宇宙戦艦ヤマト2199 白色彗星帝国の逆襲   作:とも2199

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宇宙戦艦ヤマト2202とは別の世界線を歩んだ宇宙戦艦ヤマト2199の続編二次創作小説「白色彗星帝国の逆襲」です。「白色彗星帝国編」、「大使の憂鬱」、「孤独な戦争」、「妄執の亡霊」、「連邦の危機」、「ギャラクシー」の続編になります。


白色彗星帝国の逆襲90 進撃開始

 白色大彗星、要塞都市帝国の司令制御室――。

 

 大勢の兵士が、それぞれの持ち場で働く中、中央の作戦会議テーブルで、ミルはカミラやゲーザリー参謀長官、そしてユーゼラー提督とナスカ提督に囲まれていた。彼の背後には、静かにシーラが控えている。

「……以上が、ガルマン星系攻略作戦の概要です。これが、最終確認となります。何かご質問は?」

 艦隊運用責任者として、ユーゼラー提督は集まった幹部たちを見回した。

 最初に手を上げたのは、ナスカ提督だった。

「ユーゼラー。作戦については何も言う事は無い。しかし、お前が全艦隊の指揮官として振る舞うのは、私にとっては甚だ疑問だ。女帝、私が復帰したからには、以前の序列から言っても、私が全軍の指揮官たるに相応しい筈です。この件は、再三申し上げて参りましたが、再考頂けないのでしょうか?」

 カミラは、特に表情を変えることなく、ナスカの顔を冷徹に眺めた。代わりに、ゲーザリーがそれに答えた。

「ナスカ提督。貴方は、病み上がりだ。それこそ、再三説明しているように、今回の作戦は現体制下で既に決まったものだ。以前の序列を、今ここで議論するのは、相応しく無い」

 ナスカ提督は、憮然とした表情で、矛先を変えた。

「ゲーザリー。お前も同様だ。お前もユーゼラーも、以前は将官ですら無かっただろうに。本来であれば、私にそのような偉そうな口をきける立場では無い筈だが?」

 口をつぐんでいたカミラは、腹を立てた様子で話し始めた。

「ナスカ提督。現体制を批判する言動を、これ以上許す訳には行かない。それ以上続けるなら、降格して前線に送り出してもいいのだけれど?」

 ナスカ提督は、カミラに対しても、言いたい事があった。只の民間人が、前の大帝ズォーダーの女だと言う理由で、祭り上げられた人物だと言う事に、彼は反感を持っていた。彼は、怒りに任せて更に何か言おうとしたが、周りの冷徹な視線を確認すると、前線に送り出すというのを本気でやられかねないことに気が付いた。そして、生唾を飲み込んだ彼は、一緒に言葉も飲み込んだ。

 しかし、その静寂を、ミルが破った。

「ナスカ提督。私は、貴方の言う事にも一理あると思っている。この戦いが終わった暁には、貴方の立場を前の大帝の時代に合わせて復権する事を考えみよう」

 ナスカ提督は、思わぬ助け舟に、驚くと共に、破顔して言った。

「おお! 流石はズォーダー大帝のご子息! 有り難いお言葉です」

 カミラは、それには眉を吊り上げた。

「今は、この方がズォーダー大帝ですよ。……大帝。そのような事を、勝手に決められては困ります」

 ミルは、カミラの方を見て、目を細めた。

「何故か? 私は、大帝では無かったのか?」

 二人は、そのまま睨み合った。

「ま、良いでしょう……。戦いが終わってから、もう一度話し合いましょうか。そんな事より、作戦を始めましょう。艦隊をガルマン星系へ侵攻させます。ユーゼラー!」

「はっ! それでは、出撃します!」

 ユーゼラーは、背を向けると、司令制御室を出て行った。

 ナスカ提督は、それを見送ってから、ミルに言った。

「我々、大帝の近衛艦隊は、艦船格納庫で待機しております!」

 ミルは、彼に頷いた。

「よろしく頼む」

 ナスカ提督は、踵を返すと司令制御室を後にした。

 カミラは、ゲーザリーと顔を見合わせて会話していた。

「いよいよ、大きな戦闘になるわね」

「ええ、久方ぶりの重要な戦争になります。我々は、必ず勝ちます」

 ミルは、二人の様子をよく確認していた。いつもの様に、二人は戦いに喜びを抱いているようだ。

 ミルは、背後に居るシーラを振り返った。

 シーラは、ミルと目線を交わすと、口を開いた。

「何か?」

 ミルは、彼女に問いかけてみる事にした。

「君は、この戦いに勝てると思っているのか?」

 シーラは、小さく頷いた。

「作戦立案には、私も協力しました。我々が負ける要素はありません」

「それは良かった」

「はい。もちろんです」

 シーラは、すました顔で、ミルの目を見つめている。

 ミルは、彼女の様子を気にしていた。彼女が、自分たちの敵なのかどうかは、まだ確信が持てなかった。

 ゼール中佐からは、何か重大な報告があるとも聞いていたが、作戦会議が続き、なかなか接触する機会がなかった。

 

 いったい、どんな報告をしようとしているのだろう?

 ガルマン星系攻略作戦の開始まで、あと数時間。

 この合間に、ゼール中佐と接触しなければ。

 

 ミルは、中央作戦会議のテーブルを離れると、司令制御室を出て行こうとした。これには、護衛官やシーラが付きまとった。

「大帝。どちらへ?」

 カミラが、ミルに声を掛けてきた。

「ユーゼラー提督らの出撃を見送って来る。兵の士気を上げておきたい」

「ならば、私たちも参りましょう」

 カミラとゲーザリーは、ミルの後に続こうとした。その為、ミルは振り返って手を振った。

「それには及ばない。二人は、ここで作戦の指揮をとっていてくれ。私に、自分の手で少しは大帝らしいことをやらせてくれないか?」

 カミラは、残念そうな表情をしている。

「分かりました。お気をつけて」

 

 まただ……。

 

 時々覗かせる母の顔。ミルは、彼女の精神状態がどうしても理解出来なかった。

 

 ミルは、司令制御室を出ると、護衛を連れて、上階にある艦船格納庫へと向かった。エレベーターを降りても、数名の護衛と、シーラがぴったりと張り付いて離れそうも無い。

 

 困ったな……。

 これでは、ゼール中佐からの報告を受ける事が出来ない。

 

 しかし、司令制御室に缶詰めになっていては、そういった機会にも恵まれない。それに、スターシャやサーシャの救出を実行する際には、この連中をまかなければならない。どうすれば、そのような機会を作ることが出来るか、ミルは思案しながら歩き続けた。

 ふと横を見ると、シーラが並んで歩いている。

 ミルは、試しに聞いてみることにした。

「シーラ。君の故郷は、どんな国だったんだ?」

 シーラは、意外な物でも見るような顔をしている。

「我々は、君にとって憎い敵だったのかも知れない。こんな質問には答えたくない、と言うのであれば、私もこれ以上は聞かない」

 シーラは、答えに躊躇している様だった。目線を反らすと、暫く黙っていた。

 ミルが、答えを諦めようと思った頃になって、シーラは語りだした。

「自然豊かな、とても美しい星でした……」

 シーラは、遠い記憶を呼び覚まそうとしている様に見えた。

「私には、大切な家族が居ました。まだ、こんな身体になっていない頃の事です」

 ミルは、その家族を殺し、全てを奪ったのがガトランティスだったのだろうと考えると、胸が痛くなった。そして、彼女にそれ以上の話をする必要が無いと言おうとした。

「私から、大切な物を奪った者たちに、ずっと復讐したいと思っていました。でも、時間が経ちすぎました。もう、そのような憎しみは何処かへ置いてきてしまったようです」

 初めて、感情らしきものを見せた彼女を、ミルは不思議そうに眺めた。そして、その遠くを見る視線の先には、ガトランティスでは無く、何か別のものへと向けられているように感じた。

「君は、いったいどのぐらい生きてきたんだ? ああ、いや、確か三百年ぐらいだったな」

 シーラは、頭を振った。

「もう、忘れました。その位、長い時間でした」

 ミルは、彼女の様子をもう一度確かめた。

 ガトランティスが、暗黒星団帝国を滅ぼしたのは、数百年前と歴史で学んだ。記憶では、およそ三百年位前だった筈だ。ミルは、その記憶が間違っていただろうかと首をひねった。

 

 巨大な艦船格納庫には、多数の艦船が並んでいた。

 千隻程度までは入ると聞いていたが、そこに居るのは、恐らく五百隻程度と思われた。あちこちの戦場に散っていた数万の艦隊は、既に、白色大彗星に先行している。今は、ユーゼラーやナスカの艦隊が、そこに待機しているだけだ。

 ユーゼラーが、兵を集めて演説をしており、数千人の兵から、大きな歓声が湧き上がっていた。

「ユーゼラー、盛り上げているようだな」

 ミルは、自分が現れたのにも兵たちが気付かずにいるので、立ち止まってその様子を見つめた。

「大帝も、あそこに行って演説されますか?」

 シーラが気にしていたが、ミルは、頭を振った。

「いや。それは止めておこう。この場で気付いた者に挨拶をするだけで良い」

 ミルは、そう言いながら、ゼール中佐の部隊が何処にいるか探した。彼らの部隊は、ナスカ提督の艦隊と共に、要塞都市帝国で待機するようにミルが調整していたが、この演説には参加している筈だ。しかし、流石にこれだけの兵が集まっている状況では、見つけ出すのは困難だった。

 ミルは、兵士たちが立ち並ぶ脇を通り抜け、彼らに手を振った。彼に気付いた一部の兵たちは、拳を上げて歓声を上げた。それは、津波のように広がって、結局そこに居た全員に知れ渡る事になった。

 前で演説をしていたユーゼラーも、ミルの姿に気付いて、彼に喋らせようとした。

 本当は気が進まなかった彼は、言われるがまま、短い挨拶をした。

 

 兵士たちが解散して、続々と船に乗り込んで行くのを、ミルは黙って見送った。ユーゼラーも、最後にミルに一礼すると、自分の座乗する艦艇へと向かって行った。ミルは、その場を立ち去ろうと向きを変えた所に、急いで走って来た兵士がぶつかって来た。

 その兵士は、持っていた荷物を床にばら撒いて、慌てふためいていたが、取り敢えずミルに平謝りをした。

「こ、これは、大帝! 大変申し訳ございません!」

「大丈夫だ。気にするな」

 ミルは、床に落ちた荷物を一緒に拾ってやる為、腰を落とした。そして、ミルが掴んだ荷物を、その兵士は受け取ると、もう一度礼をして、走り去って行った。ミルの手の中には彼が押し付けて行った紙片が残っていた。思い出してみると、その兵士は、ゼール中佐の艦で見たことがある人物だった。

「何かございましたか?」

 その時、シーラが、ミルの様子をじっと見ていた。

 ミルは、何食わぬ顔で、その紙片をズボンのポケットに滑り込ませた。

「いや」

 ミルは、その紙片がゼール中佐からの連絡に違い無いと考えていた。

「少し、自室に寄ってから、司令制御室に戻る」

「承知しました」

 

 ミルは、自室に戻ると、ようやくほっとしていた。シーラが、中に入ろうとした為、ミルは苦労して断った。

 そして、ズボンのポケットから、先程の紙片を取り出した。

 紙を広げると、小さな文字で、メッセージが記されていた。

 

 暗黒星団帝国は、遠い昔から、ガトランティス全体を操っていた。彼らは、科学奴隷などではない。

 …………。

 ……。

 

 そこには、ゼール中佐が知り得た事実が、短くまとめられていた。一通りメッセージを読み終えたミルは、記された内容に驚くと共に、どう考えればよいか、頭がまとまらなかった。

 

 何なのだ? これを、私に信じろと彼は言うのか?

 

 ミルは、途方に暮れていた。

 それまで知っていたガトランティス帝国の過去の歴史は、そのほとんどが、まやかしだった事になる。

 

続く…




注)pixivとハーメルン、及びブログにて同一作品を公開、または公開を予定しています。
注)ヤマト2202の登場人物は、役割を変更して登場しています。
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