囁いた。

「大帝が話した、今の本当の気持ち。それを、あなたが正しいと思うかどうか。ちょっとだけ、考えてみてもいいんじゃないかしら? 軍人としての規律は、今は一度忘れて」

「きっ、君も、裏切るのか!?」

 透子は、少し考えてから言った。

「私は、別に誰の味方でもないわ。ただ、宇宙に生きる一人の人間として、正しいことをしたいだけ。それを、あなたがどう思うか、どうしたいか。それだけのことじゃないかしら?」

 宇宙に生きる一人の人間として?

 ゼールは、透子の言葉を、自らの心に問いかけた。

 長い戦いの連続のこれまでの人生。確かに、先程の大帝の心変わりのきっかけとなった、平穏を得ることの大切さ、そんな安らぎを得たいと考えたことが無かった訳では無い。

 そんなことを考えるよりも、帝国は、争いを好む強硬派の勢力が優勢だった。だからこそ、そこでどう生きるかを、優先させてきたのだ。それを、長年の経験から知っているからこそ、部下たちを大切に思い、そんな同じ悩みを抱える彼らが生きやすい環境を整えようと努力して来た。

 それは、一人の人間として、少しでも温かい感情を共有したかったからに他ならない。もし、今の戦いの日々から解放されるならば、それはもっと容易なのは確かなのだろう。

 然らば、自分はどうしたいのか?

 大帝の言うように、こんな生き方を変えるのが自分の望みなのか? それとも違うのか?

「……今は、分からない。でも、大帝の話したことが、理解できない訳ではありません。少し、考える時間を頂きたい……」

 ミルは、鋭い目つきを和らげ、彼に微笑した。

「私は君を無理に従わせるつもりは無い。私の邪魔をしないのであればね。帝国の人々は、長い間思考を停止して来ている。数は少ないかも知れないが、私と同じ様に戦いを望まない者だって居る筈だ。その事を、君も考えて見て欲しい。それに……先程のシャルバートさんから聞いた暗黒星団帝国のことで気になることもある」

「……と、言いますと?」

「まだ確信は無いことだ。後で話そう。艦に戻ったら、君とは、もっとこのことで話し合いたい」

「……分かりました」

 ゼール中佐は、頷いてそれから口をつぐんだ。

 成り行きを見守っていた古代は、透子の方を見た。

「あなたは、いったい、どう言うつもりなんだ?」

 透子は、目を閉じた。

「さあ? さっきも言った通り、正しいことが何か、皆と同じ様に悩める一人の人間ってだけよ」

 古代は、何を考えているか分からない、透子の気持ちを推し量ろうとした。しかし、そう簡単では無さそうだった。今はそれよりも、大事な話に集中しようと、一旦置いておくことにした。

 古代は、改めてミルを信頼してみようと心に決め、先を話す事にした。

「……それでは、我々としては、願っても無い話で、是非とも協力させて頂きたい。……あれは、白色大彗星、と言うのか。あれは、彗星状態でない時は無いのか? そのタイミングが分かれば、そこを狙って強襲する方法もある」

 ミルは、頭を振った。

「わずか一分で、彗星状態になることが出来る。強襲されたことが分かれば、すぐにそうするだろう。それでは、脱出は不可能だ」

 真田は、難しい顔をしている。

「ならば、やはり攻撃して止めるしか無い。恐らく、内殻に収められた人工太陽のブラズマを、外殻に通す為の循環路のようなものがあると私は睨んでいる。それを破壊することが出来れば、恐らく人工太陽を緊急停止するしか無いだろう。そうなれば、元の要塞に戻せると思うが、その循環路が何処にあるか、何個あるのかも、我々には分かっていない」

 ミルは、真田の話に驚いていた。

「なんと……! そこまで把握していたとは……。その通りだ。内殻から、外殻へ通す循環路がある。それは、上と下に、二本伸びている。これを、同時に破壊されると、プラズマが内部に広がってしまい、人工太陽を緊急停止するしか無い」

 真田は、それを聞いて考えた。

「なるほど。上下の両極方向に二本だけしか無いんだね? しかし、彗星状態の時にそれが何処にあるか特定する方法が難しい」

 ミルは、ゼール中佐に言って、彼が持っていた端末を取り寄せた。 

「これを見てくれ。これは、白色大彗星が静止している時の映像だ」

 真田と古代は、映像を食い入るように見ていた。そして、真田は、しばらくすると、その位置に気が付いた。

「これか……! ここだな?」

 真田は、映像に映る彗星の一点を指した。ミルも、それには頷いた。

「そう。静止している状態なら、判別しやすい。その渦巻いている場所が、循環路だ。これで、上か下のどちらかの位置を特定出来るので、あとは、この反対側の対極に、もう一方の循環路が存在する。この端を、君ら地球艦隊の兵器、波動砲で同時に撃ち抜けばいい。そうなれば、内部は一時的に大混乱に陥るだろう。私は、その隙に、人質の救出作戦を展開する。あとは、君らが外から要塞への攻撃を継続して、注意を反らしてくれれば、後は私が何とかする」

 古代は、それには難色を示した。

「中に、我々の仲間も二人捕らえられている。彼らは、無事なのか?」

「無事だ」

「なら、その二人にも協力を依頼すれば、生還する確率は上がる。そして、我々は、外から内部に侵入して、救出作戦を支援する。その両面作戦で、作戦の成功確率を上げたい」

 ミルは、古代の目を見つめた。

「すまない。ならば、それでお願いしたい。恐らく、この作戦で、命を落とす者も出てしまうだろう。それでも、やってくれるのか?」

 古代は、当然だと言わんばかりに頷いた。

「我々の、今回の作戦の最優先事項は、人質の救出だ。そして、次にガトランティスの侵攻を止め、これ以上の被害を、この銀河系で広げないようにすることだ」

 真田は、更に考えていた。

「真上と、真下……。後は、都合よく、白色大彗星が静止することがあるかどうか、だがね」

 サーシャは、目を輝かせて言った。

「ね、士郎パパ! そうしたら、ママを助けられるの?」

 真田は、頷いた。

「ああ、不可能では無いと思う」

 サーシャは、ミルにもきらきらとした瞳を向けた。

「ミル! ママを、お願いね! 本当に、本当に、お願いだからね!」

 ミルは、その純真な瞳に圧倒された。その瞳を守ることが出来るかどうかは、こらからやることにかかっている。

「ああ、任せてくれ」

 シャルバートは、集まった人々の話がつくのを見守ると、最後に言った。

「話がまとまったみたいね。サーシャ、あなたのお母さんを救うことが出来たら、私の願いを伝えて頂戴。私はここで、ずっと待っているわ。千年待ったのだから、大したことではないわ……」

 サーシャは、シャルバートに大きく頷いた。

「うん、約束する! きっと、ママはここにいる人たちを、イスカンダルに連れて行ってくれると思う!」

 シャルバートは、ようやくほっとしたように笑った。

 しかし、古代とランハルトは、まだ難しい顔をしていた。

「シャルバート……。いや、かつてのイスカンダルの女王だという話を信じるなら、俺も言葉を改めよう。シャルバート様。あなたが話した、イスカンダルの波動砲艦隊のことですが、何処にあるのかまだ聞いていませんが、このまま放置することは出来ません。それを、ガトランティスや、ガルマン帝国に奪われれば、恐ろしいことになるでしょう。それに……。ここに、まだ意志を明確にしていない、ガトランティスの兵士がいることですし」

 ランハルトは、ゼール中佐を睨みつけた。ゼールは、本来のこの偵察任務の目的が、そのようなイスカンダルの技術だったことを、先程から考えていた。そして、イスカンダルの民という、多くの記憶が眠っており、イスカンダルの科学者を連れ帰るのも、その目的の一つだった。

「いや……。私は、直ちにこれを報告するつもりは無い。この後、大帝と話し合ってから、私の考えを決める」

 ミルは、彼の肩を叩いた。

「彼のことは、私に任せてくれ。必ずや説得してみせよう」

 古代とランハルトは、頷き合って、ミルの言うことを信じることにした。

「分かった。それについては、お任せする。我々からも、より良い判断をされることを、切にお願いしたい」

 ゼール中佐は、複雑な表情をしていたが、心が傾いているのは確かだった。

 シャルバートは、そこで小さくため息をついて言った。

「なら、事が落ち着くまで、波動砲艦隊の所在は、あなた方にも話すのはやめておくわ。でも、こうして話したことで、ここに存在することは、皆知ってしまったけれども」

 古代は、真剣な表情で頷いた。

「分かりました。私としては、所在が分かり次第、すべて廃棄すべきだと思っています。しかし、ガトランティスに知れれば、ここは危険に晒されるかも知れない」

 シャルバートは、悲しそうな表情になった。

「おっしゃる通り、廃棄した方がいいでしょうね。どうして、まだあるかと言えば……。あれを廃棄することを、彼が最後まで反対したから……。彼は、皆を守る最後の手段だと言っていた。私には、その思いを無下にすることが出来なかった……」

 古代は、彼女のその思いを、簡単に否定することは、誰にも出来ないだろうと思っていた。それは、彼女の大切な人の想いでもあるからだ。

 そこに集まった人々は、その言葉の重みをそれぞれが感じ取っていた。

 しばらくして、真田はシャルバートに確認した。

「ところで、先程お話しのあった、コスモフォワードシステムですが……。私としては、出来ればどのような物か確認しておきたいのですが。どのような、使い方が出来るのか、危険は無いのか、そういったことを確かめておきたいと考えています。良かったら、私が預かっても構わないでしょうか?」

 シャルバートは、サーシャの顔色を窺った。

「さっきも言ったけど、ここにある物は、全部あなたにあげる。だから、あなたがどうしたいかで、決めていいのよ」

 サーシャは、真田と、シャルバートの顔を交互に眺めた。

「いいよ、私も、士郎パパが持ってた方が、きっと誰かの役に立つと思うから。それに、士郎パパは、絶対に悪いことに使わないって、サーシャ知ってるもん」

 真田は、サーシャの言葉に少しだけ胸が熱くなるのを感じた。スターシャの代わりに、一時的にでも、自分の子として一緒に過ごした日々は、彼女との互いの信頼と愛情に変わっていたのだ。

「決まったみたいね。向こうの部屋に、組み立て用の部品として、いくつかの箱にしまってあるわ。それを持って行くといいわ」

 シャルバートは、最後にサーシャに言った。

「またね。私は、ここであなたがママを連れてくるのを待っているから」

 サーシャは、それまで、過去の亡霊のような彼女を恐れていたが、スターシャを救える希望を胸にして、明るくそれに答えた。

「うん! 待っててね!」

 

 古代たち一行は、地表に戻ると、そこには、アナライザーが一人佇んでいた。シャルバート教の研究者たちは、先程のシャルバートの像が現れた青い波動コアの所に戻って、調査を続けているらしい。

 古代は、ある意味好都合だと思っていた。マザー・シャルバートの実在を彼らが知った所で、放っておいてほしいと願う彼女の実態は、彼らを落胆させるだけになる。それに、波動砲艦隊の存在が知れれば、彼らは、それを反乱組織で使うと言って聞かないだろう。

 古代は、アナライザーに、コスモフォワードシステムの資材の入った箱を運ぶように指示すると、それを運ぶ新たなコスモシーガルをもう一機派遣するようにムサシにいる藤堂早紀に依頼した。

 

 古代は、そこでミルともう一度向かい合った。

「改めて、あなたの協力に感謝します」

 古代は、右手をこめかみに当てて、敬礼のポーズをとった。彼に合わせて、山本と揚羽も、同じ様に彼に敬礼した。

 ミルは、清々しい表情で古代たちを見つめていた。

「こちらこそ。これから、我々はガルマン帝国本星へと、本格的に侵攻作戦を開始するだろう。その時、恐らく警告の為、白色大彗星を静止させる時が来る。そこで、また会おう。作戦の成功を祈る」

 ミルは、見様見真似で、古代たち防衛軍の敬礼を真似た。

 古代とランハルト、そしてミルは、しばらくの間、互いの目を見つめ合った。

 そして、踵を返した彼は、振り返らずに、その場を去って行った。ゼール中佐と透子も、その後をついて行った。

「あの女、あのまま行かしても良かったのか?」

 古代も、ランハルトが、桂木透子のことを疑問に思っていることは分かっていた。

「ええ。彼女は、多くを語りませんが、信頼してもいいと、感じるんです」

「ふん。お前は、本当に甘い。甘過ぎる」

「ですが、私はあなた方、ガミラスとも、そうやって信頼関係を築いて来ました。そういう、積み重ねが、大切なんじゃありませんか?」

「さあな」

 ランハルトは、頭を振ると、自分の機体の方へ向かった。揚羽は、ランハルトの後に続く山本の後を追って、途中で振り返って古代に手を振った。

 古代は、ため息をつくと、手を振り返して、ランハルトたちのことを、彼に頼んだ。

 

 その間も、アナライザーは、次々に地下から箱を運び出し、その数は、百個ほどになった。

 到着したコスモシーガルに、再びアナライザーはせっせと資材を積み込むと、そのまま機体に乗り込んだ。カーゴベイに収まらなかった箱は、コックピットにも、大量に積み込まれている。

「デハ、私が責任ヲモッテムサシニ運ンデおきマス。市瀬サンハ、古代サンの機体デ戻ッテクダサイ」

 機体を運んできた早紀の部下である市瀬美奈は、アナライザーに手を振った。

「じゃあ、お願いね」

 アナライザーは、彼女に手を振り返すと、機体のエンジンを始動して、飛び立って行った。

 古代は、もう一機の機体の操縦席について、発進準備を整えながら、そんなアナライザーのことを、真田と話した。

「あいつ、ヤマトのアナライザーよりも、更に旧型のロボットだった筈ですが、何だか話しているうちに、だんだん人間臭くなってきたような気がしませんか?」

 真田は、少し笑っている。

「そうだな。だが、あれに搭載されているAIのソフトウェアは、ヤマトに乗っているAUO9のデータのフィードバックしたものを入れている。そのせいかも知れないね」

 古代は、少し笑うと、後ろを振り返った。

「皆、乗ったな!? 僕たちも、アナライザーの後を追って、直ちに発進する!」

 古代は、スロットルレバーを引くと、操縦桿を握りしめ、機体を発進させて行った。

 

続く…




注)pixivとハーメルン、及びブログにて同一作品を公開、または公開を予定しています。
注)ヤマト2202の登場人物は、役割を変更して登場しています。
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