宇宙戦艦ヤマト2199 白色彗星帝国の逆襲   作:とも2199

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宇宙戦艦ヤマト2202とは別の世界線を歩んだ宇宙戦艦ヤマト2199の続編二次創作小説「白色彗星帝国の逆襲」です。「白色彗星帝国編」、「大使の憂鬱」、「孤独な戦争」、「妄執の亡霊」、「連邦の危機」、「ギャラクシー」の続編になります。


白色彗星帝国の逆襲87 シャルバートの再来

 惑星ファンタム付近――。

 

 フラーケンは、ボラー連邦領内で救助したヒネルが与えられたガルマン帝国の巡洋艦の艦橋に居た。

 腕組みをして上目遣いに発進準備に勤しむヒネルの姿を眺めている。

「行んだな?」

 ヒネルは、フラーケンの言葉に手を止め、彼の方を見つめた。

「ああ」

 ヒネルの瞳は、再び自信に満ち溢れている。それは、長年の夢を叶えようとしている男の目だった。

「俺たちは、ボラー連邦領内に戻る。向こうは、やっと反乱軍が動けるようになったらしい。手伝いに行かないとな。あんたに助けてもらった命、決して無駄にはしないさ」

 フラーケンは、彼が長生き出来るのか、すぐに命を落としてしまうのか、まるで予想もつかなかった。ただ、無事でいてくれるのを願うしかなかった。

 僅かに口角を上げたフラーケンは、瞳を閉じた。

「……分かった。死ぬなよ」

「心配するな。いろいろありがとう」

 そう言って、ヒネルは、艦内通信のマイクを掴んだ。

「俺たちを助けてくれた、フラーケンが下艦する。皆、丁重に見送ってくれよ」

 そう言って、ヒネルは、フラーケンに笑顔を向けた。

「……これより、三十分後に、艦をボラー連邦に向けて出発させる。最後に、マザー・シャルバートへの祈りを捧げよう」

 彼と、艦橋に居た僅かな乗組員たちは、膝をついて頭を垂れた。惑星ファンタムが、シャルバートがかつて住んでいた星だと、彼らは信じている。実際にシャルバートが生きたまま、そこにいることは、箝口令が敷かれていた為、フラーケンは黙っているしか無かった。

 その聖地へと、彼らは皆、頭を垂れて長い時間祈っている。

 フラーケンは、その様子を見てから、彼らに背中を向けた。そして、ゆっくりと艦橋から階下のシャトル格納庫へ向かった。

 

 デウスーラに居たタランは、分割したスクリーンに映し出された反乱軍の多くの艦艇のシャルバート教信者たちが、一斉に膝をつき、頭を垂れている姿を眺めていた。

「総統。イスガルマン人も、それ以外の星の人々も、皆、シャルバートを信じているようですね。このまま、彼らには、シャルバートが実在することは秘密にするのですか?」

 艦橋の自席に腰掛けたデスラーは、足を組んで彼らの姿をぼんやりと眺めている。

「言えば、彼らは波動砲艦隊を欲しがるだろう。それは、シャルバートが……ましてや、スターシャが望むことでは無いだろう」

「総統……」

 デスラーは、彼らの意地らしくも、悲しげな姿に心を揺らされていた。

 

 多くの長年虐げられた不幸な人々。

 スターシャは、そんな彼らを救って欲しいと願っていた。自らの命よりも、多くの同胞や、苦しんでいる人々を救いたいと願っていた。

 自分は、彼らに何が出来るのか?

 デスラーは、自問自答した。

 デスラーの胸の内には、かつて、まだ若者だった頃の自身の決意が蘇っていた。

 

 そう――。

 純血主義に囚われ、人々を虐げ、差別してきたガミラスを正したい。そして、銀河全体に自由と平和をもたらしたいと願っていたあの頃。

 デスラーは、そんな理想を胸に抱いた若き日の自分を懐かしく思い出していた。 

「タラン。私は、もう一度やり直せるだろうか?」

 タランは、スクリーンを見つめるデスラーの横顔を、意外な物でも見るようにしていた。

「彼らを導き、平和に暮らす権利を取り戻せるのは、私の役目では無いかと、ふと考えてしまったのだよ。どうだろう? 私は、それをやるのに相応しい人間だろうか?」

 タランは、デスラーの想いを理解した。この数年、故郷を捨て、長い時間デスラーと共に過ごしてきた。本当の彼の心の内を理解し、支えられるのは、自分しか居ないと、彼はそう自負していた。

「よろしいのではありませんか? 私も、もう一度、総統が表舞台に立って、人々を導く姿を見てみたいものです」

 デスラーは、目を閉じて薄く笑った。

「ありがとう、タラン」

 デスラーは、スクリーンに映る祈りを捧げる人々が、立ち上がるのを待った。

「タラン、反乱軍のリーダー、グワジルドへ連絡をとってくれないか?」

「はっ。繋ぎます。少々、お待ちを」

 デスラーは、椅子から立ち上がると、上着の裾を伸ばして、胸を張った。

 分割表示されていたスクリーンの一つが、画面一杯に大写しになる。スクリーンには、リーダー、グワジルドの姿が映っていた。

「祈りは、終わったのかね?」

 グワジルドは、にこやかに頷いた。

「デスラー総統。ガルマン帝国から奪取した艦隊は、もう、充分な数が揃いました。我々は、これより他の宙域の反乱軍と接触し、星々をガルマン帝国の支配から解放するゲリラ活動を、正式に開始します。貴方も、一緒に来てくれますね?」

 デスラーは、暫く黙っていた。その沈黙に、グワジルドは、怪訝な表情をした。

 デスラーは、目を開けると、彼に瞳を向けた。

「まあ、待ち給え。少し、私の話を聞いてもらえないかね?」

 グワジルドは、たちまち懸念を持ったようで、顔色が曇った。

「もしや、我々の行動を止めようとしていますか?」

 デスラーは、静かに首を振った。

「いや。是非とも、手伝わせてもらいたいと思っているよ。しかし、その前に、君たちに伝えたい事があるのだよ」

「分かりました。貴方の言う事なら、皆、聞きたいでしょう」

 デスラーは、満足そうに笑みを浮かべた。

「それは良かった。ならば、私たちの会話を、皆に聞かせてもらって構わない」

 スクリーンの向こうに居るグワジルドは、乗組員に声を掛けている。

「今、全艦隊に、通信回線を繋ぎました。どうぞ、続けてください」

 デスラーは、息を吸い込むと、一呼吸置いてから、話し始めた。

「諸君に既に話した通り、我々は、ガルマン人とイスガルマン人と同族であり、彼らと深い繋がりがある。そして、イスガルマン人の祖先である、イスカンダルの王族は、我々にとって、最も大切な友人だ。私は、千年前のイスカンダルの王族こそ、マザー・シャルバートその人であり、かつて実在した人物だと信じている」

 グワジルドは勿論、この話を聞いていた人々は、ざわめいていた。

「聞いたことがある」

「そのような噂があるのは知っているぞ」

 デスラーは、これまでフラーケンなどにやらせていた活動で、人々の間に噂として広まっていたことに満足した。

「……そして、現代のイスカンダルの女王は、この天の川銀河で、私と行動を共にしていた。その名を、スターシャ・イスカンダルという。彼女こそ、君たちが信じる、マザー・シャルバートと血の繋がった子孫だと、私は考えている」

 ざわめきは、益々広がって行く。デスラーは、人々に話が浸透するまで、口を閉じて黙って待った。

 グワジルドは、驚きの余り、唖然とした表情になっている。

「デスラー総統……。そ、それが事実だとしたら……?」

 デスラーは、ゆっくりと頷いた。

「彼女こそ、君たちがいつか救いに来ると信じる、現代のマザー・シャルバートだと私は思う。彼女の望みは、君たちイスカンダルの同胞は勿論、ガルマン帝国からの圧政に苦しむ全ての人々を救い、自由を取り戻したいというものだ。だからこそ、私はその志を同じくし、君たちの戦いに協力したいと考えたのだ。これは、私の部下全員の思いでもある。そして……その力が私にはある!」

 ここまで聞いたグワジルドを始めとした人々は、呆然とした者、涙を流す者、信じていいのか懸念を持つ者と、反応は様々だった。

「で、では、スターシャ・イスカンダル様こそ、マザー・シャルバートの再来だと……?」

 デスラーは、改めて頷いた。

「私は、そう考えている」

 話を聞いていた反乱軍の人々から、津波の様な歓声が響いた。

「マザーが!」

「マザーが実在した!」

「我々を助けに来てくれた!」

「本当の事なのか!?」

「信じていいんだな!?」

 デスラーは、暫く、その歓声や戸惑いが収まるまで待った。そして、ざわめきが落ち着いた所で、続きを話し出した。

「残念ながら、彼女……スターシャは、現在ガトランティスに捕らえられてしまっている」

 喜びも束の間、人々は今度は落胆に喘いだ。

 グワジルドは、悲嘆に暮れる皆を代表して言った。

「そ、そんな……。で、では、我々皆で、スターシャ様を救出しに行くべきだと、貴方は言おうとしているんですね?」

 デスラーは、頭を振って応えた。

「いや、それには及ばない。何故なら、ガトランティスは、今や、強力な軍備を持ったこの銀河全体の脅威と言ってもいい存在だ。ここに集まった戦力では、到底立ち向かうのは不可能だ。その為に、ガルマン帝国も、我々ガミラス人も、そして地球人も、敵か味方かという利害を超えて、協力してガトランティスと戦おうとしている。私は、これから彼らと協力して、スターシャの救出に向かうつもりだ。しかし君たちは、我々がガトランティスを倒し、スターシャを連れて戻るまで、どうか待っていて欲しい。ガトランティスの脅威が無くなり、諸君のこの戦力が温存されていればこそ、必ず反乱を成功させるチャンスが来る。その時こそ、スターシャと共に、自由を取り戻しに行こう。あと十日……いや、あと七日……。恐らく、それで決着がつく。私に、その時間を与えてくれないだろうか?」

 グワジルドは、デスラーの思いに打ち震えていた。

「……我々にも、手伝わせてもらえませんか?」

 デスラーは、頭を振った。

「その必要は無い。戦場に行けば、多くの艦を失う事になるだろう。行くのは、私と、部下がほんの少しいればいい。従って、私の部下の多くは、ここに残して行くつもりだ。どうか私を信じ、待っていて欲しい――」

 

 

 ムサシの艦橋に居た真田は、通信回線を通じて、デスラー総統の話を聞いていた。サーシャはといえば、真田の膝の上に、ちょこんと座っていた。

「……アベルトは、きっとママを助けてくれる。私、そう信じてる」

 小さなサーシャは、瞳を輝かせてデスラーの話を聞いていた。真田は、そっと彼女に笑いかけた。

「デスラー総統の乗る、新型のデウスーラは、次元潜航可能な波動砲搭載艦だ。今後の戦局がどのようになるか分からない今、あの艦は戦いを有利に運ぶ鍵を握っている。そして、澪のママを救うには、あの艦の能力が必要になる時が来るだろう。きっと、彼はやってくれる。私も、そう信じるよ」

 サーシャは、笑顔でそれに応えた。

 レーダー席に居た雪は、その様子を黙って温かい気持ちで見守っていた。

「さあ、澪。こっちも始めよう。もう一度、シャルバートに会い、コスモフォワードシステムの事や、波動砲艦隊の事を聞く。我々も、我々に出来る事をやろう」

「うん!」

 小さなサーシャは、古代たちがやるように、見よう見まねで敬礼のポーズをとった。

 

 

 それから、数時間後――。

 

 デウスーラⅢ世は、フラーケンの乗る次元潜航艦と並んでエンジンを始動していた。

「こちらフラーケン。出航準備は完了した。何時でも、行けます」

 連絡を受けたタランは、それに答えた。

「ここからの作戦行動は、君と、私の二艦で行う事になる。既に、ゲール少将と、カーゼット大佐には、ムサシと、シャルバート教信者たちの反乱軍を守る為に、ここに残るように通達した。我々は、これから隠密行動が基本となるので、君も認識しておいてくれたまえ」

「承知した」

「よし、それでは出航する!」

 デウスーラと次元潜航艦は、エンジン噴射口を輝かすと、ゆっくりと動き始めた。

 周囲のガミラス回遊艦隊や、反乱軍の艦艇が彼らを見送る為、道を開けて並んでいる。その道を、二艦は徐々に速度を上げながら通過して行った。

 

続く…




注)pixivとハーメルン、及びブログにて同一作品を公開、または公開を予定しています。
注)ヤマト2202の登場人物は、役割を変更して登場しています。
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