宇宙戦艦ヤマト2199 白色彗星帝国の逆襲 作:とも2199
宇宙基地ギャラクシー――。
航宙空母型巡洋艦イセは、ギャラクシーを背に、接近する移民船団を待ち受けていた。
「レーダーに捉えました。ガミラス艦隊は、空母一、駆逐艦十六、巡洋艦五、大型輸送艦五。ガミラス本星から通達のあった移民船団に間違いありません。一緒にデスラー総統のガミラス艦隊も演習から戻って来たようです」
イセの艦長島は、落ち着いて指示を出した。
「全て、予定通りだな。移民船団に向け、歓迎の意を伝えてくれ」
レーダー手の望月佳織は、続けて報告した。
「島艦長……。移民船団の後方に、何か、とてつもなく大きな物体があります。一体何でしょう……?」
島は、少しだけ呆れた表情になったが、すぐに彼女に優しく言った。
「望月くん。そういう時は、どうするんだっけ?」
彼女は、補充要員として、最近地球から配属された乗員の一人だ。地球から遠く離れたこの宇宙基地に、補充が簡単に来るわけもなく、艦長を任されている島や北野などにとっては、貴重な要員だ。そういった新人の教育も、根気強く行っていく必要がある。島は、経験豊富で、兵士の教育をきめ細やかに行ってくれると防衛軍内部でも重宝されていたので、新人を割り当てられることが多かった。
「は、はい! スクリーンに拡大投影します!」
本当は、科学士官に分析をしてもらうのがベストではあったが、確かに望遠カメラで捉えられる程、物体は接近している。島は、黙ってスクリーンに物体が映るのを待った。
イセの艦橋の士官らは、皆がその物体を目で確認した。それを見た一人、戦術長の金田功一は、裏返った変な声を出している。
「な、なんだあれは!」
島も、その異様な光景には驚かされていた。
「こりゃあ、俺も驚いたなぁ」
それは、一〇〇キロ四方はあろうかという巨大な岩塊だった。そして、それを自分の目で見たことがあるのは、このイセでは、島ぐらいしかいない。
「事前に持ってくると話には聞いていたが、本当にただ宇宙空間を牽引して持ってきているとはなぁ……」
その物体の正体は、ヤマトが以前木星で目撃した浮遊大陸と同じ様な形をした岩塊だった。それは、移民船団のガミラス駆逐艦八隻が、牽引ビームで牽引していた。
技術科の平泉理恵は、物体を観測した分析情報を伝えた。
「以前、ガミラス戦争時にヤマトが遭遇したものは、オーストラリア大陸程の三〇〇〇キロ四方はあったようですので、それに比べれば、あれでも大幅に小さい岩塊です。どうやら、後ろの方に、大陸を移動させる為のエンジンが一〇基程ついているようです。前方で牽引しているガミラス艦は、恐らく進行方向を変える為にいるのだと思います」
島は、ガミラス戦争時の浮遊大陸の目的について、以前知ったことを考えていた。敵性植物をばら撒くのに、遊星爆弾に使われていたことや、地球を占領下に置いた場合のガミラスフォーミングにも使う予定だったというのを、聞いた覚えがあった。
今回は、彼らが移民した後、ガミラスの野菜を育てる農地の改良に使うと聞いている。
それにしても、あの戦争を思い出させる物騒なものを持ってくる、と島は唸っていた。恐らく、彼らにとっては、いつものことなのであろうが。
「皆んな、俺も驚いたが、あの浮遊大陸も事前に通達があった通りだ。慌てる必要はない。彼らをエスコートして、基地の港に誘導するぞ」
その時、通信士の秋本裕貴は、島に報告した。
「艦長、移民船団の護衛艦隊旗艦、空母ミランガルから通信が入っています」
「分かった。スクリーンに出してくれ」
スクリーンには、戦闘空母ミランガルのネレディア・リッケが映っていた。
「航宙空母イセの艦長島です。ご無沙汰しています」
スクリーンの向こうのネレディアは、島の挨拶に頷いた。
「こちらは、移民船団護衛艦隊司令のリッケ大佐である。久しぶりだな。随分、出世をされたようだ」
島は、謙遜して手を振った。
「いやいや、大したことありませんよ」
「ご自分の船を持ったのだろう? 大したことはあるさ。今回、数日間ではあるが、一時的にギャラクシーに滞在する予定だ。ここで休憩した後、一気に君たちの星系へ移動する。少しの間だが、よろしく頼む」
島は、笑顔で頷いた。
「分かりました。ゆっくりお過ごし下さいね」
ネレディアは、少し笑っていた。
「ありがとう。ところで、あなたに、一言ご挨拶したいと、いうお方がいらっしゃる」
島は、何だろうと思って首を傾げた。
「はぁ?」
スクリーンに現れたのは、事前の情報で聞いていない人物だった。
「あなたが、島さんですね?」
島は、誰だろう、と最初は思っていたが、じわじわと、それが誰かに気がつくと、思い切り驚いていた。
イセとは別に、基地のそばから、この様子を観測している船があった。実験艦ムサシである。
「かなり以前にガミラス本星の外殻を削り出したものが、他の星系でガミラスフォーミングに使われているそうです。そこの土壌を、更に削り出して、自走するエンジンの取り付けなどの改造を施して、運ぶらしいですね。何だか、あまりにもスケール大きくて、驚かされますね」
「本当ね。彼らとは、まだまだ科学力の差が大きい。私たちも頑張らなきゃね」
藤堂早紀と新見薫は、浮遊大陸の様子を見ながら、互いに率直な感想を言っている。そんな中、一人、真田は黙々と端末を操作している。
「真田さん、どうかされましたか?」
真田は、早紀に話しかけられて、やっとのことで少し振り返った。
「新造艦デウスーラⅢ世にいるタラン副司令から送られてきたデータの分析を行っていた。とうとう、彼らは成功させたようだ」
「何を、ですか?」
真田は、相変わらず、冷静な表情をしている。
「波動砲だよ。ゲシュタム機関も艦体も安定している。試射を五回程おこなったようだが、我々の波動砲と比べても遜色ない。私は、イスカンダルとガミラス政府と地球連邦政府との条約に従って、正規軍ではない彼らには一切の助言も手伝いもしなかった。タラン閣下の指揮の元、初めてガミラス人だけで完成させた、不具合の無い完璧な波動砲だ。いや、あの艦の場合は、デスラー砲と呼ぶらしいがね」
藤堂早紀は、途端に不安げな表情になった。
「あ、あのデスラー総統たちが、波動砲を持ったと言うんですか? 大丈夫なんでしょうか?」
新見薫は、そんな早紀の背を軽く叩いた。
「デスラー総統は、もう地球を侵略したりすることはないわ。だって、スターシャさんが監視してるのに、そんなことをする訳がないでしょ」
早紀は、不安な表情から、複雑な心境になっていた。
「ま、まぁ、それはそうですけど……。スターシャさんは、このこと知っているんでしょうか……」
真田は、少し微笑して、皮肉っぽく言った。
「地球連邦防衛軍は、既に、総数三百隻以上の規模の波動砲搭載艦を完成させたらしい。それでも、地球連邦の軍備はまだまだ増強されている。これだけの数があれば、敵性国家からの侵略に怯える必要性は、かなり薄くなってきたと考えてもいい。後は、我々自身が侵略者にならないように、政治を監視する必要があるだろう。それこそ、スターシャさんは、激怒するだろうからね」
「古代司令。島さんから緊急連絡です」
司令部の自席にいた古代は、訝しげな表情で、通信をスクリーンに出すよう指示をした。
「こちら、イセの島だ。古代、聞いて驚くなよ」
古代は、咳払いをして言った。
「し、島。私用の通信ではないので、もう少し、ちゃんと話をしてもらえるか?」
島は、そんな古代を無視して話を続けた。
「サーシャさんが来た」
「え?」
古代は、スターシャの娘のサーシャがイセに勝手に乗り込んだのだろうか? と、眉をひそめた。
「火星で亡くなった、サーシャ・イスカンダルさんだよ。ぴんぴんしてたぜ」
古代も、さすがにそれを聞いて驚愕していた。
「な、何だって!?」
続く…
注)pixivとハーメルン、及びブログにて同一作品を公開、または公開を予定しています。
注)ヤマト2202の登場人物は、役割を変更して登場しています。