宇宙戦艦ヤマト2199 白色彗星帝国の逆襲   作:とも2199

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宇宙戦艦ヤマト2202とは別の世界線を歩んだ宇宙戦艦ヤマト2199の続編二次創作小説「白色彗星帝国の逆襲」です。「白色彗星帝国編」、「大使の憂鬱」、「孤独な戦争」、「妄執の亡霊」、「連邦の危機」、「ギャラクシー」の続編になります。


白色彗星帝国の逆襲89 丞相の暗躍

 白色大彗星、要塞都市帝国の最下層――。

 

 ゼール中佐と桂木透子は、密かに要塞都市帝国の最下層、スターシャたちが拘束されている場所を訪れていた。

 暗く長い通路を歩く透子の後ろを、きょろきょろと辺りを気にしながらゼール中佐は着いて行っていた。

「おい……! こんな所を歩いていたら、絶対に見つかるぞ」

 ゼール中佐は、小声で透子に言った。透子は、歩きながら軽く微笑むと、彼の方を向いて言った。

「大丈夫。私たちは、大帝の命を受け、人質の様子を見に来ただけ。こうして、大帝から預かったセキュリティカードもあるし。怪しまれても、困るような事は何も無いわ」

「しかし……。さっきここへ入る時、サーダとシーラがじっと見ていたのは、君も見ただろう?」

 透子は、くすりと笑った。

「心配し過ぎ。それで、大帝と共にガトランティスを裏切ろうなんて、大層な事が貴方に出来るのかしら?」

 ゼール中佐は、慌てて声をひそめるように手振りで彼女に示した。

「声が大きい……!」

「大丈夫よ」

 透子は、大きな扉の前に立ち、先程のセキュリティカードをパネルにかざした。

 扉は、大きな音を立てて、ゆっくりと開いた。

「……何故、そんなに冷静なんだ。君は、本当に地球人なのか?」

 透子は、驚いた様な顔をして、ゼール中佐の顔を覗き込んだ。

「うふふふ……。どうかしら、ね」

 

 扉の中に続く通路を、二人は静かに進んで行った。両端にいくつかの扉があり、そこには、地球人の人質や、スターシャたちが入っている。しかし、透子は、それを通り過ぎ、更に奥へと進んで行く。

「おい、何処へ行くんだ? 人質は、ここに居るぞ」

 透子は、少しだけ振り返ると、小さく笑い声を上げた。

「ちょっと待て!」

 透子は、通路を一番奥まで進むと、行き止まりの所にあった扉の前に立った。そして、扉の横の操作パネルに、セキュリティカードをかざしたが、エラーとなってしまった。

「あら。大帝に与えられたカードでも入れないのね。これなら、サーダたちにもばれていないかもね」

 ゼール中佐は、彼女の肩を掴んで、無理矢理振り向かえらせた。

「おい、何をやっている!」

 透子は、彼の方をちらりと見て、真剣な表情で言った。

「この奥に、確かめておきたいものがあるの」

 ゼール中佐は、呆気にとられている。

「何を言ってるんだ? 君は……」

 透子は、操作パネルの上部に付いていた網膜スキャンの装置を確認し、自分の瞳を近付けた。

 すると、かちり、とロックが解除された。

 透子は、にっこりと笑った。

「あら、開いたみたい。中に入ってみましょう」

 ゼール中佐は、訳が分からないという表情で、呆然としていた。

 しかし、透子がさっさと中へと入って行くので、仕方なく、恐る恐る後に続いた。

 そこは、区画の中でも、やけに古びた小部屋だった。小さな旧式の端末が一台だけ、小さなテーブルの上に設置されている。

 透子は、躊躇無く、その端末の電源を入れると、システムが起動するのを待った。

「どういう事なんだ。説明してくれ。何故、網膜スキャンのロックを、君が解除出来るんだ?」

 透子は、ゼール中佐に顔を近づけると、妖艶な笑みを浮かべた。

「どうしてかしらね? 考えてご覧なさい」

 ゼール中佐は、困惑しつつも、思案した。

 

 大帝のセキュリティカードでも入れない扉。

 ここは、最高度のセキュリティが設けられた区画。

 その区画のセキュリティを、何故彼女が突破出来るのか?

 理由は、一つし思い付かなかった。

 

「君は……。ガトランティス人なんだな?」

 透子は、特に反応せず、起動した端末に接続された旧式のキーボードを、早速操作し始めた。

「それも、最高位の権限を持っている……」

 透子は、小さな端末のモニターに映ったメニューを眺めている。

「いったい、君は何者なんだ……!?」

 透子は、口元に人差し指を立てて言った。

「その話は、後にしましょう。これを見て」

 透子は、メニューの一つを指差した。ゼール中佐は、仕方なくその指の先の表示を確かめた。

 

 航海日誌

 

 と、書かれている。

 

「これは、ガトランティスの古いコンピュータシステム。この古いシステムのデータベースには、ガトランティスの過去の歴史が記録されている。私たちが知っているガトランティスの歴史。それが、本当に正しいか、これで確認出来るわ。私も、このシステムの存在は知っていたけれども、昔は、過去の歴史になんて、興味が無かった。今は、違うけれど」

 透子は、キーボードを操作して、更にメニューを辿った。そして、検索画面を表示すると、キーワードを入力した。

 

 キーワード: 暗黒星団帝国

 

 透子は、検索を実行した。

 検索結果は、なかなか返って来なかった。

 そこで、ゼール中佐は、更に質問した。

「分かったぞ。君は、ガトランティスの高官なんだな? 何故、地球人なんかに化けている?」

 ゼール中佐は、はっとして後ずさりした。

「ま、まさか……。大帝や私の謀反を調査しているのか!?」

 透子は、目を丸くして、一瞬驚いた顔をすると、途端に笑い出した。

「な、何故笑う!」

 透子は、ゼール中佐の肩に手を置いて、まだ笑い続けている。

「……あー。久しぶりに、こんなに笑ったわ。そんな訳無いでしょう。もし、私がそんな目的で貴方たちに近づいたのなら、とっくに報告しているわ。そう、思わない?」

 ゼール中佐は、笑われた事で、顔を赤らめている。

「で、では、いったい、貴方は……?」

 透子は、小さくため息をついた。

「貴方の予想は大体当たっているわ。でも、私は、貴方と大帝の味方よ。私は、ある目的で、ここにやって来た。それは、ガトランティスの過去を調べる為。それには、このコンピュータシステムにアクセスする必要があった。随分、回り道をしたけれどね。貴方たちのお陰で、ここまで来れた」

 そう言っている間に、ようやく検索結果が表示された。画面には、三千件程がヒットした事と、結果の一部がリストになって表示されている。

「……案外、少ないわね。データが消されていたり、改竄されていない事を祈るわ」

 透子は、まだ困惑しているゼール中佐を置いて、検索結果を次々に開いて、詳細を確認して行った。

 透子は、ある日時の日誌に手を止めた。そして、日誌の文書を読み始めた。

「……見て。これが、最初の暗黒星団帝国についての記録よ。ガトランティスの母星が滅び、流浪の旅に出た時のことが書いてある。滅ぼした相手は……。暗黒星団帝国、と書いてあるわ」

 ゼール中佐は、それには首をひねっていた。

「それは、初耳だな……。確か、相手は正体不明の敵で、生き残った我々の先祖の精鋭の宇宙艦隊は、アンドロメダ銀河から逃げて、他の銀河に移った……と。学生の頃、歴史の授業で学んだ覚えがある」

「……少し、違うようね。ほんの僅かな小規模の宇宙船団を組んで、アンドロメダ銀河を離れようとした、とあるわ。……戦闘艦などもう存在しなかったようね」

「そんな筈は……。それでは、どうやって、宇宙最強の戦闘国家になったと?」

 透子は、続けて検索結果を次々に開いて行った。そして、ある日誌の所で驚いた様子で食い入る様に読んでいた。

「これを見て。本星を脱出した船団の船長は、最初の異常を発見したみたい。仲間の様子がおかしいのに気付いて、その人物を拘束した。その人物の所持品を調べて判明した事実が書いてある」

 ゼール中佐は、透子の示した箇所を、興味深く眺めた。

「……その人物は、暗黒星団帝国の兵士が化けていたようね。そして、彼らの計画が判明した」

 ゼール中佐と透子は、続く文書を目を皿のようにして読んだ。

「遠い昔、この天の川銀河に文明を築いていた暗黒星団帝国は、ある時、異星国家の侵略を受けて、銀河を脱出した。復讐を誓い、銀河の流浪の旅に出た暗黒星団帝国は、大幅に減少した国民を生かす為に、肉体を捨て、人体の機械化による長命化を推し進めてきた。しかし、この変化は、新たな子孫が誕生しない事を意味する。彼らの精神的な老齢化は深刻で、種としての限界、新たな進化や発展が、この先永遠に望めない事に気が付いた。そこで、肉体を取り戻す計画を立てた」

 透子とゼール中佐は、互いの顔を確認して、更に文書を読み進めた。

「……本物の肉体を取り戻す方法を探して、彼らは、あらゆる生命の文明のテクノロジーを奪取する為、侵略戦争を始めた。精神的な老齢化が進んだ彼らには、そうするしか、新たな発想や着想を得る事が出来なくなっていたからだ。そこで、科学奴隷という制度を設け、征服した文明の科学者を生かして奴隷とし、自分たちと共同で研究させた。こうして、本物そっくりの人工人体の開発や、クローンによる再生人体への精神の移設を試みたが、精神の移設で多数の問題が発生したり、上手く行っても、子孫を残す事が出来なかったりと、高確率で失敗が続き、彼らは更に宇宙を荒らし回り、新たなテクノロジーを探し続けている」

 ゼール中佐は、頭が混乱していた。

「ど、どういう事だ?」

 透子は、ゼール中佐の瞳を覗き込んだ。

「おかしいわね。これでは、まるでガトランティスがやっている事と、よく似ているわね。目的こそ肉体を取り戻すと言う事らしいけど。もう少し、先を確認してみましょう」

 透子は、画面をスクロールさせ、その先を読んで行った、

「……それまでの侵略戦争や、精神の移設実験で、多くの仲間を失った暗黒星団帝国は、それ以上の民族の損耗を避ける為、自分たちに代わって侵略戦争を行う民族を探していた。そこで目を付けたのが、アンドロメダ銀河で、ある程度の領土を有していたガトランティス共和国だった。当時、強力な軍事力を持ちながら、平和的な外交活動を行っていたガトランティス共和国は、暗黒星団帝国にとって理想的な与し易い民族だった。その軍事力や科学力は侮り難く、これを支配して、自分たちの代わりに侵略戦争をする尖兵とする事にした。そして、彼らの母星を滅ぼし、生き残った民族の脳を弄って支配する事にした……」

 透子とゼール中佐は、その内容に衝撃を受けていたが、それからどうなったかを、急ぎ確認した。

「船長が異常を見つけたのは、一人だけでは無かったようね。それから、何人も同じ様に暗黒星団帝国の兵士が化けているのが見つかった。その時には、もう遅かったみたい。船長も含めて脳を弄られて、完全にガトランティスは、暗黒星団帝国に乗っ取られたみたい。日誌も、船長が乗っ取られた時から、終わってしまっている」

 二人は、それ以上の情報が日誌から得られなくなった事を確認し、そこまで得た情報について話し合った。

「……つまり、内容を信じる限り、我々は、長い年月、暗黒星団帝国に操られて来たと言う事なのか……?」

 ゼールが口にした疑問に、透子は頷いた。

「そういう事のようね。私も、同じ結論に至ったわ」

 ゼール中佐は、頭を抱えた。

「し、信じられない! いくら何でも、そんな事を信じる事は出来ない!」

 透子は、立ち上がると、遠い目をして暫く黙っていた。その脇で、ゼール中佐は、何度も端末に表示される文書を読み返していた。

「……私は、前の大帝ズォーダーの命を受け、ここに戻って、この事を調査するのが目的だった」

 ゼール中佐は、目を丸くして、透子の言葉を確認した。

「前の大帝ズォーダーの命を受けた……? どういう事だ? ズォーダー大帝は、生きているのか!?」

 透子は、にこりと笑って頷いた。

「生きているわ。黙っていてごめんなさいね。でも、敵に気取られる事無く、極秘に調査をしなければならなかった」

 ゼール中佐の表情は、疑いに満ちていた。それは、そうだろう。突飛な話が続き、信じるのは難しいのは、透子にも分かっていた。ならば、彼に全てを明かして協力させる方が得策だと、彼女は考えた。

「今、ズォーダー大帝は、イスカンダルの技術、コスモリバースシステムを使って復活した母星ガトランティス星の再建に尽くしているわ。そして、周辺のかつての領土だった惑星の再建も合わせて行っている。そこで、彼は知ってしまったの。かつてのガトランティスは、星々を侵略戦争で支配したり、滅ぼしたりするような民族では無かった事を。不審に思った彼は、私を調査に向かわせた。彼の記憶によれば、要塞都市帝国の地下に、古いコンピュータシステムを移設したのが分かっていたので、それを確認する為よ。急ぎ小マゼラン銀河に戻った私は、残ったガトランティスの生き残りが、再び戦力を整えて戦争を始めようとしていた事を知った。でも、要塞に戻るのは、そう簡単では無い事も、私は知っていた。そんな時、何故かガトランティスが火星でイスカンダル人を拉致しようとしているという情報を掴んだ。だから私は、先回りして地球に向かい、地球人に成り済まして、貴方がやって来るのを待った。思ったより簡単だったわ。地球人の信頼を得て、火星の市長にまでなるのは。そして、時は満ち、貴方がイスカンダル人を拉致した。後は、知っての通りよ」

 ゼール中佐の頭は、更なる混乱をきたしていた。

「い、いったい、貴方は誰なんだ……?」

 透子は、片手を首筋に回して長い黒髪をどけると、もう片方の手で、首筋の小さな装置に触れた。

 透子の身体は、青白い光と共に、ちらちらとぶれ始め、彼女の本来の姿が、顕になった。

「便利な装置でしょう。こうやって、スイッチ一つで、見た目を少しだけ変える事が出来るの」

 透子の黒髪は、真っ白に染まり、眉毛や、その切れ長の瞳の長いまつ毛まで、白く染まっていた。その姿を見たゼール中佐は、次第にその人物が誰なのかが分かってきた。

「あ、貴方は……!」

 透子は、口元に人差し指を立てた。長く、地球人として過ごした時間が、彼女に地球人としての仕草を定着させていた。

「静かに……。今は、私と貴方だけの秘密。今、ここで掴んだ情報を、若いズォーダー大帝に知らせなければ。多分、私と彼、そして貴方だけが、ガトランティスを破滅から救う事が出来る」

 

続く…




注)pixivとハーメルン、及びブログにて同一作品を公開、または公開を予定しています。
注)ヤマト2202の登場人物は、役割を変更して登場しています。
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