宇宙戦艦ヤマト2199 白色彗星帝国の逆襲 作:とも2199
「ガトランティス艦隊、陣形を整え終わった様です。また、こちらに接近しようと動き始めました。ガルマン帝国艦隊も、ヤマトの前方に入り、我々の防衛を続けてくれる様です! しかし……白色彗星が更に速度を上げています。このままでは、前方のガトランティスもガルマン帝国艦隊も、間もなく白色彗星に飲み込まれてしまいます!」
それを聞いた北野は、決意を新たにして、艦長席から立ち上がった。
「よし、皆! 間もなく、白色彗星がここにやって来る。これより、ヤマトはこの場で波動砲の発射体制に移行する。ガルマン帝国艦隊に敬意を表し、我々はぎりぎりまでここで戦闘を継続する! 各員、準備にかかってくれ!」
「了解!」
「分かりました!」
「波動砲、エネルギー充填百二十パーセントを維持しています」
「ターゲットスコープ、オープン。電影クロスゲージ明度二十」
「敵、白色彗星を、ヤマトの軸線に乗せます」
戦術長の土門の見つめるターゲットスコープには、もう白色彗星の姿が映っていた。
「敵、白色彗星、波動砲の射程圏内到達まであと一分」
着々と波動砲の発射体制に移る中、ガトランティスは攻撃を再開した。
「敵艦隊、戦艦クラス多数接近中! ガルマン帝国艦隊が応戦中です!」
ヤマトの目の前で、再び激しい砲撃戦が再開した。ガルマン帝国の艦艇は、敵のカラクルム級戦艦の衝撃砲の餌食となり、続々と被弾して撃沈されている。
「白色彗星、あと四十秒で射程圏内に到達します!」
その時、土門が見つめるターゲットスコープには、白色彗星だけで無く、ガトランティス艦隊とガルマン帝国艦隊が入り乱れて戦っている様子が映っていた。
「艦長! ガルマン帝国艦隊を退避させてください。このままでは、波動砲を撃てません!」
「分かった! 市川さん、至急、ガルマン帝国艦隊に連絡! 間もなく波動砲を使用する。ヤマトの軸線から退避する様に勧告してくれ!」
「はい、すぐに連絡します!」
「射程圏内まで、あと、三十秒!」
「総員、対ショック、対閃光防御!」
市川は、耐閃光鏡を装着しながら、ガルマン帝国艦隊からの応答を報告した。
「か、艦長……! ガルマン帝国艦隊のゲッパート大佐は、退避せずこのままガトランティス艦隊から我々を守ると言っています。我々に構わず白色彗星を撃破してくれ……との事です」
北野は、その報告に驚愕していた。
「くそっ、何てことを……!」
土門は、焦った様子で振り返って北野に確認した。
「か、艦長! どうするんですか!?」
北野は、歯を食いしばった。
彼らの言うとおり撃つべきなのか?
そんな責任を自らが負うのか?
しかし、ガルマン人たちの覚悟を知った今、このままにしておく事は、彼には出来なかった。
「彼らの意志を無駄には出来ない……! すべての責任は、この俺が取る。土門、波動砲を撃て!」
土門は、一瞬躊躇するも、冷静さを取り戻して言った。
「……分かりました。カウントダウンを開始します!」
その時、西条が血相を変えて報告して来た。
「艦長! ガルマン帝国が大破させた敵戦艦一隻が、こちらに突っ込んで来ます!」
「何だって!?」
既に、その艦は目視出来る位置まで迫っていた。
「太田! 回避しろ!」
「了解!」
太田は、慌てて操縦桿を引いた。
ヤマトの艦底部のロケットが噴射し、少しづつ上昇した。炎に包まれたガトランティスの戦艦は、ヤマトの下に潜り込むように突っ込んだ。
その瞬間、ヤマトに強烈な衝撃が襲っていた。
「うわっ!」
「きゃあ!」
ヤマトの艦体は、がたがたと激しく揺れ動き、再び乗組員が椅子から投げ出された。
北野は、急いで立ち上がろうとしたが、身体がふわふわと宙に浮いてしまう。
「ど、どうなった!? 至急、報告を!」
新米は、浮いた身体を降ろそうと、椅子に掴まって、自席の操作パネルに取り付いた。そして、真っ青になって北野に大きな声で報告した。
「艦体への直撃は避けられましたが、第三艦橋がもぎ取られた様です! 波動防壁は完全に消失、艦内の重力制御機能が喪失してしまいました!」
辺りに置いてあったペンや携帯端末がふわふわと浮き上がっている。西条は、艦橋の中央で、宙に浮いて手足をばたばたとさせている。北野は、艦長席のパネルを思い切り蹴って、彼女の所へ向かった。そして、彼女を抱き寄せて天井に進むと、再び蹴り出して、床の方へ降りた。
「怪我は無い?」
「き、北野くん。大丈夫。ありがとう」
北野は、レーダー席に彼女を降ろすと、その場で土門の様子を確認した。土門は、波動砲の発射装置に掴まった状態で、身体が逆さまになって浮いている。
「土門! 何をやっているんだ! 今すぐ、波動砲を撃て!」
白色彗星は、もう目の前まで迫って来ていた。凶悪なその白い輝きは、ヤマトを明るく照らしていた。ガトランティスや、ガルマン帝国艦隊は、その白色彗星に次々と飲み込まれて行く。
「わ、分かってます! くそう……!」
土門は、波動砲の発射装置を掴んで身体を無理矢理引き寄せると、そのまま座席に滑り込んだ。
そして、もう一度白色彗星をターゲットスコープに捉えようと、ヤマトを必死に動かした。
「く、くそ! この野郎、言う事を聞け!」
土門は、失われた重力によって操作が上手く出来ず、呻いていた。
「か、艦長、艦の操艦が上手く行きません! これでは、波動砲の狙いをつけられません!」
それを聞いた北野は、すぐに西条の席を離れると、ふわふわと浮きながら、土門の所へ移動した。
「俺も手を貸す! ヤマトを何としても軸線に乗せるぞ」
北野は、波動砲の発射装置を握る土門の手に、自分手を重ねると、力強くそれを動かした。
「き、北野さん!」
「少し右上に動かせ! もう少し下だ。よし、そこで固定する! 今だ!」
土門の見つめるターゲットスコープの真正面に、白色彗星が捉えられていた。
土門は、大きく目を見開くと、波動砲のトリガーを引いた。
ヤマトの波動砲制御室で、突入ボルトが押し込まれると、ヤマトの艦首波動砲口に、大きな光の塊が生まれた。
その一瞬後、波動砲のエネルギーは、前方に開放され、大きな光の束となって突き進んだ。真っ直ぐに伸びたその光の帯は、一瞬で白色彗星のど真ん中を貫いた。
白色彗星は、一際大きく輝くと、巨大な火の玉となって四散した。その巨大な爆発で、辺りはまるで太陽が生まれたかの様に、明るく照らされた。
「やったぞ!」
「やりました!」
北野と、土門は、喜びを爆発させて抱き合った。
しかし、至近距離での白色彗星の爆発は、ヤマトも巻き込まれて吹き飛ばされた。
この衝撃によって、無重力となった艦内で乗組員たちは天井まで吹き飛ばされ、大勢の怪我人が出る羽目になった。第一艦橋でも、それは例外無く、北野を始めとした全員が意識を失って、天井付近で身体を漂わせていた。
完全に沈黙したヤマトは、力無く、ただそこに漂っていた。
しかし、その爆発の後には、大きな物体がワープアウトして現れようとしていた。
現れたのは、白い輝きを放つ、もう一基の白色彗星だった。
その周囲には、ガルマン帝国艦隊と、ガトランティス艦隊の残骸が多数漂っていた。それらの艦艇は、白色彗星に引かれて、次々に吸い込まれて行く。そして、その超重力で押し潰された艦体がばらばらになると、小さな爆発を起こして消えた。
その戦いで、何とか生き残ったガルマン帝国のゲッパート大佐の乗る空母も、白色彗星から逃れようと、エンジンを最大出力で吹かしていた。
「生き残った全艦艇に告ぐ! 思い思い、白色彗星から退避し、直ちに後退してくれ!」
彼らは、必死に散り散りになって白色彗星から逃げ出した。
ガルマン帝国前衛艦隊は、結局その数を千隻以下まで減らしていた。白色彗星から逃げるのに成功した艦艇は、後方から応援に駆け付けた後衛艦隊の五千隻と合流し、次の防衛ラインまで後退して行った。
白色彗星は、ガトランティスとガルマン帝国艦隊の残骸を飲み込みながら、ヤマトをもその超重力に捉えていた。
ヤマトは、ふらふらと白色彗星へと吸い込まれて行った。操艦する者の居なくなった艦は、無防備となっていた。
その時、ただ一人無事だったアナライザーAU−O9は、緊急事態と判断して、自らの判断で操艦を開始した。
「緊急事態発生。艦隊総司令ニ緊急通信。ヤマトハ、第一艦橋の乗組員全員ノ任務遂行ガ困難ニナッタ為、コレヨリ、ヤマトノ全権ヲワタシガ掌握シマス。波動エンジン、全力運転ヲ開始。白色彗星カラノ退避ヲ試ミル」
ヤマトの波動エンジン噴射口が輝くと、ヤマトは、反転して白色彗星から逃れようと移動しようとした。
しかし、既にかなり近くまで白色彗星に吸い寄せられており、中々思う様に動いてはくれなかった。
「波動エンジンノ全力運転ノパワーガ、白色彗星ノ重力デ打チ消サレテイル。脱出ハ困難。繰リ返ス、脱出ハ困難……」
そのヤマトに、突然何かがぶつかる衝撃が走った。
アナライザーは、その衝撃の原因を調べようと、艦内コンピュータネットワークへとアクセスした。
「……コレハ、ロケットアンカー……デショウカ?」
その時、ヤマトのすぐ近くに、既に後退した筈のイセの姿があった。イセは、ロケットアンカーをヤマトに撃ち込み、すぐに牽引を開始した。
「やはり、完全に後退しなくて正解だったな」
島は、艦長席から、落ち着いて指示を出した。
「いいぞ! 波動エンジン全開! ヤマトを牽引して、ここから脱出するぞ!」
イセもまた白色彗星の超重力に捕まっていたが、二基の波動エンジンを咆哮させると、フルパワーで白色彗星から離れようとした。
白色彗星から逃れようと、イセはヤマトを引いて、じりじりと動いた。しかし、白色彗星も前進しており、中々離れる事が出来ない。
「艦長! 駄目です! 離れられません!」
「諦めるな! イセを信頼しろ! イセのパワーならやれる! 少し進行方向を変えながら操艦するんだ。必ず、突破出来る!」
「は、はい!」
イセは、スラスターを吹かして、艦首の向きを変えながら、前進を続けた。しばらくそうしていると、徐々に抜け出せそうになっていた。
「その調子だ! 頑張れ!」
しかし、そこで新たな報告があった。
「艦長! ガトランティスの駆逐艦三隻が、周囲に集まって来ました。我々がここに居るのに気付いた様です!」
「な、何?」
イセは、先程の戦闘で波動防壁が損傷しており、白色彗星から逃げるのに成功しても、既に身を守る術を失っている。
イセがフルパワーで脱出を試みている最中、遂に敵艦から陽電子砲による攻撃が始まった。イセの艦体に、次々に攻撃が命中し、艦体の装甲がえぐられて行く。
「被弾! 艦長、このままでは……!」
「主砲で応戦出来るか?」
「駄目です、艦の向きを変えられず、狙いがつけられません!」
島は、悔しそうに小声で呟いた。
「まずいな。どうする……?」
ヤマトを切り離して逃げ出せば、まだ助かる可能性はあった。しかし、助けられる寸前まで来て、簡単にそんな決断をする事は出来なかった。
「だが……。そうしなければ、イセまで助からない……」
島は、眉間にしわを寄せ悩んだ。
しかし、そうしている間にも、敵の攻撃がイセの被害を増やして行った。
「第一主砲に被弾! また、艦首付近の装甲が崩壊しました! 火災発生! 隔壁を閉鎖します!」
島は、やむを得ず、決断するしか無かった。
顔を上げ、ヤマトの切り離しを命じようとしたその時だった。
「敵、駆逐艦が爆発しました!」
「何? 味方か!?」
そう言っている間にも、ガトランティス艦は、次々に爆発して航行不能に陥った。
「いったい、どうなってるんだ?」
島たちが見守る中、その空間に、静かに現れた物体があった。
「あ、あれは……?」
その頃、空母シナノには、ヤマトからアナライザーが送った通信電文が届いていた。
それを受け取った古代は、その内容に衝撃を受けていた。まるで、殴られたような衝撃を受けた彼は、しばらくの間、茫然自失の状態となった。しかし、急いで土方に報告をしなければならなかった。
急ぎ足で作戦指揮所の中央にいる土方の元に向かうと、古代は、沈痛な面持ちで、その報告をした。
「土方総司令……。AU−O9からの報告で、ヤマトは白色彗星一基の撃破に成功するも、新たに現れた二基目の白色彗星に捕えられてしまったようです。AU−O9からこのような報告があがったと言う事は、何らかの理由で乗員が操艦出来ない状態にある事を意味します」
土方は、表情を変えずに古代を鋭い目つきで睨んだ。
「ヤマトの現在位置は?」
古代は、辛そうな表情で言った。
「……先程確認した所、イセと共に現在位置が捕捉出来ません。……白色彗星に飲み込まれた可能性が、否定出来ません……」
土方は、そこで初めて目を見開き、少しだけ感情をみせた。しかし、すぐに普段通りの様子に戻すと、冷静に言った。
「分かった。大村隊、井上隊に、その事を伝えておけ。彼らにも、準備させる必要がある」
「……分かりました」
古代は、土方から離れると、悔しそうに呟いた。
「こ、こんな終わり方。みんな……!」
古代は、瞳に涙を浮かべながら、拳を強く握りしめた。
続く…
注)pixivとハーメルン、及びブログにて同一作品を公開、または公開を予定しています。
注)ヤマト2202の登場人物は、役割を変更して登場しています。