魔法使いの先生   作:幽玄の鬼

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第二篇 古き知己との再会

 最近、エリアスは大きく変わったと彼を知る人達は言う。前よりも感情豊かになり、チセに対しては嫉妬すらも覚えるようになったと、彼を知る人には驚かれる。

 日課の家庭菜園に出かけただけだと云うのに、エリアスは『寂しく』なり、落ち着きがなくなる。

「…ちょっと遅いな。変なモノに絡まれてなければいいけど」

 とエリアスは、机の上に置いてある手紙を見ながら、不安げに言った。()()と同族故にチセに身を案じてエリアスは黙っていたのだが、どうも不安で仕方がない。

 チセが絡まれていない事を切に願うエリアスであった。しかしその願いも虚しく、現実は残酷で、チセは変なモノに絡まれていたのだが、家に居るエリアスは知る由がない。

 

 

「ただいまー。エリアス、今帰りましたよ」

 エリアスは飼い主に再開した子犬の如く、立ち上がると玄関に駆けた。そしていの一番にチセに話しかけるが―、

 

「お帰りチセ。変なモノに絡らm―「久しぶりだね。我が甥っ子よ。再会そうそう()()()()扱いとは恐れ入ったが、私は逢えて嬉しいよ」

 アーキンはチセの背後からぬっと現れ、にこやかに言った。

「げっ。…はぁ、やっぱり絡まれたか」

 エリアスは骨の頭に手を当て深く溜息を吐いた。

 

「私は君の伯父だと云うのに、“げっ”は無いだろう“げっ”は。非道い事もあったもんだ。悲しみのあまり、胸が張り裂けそうだよ。いくら君と私の仲だって云っても、ちいとばかし無礼講過ぎるんじゃあないか?」

 身振り手振りを交え少々大袈裟にアーキンは(のたま)うが、エリアスはそれを一蹴する。

「何を言ってるんだか。人を食ったような言動は相変わらずだな、アーキン。貴方の種族はみんなそうなのか?」

「心外だねえ。私にだって心はあるんだ。人並みにも傷つくんだよ?―それはそうと、同族が失礼した。エリアス、そしてチセ。エリアスが何故、私を邪険にするか理解してるつもりだ。言い訳をするわけじゃあないが、私たちはヒトを好む性質(タチ)でね。迷惑を掛けて本当に申し訳ない」

 アーキンは腰を折り謝罪する。それに、気概が削がれたエリアスは頭を降ると、どさっとソファに腰掛けた。

 話について行けず立往生していたチセの腰を掴むと、抱き寄せ膝の上に載せた。

「アーキンさんが、エリアスの伯父?になるって事はよく分かりました。それで、その…同族ってどういう?」

 

「それは、こういうことさ」

 アーキンの身体から砂が大量に溢れる。

 すると服がローブへと変わり、ダーバンからは顔を隠す布が垂れる。袖から腕がもう2本出てきて、顳顬の辺りから蠍の触肢が2本生える。そして腰からサソリの尾が生えた。蠍の脚がにょきにょきと生え、かなり背が伸びる。―その姿は、まるで。

 

「《灰の、目》?」

 とチセはエリアスの膝の上で疑問を漏らす。

 アーキンは、頷くとチセの頭に手を伸ばす。エリアスはそれを払い除ける。アーキンは苦笑すると頭を掻く。

「ご名答。私は《灰の目》と同族なのさ。さっきの姿はエリアスと同じように丸ごと組み替えていたんだよ。私たちはねぇ、(いたずら)に年を食うだけで協調性を禄に磨けない、ヒトが好きで好きでたまらない悪戯(イタズラ)好きの業を背負った哀れな種族なのだ。―にしても過保護だぞ。あんまり構いすぎると嫁に嫌われてしまうぞ?」

 両腕を広げ天を仰ぐ、アーキン。灰の目と同じ種族の、それは違和感しか生まない。中身があまり感じられない言葉に、エリアスは溜息をついた。

「ほっとけ。チセと僕の問題だ。貴方には関係ない。―だいたい僕よりも長生きなんだ。悪戯(イタズラ)好きなのは種族云々じゃなく貴方が改善する気がないからでしょう?」

 

「違いない。こいつぁ一杯食わされたなあ」

 アーキンは自分の額に手を当てると、人の姿に戻りどかりと椅子に腰掛けた。

「そんなんで良く愛想尽かされないな。僕が言えた義理じゃないけど」

 エリアスは、アーキンの飄飄とした態度を見て、疑問を零す。アーキンは既婚者だが、よく愛想尽かされないな、と。

 

 その言葉にアーキンは、肘掛けに肘を乗せ、目を細めると―。

「まあ、その点に関しては…私には勿体ない良いお嫁さんを貰ったからとしか言い様がないねえ。君みたいにね」

 

 からからと笑い声をあげ、愉快そうにチセとエリアスを見つめるのだった。

 

 

 

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