宇宙戦艦ヤマト2199 白色彗星帝国の逆襲   作:とも2199

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宇宙戦艦ヤマト2202とは別の世界線を歩んだ宇宙戦艦ヤマト2199の続編二次創作小説「白色彗星帝国の逆襲」です。「白色彗星帝国編」、「大使の憂鬱」、「孤独な戦争」、「妄執の亡霊」、「連邦の危機」、「ギャラクシー」の続編になります。


白色彗星帝国の逆襲85 暗黒星団帝国の残党

 白色大彗星内部の、要塞都市帝国――。

 

「母上。只今戻りました」

 ミルは、惑星ファンタムから帰還すると、真っ先にカミラの自室へ向かった。自分の裏切りがばれているのかどうか、それを確かめる為だ。

 ミルは、にこやかに近付くカミラの姿を眺めて、内心の不安を隠しながら、努めて冷静なふりをした。

「ああ、無事だったのね? 黙ってここを飛び出したと知った時には、本当に心配しました」

 カミラは、ミルを抱き締めて、本心から彼を心配しているようだった。

「何故、そんなことを? 私に、ちゃんと話してくださる?」

 ミルは、事前に考えてきた言い訳を、頭の中で反芻した。

「……母上、申し訳ありません。私は、突然大帝になれと言われてその立場に就いたが、私自身の力で目立った武勲を上げていなかった事で、部下が着いてくるか不安を感じていました。そこで、イスガルマン人やイスカンダルのテクノロジーの捜索部隊が出発するのを知り、同行して自分の手柄に出来ないかと考えたまでです。心配させてしまったようで、本当に申し訳ありません」

 カミラは、身体を離すと、頭を振った。

「もういいのです。あなたが無事であれば。……それで、何か収穫はあったのですか?」

 ミルは、頷いた。ここから、彼女の腹を探る必要がある。

「……イスカンダルとガミラスが最初に移民したという惑星ファンタムには、イスカンダルの遺物が眠っている様に思われます。地球人と、ガミラス人、それにイスガルマン人は、あの惑星で調査と、発掘を行っていた事が判明しました。しかし、それ以上は危険と判断し、一旦帰還して報告しに来たのです」

 ミルは、最も重要な彼らと接触した事実を隠して、基本的に本当の事を話した。これで、カミラがどのような反応を示すかを確認したかった。

 そのカミラは、嬉しそうな表情になった。

「良くやってくれました! 私も、誇らしいわ!」

 カミラは、ミルの手を掴んで満面の笑みを浮かべている。

 ……大丈夫なのだろうか?

 ミルは、ひやひやしながら、最後に核心に触れた。

「……ところで、新たに別の我々の艦隊が現れて、ガミラス艦隊との間で小規模な戦闘が行われたのですが……、あれは母上の差し金ですか?」

 カミラは、大きく頷いた。

「差し出がましい事をして、ごめんなさい。それは、あなたの為に作った近衛部隊です。あなたがここを出たのが分かってすぐに、追わせたのです。あなたに、もしもの事があっては困りますから。彼らが戦闘を行ったのであれば、あなたに危険が迫っている事を察知したからでしょう」

 カミラの表情は、嘘を言っている様には、思えなかった。

「あの艦隊には、長い間病床に伏せていたナスカ提督を充てました」

 ミルは、驚いて耳を疑った。

「な、ナスカ提督は、生きていらっしゃったのですか!?」

 カミラは、薄く笑った。

「ええ。寝ている間に、部下だったゲーザリーやユーゼラーが、自分より立場が上になっていた事に、かなり怒っていましたがね。大帝直属の部隊の指揮官とすると話したら機嫌を直してくれたようです」

 ミルは、見知ったかつてのガトランティスの提督が生きていた事に、衝撃を受けていた。しかも、自分が大帝の立場にあることを、一体どのように思っているか、背筋が寒くなる感覚を覚えていた。

 それにしても、どういう事だろう?

 地球人が運び出した、イスカンダルの遺物を、ナスカ提督が強奪して行った事実を、彼女は知らないのだろうか……?

 しかし、それ以上の詮索は、自らの墓穴を掘る事にもなりかねない。

「それは、有り難い話です。実際、あれには助かりました」

 ミルは、それでもカミラの表情に変化が無い事で、恐らくばれていないと判断する事にした。

 ミルは、彼女に最後に尋ねた。

「惑星ファンタムの扱いはどうしますか? 私たちも、遺物の捜索をすべきだと思いますが?」

 カミラは、素直に頷いた。

「勿論、そうしましょう。でも、まずは邪魔なガルマン帝国の本星を黙らせるのが先。それが終わったら、ガルマン帝国中を巡って、イスガルマン人が見つかった拠点を全て滅ぼす予定だったけど、その前に少し立ち寄りましょうか」

「分かりました。では、そのようにしましょう」

 ミルは、カミラとひとしきり話したあと、ようやく緊張を解いて、彼女の自室を後にした。カミラは、満足そうな顔で、ミルのことを見送っていた。

 

 ミルは、隣にある自室に急ぎ足で戻ると、デスクの引き出しから、携帯用通信機を取り出した。ゼール中佐の船を降りる前に、彼から渡された物だ。彼は、半信半疑ながらも、結局ミルの考えに賛同してくれたのだ。

 ミルは、通信機をオンにして、マイクの部分を指で叩いた。もとより、盗聴される恐れもあり、会話するつもりは無く、この叩いた回数で、今回の裏切りがばれているかどうか伝える為だった。

 何度か、同じフレーズを叩いていると、相手から、同じように通信機のマイクを叩く音で応答が返って来た。向こうは、ミルの話を理解したらしい。

 ほっとしたミルは、通信機をオフにすると、そこでようやくデスクの椅子に、倒れ込むように腰掛けた。

 そのままぼんやりしていると、デスクに置いた戦艦大和の模型が目に入る。ミルは、その戦艦のシルエットが、惑星ファンタムで見かけた宇宙艦と似ているのに気が付いた。そして、手を伸ばしてその艦体のラインを指でなぞった。

 そうして、この作戦が上手く行く事に、そっと願いを込めて。

 

 それにしても――。

 暗黒星団帝国から連れて来たという科学奴隷のサーダとシーラ。彼らは、かつて脳を弄って人を操る術を持っていたという話は、本当なのだろうか?

 母のあの様子。

 優しい母としての顔と、冷酷なガトランティスの女帝としての顔。二つの顔を、使い分けている様に感じられる。

 仮に、本当に母が操られているとしたら、一体どのような目的があるのか?

 シャルバートが語った事を信じるのであれば、千年前からガトランティスと暗黒星団帝国は戦っていた事になる。そして、数百年前に、ガトランティスは大きな被害を出しながらも、彼らに勝利した事になっている。そして、長い寿命を持つ彼らにとっては、この年月は大した物では無いのかも知れない。

 確信は無いし、今は情報が少な過ぎる。

 だが、これからは、彼らに注意を払わねばならないだろう。

 

 ミルは、物思いに耽って、しばらくの間自室に留まった。

 

 その頃、要塞都市帝国の最深部の研究施設――。

 

 科学奴隷のサーダは、運び込まれたコスモフォワードシステムの部品を早速調査して、彼女の部下の科学奴隷に組み立てを依頼した。

 彼女の監修の元、様々な星からやって来た科学者たちが、組み立てを行っている。

 シーラは、上階から降りてくると、急ぎ足でサーダの元へやって来た。

「サーダ」

 サーダは、振り返ってシーラの姿を認めた。

「シーラ。見ての通り、こちらの作業は順調です」

 シーラは、サーダの視線の先を見て、その様子を窺った。急ピッチで組み立ては行われており、今日のうちに、組み立ては完了しそうだった。

「やはり、あれは廃棄されていなかったんですね?」

 サーダは、頷いた。

「情報は間違っていなかった。そして、私たちはとうとうあれを手に入れた。運ばせたあの提督は、あれの価値など分からない。だから、気にする必要は無い」

 二人は、顔を寄せ合って頷き合った。

 そして、シーラは、サーダの耳元に顔を寄せると小さな声で言った。

「……カミラの息子の件ですが、どうやらガトランティスを裏切るつもりのようです。オートマタ兵からもたらされた情報です」

 サーダは、無表情にその話を聞いていた。

「なるほど。だから、大帝の座につけるのは反対だったのに。仕方ありません。彼を放っておいても、私たちの計画への支障はほとんど無いでしょう」

 シーラは、更に声をひそめた。

「惑星ファンタムには、廃棄されていないイスカンダルの波動砲艦隊が、隠されているようです」

 サーダは、微かに口角を上げた。

「そう。やはりあるのね? わざわざ手の込んだ方法で、火星での騒ぎを起こさせたのに、地球艦隊は大した戦力を派遣しなかった……。でも、それが使えれば」

 シーラは、小さく頷いた。

「地球艦隊は不要です」

 サーダは、無表情の顔を消すと、にっこりと笑顔を向けた。

 

続く…




注)pixivとハーメルン、及びブログにて同一作品を公開、または公開を予定しています。
注)ヤマト2202の登場人物は、役割を変更して登場しています。
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