普通のことができない俺が、異世界ではチート並みになんでも出来る無双者!? 作:HAL
ちゃんと要素に触れるように書いてるので悪しからず☆
俺は黒神遼。所謂、引きこもりニートだった。仕事もろくに出来ず実家暮らしで外へも行かない。言っても小遣いでコンビニ行って何か買ってくることくらい。
だいたい食べ物だけど…
母親も父親も兄貴も別に俺に対して邪魔だとか、もっと働けよとか、自宅警備員とか古すぎワロタとか、そんなことは言ってこない。普通に放置。
まあ、内心ではそう思ってんじゃねぇかな…
極めつけに俺は『普通のことが何も出来ない』。どういう意味かと言うと、普通の生活ができない。親に何かしてもらわないとできないようなそんな奴。
俺自身、発達障害とかあんのかも不明だけど…
それに近いかもしれない。普通の子は風呂だって歯磨きだってちゃんとやるのに、俺はその『普通』のことができない。だから社会不適合者。
本当は俺なんてこの世に生きる価値なんてない…
それでも、俺の唯一の支えはいつも持ち歩いてるコイツ。黒猫でぬいぐるみのオッドアイで、名前はクロ。コイツはゴミ捨て場で捨てられてたぬいぐるみ。最初は捨てられたんだなと思ってスルーしようと思った。でも、俺にだって良心はある。助けたいと思って助けた。親には内緒だったけど次の日にバレた。
今では俺の相棒だし大事な家族
そんなある日、俺は交通事故にあったらしい。即死レベルに俺の体は変な方向に曲がり、内蔵も骨によってグッサリ。そんな感じだったから俺は事故後に死亡。そして今に至る。
その内容を簡単に教えてくれたのが目の前にいる…
「そこまで思うなら最後まで言わんか!」
神様のようなそうじゃないような神様。
「神様じゃ!神様!」
ツッコミし続ける神様。しかも俺の中での神様は老人か美人美女。なのに目の前にいるのは老人口調の男が、お茶をすすりながら俺の前にいた。
非常に怪しい…
「怪しくないわ。それに神様は雲の上に居るという、お前さんの理想は叶っておるじゃろ?」
確かに俺の中での神様は雲の上にいる。でも城みたいな豪邸もちょっと期待してたけど、そこは理想とはかけはなれていた。ちゃぶ台の上にお茶せんべい、周りにはタンスやらなんやらしかなかった。貧乏神様。
「それ以上、悪口を言うならお前さんの『持っておる』その子を……ホイッ!」
「は?」
神の指が上を向いてるので上を向くとぬいぐるみのクロがいた。俺は大切な相棒を取られ、取り返そうとするが取れない。
「返せよ!俺の相棒を取るな!」
「悪口に対して誠心誠意謝るのなら返してやる」
面倒臭い神様だった。
「面倒臭いなら仕方ないのう?今謝ればお前さんの願いを叶えてやろうと思ったんじゃが」
「俺の願い?」
俺は首をかしげた。何を言ってるのかイマイチ理解ができなくて、ずっとクロを見ていた。神様は俺の前で何か魔法のようなのを唱えた。すると煙とともに『ボンッ!』という音で周りが見えなくなった。
「な、なんだ!?」
そこにいるのはぬいぐるみのクロではなく、黒猫耳と尻尾、それからぬいぐるみのクロのチャームポイントであるオッドアイの男の子がそこにいた。
「く、クロ…??」
「!…ハルしゃん!」
思わず噛んでる。しかも裸だ。顔真っ赤にして顔を隠す。呆れた神様がクロに似合う服を着せてくれた。なんというか俺の生きてきた服装とは程遠い、村人A的な服装だった。
もう少し動きやすい服装とかなかったのかよ…
「注文が多いのう…」
指をパチンと鳴らすとクロの服装が変わった。村人Aというような服装よりはいい生地を使った素材のようだ。
うん??なんでいい生地ってわかったんだ??
「その辺は後で説明するわい」
後回しにされた。ひとまず擬人化されたクロの見た目的な身長は150cm。俺よりも低かった。
うーん、小学生か中学生……それか高校生になった辺りの年齢層か…?
とにかく幼く見えるのでそう思ってしまう。疑問は絶えないが、とりあえずまず神様に確認。
「これはクロか?」
「そうじゃ」
「ぬいぐるみの?」
「そうじゃ」
「俺の願いって擬人化?」
「そうじゃ」
「俺の相棒?」
「そうじゃ。だが」
だが??
「クロよ」
「はい?」
「お前さんの主はワシの悪口ばかり言うんじゃ」
へ?
「それはいけません!神様に悪くいうなんて!」
「い、いや!?そんな悪口言ってないだろ!?」
「ああ言っておるが、心の中ではワシを馬鹿にするんじゃよ…。シクシク…」
「あー!泣かないで?よしよし」
神様がニカッと笑う。俺はイラッとした。そこのポジションは俺なのになんでクソ最低な神様にクロのよしよしを盗られなきゃならんのかとそう思った。
「今クソ最低な神様と悪口を言われたのじゃあ!!クロぉ…、ワシはクソ最低な神様に見えるかのう…?」
「ううん、見えないよ!むしろボクに命を宿してくれた恩人に対してそんなこと思うなんて、それこそ最低な人だよ!」
グサッ!!!
うぅ…、それを俺に向けてるわけじゃないのに胸が痛い……。コノヤロウ……
「それに神様?」
「なんじゃ?」
「ハルさんはそんな風に思う人ではないですよ?」
「そうなのか?」
クロはナイスなフォローを入れようとしていた。俺は今すごく感動している。1度は毒を吐かれたが、クロがそんなこと言うなんてありえないとそう思った。
「ハルさんがもし、そんな風に言う人ならボクはハルさんとお外に出るのやめます。ぬいぐるみに戻してください」
え??
「確かに、時々ボクの知らない所で言ってるかもしれません。それでも、それはハルさんにとって負けたくない人を表してます」
うっ…、いや…負けたくないというかなんというか……
「ボクに嘘をつかない、なんでも話してくれてとても優しい命の恩人がそんな『汚い言葉』や『汚い行動』を起こすなんて考えたくありません」
なんかすごい恥ずかしい…。しかもさらりと胸に突き刺す言葉を言ってくる…
「ボクのハルさんがそんな言葉を発するなんて、絶対にありえませんけど、もしそれが本当ならボク…」
え??えっ??何??何なの??クロ……??
「ボクを燃やしーー」
「それはダメだっ!!絶対に許さないぞっ!!」
「……こう言っておるが?」
「なら、ハルさん」
「な、なんだよ…?」
「少しでも神様に汚い言葉を言ってたなら神様に謝ってください。ボク達の恩人なんですよ?それなのにそんな言い方したらダメです。せっかくボクのお願いも叶うと思ったのに……」
クロの願い…?
「ど、どういうことだ…?」
「その疑問の答えはハルさんが神様に謝った後に言ってあげます。しないなら言いません!」
しかめっ面でプイッと顔を逸らされてしまった。ぬいぐるみに戻されて火で焼かれるなんて見たくない。かと言ってこの神様に謝るのもしたくない。でもクロは本気のようで俺の言葉によって行動を起こす勢いだった。これは絶対に阻止しなければならない。
けど、信頼出来る神様……って感じでもないんだよな……。怪しい神様でしかないんだよなぁ……
怪しいと言う顔で神様を見ているとクロが追い打ちをかけてきた。
「神様、やっぱりボクをぬいぐるみにしてください。ハルさんは全然謝る気はないようです。その後燃やしてください」
「えっ、あっ、ちょっ…!!」
ま、待ってくれ!!
神様がこっちを見てからクロを見た。ため息を吐いてから言った。
「仕方ないのう…。お前さんの主は謝る気が本気でないようじゃし、それにワシのことを怪しい神様でしか見てないようじゃしの。ならば」
『ボッ』とどこから出したのか知らないが指から炎が灯ってる。つまりそれでクロを焼くつもりなんだとわかった。
ダメっ!!ダメだっ!!クロは俺の……俺の相棒なんだっ!!クロが居なくなったら俺は……生きていけない……。……クロ……クロ……クロぉ……
俺はクロに対してだけはプライドなどない。俺は強くない。俺は何も出来ない。何もしてこなかった。ただクロと一緒にいただけで、全然生活やらなんやらしてきてない。異世界に行けたとしても俺は今みたいに無力だ。何も出来やしない。それでもクロを失うくらいならと、俺は正座をし頭を下げて神様に謝った。
「汚い言葉を並べてずっと神様をけなしました…。お願いです…、クロを焼かないでください……。クロがいなくなったら俺は今二度目の死を迎えてもいい。クロさえそばにいてくれれば俺は幸せです…。でも、そのクロも俺から離れて消えていくならプライドなんてないです…。ごめんなさい……ごめんなさい……」
当初の目的は果たせて神様もクロも俺を許そうとした。でも俺は今まで生きててずっと思ってたことを、コンプレックスだったことを謝り始めた。止まることなく、懺悔のように。
「生きててすみません、息をしててすみません。生活も何も出来ないような、社会不適合者でごめんない。俺はいつもいつも人を羨んできました。自分はそれをしようともせずただただ出来ないと括りつけて、行動すればすぐにできるのにそれをしない。そんなカスです…。もっとちゃんとこの歳になるまでに出来たはずなのに、全然やれなくて…。それを家族みんな俺を心配するとか愛をくれます。罵るでなく、暴力振るうでなく、ただ放置してくれるだけ。俺の生きたいように生かせてくれてありがとうございます。こんなカスに愛をくれてありがとうございます。自立ができない社会不適合者な俺をここまで育ててくれてありがとうございます…。ぐす……汚かったクロを捨てないでくれてありがとうございます……。……すごく幸せでした……、本当にありがとう、お母さん…お父さん…兄貴……。……もう、俺みたいな社会不適合者がいなくなって清々してるかもしれないけど、それでも俺を陰ながら見ててくれてありがとう…、……さようなら、みんな……」
泣きながら神様にそれを伝えた。いつも思ってたことを全部、いっぺんに。こんなことならちゃんと感謝の気持ちも謝罪の気持ちも全部、言っておけばよかったと今更後悔する。放置だったとしても俺を心配してただろうし、世間に見せたくないと思ってただろうし、なんで生きてるんだって思われてただろうしとたくさん色んなことを思った。もう未練はない。家族がどんな風に思ってても俺は自覚があるから気にならない。クロさえいてくれれば、俺の1番信頼できる相棒がいてくれれば俺は幸せなのだ。下を向いててたからわからなかったが俺をギュッと抱きしめてよしよししてくれた。クロなのか神様なのかわからないけど、俺は泣き喚いて叫び涙を流し続けた。
しばらく泣いた俺は、スッキリしたのか泣き止んだ。顔を上げるとそこに居たのはクロだった。頭をよしよししながら優しく抱きしめてくれた。小さいのにしっかりしてる。俺よりもクロは『出来る子』だった。
「そろそろ、お前さんの話をしよう」
また俺がネガティブなことを考える前にと、神様が話を切り出した。
「お前さんの交通事故の原因は、居眠り運転じゃ。夜中じゃからのう、疲れておったのじゃろうな。そのままお前さんをはねた後、電信柱に激突した。そやつは今病院で手術中だそうじゃ」
お茶をすすり終わった神様がこっちを見てそう言った。死因とか気にしてないけど、思ったより在り来りな事故死なのでなんとも言えない。
てか、別に忘れてていいことをなぜ思い出させるか…
神様はその話から一変して異世界の話をし始めた。
「お前さんの行く先はあの世だったのだが、ワシの所に願う猫が来てのう。そやつの願いを叶えるために、お前さんをここに呼んだんじゃ」
「願う猫…?」
それは一体誰のことなのか、首を傾げると。
「ボクだよ、ハルさん」
クロが俺の前で正座をして話した。俺はまた首を傾げていると、クロが気にせず話した。
「ボクのお願いをね?神様が聞いてくれて叶えてあげるって言ってくれたんだ。だからボクは今ハルさん前にいるんだよ」
上手く飲み込めない。それがどうクロに繋がるのか。俺は何も言えずにただ話を聞いていた。ここで遮っても俺自身が分からないだけだからと。
「ボクのお願いはね?ハルさんと一緒に生きていきたい。ハルさんをずっと見てて僕が弟でも兄でもどっちでもいいと思ってたけど、ハルさんがいつも寂しそうに見つめてて僕の前では夢いっぱいに楽しく話してる姿しか見せてくれないけど、ボクは知ってるよ?時にハルさんはナルシストのように自分がもし異世界に行ったら強いんだからと豪語するけど、そこには寂しさを感じたんだ。そこにボクがいたらもっと笑って言ってくれるかなって。このまま死んで後悔するくらいならボクと一緒に生きて、後悔のない人生を生きて欲しいって思ったの。ハルさんの言葉から『生きてて楽しい』って、それが聞けたらボクのお願いは叶ったものだから。でもまずはハルさんと一緒に第2の人生を生きたい。それを神様にお願いしたの」
上手くまとめれてるように見えて同じことを何度も、意味の似た言葉を並べるクロ。
大事な事なので〜的な要素だなぁ…
クロの言葉から神様もそれにつられて話し出す。
「死ぬまぎ間に、お前さんの大好きな猫がそういう願いをしてきたらからそれに応えてやろうと思ったんじゃよ。それとのう、クロはぬいぐるみじゃろ?お前さんの気持ち次第でこういうことも出来る」
『ボンッ!』と音とともに煙が出た。煙の演出はいらなくないかと思いつつ、それがお約束のようなのでしかたない。煙がはけられクロを見るとイケメンになっていた。俺が25歳ならクロは28歳か俺と同じくらいの歳だ。それと俺の身長と変わらない背格好だ。
「ハルさん」
声もイケボだった。イケボと言っても俺はそこまで声の種類を知らないが、世間が思う声と言うべきだろう。ちゃんと声変わりをした少し低いイケボだと思う。わからんけど。
「ハルさん?」
でもこう見ると俺だけに見せてくれるこのイケメンを俺だけが独占できると思うと、得だなと思った。俺が優越感に浸っていると、クロが俺の返事を待てずに耳元まで顔を近づけた。
「ハルさん」
「!!」
ビクゥッと肩が跳ねた。耳が弱い訳じゃないが、世の女は耳元までイケメンのイケボを聞くとキュンってすると聞くが、俺も耳を隠すほどにはクロの声は心臓のドキドキが収まらない。顔を赤くなりそうになった。
これはヤバいもしれない…
「な、なんだ?クロ…」
「ずっと話しかけてるのに全然返してくれないから、ハルさんの耳に話しかけなきゃいけなかったんだよ?」
「ご、ごめn」
「それとも、ハルさんは耳元で話しかけないと僕の話は聞いてくれないのかな?」
「っ、…み、耳元で話さなくても…だ、大丈夫だから…っ」
肩が跳ねる。これは破壊力がある。25歳の俺でもキュンってしそうになる。耳弱いわけじゃないのに弱くなりそうだ。
俺はまだ女の子が好きだ、男を好きになる趣味はない…、…はずだよな…?
疑問に思ってしまうほど、クロがすごくカッコイイ。俺なんかよりもかっこよくて羨ましく感じる。
俺ももっとこんな風になれたなぁ…、無理か
「ふぅ」
「ひゃいっ!?」
変な声が出た。ただびっくりしただけなのに声が変だった。体が震える、慣れないことされてまるで俺が女になったみたいだった。
お、俺……男だよな??
疑ってしまうほどにはクロに魅了されてる証拠。イタズラするクロに怒ろうとしたら、体勢を崩してクロに押し倒されてしまった。しかも体勢がヤバい、これはR18モノだ。描写はモザイクかけるが見せたら行けない気がする体勢だった。助けを求めて神様を見るが、お茶を飲んでいた。
クソッ…!!
「どうしたの?ハルさん」
どうしたもこうしたもない!!
「く、クロ…!と、とりあえずどいてくれ…!た、頼むから…っ」
目の前にはクロが居るだけなのにすごくドキドキする。顔を隠せないのでどいて欲しかった。そこは素直なクロはすんなりどいてくれた。そしてお茶をすすってる神様の胸ぐらを掴み。
「今すぐクロをさっきの大きさに戻せ…っ」
クロには見せられない黒い顔をして神様に迫ると、神様もこれはと思いクロの背格好を元の大きさに戻した。胸ぐらを掴むのをやめてホッとする。神様がコソコソと。
「なんじゃお前さん、クロにドキドキしたのかの?」
「ち、違っ…!?」
「お前さんの気持ち次第で、ああいうこともできるんじゃよ。弟のように甘えてきたり、兄のように甘えさせてくれるのじゃ。あの背格好で10歳じゃ。そしてさっきの背格好で22歳じゃよ。お前さんの歳よりは下じゃ。上だったらもう少し攻めてたと思うぞ?」
確かにと思ってしまうほどクロは大人とは言えない幼さがあった気がする。とはいえ俺は1つ疑問に思った。何か引っかかる言い方をしている。
「なんで弟にでもなれて兄にもなれるんだ?」
「それはお前さんの次に生まれ変わる体が、15歳のピチピチな背格好になるからじゃよ☆」
とてつもなくムカつく声が聞こえたのでとりあえずグリグリしようとしたら、クロに止められた。
「ここから出たらその背格好になるからのう。変えることはできん、できるのはクロの背格好が変わるくらいじゃ。次の質問じゃ」
質問なんてされた覚えはないがそんなこと言ってると、また話が進まないので黙っておく。
「お前さんは何か欲しいステータスはあるのかの?」
ステータス、それはRPGならよくあるプロフィールにスキルや技能やらがたくさん書いてあるヤツだ。例えば基本的なものでいうと体力とか筋力とか瞬発力とか色々、小説や漫画でよくそういうことが書いてあって憧れだった。その中でも1番多いのは最初から自分最強が多い。なんでも出来てなんでもチート。俺もそういうのを見てあれが欲しいとかこれがあればとか思ったこともある。でも、何をどう欲しいステータスがあるのかって思うと悩ましいのである。
でもチート系なスキルとかチート系な技能とかはやっぱり欲しいよなぁ…
神様は俺の心を読めるがあえてそこには触れずに話しかけてきた。
「最初こそまだ初心者じゃが、メインジョブは冒険者じゃ。サブとして鑑定士とかどうじゃろう?」
鑑定士といえば、見た物を説明とともに教えてくれる、所謂辞書みたいなものだ。
「鑑定士はあらゆるものを見通す力がある。魔物から人間から全ての物、そして本物か偽物まで見通すという上位鑑定士じゃ。これから行く異世界の中で1番上と言われる鑑定士ランクが今で言うとお前さんじゃ。お前さんのような鑑定士を欲しがる奴らは山ほどおるじゃろう」
「じゃあなんでメインじゃないんだよ」
「メインに鑑定士じゃと疑う者や、貴族の奴隷にもなりかねないからじゃ。上位鑑定士といえど、どこの世界にいようと死は隣り合わせじゃ。ましてや、クロもおる。もし奴隷などになったらクロとは離れ離れじゃ。殺されるやもしれん、そうなったら嫌じゃろ?」
「そんなことさせない!!絶対にクロは俺が守る!!奴隷になんてなりたくない!!」
「じゃからサブじゃ。サブなら言わんで済む。隠しておける。色々な理由を付けても疑惑をかけられんで済む。っといった感じでの、ワシのオススメはサブが良いのではという提案じゃ。決めるのはお前さんじゃよ、ワシはあくまで提案を持ち込んどるだけじゃ」
神様は意外と俺の事を思っての提案だった。
色々言って本当にごめんなさい、神様…
俺は改めてちゃんと考えた。リスクやらなんやらと。やっぱり俺の2度目の人生は良いものにしたいと。クロとこれから一緒に住むと考えると、メインで鑑定士はいろんな人達の名誉があってこその方が安全だろうと思った。それならサブの方が変に思われないで出来ると思うと、そっちの方がクロも俺も安全だ。
死ぬよりマシだよな
俺は神様の提案に乗った。ニコッと笑った神様は次の提案質問をしてきた。
「その他にスキルや技能で欲しいものはあるかの?」
その質問に対して俺はこれまで色んな事に対して羨ましく思っていた。こんな人になれたら、あんな人になれたらと自分の身の丈に合わないことをたくさん考えてきた。自分にできないものを考えては消去してきた。だって俺は『出来ない子』だったから。俺は迷うことなくこう言った。それはとても男らしいとは呼べないようなことだ。
「今まで生きてて俺のできたことは限られる…。その中でも生活が1番『出来ない子』だった。みんなが出来るようなことを俺はできない。ずっと『出来ない子』だった。お母さんを心配させ、お父さんを失望させ、兄貴を辱めた。出来の悪い弟を、出来の悪い息子を持った家族だったから。ずっとずっと、俺以外に生きる全ての人を羨んだ。普通のことが出来ないってスゲー恥ずかしいことは俺だってわかってた。わかってても行動できない奴だった。だから、次に生まれ変われるなら『出来る子』として生まれ変わりたいって思った。モテたいとかそういうのは持ってない訳じゃないが、まず『出来る子』にならないと見向きもされない。スキルとか技能とか言われてたくさんのことを思い浮かんだ。まさかこの俺が本当に異世界に行けるなんて思わねぇから。でも、やっぱり『出来ない子』な俺には無理な話だ。だから、そこは神様に俺に必要なものを全てくれたらそれでいい。人間完璧だと逆に引かれるからな…。一部の人間には憎まれ、一部の人間には惹かれ、一部の人間には命を狙われ、一部の人間には良いように扱われるくらいなら、そうならないようなモノをくれればいい。もちろん、『なんでも出来る子』とかだったら俺は嬉しいんだけど…」
俺はもっと強欲かと思った。あれが欲しいとかこれが欲しいとか言うもんだと思った。けど、違った。ちゃんと現実を見れていた。もしかしたらネガティブすぎてそれこそ引かれるタイプな言い方だったかもしれない。それでも生まれてからずっと俺は周りと違うのを感じてた。三日坊主になるのは誰もが持ってるだろうけど、生活まで三日坊主になるやつはそう居ない。居て引きこもりニートや自宅警備員とかだったら、ありえるかもだが、それでも俺は自覚をしていて出来るやつに憧れもしたからこそ、ちゃんとわかってる。できなくて部屋でうなだれることは度々あったくらいだ。それくらいには俺の心残りになった未練。
それをもっとちゃんとしっかりと『出来る子』になれたら、俺は変われるのかな…。変われるなら、変わりたい…。現世では出来なかったことを出来るようになりたい…。もちろん、直ぐにできるとは思えないけど、クロが俺をずっと見ててくれて直すのを手伝ってくれたら、俺は変われる気がする。もっと胸を張れる気がする。もっとちゃんと、お母さんやお父さんや兄貴に感謝や謝罪を、後ろめたい気持ちで言うのではなく堂々とした顔で言いたい。こんなにもできるようになったことや、今まで苦労をかけてごめなさいって謝ることだってできる。そんな風に言えて、そんな風にかっこいい俺になりたい!クロと一緒ならどこまでも行ける、そんな気がするから…!
神様は俺の心を読んでフッと笑い、ボソッと「そうか…」と言った。それから神様は俺に最後の提案をしてきた。
「お前さんの気持ちはわかったわい。なら、まだその辺は秘密にしておこうかの。アッチに着いたら時に確認するといい。さて、これが最後じゃ。お前さんの2度目の人生の名前はどうするかの?現世の名前で行くか?それとも改めるかの?」
名前は重要だ。俺の人生が決まると言っても過言ではない。でも多分、現世とは違って漢字で言っても通じないと思う。だから俺はあえて。
「死んだ俺の名前は黒神遼だ。そんで異世界での俺は名前の字から取って、ハルと呼ぶ。だから俺はハルで生きていきたい。簡単でわかりやすくて呼びやすくて言いやすい。現世の頃は『遼』で『リョウ』とも読むから、みんなからリョウ、リョウって言われてきた。アレで『ハル』と読むんだが誰もそれで呼んだやつはいない。当て字みたいな感じだから読めなかったんだろうな?だから、俺も気にしなかったけど違和感だけはあった。家族は『ハル』って呼ぶのに友達は『リョウ』って呼ぶなんて、俺はどっちなんだってなったしな。どっちも俺だけど名前が違うだけで別人だ…。それなら漢字でいるよりカタカナでいる方がいいって思った。それに、クロがすでに俺の事を『ハルさん』って呼んでくれてるし、その名前にする」
そう言うと神様はクスッと笑った。そしていつの間にかちゃぶ台やらなんやらが消えていて、神様が立ち上がった瞬間に大きな扉が開かれた。光が眩しくて腕で隠しそうになったが、温かい風が吹いていた。
「さあ、ここからお前さんらの旅が始まる。お前さんはお前さんの果たしたい理由と目標に突っ走るが良い。自分のステータスが見たくなったら、声に出して『ステータス』と呼べば出てくるじゃろう。そこに色々と載っておる。何があるかはお前さんの目で確かめるのじゃ。最後に言い残すことはあるかの?」
それはクロと俺に言っていた。クロは。
「ボクの2度目の人生は、ハルさんと楽しく笑い合いながら時に喧嘩することもあるかもだけど悔いのない人生にしたいと思ってます。その中には神様、ボクの初めてのお兄ちゃんでありお爺ちゃんにも感謝をします。ありがとうございました!天から見守っててくださいね!ボク達の旅路を、よろしくお願いします!」
なんだか全部クロに言われてしまった気がするが、俺は俺で素直な気持ちで神様に言った。
「最初来た時に胡散臭い神様と思って色々言って悪かった…。でも、今はなんかそう思ってないつーか、カッコイイ神様だって思ってんよ。だいたい、クロに言われちまったけど俺達の旅路を見守っててくれ。……それと、ありがとな爺ちゃん……。またな、神様」
ボソッと感謝をして俺とクロは扉の向こうへと歩いていった。俺の耳には聞こえなかったが、神様は一言。
「ずっと、見守っておるよ我が息子達よ…。短い間だったが、楽しかったぞ。達者でな、ハルとクロや」
そして扉は閉ざされ、俺達は異世界へと足を踏み入れることとなった。