宇宙戦艦ヤマト2199 白色彗星帝国の逆襲 作:とも2199
イセとヤマトの周囲を固めていた、駆逐艦とガミラス艦隊は、ゆっくりと後退を始めた。そして、最後の迎撃ミサイルを撃ち出すと、回頭してその場を離れて行った。
「皆、無事に離脱してくれよ」
北野は、独り言を囁き、味方の無事を祈った。
その時、ヤマトの前にイセが動いた。ちょうど、ヤマトの真正面に位置取りをしている。ヤマトの艦橋からは、イセの二基の波動エンジン噴射口が見えている。
北野が、それを不思議に思っていると、通信士の市川純から報告があがった。
「イセから入電。イセは、ヤマトの波動防壁劣化を軽減する為、ヤマトの前に出て攻撃を受け止めるとの事です!」
「島さんが、そんな事を……?」
そう。今や、ヤマトはそこで戦う全ての味方の希望となっていた。
「接近する敵艦隊、数百隻が更に接近中!」
ヤマトの前に立ちはだかるイセは、主砲を連射して、応戦している。そんなイセとヤマトの正面から、敵の陽電子砲が雨あられと降って来る。イセは、それを受け止めながら、砲撃を継続していた。
「くそう……こんな時に、ヤマトは何も出来ないなんて……!」
悔しそうに、自席の肘掛けを土門が叩いている。その気持ちは、そこに居る皆も同じだった。既に、波動砲の発射準備は完了し、いつでも撃てる状態になっていた。しかし、その状態を解除しない限り、ヤマトの兵装は使用出来ない。
「私たちの正面に、多数のガルマン帝国艦隊が集まっています! 彼らは、私たちの前で静止して、迎撃を開始しました!」
高速で突撃して来るガトランティス艦隊に対して、ガルマン帝国前衛艦隊は、残る全ての戦力を投入し、ヤマトとイセを守り始めた。しかし、敵の攻撃で次々にガルマン帝国の艦艇が爆発して消滅するも、負けじと応戦して相手も次々に被弾し、爆発を起こしている。ヤマトに接近する敵艦載機は、ガルマン帝国軍の艦載機部隊が追い掛け、次々に撃墜しており、周囲は無数の戦闘機が飛び交っている。
その光景に、北野たちは呆気にとられていた。
「俺たちを守る為に、彼らは犠牲を払うと言うのか!?」
この混乱の中、西条は、レーダーによる新たな発見を報告した。
「敵の複数のカラクルム級戦艦が接近中! また、敵、機動要塞は、かなり被弾していますが、こちらに向かって来ます! 多数のガルマン帝国艦隊が、敵戦艦に向かって突撃しています!」
北野たちも、先程のガトランティスの小隊との戦闘で、敵の戦艦を倒す為に似たような戦法を取った。ガルマン帝国艦隊も、同じ事をしようとしている。しかし、接近する敵戦艦の数は、かなり多い。案の定、ガルマン帝国艦隊は、次々に敵戦艦の衝撃砲の砲撃を受け、一撃で撃沈されて行く。それでも、彼らは果敢に接近を試み、敵戦艦を少しづつ沈めて行った。
しかし、それだけでは終わらなかった。機動要塞ゴルバが、砲撃を始めたからだ。大口径の強力なレーザー砲は、イセとヤマトの前で戦うガルマン帝国艦隊を薙ぎ払った。一瞬で、ガルマン帝国の艦艇百隻以上がその場で消滅した。
レーダーを見つめていた西条は、思わず上ずった声を上げた。
「ひ、酷い。ガルマン帝国艦隊は、どんどん数を減らして行きます! こ、こんなのって、こんなのって……酷過ぎる……」
土門も、青ざめた表情で眼前で起こっている事態を見守っていた。
「くそっ……。ガルマン帝国っていうのは、イスガルマン人を奴隷にするような、悪の帝国みたいな奴らじゃ無かったのかよ……! 何だよ、何なんだよ、これは!」
彼らの眼前で、本当に大勢の命が、一瞬で失われている。最初は現実感が薄かった彼らも、次第に事の重大さに、背筋が凍るような感覚を覚えていた。
北野も、目の前で行われている、虐殺の様な光景に目を奪われていた。
ガルマン人は、国を守ろうと命をかける者、命令に従って、やむを得ず戦っている者、様々なその思いが渦巻く中、それでもヤマトを守ろうと懸命に戦っている。そんな彼らは、自分たちといったい何が違うのだろう?
ガルマン人は、まさしく地球人と同じメンタリティを持った、同じ人間でしかなかったのだ。
西条は、そんな状況でも、心の動揺を抑えて、任務を果たそうと努力していた。
「敵機動要塞、更に接近! しかし、ガルマン帝国艦隊の集中砲火を浴びて、艦体が崩壊して行きます!」
ゴルバは、その艦体を覆う装甲がばらばらに崩れ落ちると、稲光のような、輝きに包まれた。
そしてそれは、巨大な火の玉となって大爆発を起こした。
「うわあ!」
その爆発の衝撃は、付近のガトランティスやガルマン帝国の艦艇を多数巻き込んだ。更には、かなり接近していた為、イセとヤマトの艦体にも、激しい衝撃が襲っていた。
第一艦橋の乗組員は、何人かが椅子から投げ出され、床に転がっていた。
北野も、艦長席から投げ出され、しばらく動けなくなっていたが、何とか椅子の肘掛けに捕まって、身体を持ち上げた。
「状況報告!」
同じく椅子から投げ出されていた新米は、何とか座席に戻ると、艦内の様子をいち早く確認した。
「艦底部の波動防壁が一部崩壊し、装甲が破れています! 火災発生の為、隔壁を閉鎖して対応中! 軽症者が数名出ている模様です!」
「隔壁の閉鎖が完了したら、艦底部の乗組員は、直ちに上層部へ避難させてくれ!」
しかし、北野は軽症者が出ている程度の被害だった事に安堵するも、艦底部と聞いて血の気が引いた。
「シンマイ、波動防壁はどうなっている?」
新米は、波動防壁の状態を詳しく確認した。
「設備のある後部ミサイル発射塔の損傷は無く、波動防壁の展開は正常です。あと十分間は維持できます。しかし、第三艦橋の周辺で、波動コイルが多数破損した模様。破損箇所を修理しなければ、艦底部の波動防壁の展開は不可能です!」
それは、ヤマトにとっては重大な損傷だった。第三艦橋には、波動防壁の制御装置や、慣性制御装置が存在する。それが失われると、波動防壁が制御出来なくなり、艦内の重力制御も不可能となる。
北野は、歯を食いしばってどうするか考えようとした。しかし、彼の目には、艦橋の窓の外で、甲板に大きく被弾して炎を上げるイセの姿が映った。明らかに、ヤマトの損傷よりも、大きな被害を被っている。
「市川さん、至急イセに連絡をとってくれ!」
その市川は、ようやく自席に戻ろうとしているところだった。
「は、はい。お待ちください」
その間に、同じく座席に戻った西条が、大スクリーンにレーダーチャートを表示して、周辺の様子を報告して来た。
「先程の爆発の影響で、一時的に攻撃が止んでいます。ガトランティス艦隊は、私たちの周辺から離れて隊形を整えようとしています。ガルマン帝国艦隊も、かなりの数を減らした様ですが、同じく艦隊の隊形を整えようとしている様です。ああっ……」
「どうした?」
「白色彗星が速度を上げて急速接近中! 間もなく、波動砲の射程圏内に捉えられます。後方にいるガトランティス艦隊も、白色彗星を通す為か、大きく陣形を変えています」
北野は、艦橋の窓の外を見た。確かに、白色彗星が既に目視出来る所まで接近していた。
「イセと通信回線を開きました! スクリーンに出します!」
頭上の大スクリーンが切り替わり、島の姿が映った。
「……北野、そっちは大丈夫か?」
「こちらは、今のところ損害は軽微です。それより、イセはどうなっているんですか!?」
島は、カメラを切り替えて、イセの艦内の様子をスクリーンに映した。イセの艦載機格納庫は、大きな火災があちこちに発生して、甲板員や、加藤ら航空隊のメンバーが、必死に消火活動を行っていた。
「ご覧の通り、損害の程度は、中破といった所だ。乗組員の一部にも、残念ながら何名か死傷者が出てしまった。それに、波動防壁も壊れちまったらしい。すまないが、俺たちは今のうちに、ここを離脱するしかなくなってしまった。ヤマトはどうなんだ? まだやれるのか?」
北野は、唇を噛んだ。イセと一緒に後退したいのは、やまやまだった。しかし、もう間もなく白色彗星を攻撃するチャンスが迫って来ており、ガルマン帝国軍が払った多大な犠牲に応える為にも、まだ後退する訳には行かなかった。
北野は、決意を込めて島に回答した。
「ええ、ヤマトは大丈夫です。まだやれます。直ちにイセは後退して下さい。ヤマトの盾になって頂き、助かりました」
島は、悲壮な決意が窺える北野の様子に、心配そうな表情になった。
「……分かった。北野、無理はするなよ? 危ないと判断したら、躊躇せず後退するんだ。いいな?」
「分かっています」
島は、通信回線を切ろうとして、思い留まった。
「ところで……太田は無事か?」
北野は、カメラを広角に変更して、太田が映る様に調整した。太田は、航海長の座席にしがみついて、座ろうとしている所だった。
「島さん。ええ、さっき椅子から転げ落ちて、頭にこぶが出来ていますが、それ以外は元気ですよ!」
笑顔で答える太田の様子に、島はつられて、笑みをこぼした。
「太田……。俺たちのヤマトの事、頼んだぞ」
太田は、笑顔で敬礼した。
「お任せを! 島さんもご無事で!」
「ああ、後でまた会おう」
島も、そのまま敬礼して、スクリーンから消えて行った。
その後、イセは、スラスターを吹かしながら回頭し、ゆっくりとその場から離れて後退して行った。
北野や、第一艦橋の乗組員は、敬礼してそれを見送った。
続く…
注)pixivとハーメルン、及びブログにて同一作品を公開、または公開を予定しています。
注)ヤマト2202の登場人物は、役割を変更して登場しています。