その迷宮にハクスラ民は何を求めるか   作:乗っ取られ

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161話 嵐の前の騒がしさ

 

 振るわれる大剣が空気を切り裂き、生み出された風圧は草木を揺らして無に消える。絶え間なく鳴り響く金属同士の衝撃音の音量と頻度は凄まじいと表現するの一言であり、並の傍観者ならば、思わず口を開けて見入るだろう。

 ここはダンジョン50階層。1つ下の階層で平和に暮らすカドモス君達を恐怖のドン底に叩き落とす存在は、腕を組んで目の前の戦いを見守っていた。51階層からは、来るな来るな、絶対に来るなと必死の祈り声が届いている。

 

 そんなカドモス君の声はさておき、今現在は鍛錬が行われている真っ最中。もしかしたら一泊するかもしれないとヘスティアに断りを入れたタカヒロは、レヴィスと共に、50階層へとやってきていた。

 もちろん正規ルートではなく、ちちんぷいぷい反則技となるリフトを使って所要時間は数秒程度。そして今回は、二人の一般人以外にも別の冒険者(メンバー)が混じっていた。

 

 

 もしも自称一般人がいなければ、このような形で交わることはなかっただろう。怪人としてダンジョンで活動していたレヴィスとは、そういう類の人物だ。

 刃を交え、互いの血肉を抉り取り、命を狙う。どちらかが全て倒れるまで、もしかしたら約一名が轢き殺して直ぐに終わっていたかもしれないが、ダンジョンでの戦いは続くことになった筈だ。

 

 

 

 時は、5分ほど前に遡る。

 

 

 

 静かなダンジョン50階層にて、5人の人物が2対3で対峙していた。どうやら二名側にいる女性戦士の紹介のようであり、“成り行き”を相手方に伝えているらしい。

 とはいえ常識とはかけ離れた内容を耳にして、「はいそうですか」と返せないのは無理もない。しかしどうやら、3名のうち過半数は納得したようである。

 

 

「……リヴェリアもそうじゃが、お主もえらく腑に落ちておるのう、フィン」

「こう表現すると叱りを貰うが、あのタカヒロだからな……」

「正直、僕も同じ言葉を思い浮かべたよ。でも、ガレスも覚えてると思うけど、タカヒロさんから教わったことは――――」

 

 

 かつて英雄の話になった際にタカヒロが口にした言葉、「難しく考えるな」。当初とは全く違う意味で捉えられているようにも見られるが、実のところは全くの的外れというワケでもない。

 フィンやガレスにとって、その男が持ち得る強さは限りなく理想に近い程に眩しいものがある。しかし一方で理想に近すぎることもあり、己から随分と遠くに居ることも分かっていた。

 

 二人にとって最も近い上の存在となれば、レベル8となるフレイヤ・ファミリアの猛者オッタル。いつか二人が通過するであろう基準となる人物であり、最も近い目標とも表現できる。

 そしてここに、それよりも少し上となるものの新たな基準が現れたというワケだ。そして所属はヘスティア・ファミリアであるために、オッタルよりも色々と敷居が低い。

 

 

 

 二人の男の戦士に、まだコレと言った明確な目的は無いけれど。強くなるための道が目の前に現れ、挑むことが出来るならば。

 太古の昔にダンジョンに散った女の戦士は、かつての仲間が胸に抱いたオラリオの平和を守る為。己に最も必要な器用さと、パーティープレイの一端を学ぶため。

 最近は強くなることよりも惚気の方向に力を入れていた一人のハイエルフは、相方の名に恥じぬよう強くなるため。実戦的な鍛錬が難しい魔導士だからこそ、最もよく知る二人の強者と対峙することを選択した。

 

 

 

 魔導士リヴェリア・リヨス・アールヴとパーティーを組むのは、かつて18階層と24階層で対峙した赤髪のテイマー、名をレヴィス。彼女が防衛者となり、詠唱するリヴェリアを守り切る。

 その相手は、オラリオで最も有名なファミリアの1つであるロキ・ファミリアを結成した二名。知将フィン・ディムナと豪傑ガレス・ランドロックが、加減なしで立ち向かう。

 

 

 一般人らしき何か一名を忘れている気がするが、その男が入った瞬間に色々と破綻し確定するために此度は傍観者に徹している。彼が戦闘に加わることで伸びるモノも確かに生まれるのだが、彼が居ない戦闘というのまた、違った刺激を与えるのだ。

 此度のように二対一の環境ならば、フィンとガレスに浮かぶ勝機もまた薄くはない。最初から「勝てない」と割り切って学ぶ事に徹していては、逆に学べないことも存在する。

 

 

 此度の鍛錬は、学ぶ事もさることながら試す事も多いようだ。普段は指揮系統に比重を多く向けている為に、こうして真っ向から戦う機会も少ないだろう。

 戦いが始まって、既に二分程が経過している。空気を切り裂く衝撃波は途絶えることなく、未だ破れぬ均衡の中で、二人の戦士が藻掻いていた。

 

 

――――隙はある、それも少なくない数だ。でも後僅かが足りない、出し抜けない……!

 

 

 アレも駄目ならコレはどうだと、フィンは持ち得る小さな身体が生み出すメリットと培ってきた技術、閃きを惜しみなく注ぎ込んで攻めに徹する。ゆらゆらと見え隠れする隙こそレヴィスが治すべき点となっており、第三者からすれば分かりやすい。

 槍と呼ばれる武器が持ち得る最大のメリットとなれば間合い(リーチ)の長さが挙げられるだろうが、パルゥムの身体では心もとない。槍そのものの長さも短いこともあり、リーチだけに目を向ければ、大柄な男が剣を持った際と、さして変わりは無いだろう。

 

 では何がメリットなり得るかとなれば、向かってくる相手に対する対応が取りやすいことだろう。槍独自とも言える“突き・薙ぎ”、もしくはそれらの合わせ技は、剣という得物では非常に難しい内容だ。

 突然と柄を持つ位置を変えて翻弄したり、それによって得た後ろ側の柄で打撃攻撃へ切り替えたりと、更には上下左右が加わってスタイルは正に変幻自在。だからこそフィン・ディムナが選んだ得物でもあり、それは己の小さな身体を生かすため。

 

 

 

 レベル6へと至ったのは、何年前のことだっただろうか。そう考えて、約7年前に起こった未曾有の大騒動を思い返す。

 オラリオで平和に暮らしていた、正真正銘の一般人も含め3万を超える住人が死亡、同時に数多の神々が天へと還った“大抗争”。別名“死の七日間”と呼ばれる、オラリオで最も間近に起こった“戦争”と言えるだろう。

 

 フィンを筆頭として、今のロキ・ファミリアの主力陣営を鍛えた老兵もまた、その戦いで散っていった。今のオラリオは全盛期から比べると酷く停滞しているが、ゼウス、ヘラ・ファミリアの敗北と同時に、この大抗争も間違いなく影響を与えている。

 特に、レベル5以上となる第一級冒険者の損失が与えるダメージは計り知れない。特にレベル6を超える者ともなれば、冒険者の母数何万のうち、今現在においては10人を少し超える程しか居ないのが実情だ。

 

 

 

 そんなレベルの者が活躍できる機会となれば、“戦争遊戯(ウォーゲーム)”。しかし“殺し”も有り得るこんなモノを積極的に行ったならば、長期的に見れば、オラリオに与える損失は明らかだ。

 故に残されたフィールドは、もはやダンジョンの深層のみ。当然そこへ向かうには様々で大きな危険を伴い、長期の計画と数多の仲間の支援が欠かせない。

 

 

 フィン・ディムナ個人が強くなりたいからとて、計画・実施できることではない事実は明らかだ。上に行けば行くほどランクアップに時間がかかる理由については、このような実態も要素としては非常に大きい。

 ステイタスは上がれどレベル8へと至れずに居たオッタルと、方向性は全く同じだ。フィン自身とてレベル6でくすぶっていた時に、どれだけ望んだ事だろうか。

 

 

 超えるべき壁、追うべき背中の出現を。後ろから猛烈な速度で追いかけてくる、己の情景に“炎”を灯してくれる存在を。

 

 

「オオオオオッ!!」

 

 

 雄たけびと共に挑む小さな身体と槍は大剣に阻まれ、高く険しい壁には届かない。だからこそ彼は藻掻き、挑み、高みを目指す。

 藻掻く中で生まれ出ている“気付き”から繰り出された応用のようなものについては、戦いが終わってから振り返ることになるだろう。傍観者タカヒロが、それらの要点を見落とすことはない。

 

 とはいえレベル7に対峙するはレベル10、3レベル差。それは即ち、覆せない絶対的な力の差があることを示している。

 レベルが上がる程に力については、より強く。速度に関しては、より速く。器用さ、耐久、魔力についても同様だ。同等ステイタスでランクアップ前の者とランクアップ直後の者が戦っても、余裕で後者が勝利してしまう程である。

 

 そもそもにおいて“ランクアップすること”とは、器が成長することを意味している。例えランクアップの際に持ち得るステイタスが基準ライン下限の600程度だったとしても、位が1つ上がる事とは、文字通り“世界が変わる”のだ。

 フィンやリヴェリアのように、ステイタスを限界ギリギリの値である1000に近づけてランクアップしたならば、差は輪をかけて広がることとなる。行った“下積み”については力に反映されるのが、ステイタスという“システム”だ。

 

 

 なお、ランクアップの際の最低ステイタスは毎度1200越えが当たり前、今となっては最も高い数値が2000を突破している白兎さんについては話が別。こちらは違った意味で常識に当てはまることはなく、我が道を単独で爆走中。

 そんな独走している道の先にあるものは、焦がれた師が見せた白刃(はくじん)の剣。それに追いつくために、隣に居るアイズのために、少年は必死なのである。本日は、アイズと一緒に別所で鍛錬の最中だ。

 

 

「おのれリヴェリアアアアア!」

 

 

 そしてフィンと組んでレヴィスの相手をする、もう一名。こっちも必死な様相を隠さないガレスは突然とヘイトをリヴェリアに向け、一撃入れるべく雄たけびを上げて襲い掛かる。

 もちろん力比べならばレヴィスが圧倒的に有利であり、軽くあしらわれて振り出しに戻る。フィンのように一捻り加えた内容とパワーを加えればチャンスもあるが、その傾向は時間が経つにつれて薄れていた。

 

 とはいえ突然とヘイトはリヴェリアへと向けられており、何か理由があるのかと味方のフィンですら疑問符を浮かべている。「どうしたんだい」とレヴィスへの攻撃の最中に彼が問いを投げると、まさかの言葉が口に出された。

 

 

「お主だけ卑怯ではないか!いつも戦士タカヒロを独り占めしよってからに!!」

「……」

「ガレス……」

 

 

 いつものゴリ押しが僅かにも通じず時間ばかりが経過しており、目を見開いてやや乱暴に斧を振るう、やけくそモードの戦士ガレス。聞き手によってはアブナイ発言が見えており、汗だくの様相から、分かって口にしているかも怪しい程だ。答えを述べるならば、“独り占め”の意味が違う。

 ともあれ言葉を耳にしたリヴェリアは詠唱を行いつつも、なんだそれはと言わんばかりの呆れ顔で、外野に居る相方をチラリと翡翠の瞳で流し見る。そんな反応を示すだろうと目線を動かしていたタカヒロも視線を受け取っており、とりあえず今の言葉を否定するかと口を開いた。

 

 

「同性愛の趣味は無い」

 

 

 腕を組んだまま据わった表情で返される、呑気なコメント。むしろ「あったら困る」と言わんばかりのリヴェリアは、万が一に備えて並行詠唱を使用しながらも、未だ詠唱に集中していた。

 突然と湧き出た呑気さはさておき、これはこれで、シッカリとリヴェリアの鍛錬となっている。相手の攻撃を防衛者が防ぎきれるかどうかを見極める事など、注意を払うべきポイントは山ほどあるのだ。

 

 ただ詠唱をする場合や、単に敵の攻撃を避ける場合と比べても、意識を向けるべきポイントは増えている。防衛者がタカヒロならば完全に身を委ねきり一歩も動くことはないリヴェリアだが、此度はレヴィスが担当である為に、そうはいかない。

 少しでも隙を突くべく知恵を働かせるフィンが色々とやっているために、ヒヤリとしかける場面は数多く在る。結果としてレヴィスは全てを防いでくれているのだが、まさに4人全員の鍛錬となっているワケだ。

 

 

 もしベルとアイズが此処に入るとすれば、ベルのレベルが1つ上がってからだとタカヒロは考えている。繰り返すことになるが、今まで積み重ねてきたステイタスや対人戦闘技術(テクニック)があるからこそ、レベル7達の戦いに放り込んでも問題ないという判断だ。

 その時は例によってあの女神が来るために、自然とオッタルも参加することになると未来予知の真っ最中。そしてベルとアイズが攻撃側であり、オッタルがレヴィスと組んだ防衛側だ。今あるレヴィスの余裕が完全になくなるらしいのだが、真相は、その時が来てみなければ分からない。

 

 

 時間が過ぎれば決着はつくものであり、リヴェリアの詠唱が完了して戦闘終了。明後日の方向に放たれる魔法が合図となり、フィンとガレスは大の字で倒れこんだ。

 

 もしこれがアイズやベルならば介護を行うリヴェリアだが、ロキ・ファミリアの古参二人を相手には行わない。相手二人にプライドがあることを知っているがため、心配の心は持ちつつも、手を差し向けることは行わないのだ。

 とはいえ何もしないことはなく、持ってきていたタオルと水筒を首の横に置いている。二人もまた手だけで感謝の合図を示すと使い始めており、この辺りは付き合いが長いからこその阿吽の呼吸と言えるだろう。

 

 いくらか余裕があるレヴィスは、さっそくタカヒロに改善点を聞いている。まだ日が浅いこともあってクリティカルな内容が数点だけとなっているが、どれもこれもが腑に落ちる内容に変わりは無い。

 

 

 なお、全員が回復したのちに、タカヒロがリヴェリアを守って一対三の戦闘となっているのはご愛敬。ゴリ押しではなくテクニックでもって全てを防ぐタカヒロに対して雄たけびを上げ歯を食いしばって一撃を見舞い続ける攻撃側だが、メンヒルの壁は高く厚い。

 例え三方向からの同時攻撃だろうとも、逆にタカヒロから一方向へ打って出る。そして迎撃の瞬間に別方向へと“ブリッツ”を用いて強制的に方向転換して二方向目を防ぎ、最後、直後に残りの攻撃を無効化するのだ。

 

 こればかりは彼が持ち得る力のゴリ押しながらも、攻撃側の三人はリヴェリアとの距離を大きく離してしまうこととなる。その間にどれだけの詠唱が行われるかは、語るまでもないだろう。

 そして当の本人であるリヴェリアは一歩たりとも動いておらず、相手方の攻撃が向けられる点への対処については最初から思考を放棄中。相も変わらずタカヒロを信用しきっており、その背中を間近で見つめて惚気ている始末だ。

 

 

 なお、今の光景が実際の戦闘で展開されるとなれば、“無理ゲー”の度合は更に高まる事となる。タカヒロを攻撃した際に発生する報復ダメージやカウンターストライクによる反撃ダメージを考慮しなければならない為に、攻撃側の難易度は急上昇することになるのだ。

 勿論その壁を崩せぬならば、無情にも状況は更に悪化する点については言うまでもない。後方から、フルオプションとでも言わんばかりに全てのスキルの効能が乗せられた、レベル7による大魔法の一撃が飛来するのだ。

 

 

「――――焼きつくせ、スルトの剣……我が名は、アールヴ!」

 

 

 やがて時間は訪れ、無情にもタイムリミット。今日は酔いが回っていないので普通なイントネーションと共に、此度の戦いとは全く関係のない所に展開された魔法陣が輝き、彼女が持ち得る広範囲攻撃魔法の名が告げられた。

 

 

「な、なんじゃ!?」

「リヴェリアっ!?」

 

 

 大魔法“レア・ラーヴァテイン”、リヴェリア・リヨス・アールヴが持ち得る攻撃魔法の第二段階。発生する魔法陣内部の敵下より火山が噴火する如き炎で目標を焼き尽くす、広範囲それも全方位に対する最大威力の攻撃魔法だ。

 しかし、フィンやガレスが知る威力とは大きく異なる。レベル6の頃と比較して体感で5割増しとなっている一撃は、レベル7になった事を原因とするには程遠い。

 

 リヴェリアが持ち得るスキル、“愛念献身(Alta Amoris)(アルタ・アモリス)”。タカヒロと言う男(装備キチ)と共闘する際に魔法の威力が上がり、共闘を前提として並行詠唱を使わない場合には輪をかけて上回る、彼女だけが持ち得るレアスキル。

 男の方にも同じスキルが発現しているが内容が火力に関することである為に、此度においては影響なし。持ち得る2枚の盾を静かに降ろすと、エネルギー切れのフィンとガレスは後ろへ大きく倒れこんだ。

 

 

 こちらも杖を置いてタオルとドリンクを配るリヴェリアは、先程の再来だ。落ち着きの中で仲間の心配を忘れない姿は、彼女が持ち得る一つの長所だろう。

 

 

「……ありがとう、“九魔姫(ナインヘル)”」

「ああ」

 

 

 単調な会話となったものの、対象にはレヴィスも含まれる。倒れてこそいないが彼女も膝に手をついて肩で大きく息をしており、疲れは酷く溜まっているだろう。

 ちなみに汗一つ浮かべていないタカヒロへと渡されたのは最後ながらも、これは仕事を終えた彼女が真横のスペースに陣取る為。頭が回るからこそ、このような策士的な事も思いつくのだ。

 

 

 補給物資が配布されたこともあって、大きく息をしていた三人にも落ち着きが見え始める。さっそく今回の問題点を確認し合うも、ゴリ押しされた点については「相手が相手だし」という結論に納まり、一方で、がむしゃらに攻めた為に気づいた点を報告し合う。

 やがてレヴィスを相手した時との比較になり「やっぱりレベル10は強いなー」的な話になるのだが、なんとも平和な光景だ。少し前に剣を交え命を狙いあった者同士とは、到底ながら思えない。

 

 

「しかしフィン、良かったではないか。これで、闇派閥共に対する大きな戦力強化となったのう」

「確かに、切れる強力なカードが増えるのは喜ばしいね。でもこれ、どうやってロキに説明するかな」

 

 

 5人で集まって色々と意見を交わすも、「とりあえずロキには伝えて口留めしておけば良いんじゃないかな?」とはフィン・ディムナが発した呑気な最終回答。ようこそ神ロキ、神々の“胃痛・ファミリア”に新たな一名が追加された瞬間である。

 とはいえタカヒロからすれば、まだ戦力としてカウントするには程遠いとの厳しい回答だ。勿論それには明確な理由があり、最も大きな理由の一つとして、レヴィスが怪人から人の身に戻って間もない為だ。

 

 

「先日まで怪人(モンスター)だった頃と違い、今の魔石のない身体――――」

 

 

 と、理由を説明している最中(さなか)に言葉が止まる。新たな情景でも見つけたのか僅かながら口を開いて固まる姿は珍しいものがあり、何事かとガレスとフィンは視線を合わせるも答えは出ない。リヴェリアへと向けるが、こちらも珍しく同様だ。

 まるで何かを思い出したかのような、訳ありの様子。しかし数秒の後に続きが口にされ、レヴィスもまた同様の意見を返していた。

 

 

 午後については先の復習がてら軽い鍛錬に留め――――るつもりが復習ならぬ前衛3名が抱く復讐が目的となり、やっぱり各々が全力でタカヒロへと挑んでいる。勿論、結果はお察しだ。

 

 

 結局リヴェリアの回復魔法まで使ってコンディションを整え、夜は闇派閥の郊外拠点を潰しに行く為に、ここでお別れということだ。お馴染みのリフトが展開され、ロキ・ファミリアのメンバーは地上へと戻ってゆく。

 タカヒロも用事があるらしく、戻りは明日の夜になるだろうとレヴィスに言伝をして、一人ここでダンジョンの深層更に奥深くへと消えている。何が目的かは聞かなかった彼女だが、言葉を受け取ったヘスティアの表情が曇ったのは数多の前例がある為に仕方なし。

 

 

 しかしヘスティアは、ひたすらに前を見て戦い続ける。最近は処方される胃薬の量が増えた気がするが、こんな戦いに負けてなんかは居られない。戦っている相手が身内ではないかと疑問符が湧きかけるが、そんなことはないと否定した。

 善神ヘスティアは、今日も爆弾を抱えて戦い続ける。オラリオが存続し、彼女が大好きな子供たちを守る為。オラリオが今まで以上に繁栄し、新たな歴史を刻むために。

 

 

 

 なお。

 

 

 

 歴史を刻み守ることになるだろう人物が例の彼とはいえ、“仕方ない”では済まされない。特定の神々にとっては隠蔽(揉み消し)に全力を注ぐ、胃痛の種(オラリオの歴史)でもある。

 

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