宇宙戦艦ヤマト2199 白色彗星帝国の逆襲   作:とも2199

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宇宙戦艦ヤマト2202とは別の世界線を歩んだ宇宙戦艦ヤマト2199の続編二次創作小説「白色彗星帝国の逆襲」です。「白色彗星帝国編」、「大使の憂鬱」、「孤独な戦争」、「妄執の亡霊」、「連邦の危機」、「ギャラクシー」の続編になります。


白色彗星帝国の逆襲83 ガトランティスの策略Part3

 ゼール中佐のガトランティス偵察部隊――。

 

「惑星軌道上に飛ばした超小型偵察機の撮影した映像によれば、大帝の乗る機体の映像を捉えました。間もなく、大帝は帰還してきます」

「分かった」

 惑星に降りたゼール中佐の代わりに、ガトランティス偵察部隊の指揮をとっていたのは、副長のネーラー大尉だった。惑星ファンタムの月に隠れた位置取りのまま、彼らは、艦隊を待機させていた。

 しかし、ゼール中佐は、堂々とガミラス艦隊の待ち受ける惑星軌道上に姿を現していた。ネーラーは、きっと何かあったのだろうと確信していた。

 そのガミラス艦隊は、大帝の乗る機体に、攻撃を加えようとする様子は見られない。

「ゼール司令から、この惑星で何があったのか、連絡はあったのか?」

「司令は、戻ったら報告すると仰っています。我々は、このまま待機するように指示を受けています」

 ネーラーは、頷くと腕を組んで考え事をしていた。

 今回、惑星ファンタムに大帝自ら惑星に降りるという話を受け、やむを得ず艦隊指揮官たるゼール中佐が自ら同行することになり、彼は不安を感じていたが、この報告で、やっと一息つけていた。

 この惑星では、イスガルマン人を発見したら、ガルマン帝国で、彼らが居住するすべての惑星の情報を吐かせ、ガトランティス艦隊や白色彗星の標的にする予定だった。そして、仮にイスカンダルの未知のテクノロジーを発見した場合、それを報告する義務もあった。その場合、ガトランティス本隊の目的地は、この惑星になるかも知れない。

 そんなことを、考えていたその時――。

「副長! 付近の宙域に、ワープアウト反応あり!」

「艦種識別急げ!」

 レーダ手は、直ちにそれを実行し、報告した。

「友軍です。空母一、戦艦一、巡洋艦五、駆逐艦二十からなる小隊です! ……これは……!」

「友軍だと? いったい、どうした?」

「これは、政府直属の近衛部隊です!」

 ネーラーは、通信士に急ぎ命じた。

「なんだと……!? 大帝にどういう事か確認しろ!」

 

 提督ナスカは、自身の名を付けたナスカ級空母で、目前の惑星ファンタムの軌道上に展開するガミラス艦隊に、睨みをきかせて口元を緩めた。

「敵、ガミラス艦隊、空母一、巡洋艦五、駆逐艦十六、もう一隻、ヤマッテと思われる戦艦を発見!」

「ほう。復帰戦の相手がガミラスとはな。頭数はほぼ互角。おあつらえ向きとは、このことだな」

 ナスカは、ガミラス戦争でガトランティス大要塞に戻ることの出来た、唯一の提督クラスの生き残りだった。ガミラス攻略戦で、サレザー系のエピドラ宙域での戦闘でひどい怪我を追って撤退し、これまで長い間闘病生活を送っていた。あの時、乗艦は大破し、バルゼーとゴーランドに救われるという無様を晒し、死んだ方がましだと、何度も思っていたが、ようやくここで復帰出来たのだ。

「大帝の護衛の精鋭部隊の実力を、たっぷりと奴らに見せてやれ! 直ちに、戦闘機隊、攻撃機隊は全機発艦!」

 その指示で、彼の空母から、イーターⅠと、デスバテーター、合わせて百機程が次々に飛び立ち、まっしぐらにガミラス艦隊へ向かっていった。

 ナスカ提督は、レーダーに映る一つの小さな光点を見つめた。

「……参謀長から突然の指示があったのはあれだな? あれの拿捕が最優先だ!」

 ナスカは、真っ直ぐに腕を伸ばしてそれを指した。

 その光点は、アナライザーが操縦する、コスモフォワードシステムを乗せた機体だった。

 

 空母ミランガルでは、ガトランティス艦隊出現の報を受け、ネレディアは、その様子を睨みつけていた。

「あれは、デスラー大使から報告のあった、ガトランティス人を迎えに来たという艦隊なのか……? 大使は、攻撃してはならんと言っていたが……。本当に大丈夫なのか?」

 レーダー手は、ガトランティス艦隊の動きを察知して、ネレディアに報告した、

「ガトランティス艦隊空母から、艦載機が発艦しています! およそ、百機!」

 ネレディアは、その報告で、目を見開いた。

「全艦、戦闘配置につけ! あれを、明確に敵と認定する! こちらも、艦載機を全機発艦させろ! 急げ!」

「はっ! 戦闘機隊、攻撃機隊は、発艦準備急げ!」

 ネレディアは、スクリーンに映し出されたレーダーの配置図を睨んだ。

「まずいな……。惑星ファンタムから上がって来る大使たちの機体を援護しろ! 駆逐艦の半分を、そちらに回せ!」

「リッケ司令。それでは、我々の艦隊の防御が薄くなってしまいます」

 反論したミランガルの艦長クロッツェ中佐を、ネレディアは叱責した。

「馬鹿者! 我々がここにいる意味を忘れるな! 我々が最優先すべきは、デスラー大使の身の安全を守ることだ!」

「は、はいっ!」

 ネレディアは、再び視線を前に向け、スクリーンを見つめた。

「ガトランティスめ……!」

 

 ムサシでは、船長として艦長席に座っていた藤堂早紀は、青ざめて艦橋の窓の外の宇宙を見つめていた。

「敵、ガトランティス艦隊接近! 艦載機多数、こちらに接近して来ます!」

 それまで、居住区にいた雪も、艦内に流れた警報を聞き、慌てて第一艦橋に駆け込んで来て、レーダー手の席に着いていた。

「雪、美雪ちゃんはどうしたんじゃ?」

「大丈夫! 寝かしつけてきたから!」

 機関長席の徳川は、その答えに安堵すると、立ち上がって冷静に周りを見回して言った。

「こりゃあ、いかんなあ。わしが艦を動かして、この場を離れるとしようか。そうだな。この惑星の反対側に逃げるのはどうじゃ?」

 徳川は、席を立って航海長席に向かおうとした。しかし、早紀は、慌てて彼を呼び止めた。

「ま、待って下さい! 私、ここをどきますから! 徳川さんが船長をやるべきです!」

 徳川は、後頭部を手で押さえて、苦笑した。

「いやあ。今は、この船を動かせる要員は限られとる。あんたが、そのまま、船長をやってくれんか。分からん事があれば、わしと雪が助けるんでな」

 雪も、背後の彼女を向いて笑った。

「大丈夫。あなたなら、出来る。ここまで、ムサシを動かしてきたあなたなら」

 早紀は、ますます困惑していた。

「そ、そんな……」

 通信長の座席にいた相原も、にこやかに彼女に声を掛けた。

「大丈夫ですよ。あなたなら」

「相原さんまで……」

 そうしている間にも、徳川は航海長の座席に着いて、操作を始めていた。

「いつでもいいぞ。船長、発進準備は完了した」

 徳川は、笑顔で早紀を振り返った。

 皆の笑顔に囲まれ、それでも、早紀は表情を強張らせていた。その様子を見た相原は、席を立って彼女の近くへ行った。

 困惑して、今にも泣きそうにも見えた彼女の背に手を置き、相原はそっと言った。

「大丈夫。あなたは一人じゃない。今まで通り、科学者として、皆に指示をすれば良いんですよ」

「科学者として……?」

 相原は、優しく笑った。

「そう。あなたが出来ることを、今まで通りすればいい」

 相原と視線を合わせた彼女は、少し自信なさげではあるものの、何度も頷いた。

「そ、そうですね。分かりました。やってみます。ありがとう、相原さん」

 相原は、彼女に小さく手を振ると、急いで自席へと戻って言った。

 大きく息を吸い込んだ早紀は、やがて、決意した表情で技術科の座席にいた神崎恵と日下部うららに言った。

「神崎さん、まずは、波動防壁の起動準備をお願い」

「は、はいっ。任せて下さい!」

「日下部さんは、雪さんとレーダー手を交代して。お願いね」

「は、はい! 分かりました!」

 日下部は、雪と顔を見合わせ、二人は手を叩いて席を代わった。

 雪は、早紀の方を見て、彼女の次の指示を待った。

「雪さん。今、ここには、軍人はあなたしかいません。戦術長席で、艦の防衛を担当して頂けますか?」

 雪は、なるほどと頷いた。

「そうね、ヤマトから分けてもらった魚雷が十二本積まれてたんだった。分かった、私に任せて」

 雪は、言われた通り、いつもなら古代が座っていた席に向かった。一応、訓練は受けていたが、実際に武器の使用を行った事がある訳では無い。しかし、そんなことを口にしても、皆が不安になるだけだったので、彼女は不安を隠して黙っていることにした。

 そういえば、ここでよく彼に話しかけに行ったな――。

 そんな懐かしい思い出が、彼女の脳裏には浮かんでいた。そして、彼が、いつもどうしていたのか、それは鮮明に思い出す事が出来る。

 大丈夫。私だって出来る――。

 艦内通信のマイクを掴んだ彼女は、自信を持った口調を心掛けた。

「現在、敵、ガトランティス艦隊接近中! 全艦戦闘配置! 前部、後部魚雷発射管、魚雷装填! リモートで第一艦橋から操作する。艦内の民間人は、出来るだけ艦の中央部に移動して!」

 隣の座席にいた徳川は、雪の様子に笑顔を向けていた。雪は、苦笑してそれに応えたのだった。

 

 艦載機の発艦準備を急いでいたミランガルは、遅れてようやく十機程度の機体が発艦した所だった。

「敵、艦載機来ます!」

 ネレディアは、大きく手を振ると、叫んだ。

「弾幕を張れ! 一機も撃ち漏らすな!」

 接近するガトランティスの艦載機は、駆逐艦と巡洋艦の弾幕の前に、次々に撃ち落とされて行く。しかし、それを掻い潜ったデスバテーターから、数十本のミサイルが放たれた。ミサイルは、二隻の駆逐艦に命中して爆発し、艦は横っ腹に大きな穴が空いていた。それらは、穴からイナズマのような光を放って、航行不能になった。

「怯むな! 撃って撃って、撃ちまくれ! 奴らを追い払うのだ!」

 激しい撃ち合いで、双方に被害が広がって行く。その間にも、ガトランティス艦隊は、ガミラス艦隊へと接近を続けていた。

「敵艦隊、間もなく射程圏に入ります!」

「各艦、陽電子砲、発射準備完了しています!」

 その時、ミランガルの甲板に、二機のデスバテーターが接近していた。

「いかん、撃ち落せ!」

 甲板の隅に設置された機関砲が激しく弾幕を張るものの、デスバテーターはそれを逃れてミサイルを放った。

「回避ー!」

 ミサイルは、小さくカーブしながら、三本が次々に甲板に命中した。

「……被弾!」

「飛行甲板、大破!」

「艦載機格納庫で、火災発生!」

「負傷者が数名出ています!」

 ネレディアは、歯ぎしりして、隙間から声を出した。

「ダメージコントロール! 消火急げ!」

 ネレディアは、戦術担当に確認した。

「艦載機は、何機発艦出来た!?」

「十三機だけです」

 たったの十三機……?

「その機体は、直ちに接近する敵艦載機を叩かせろ!」

「司令! 甲板が大破した為、砲台を出せません!」

 ネレディアは、冷や汗をかいて、接近する敵の姿を睨んだ。

「敵艦隊を沈めるぞ! 射程圏に入り次第、砲撃を始めろ!」

 

 そんな混乱の中、ガトランティスのイーターⅠは、惑星軌道上に上がって来たアナライザーの操縦する機体に迫っていた。

 その戦闘機隊の隊長は、指を指して、編隊のうちの四機を、そちらに向かわせた。

 アナライザーは、敵機接近を感知していたが、まだ大気圏内から抜け出す直前だった為、回避行動に移れずにいた。

 四機のイーターⅠからは、一斉に長い鎖のような物が放たれると、それらは、アナライザーの乗る機体に命中し、先端の磁力で接続した。

 アナライザーは、大気圏外に脱出すると、すぐに回避行動を始めたが、別のイーターⅠの機関砲による銃撃を受け、エンジンが動かなくなっていた。

 アナライザーは、後から上がって来るだろう古代へと通信を行った。

「コチラ、AUO5。敵の攻撃ヲ受ケ、鹵獲サレまシタ。救助ヲ乞ウ――」

 そうしている間にも、イーターⅠは高速に移動を開始し、機体はそのまま運ばれて行った。

 遅れて大気圏外に上がって来た古代は、アナライザーからの通信を受信し、ようやく事態に気が付いていた。

「な、何が起こっているんだ!?」

 古代は、機体をアナライザーの機体へと移動させようとしたが、数機のイーターⅠが接近して来た。

「く、くそっ。ガトランティスの仕業なのか!? やむを得ない。我々は、直ちにムサシへ帰還する!」

 古代は、方向転換して、ムサシの方へと向かった。

 しかし、後からイーターⅠ三機が、執拗に追ってくる。古代は、機体を右へ左へと旋回させ回避していたが、コスモシーガルの性能では、逃げ切るのは困難だった。

「くっ! このままでは……!」

 先を見ると、ムサシは、まだ肉眼で捉える距離では無かった。

 

「古代さんたちのコスモシーガル、敵機に追われているようです!」

 レーダーを見ていた日下部は、大きな声で早紀に報告した。それを聞いた早紀は、苦渋の表情で、徳川に言った。

「徳川さん! 船を戻して下さい!」

「分かった。取舵いっぱい!」

「神崎さん、直ちに波動防壁展開!」

「はい、波動防壁展開します!」

 早紀は、最後に、自信なさげに言った。

「雪さん……。コスモシーガルを、魚雷で守れますか?」

 雪は、それを聞いて青ざめた。

 このような場合、敵機に魚雷を命中させることは困難だ。その為、放った魚雷を至近距離で自爆させるのが効果的なのは知っていた。

 しかし、下手をすれば、古代の乗る機体を巻き込む可能性もある。しかし、悩んでいる間に、彼を失う可能性があった。

 雪は、大きく息を吐き出して気を落ち着けた。

「……やってみる。魚雷戦……用意!」

 ムサシは、左舷へと大きく旋回して、艦首をコスモシーガルの方へと向けた。

「前部魚雷発射管、一番装填。目標、敵、艦載機の右上方! 発射後、自爆させて敵機を追い払う!」

 雪は、操作パネルで、敵の移動予想地点を算出させ、魚雷の発射方向を決めた。そして、味方の機体への影響が最も薄い座標で、自爆するように設定した。

 後は、ムサシの電算機が、自動的にやってくれる筈だった。

 雪は、震える手で、操作パネルに映る魚雷の発射ボタンに指を当てようとした。

 

 古代くん……!

 私が、あなたを守る……!

 

「一番、魚雷発射!」

 雪の指は、そのボタンに触れた。

 ずしんと艦内に魚雷が発射された時の揺れが響いた。

 ムサシの前部魚雷発射管の一つから、魚雷が一本放たれていた。

 魚雷は、少し弧を描きながら、敵機のいる座標へと迷いなく飛んで行った。

 

 古代は、その時も回避行動を続けていた。しかし、敵機の銃撃が機体をかすめて行き、撃墜される寸前となっていた。

 その時、副操縦士席にいた真田が叫んだ。

「古代、ムサシがこちらに魚雷を発射した。十秒後に到着するぞ!」

 古代は、目を見開いた。

 いったい、誰が、魚雷を発射したんだ……?

 しかし、そんなことを、考えている暇は無かった。

「皆、あの魚雷は近くで爆発する筈だ! 何かに掴まって!」

「あと、五秒! 三、二……」

 古代も、目前に迫る魚雷を、肉眼で捉えていた。

 彼は、操縦桿をいっぱいまで倒すと、機体を大きく降下させた。

 そして、そこで魚雷は、大爆発を起こした。

 爆発により飛び散った弾頭の破片は、付近に高速で散らばって、イーターⅠの機体にばらばらとぶつかった。そして、その機体に穴が空いたイーターⅠ三機は、炎を上げて、惑星ファンタムの地表へと、落下して行った。

 

「敵機、撃墜したようです!」

 雪は、慌てて日下部に確認した。

「コスモシーガルは!?」

 日下部は、恐る恐る言った。

「魚雷が爆発する際に、突然レーダーから消えました……」

 雪は、真っ青になって、椅子に掴まった。

 

 古代は、大きく降下させた機体を、大気圏すれすれの所で上昇させ、再びムサシへと向かうコースをとった。

 古代は、冷や汗を拭って、ほっと一息ついていた。そして、通信機をオンにすると、ムサシへと呼びかけた。

「こちら古代。おかげで助かった。これより、帰還する」

 

「古代さんから、連絡がありました。無事です!」

 相原の報告を聞いた雪は、へなへなとその場に座り込んだ。

「よ、良かった……。当たったら、どうしようって、思ってたから……」

 そんな雪の様子を見た早紀は、彼女が軍人とは言え、戦闘部門を担当した事が無かったのを知った。何て酷い指示を出してしまったのだろうと、彼女は、再び泣きそうになっていた。

 そんな彼女の元に、相原は再び近づくと、彼女を勇気づけた。

「大丈夫。藤堂さんは、今いる人員の最適な配置をしていましたよ。自信を持って下さい。それよりも、古代さんたちが、帰還したら、この場を直ちに離れましょう。引き続き、お願いしますね、船長!」

 

「ナスカ提督、目的の物の鹵獲に成功したと報告がありました」

 ナスカは、渋い顔で、報告してきた艦長の顔を見つめた。

「ふん。機体を収容したら、直ちに帰還せよとの命令だったな……。構わん。ガミラスの奴らを叩潰してから帰還する! 攻撃の手を緩めるな!」

「はっ」

 

 その時、ガミラス駆逐艦の一隻が、大爆発を起こして消滅していた。

「我が方の艦隊は、既に二隻が航行不能、一隻が撃沈されました。このままでは……」

 ネレディアは、激しく砲撃戦が続く艦外の様子を睨んだ。

「大使の機体の収容はまだか?」

「敵機が、周囲を飛び回っていて、なかなか近づけないようです」

「機体を収容次第、この宙域を離脱する。何とか、それまで持ちこたえろ!」

 その時、艦外の大きな輝きがネレディアの顔を照らした。

「駆逐艦、更に二隻が撃沈!」

 それに反応する間も無く、今度はミランガルが大きく揺れた。

「敵の陽電子砲が命中! 第七デッキから、第十デッキまで火災発生! デッキを閉鎖します!」

 ネレディアは、歯を食いしばっていた。

 その時、ミランガルのレーダー手が、新たな発見をしていた。

「新たな艦隊出現の反応があります! 艦影多数!」

 ネレディアは、肩を落として目を閉じた。

 最早、これまでか……?

「艦種識別……! 友軍です! デスラー総統のガミラス回遊艦隊だと思われます!」

 ネレディアは、目をかっと開いて、レーダーに映る光点を見つめた。

 

 それは、五百隻はいるかと言う、大艦隊だった。

 デウスーラの艦橋で、デスラーは戦闘が行われていることを知った。

「おやおや……。どうやら、我々の同胞が、少々困っているように見受けられるね」

 タランは、レーダーの反応を確認して、デスラーに報告した。

「はい。ガトランティスとガミラス正規軍の艦隊が戦っているようです。この様子では、かなりの劣勢に見えますね」

 デスラーは、ため息をすると、タランに言った。

「少し、手を貸してやろうじゃないか。構わないかね?」

 タランは、ガミラス式敬礼で応えた。

「もちろんです」

 タランは、通信機を掴むと冷静に言った。

「全艦、戦闘配置。前衛艦隊五十隻は、直ちに砲撃を開始してくれ。敵艦隊を追い払う」

 

「新手のガミラス艦隊が現れました! 艦影多数! 約五百隻……!」

 それを聞いたナスカ提督は、飲んでいた飲み物を吹き出した。

「ご……五百隻だと?」

「はい。どうやら、ガミラス艦隊とガルマン帝国艦隊の混成艦隊のようです。彼らの連合艦隊かも知れません」

「……しろ!」

「は?」

「直ちに撤退しろ!」

「は、はい!」

 こんな所で、死んでたまるか、とナスカは思っていた。その為には、逃げるのも、恥ずかしいとは思わなかった。それは、前回の敗北から彼が学んだ事でもあった。

 

 ガトランティス艦隊が去って行った後、しばらくして、帰還したランハルトは、ムサシへと通信して古代に食ってかかっていた。

「見てみろ! 奴は嘘をついていたに違いない。この有様を見ろ!」

 ネレディアも、その横で憮然とした表情で古代を睨んでいる。

 古代は、月の影から現れた、別のガトランティス艦隊へと攻撃を加えるように主張するランハルトとネレディアを何とかなだめようと話をしていた。

「待って下さい。先程の話が嘘だとは決まっていません。彼は、ガトランティスを裏切ろうとしているんですよ?」

 その時、相原は話に割って入った。

「ズォーダー大帝と、デスラー総統から、通信が入っていますが……。スクリーンに出して良いですか……?」

 古代は、頷いて言った。

「もちろんだ。すぐに出してくれ」

 スクリーンが分割すると、デスラーとミルの姿が映った。

「……久しぶりだね。諸君。間に合って良かったよ」

 ミルは、デスラーの姿に気後れしたのか、黙っている。

「おや……? 君は確か……。ふっふふふ……」

 デスラーは、笑いながらも、瞳は眼光も鋭く、ミルに憎悪しているのは明らかだった。

 それは、当然であろう。彼は、ミルのせいでスターシャを拉致される事になったのだ。

 古代は、デスラーが何か言い出す前に、説明しなければと思い、惑星ファンタムであったことを、一つ一つ話した。

 黙って聞いていたデスラーは、古代が話し終えると、そこで目を開いた。

「……スターシャを助け出す手引を君がすると言うのかね? この私に、それを信じろと……?」

 ミルは、デスラーの内面に煮えくり返る怒りを感じつつも、懸命に話した。

「あなたに対しては、本当に申し訳無い事をしたと思っている。罪滅ぼしになるか分からないが……必ずや、スターシャ女王を救うと約束したい」

 デスラーは、そこで黙って何か考えているようだった。

 待たされた古代も、ランハルトもネレディアも、デスラーがいったい何を言い出すのか、固唾を飲んで見守った。

 デスラーは、先程までの怒りを飲み込んで、努めて紳士的に振る舞った。

「……地球の言葉で、藁をも掴むという言葉があるそうだね。この私が、そのような気持ちになることがあるとはね。良かったねえ、ミルくん。私が、ガミラスを統治していた頃の私では無くて。君は、命拾いをしたようだ」

 ミルは、その言葉に震え上がった。

「ところで……。真上と真下……。本当に、そこを狙えば、良いのかね? 古代、君は、それを信じるのか?」

 古代は、デスラーの迫力に押されつつも、何とか声を出した。

「……僕は、それを信じる。それを僕らに約束した彼の事も。それに、今は、それしか方法が無い」

 デスラーは、ランハルトとネレディアの方を見た。

「君らはどうなんだね? 私は、この作戦にかけて見ようと思うが……? それとも、他に、いい方法があるかね?」

 ランハルトとネレディアは、言葉に詰まった。確かに、他に策があった訳では無い。

「デスラー総統……。あなたが、そう言うのであれば、私も信じましょう」

 ネレディアは、まだ納得した訳では無かったが、認めるしか無かった。

「……良いでしょう。私も、今は信じる事にします」

 デスラーは、目を閉じて頷いた。

「ならば、決まったようだね。ミルくん、そういう事だ。君が、もしも私を裏切るようなら、その時は、分かっているのだろうね?」

 ミルは、身体の震えをどうにか止めて、彼に言った。

「もちろんだ。私は、必ずや、約束を守ってみせる」

 デスラーは、満足した様に頷いた。

「それにしても、先程の連中は、何をしにやって来たのかねえ?」

 ミルは、真剣な表情で言った。

「ガトランティスは、イスカンダルの未知のテクノロジーを探していた。コスモフォワードシステムを、盗んで行ったのは、そのせいだろう。あれが、何の役に立つのかは、今は分からないが……」

 古代は、少し考えてから言った。

「君が、シャルバートと接触したのが、何らかの方法で、知られて居るのかも知れない。しかし、先程現れた艦隊は、君が乗った機体にも、君の艦隊にも、まるで興味が無かったようだ。君の裏切りがばれているのなら、真っ先に狙われても良い筈なのに。変だな……」

 デスラーは、鋭い目つきになった。

「なるほど……。まあいい。今は、彼を信じて作戦を実行するしか無い。君も、戻ったら、その事に十分注意するのだね」

 ミルは、不安を抱えながら、頷いた。

 

 彼らは、ミルの乗る艦隊が去るのを見守り、これからの動きを話し合う為、一時的にそこに留まる事を決めた。

 デスラーは、シャルバート教の信者たちで構成される反乱軍と行動を共にしていた為、彼らとも今後のことを話し合う必要があった。

 

 古代は、それまでの間に少しだけ休憩しようと、食堂に雪と共に訪れていた。オムシスの装置の前で、古代は雪に尋ねた。

「君が魚雷を撃ったんだって?」

 雪は、疲れ切った様子で、頷いた。

「う、うん。凄く頑張ってみた……。良かった、あなたが無事で」

 古代は、雪の肩を強く抱いて、おどけて言った。

「流石は、ヤマトの戦士だ!」

 雪は、頬を膨らませた。

「そんな適当なこと言わないで」

 古代は、雪の耳元で囁いた。

「でも、本当のことだよ。ありがとう」

 雪は、顔を赤らめて、彼を身体から離した。

「まったくもう……あら?」

 雪は、先に食堂にいた二人の男女の姿に気がついた。

 二人は、テーブルを挟んで仲睦ましげに話している。

「あれって……相原と、藤堂さんじゃないか」

 雪は、古代の肩を掴むと、急いで屈んだ。

「なっ、何?」

 雪は、口元に人差し指を立てた。

「しっ! 黙って」

 古代と雪は、テーブルの影に隠れて、そのまま聞き耳を立てた。

「相原さんにも、春が来たのかも」

「君って、そういう事する人だったんだ」

「別に、良いじゃない。でも、邪魔しちゃ悪いかな。出ましょうか」

「……了解」

 そうして、古代と雪は、そっと食堂を後にした。

 

 一方、その頃真田と新見は、自室でサーシャと話をしていた。

「どうする? デスラー総統の所へ行くかい?」

 サーシャは、少しだけ悩むと、笑顔で言った。

「ううん。ママが戻ったら、いつでも一緒に居られるから。だから、もう少し、一緒にいてもいい?」

 新見は、お別れだと思っていたので、諦めかけていた。その言葉を聞いて、彼女は涙ぐんだ。

「本当に? ありがとう、澪ちゃん」

 新見は、サーシャの事を抱き寄せた。

 しかし、真田は、少し難しい顔をしていた。サーシャは、怪訝な表情で真田の顔色を窺った。

「……士郎パパは、嬉しくない?」

 真田は、はっとしてサーシャに笑顔を向けた。

「もちろん、嬉しいさ。でもね、私は、君に謝らなければならない事がある」

「何のこと?」

「コスモフォワードシステムを、ガトランティスに奪われてしまった。私が、シャルバートの元から持ち出さなければ、こんな事にはならなかった筈だ」

 サーシャは、首をひねっている。

「あれって、何に使える物なの?」

「それを、調べようとしていたんだがね。恐らく、コスモリバースシステムと似たような機能を果たす物だとは思うが……。悪用される事を危惧しているんだよ」

「難しくて、サーシャには分かんない。でも、士郎パパたちが、いればきっと大丈夫」

 真田は、抱きついて来たサーシャの頭を撫でた。

「そうだね。そう、努力しよう」

 

続く…




注)pixivとハーメルン、及びブログにて同一作品を公開、または公開を予定しています。
注)ヤマト2202の登場人物は、役割を変更して登場しています。
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