宇宙戦艦ヤマト2199 白色彗星帝国の逆襲 作:とも2199
ヤマトやイセが戦っているその時も、ガルマン帝国前衛艦隊とガトランティス前衛艦隊の激しい砲撃戦は続いていた。
ガルマン帝国前衛艦隊を守る駆逐艦艦隊は、砲撃を受け、次々に大破して、戦列を離れて行っていた。
「味方駆逐艦、これで六百隻が大破、または撃沈されました!」
「こちらも、ほぼ同数の敵の艦艇を撃沈しています!」
ゲッパート大佐は、唇を噛んだ。
「くっ……! 普通に戦ったのでは、互角と言う事か」
彼の座乗する旗艦のレーダー手は、更に報告をして来た。
「敵艦隊後続の艦艇多数が、カイパーベルトを抜け、合流し始めています!」
ゲッパート大佐は、その報告で思案した。
「まずいな。時間がかかり過ぎている。このままでは、こちらの数の優位が失われてしまう。支援を要請しよう。直ちに後衛艦隊のウォーゲン准将に通信回線を開け!」
「はっ!」
通信士の操作で、早速作戦指揮所のスクリーンに、ウォーゲン准将の姿が映った。
「ウォーゲン司令。現在、我々はガトランティスとほぼ互角の戦いを繰り広げています。しかし、敵の後続艦隊約四千が間もなく合流して来ます。こちらに支援部隊を送って頂きたいのですが」
ウォーゲン准将は、手を上げて少し待つように伝えて、自艦のレーダー手と話し合っている。
「良いだろう。今の所、ガトランティスは、現在君たちが交戦中の方角からのみ確認されている。こちらの艦隊の半数五千を支援部隊として送ろう。小ワープで、急ぎ向かわせる」
「ありがとうございます」
しかし、スクリーンの向こうのウォーゲン准将は、眉間にしわを寄せ、何か考え込んでいる。
「どうかなさいましたか?」
ウォーゲン准将は、表情を変えずに、ゲッパート大佐の目を見つめた。
「いや。ここまでの所、作戦通りに進んではいるが……。何故、奴らは一方向から侵攻してくるのか。これでは、互いに消耗戦になるだけだ。君は疑問に思わないかね?」
ゲッパート大佐は、少し味方の戦況を気にして背後をちらと見た。
「確かに……。しかし、数で押された場合のセオリーとして、こちらも数で対抗すべきではないかと」
ウォーゲン准将はそう言われて、自分の迷いを部下に諭されたような気がして少し笑った。
「うむ。君の言うとおりだ。約束通り、艦隊は直ぐに派遣する。以上だ」
スクリーンの映像が切れ、ゲッパート大佐は、部下に新たな指示をした。
「後衛艦隊に支援を要請した。これで数で負けることは無い。新たな作戦を発令する。空母と戦艦を中心とした中隊を編成しろ。敵の後衛艦隊が追い付く前に、戦局を変えるぞ!」
ガルマン帝国前衛艦隊のそれまで後方に控えていた空母や戦艦、そして巡洋艦が位置を変え、駆逐艦と共に三つの中隊を編成し、約九百隻程から成る艦隊が前進を始めた。
これらの艦隊は、艦隊戦の行われている中央を避け、大きく下方へ迂回して、ガトランティス艦隊へと向かった。当然、ガトランティスもこの動きに気付いたが、明らかに反応が少し遅れていた。
その間に、その三つの中隊は、艦隊戦の行われている下方の真ん中辺りまで一気に躍り出た。
ガトランティス前衛艦隊のゼルビー中佐は、敵と同様の艦隊を編成して、対抗しようと急いでいた。
「司令、敵は艦載機を発艦させています! 下方から、敵機多数接近中!」
ゼルビー中佐は、スクリーンに映ったレーダーチャートを見ると、敵の三つの中隊から、無数の光点がばらばらと広がって行く様子を確認した。
「こちらも艦載機を出せ! 敵機を近付けさせるな。それから、対抗する中隊編成急げ! メダルーサ級戦艦で対抗するのだ!」
ガルマン帝国艦隊の中隊から発艦した数千機に及ぶ艦載機は、イナゴの群れのように、ガトランティス前衛艦隊にその下方から襲い掛かって行った。そして、次々にミサイルが放たれ、ガトランティスの駆逐艦が被弾して行った。そのまま、ガトランティス艦隊の陣形に入り込んだガルマン帝国の艦載機隊は、ミサイルや機関砲で雨あられと攻撃を加えた。この攻撃により、数十隻の艦艇が被弾し、ガトランティスの陣形が一部崩れていた。ガトランティス側も、この頃には艦載機の発艦が始まり、戦闘機同士の激しいドッグファイトが展開された。
一方、下方から前進を続けていたガルマン帝国中隊は、遂に戦艦と巡洋艦による艦砲射撃を開始した。ガトランティス艦隊の前方を固めていた一部の陣形が完全に崩壊し、後方の艦隊が丸裸になっていた。
これを確認したゲッパート大佐は、新たな命令を発した。
「いいぞ! あの陣形が崩れた座標へ向け、砲撃を集中させろ! 後方にいる敵の主力艦を叩くのだ!」
一方その頃、ガトランティスが編成した中隊の準備が終わり、下方から攻めて来たガルマン帝国中隊へと向かう為、隊列を離れて行った。複数の大型戦艦であるメダルーサ級も、その中に含まれている。
「あの中隊を、火焔直撃砲の餌食にする! 火焔直撃砲発射用意!」
五十隻程のメダルーサ級戦艦が、一斉に隊列を組んで下方にいるガルマン帝国中隊に向けて攻撃準備を始めた。
「火焔直撃砲、発射!」
メダルーサ級の艦首には、巨大な光球が生まれ、それが前方に射出された。そして、艦首に展開したワープエリアに突入すると、砲撃はワープして消えて行った。これが、五十隻の艦艇から同時に行われたのである。
ガルマン帝国が派遣した三つの中隊では、これを探知していた。初めて攻撃を受けた際に、ガミラス艦隊が打った手は、既に彼らの科学者が解明していたのだ。
「重力震を探知! ……こ、これは……!?」
「どうした!? どちらに避ければ良いか、直ちに報告しろ!」
「て、敵は、五十隻から成る艦艇から一斉にあの砲を発射しました! 避ける場所がありません……!」
「な、なに……!?」
その瞬間、ガルマン帝国中隊は、ワープから抜けた火焔直撃砲の攻撃をまともに受け、一気に百五十隻程の艦艇が、一斉に消滅した。その巨大な砲のエネルギーが、残った艦艇を明るく照らしている。
「ど、どうなっている!?」
「多数の艦艇があの砲の直撃を受けました! 残念ながら、殆どの艦艇が避けられませんでした」
「何てことだ! 次弾が来るまでまだ間がある筈だ! あの戦艦を先に沈めるぞ。全艦、敵戦艦に攻撃を集中!」
この命令を受け、ガルマン帝国中隊は、戦艦と巡洋艦による艦砲射撃を、メダルーサ級戦艦へと集中させた。
メダルーサ級は、一隻、また一隻と、次々に撃沈して行く。
一方のガトランティス艦隊の中隊も、これに対抗した。
「火焔直撃砲、次弾装填急げ! 奴らを沈めるぞ!」
こうして、両者は、互いに激しい砲撃戦を続け、多くの艦艇が沈んで行った。
その頃、ガトランティス前衛艦隊の陣形が崩れた座標に向け、ガルマン帝国前衛艦隊は、砲撃を集中させ、一方的に敵艦を撃沈し始めていた。
ゲッパート大佐は、この様子に満足していた。
「そのまま攻撃を続けろ! 敵の反撃が弱まった事が確認出来次第、全艦隊で前進し一気に叩くぞ!」
ガルマン帝国前衛艦隊の砲撃は、更に激しく、ガトランティス前衛艦隊を次々に沈めて行った。
ガトランティス前衛艦隊の指揮官ゼルビー中佐は、前方を守る艦艇が次々に撃沈し、次第に雲行きが怪しくなって行くのを感じていた。
「まずいな……。このままでは……」
彼は、ちらりとレーダーチャートに映る、自軍を表すマーカーのうち、ひときわ大きなマーカーを確認した。
「……これまでだな。ゴルバ全艦に告ぐ! 敵艦隊に向け、砲門を開け! ゴルバの射線上の艦艇は、直ちに退避しろ!」
そのガトランティス前衛艦隊に五隻いたゴルバは、それぞれ艦体をゆっくりと回転させ、砲門を一つ開いた。そして、敵の艦隊の最も多く密集する座標へと狙いを付けた。
この動きは、ガルマン帝国前衛艦隊にも捉えられていた。
「敵、機動要塞が動き出しました! どうやら砲撃を始める様です!」
「何? 直ちに全艦隊に向け、警戒警報発令!」
ゲッパート大佐は、レーダーチャートを睨みつけた。
「惑星破壊プロトンミサイル特務艦は、直ちにミサイル発射用意! 砲撃を開始される前に、あれを沈めるぞ!」
その時、ふとゲッパート大佐は、地球艦隊の位置を確認した。
レーダーチャートによれば、地球艦隊はガトランティスの小隊に、まだ足止めされている様だった。
「ちっ……、肝心な時に……。だが、波動砲などに頼らずとも、我が艦隊だけで十分に戦える!」
こうして、十隻の惑星破壊プロトンミサイル特務艦の射線を確保する為、ガルマン帝国前衛艦隊は、陣形を変更し始めた。
「急げ! 撃たれる前に! 用意が出来次第、ミサイルを発射しろ!」
ゲッパート大佐の号令で、既に発射用意を整えていたプロトンミサイル特務艦は、次々に十基のミサイルを発射した。それぞれ二発づつ、ミサイルは五隻のゴルバに向けて飛び出して行った。
しかし、この前衛艦隊に配備されていた特務艦は、この十隻が全てだった。もし、撃ち損じる事があれば、彼らの艦隊は、ゴルバの砲撃の餌食になってしまう。
プロトンミサイルは、それぞれに組み込まれた誘導システムにより、それぞれが弧を描いてまっしぐらに五隻のゴルバへと向かって行った。
そして、それを迎撃しようと、無数のガトランティス前衛艦隊の砲撃が襲う。ミサイル本体に仕掛けられた防衛機構により、これらの攻撃を無効化しながら、ミサイルは飛び続けて行く。しかし、やがてミサイルの後部エンジンに被弾し、あらぬ方向へと飛び去るものが数基出てしまう。
それでも、いくつかのミサイルは、ガトランティス前衛艦隊の隙間を潜り抜け、とうとうゴルバに命中した。
ゴルバは、惑星を破壊する威力を持つミサイルの威力により、その場で大爆発を起こした。その爆発は、付近に居たガトランティスの艦艇を多数巻き込み、大量の艦艇が破壊されて行った。時を同じくして、他の三隻のゴルバにもミサイルは命中し、ガトランティス前衛艦隊の後方で巨大な火の玉が生まれていた。
「やったぞ!」
「おお!」
「敵、後方のゴルバ、及び主力艦隊多数が壊滅しました! ゴルバ三隻と、約八百隻程の艦艇が消滅したものと思われます!」
しかし、報告を受けたゲッパート大佐の表情は暗かった。
「撃ち損じただと……! 全艦隊に告ぐ! 敵機動要塞は、まだ二隻が無傷だ。射線上にいる艦艇は、直ちに退避しろ!」
ガルマン帝国前衛艦隊の陣形は、この命令によって、大きく崩れる事になった。
しかし、その最中に、残った二隻のゴルバは、遂にその砲門から砲撃を開始した。
大出力のレーザー砲の二本の巨大な束が、ガルマン帝国前衛艦隊を貫いて行く。射線上にいた艦艇は、その強大なエネルギーの前に、一瞬で蒸発して行った。
「味方艦艇、多数被弾! 約、百三十隻が消滅しました!」
「敵、機動要塞は、次弾装填中のようです! 予想では、約三十秒後に次弾来ます!」
このまま攻撃を受け続ければ、あっという間に多数の艦艇を失うであろうことは、容易に予想出来た。ゲッパート大佐は、青ざめてこの結果を見つめていたが、気を取り直して新たな命令を発令した。
「敵も、既に我々の攻撃で陣形は崩れ、主力艦隊は無防備な状態だ。これより、敵の主力艦隊と機動要塞を沈める。全艦、突撃!」
ガルマン帝国前衛艦隊は、一斉に回頭して、ガトランティス前衛艦隊へと突撃して行った。
ガルマン帝国前衛艦隊は、ミサイル攻撃と砲撃を行いながら、敵へと距離を詰め、後方のゴルバや主力艦隊との激しい撃ち合いを始めた。しかし、ゴルバが次弾を放つと、再び多数の艦艇が一瞬で消滅した。
「怯むな! 撃って撃って撃ちまくれ!」
ガルマン帝国前衛艦隊の砲撃は、ゴルバに次々に命中し、次第にゴルバの艦体は、あちこちが爆発を起こしていた。しかし、ガトランティス前衛艦隊のカラクルム級戦艦多数からも衝撃砲による砲撃が開始され、双方の艦艇は、互いに続々と沈んで行った。
その頃、ようやくガトランティスの小隊を撃退した島隊、北野隊の乗組員は、艦載機を収容してガルマン帝国前衛艦隊と合流すべく隊列を整えようと、準備をしていた。
「島艦長! 見てください! ガルマン帝国前衛艦隊とガトランティス艦隊は、これまでに双方数千隻の艦艇が失われ、いまだ激しい砲撃戦が続いています!」
島は、大スクリーンに映った映像を確認して、大艦隊同士の激戦の様子を、目を見開いて確認していた。そして、戦術長の金田も、これには恐れを成したのか、声を震わせて言った。
「こ、こんなのって……! これじゃあ、お互いに自滅するだけじゃありませんか! か、艦長! 本当に、あそこに我々は行かなければならないんですか!? とてもじゃありませんが、我々の、このちっぽけな戦力が、あの戦況を変えられるとは思いません! 後退しましょう!」
島自身も、その意見は同意するしかなかった。
しかし、ガルマン帝国との共同戦線を張る約束を、勝手に反故にする事は、現場の指揮官としてあるまじき行為だった。
島は、苦渋の表情で全艦隊に指示した。
「駄目だ。我々は、ガルマン帝国前衛艦隊の後方につける! 我々は、彼らを支援する命令を受けている。全艦、発進してくれ!」
イセの乗組員は、これには唖然とした反応だった。それでも、命令を聞こうとそれぞれが動き出した。
「……承知しました。それでは、本艦は発進します」
イセや、ヤマトを始めとした島隊と北野隊は、一斉にエンジンに点火すると、ガルマン帝国前衛艦隊の方へと、向かって行った。
その時、島は本当に自分の判断が正しいのか、自問自答していた。
ふと、島の脳裏には、以前古代から聞いた沖田艦長の言葉が浮かんだ。
――例え命令であったとしても、間違っていると思ったら自分を貫く勇気も必要だ。
そう――。
軍人として正しい事をしようとした父には、それが出来なかった。そうして、ガミラスとの戦争の引き金を引き、人類は滅亡の縁に立たされた。
もちろん、父は間違っていた訳では無い。軍人として当然の事をしただけだ。今では、そのように納得している。
そうでは無く、この問題は、間違った指示を出した当時の司令部の判断が誤っていた事が原因なのだ。
自分が今やろうとしている事は、正に当時の司令部と同じ事をしようとしているのではないか?
このまま、盲目的に、命令に従えば、多くの人命を失う可能性がある。それよりも、ここは、後退して味方の地球艦隊と合流して、体制を立て直す方が正しいのではないか?
島は、大きく息を吸い込むと、冷静さを取り戻して、言った。
「……みんな、すまない。今の命令を撤回する。全艦停船してくれ。これから、土方総司令に、我々は後退すると伝える!」
艦橋にいた乗組員の表情は、急に明るくなった。
「は、はい!」
「停船させます!」
島は、その様子を見て、ほっと安堵した。恐らく、正しい事をしていると、そう思っていた。
――こんな判断をして、土方さんに覚悟が足りないと言われるかも知れない。だが、何と言われても構わない。このまま、あの現場に向かっても、この小隊が役に立つとは思えない。それこそ、犬死にする可能性が高い。
島は、土方に反抗しても、後退を伝えようと決意した。そして、通信回線を開くように、通信士に命じた。
続く…
注)pixivとハーメルン、及びブログにて同一作品を公開、または公開を予定しています。
注)ヤマト2202の登場人物は、役割を変更して登場しています。