その迷宮にハクスラ民は何を求めるか   作:乗っ取られ

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174話 アレは何者

 

 力なく椅子に座る薄緑髪のエルフの少女、リュー・リオン。彼女は、ほんの1,2分間に起こった事を未だ受け入れることが出来なかった。

 

 彼女の過去を振り返ると、いつ何時も明るい道を進んできた訳ではない。それでも、ここ数年は酒場で女給として勤め上げ――――まだまだ至らぬ所はあるものの、充実した日々を過ごしていた。

 突然と来なくなった常連も少なくはない。恐らくはダンジョンで何かあった事は察するが、それがオラリオの日常だ。ざっくばらんに表現するならば“何が起こっても不思議ではない”ダンジョンの上に存在している以上、この街においては、何が起こっても不思議ではない。

 

 

 それでも。そんなオラリオですら、二度と耳にすることは無いと思っていた。

 

 

 ダンジョンにおける災害悪、ジャガーノート。5年前に起こった悪夢がフラッシュバックとして彼女の全身を支配し、当時の光景が鮮明に蘇った。

 少女と闇派閥の極一部、そして“取引”を行ったギルドの裏方的な人物――――具体的に言えばウラノスとフェルズ以外は知らない筈である、モンスターの名前。まさか、こんなところで耳にするとは思ってもいなかった。

 

 

 

 

「リューさん、大丈夫ですか?」

「……えっ?」

 

 

 

 

 今このタイミングで少年の声を耳にするとは露ほども思っておらず、掛けられた優しい声を耳にして、項垂れていたエルフの頭が静かに上がる。紺碧の瞳に映る深紅の瞳は、彼女を元気づけようと声に似た優しい表情を浮かべている。

 深紅の瞳に映るエルフらしい整った顔は、いつもの凛々しい表情は欠片もない。無自覚なのだろうが眉には力が入ってしまっており、内側から湧き出る苦痛に耐えているかのようだ。

 

 

「顔色、青いですよ。ゆっくり休んでください」

「クラネル、さん……?ですが、貴方は今……」

 

 

 それ以上は口にできず、リューは横目で、ベルの少し後ろに立つアイズを見る。特定の者を除いた時以外では相変わらず薄い表情を見せる彼女の表情は、傍から見れば何を考えているのかが分かりにくい。

 ともあれ、流石にやって欲しくないことは言葉や行動に現すだろう。そう考えた彼女は、二人して己を心配してくれているのだと判断した。

 

 運ばれてきたドリンクと共に、ベルとアイズが同じテーブルの席に腰かける。「私の分も?」と言うようにミアを見上げたリューだが、これがベルとアイズからの奢りであることを視線にて知らされ、感謝を示しつつ口を付けた。

 暖かい店内ではあるものの、今の彼女にとって熱のある飲み物は身に染みる。ベルやアイズの気遣いとも相まって、リューの心に届いていた。

 

 リューとは初対面ではないベルだが、それはアイズもまた同様だ。しかしながら店内において店員と客と言う立場を超えて絡んだことは無く、会話などもっての外である。

 薄緑色の髪を持つ彼女だが、それは染めた故のことであり実はアイズと同じく地毛は金髪。そして同じ地毛の色を持つこの二人は、実は数年前の時点で互いに面識を持っているのだ。

 

 

 もう8年前になりつつある、闇派閥が暗躍した死の七日間、暗黒期。互いに互いを闇派閥の者だと勘違いして戦闘となってしまったのだが、その時の戦闘は、リューの脳裏にも残っている。

 当時、互いのレベルは3で同等。厳密に見れば、冒険者だった期間も含めてリュー・リオンの方がカタログスペックにおいて上回っていたことだろう。

 

 しかし結果は、引き分けに終わっている。互いに天性の才能に匹敵するセンスを持ち得る二人だが、日頃の生活が戦闘に特化しているアイズの地力が、リューに追い付いた格好だ。

 その後は互いに誤解も解けており、特に敵対することもなく今に至る。片やエルフ、片やヒューマンということで見た目の変化量もアイズに軍配が上がるが、それも種族差がある故に仕方のない事だろう。

 

 

 一応、念のために付け加えるが。“どこが”ではなく全体的な見た目、すなわち第一印象の話である。

 

 

 さておき、あれから7年の月日が流れた故に今日がある。言葉にすればたった二文字かもしれないが、長寿であるエルフからすれば僅かな期間かもしれないが、“差”が生まれるには十分な時間と言えるだろう。

 アイズ・ヴァレンシュタインは止まらず走り続けたが、誰しもが、そう易々と進み続けることなどできはしない。事実5年前から、リュー・リオンという“冒険者”は止まってしまっていた。

 

 

――――何も、誰も守ることが出来なかった己に価値などない。

 

 脳裏に響く、己が下したリュー・リオンの価値。そう決めつけた一人の少女の脚は怯え続け、悔み続け、己を呪い続け。

 結果として、一歩たりとも前へと出ることはなかった。口に出すことで悩みを打ち明けることもできず、今も一人悩み続ける。

 

 復讐を終え、仲間を失ったという虚無(事実)だけが心に残った。ポッカリと空いた心を埋めてくれる黒髪の少女の口悪く厳しい言葉も、赤髪の団長の前向きで元気な言葉も、桃色の髪を持つ小さな少女が向けてくれる率直で鋭い言葉も、もうこの世にはどこにもない。

 どれだけ宿敵を殺そうが、死んだ仲間は蘇らない。それでもリューは、そうせずにはいられなかった。

 

――――正義を捨てなさい。

 

 主神アストレアに言われたこの言葉もまた、彼女に暗い影を落としている。5年が経った今でも、リューは言葉の意味が分からない。

 言葉の通りに捉えようとする程に、ますますもって謎が深まる。主神に対して絶対に言いたくないが、「意味が分からない」と返すべきかと何度も葛藤した程だ。

 

 

「正義とは、一体、何を指すのでしょうか……」

 

 

 ひとしきり時間をおいて、彼女の口から出てきた言葉がコレだった。直後、具体的にどことは言わないが、かつて正義を掲げたファミリアに所属していたことを明かしている。

 そして5年前に、自分を除く仲間の全てをダンジョンで失ったことも。成すすべなく殺されていくところを見ることしかできず、結果として自分だけが生き残ったことを、小さな声で告げていた。

 

 耳にしたベルとアイズは顔を合わせるも、幼い二人は答えの欠片も持っていない。その経験がないベルは、状況を考えるだけで胸が張り裂けそうな程に苦しんでいる。

 それでも、彼女が“ジャガーノート”という言葉から感情を抱き。こうして悩み下を向いている理由なのだとベルは理解し、せめて何か言葉をかけてあげることが出来ないかと考えを巡らせた。

 

 

「悩みは、わかるよ。その言葉は、難しい」

 

 

 ベルの予想に反して、アイズが先に口を開いた。聞いた言葉に対してこのように口にしかけたリューだが、アイズの沈んだ表情を目にして言葉が続かなかった。

 どこか、かつての己と似ている悲しい瞳。過去に囚われ、未だ抜け出せない積み荷を背負う姿を、リュー・リオンは誰よりも知っている。

 

 

「私も……両親を、モンスターに、殺された。ファミリアの皆を、守れ、なかった」

 

 

 それだけではない。散っていった、ロキ・ファミリアの仲間達。仲間を守る為に強くなるという思いを掲げる己が守ることのできなかった、掛け替えのない仲間達。

 長い睫毛を伏せて表情に影を落とし、僅かに唇を噛むことで悔しさを滲ませる。その肩を抱えて抱き寄せようとしたベルが僅かに手を伸ばすも、それは道半ばで止まってしまった。

 

 何せ、アイズに対してはできることが、己が助けたいと思うリューに対しては出来ないのだ。アイズに対して申し訳なく思う少年もまた、膝の上で拳を作り表情を沈ませる。

 

 

「私もベルも、答えは、持ってない。だから……聞いて、みる?悩んでいるだけじゃ、何も進まないよ」

 

 

――――それは、誰に。

 

 そう問いたかったリューだが、声が出なかった。そんな答えを授けてくれる人など、神ですら居ないだろうと思っていたから。

 

 

「少し、前に……私の、難しい質問にも、答えてくれた」

 

 

 故に、空色の瞳はアイズ・ヴァレンシュタインへと向けられる。相変わらずリュー自身と似て何を考えているか分からない薄い表情ながらも、金色(こんじき)の瞳がしっかりとリューを見つめ、普段と僅かに違う、少し柔らかなその口から言葉が出された。

 

 

「ベルに、私にとっての……優しい、“お父さん”に」

 

 

====

 

 夜と昼の光景が交わっているオラリオの街並みだが、道行く者たちは活気に満ち溢れた様相を見せている。派手な行動を好まず他人とはあまり関わらない者が多い筈のエルフですら、大半が陽気な表情を振りまいているほどだ。

 向かう先は、どこかの酒場なのだろう。もしかしたら、俯き加減で歩みを進めるエルフが務める豊饒の女主人かもしれない。そんな場所で、一緒に居たファミリアの者と共に、今日得た稼ぎを祝うのだ。

 

 いや、それも少し違うかもしれない。ダンジョンと呼ばれる地獄から生還できたことに対し、精神が娯楽という名の安息を求めている。

 リュー・リオンにとって、そのことは痛い程に分かる内容だった。かつてはファミリアの者達と40階層にまで進出したこともあるために、深く潜るに従って増える恐怖もまた、未だ彼女の心に焼き付いている。

 

 その最高到達階層の、たった半分ほど。死地で出会った、40階層とは比較にならない程に強烈な恐怖、死の気配。

 だからこそ、その存在を従えているなど正気とは思えず、受け入れることができていない。いつかは乗り越えなければならない存在だと、怯えつつも心の片隅では理解しているつもりだが、どうにもトラウマを克服できないのが今迄における彼女の人生だ。

 

 

「……クラネル、さん。そもそも、ジャガーノートとは、どこで出会ったのですか……?」

「え、えーっと、僕じゃなくて……連れてきたのは、師匠、ですね」

 

 

 師匠という言葉に、リューは少し考えた様相を見せたが答えはすぐに取り出せた。トゲトゲのフルアーマーを身にまとった、フードを被った人物を思い出す。

 タカヒロという、一人のヒューマン。ベルが豊饒の女主人へと来るときは高い確率で共に居た、身にまとう鎧以外はとりわけ特徴のないヒューマンの青年。

 

 その姿を思い浮かべながら、アイズ、そしてベルと共に、当該人物が今いるらしいヘスティア・ファミリアの新しいホームへと足を向ける。新築の話は聞いていたリューだが、ここへ来たのは今回が初めてだ。

 

 ベル・クラネルの駆け出しの頃を知っている、数少ない一人。右も左も分からずなけなしのヴァリス片手に「冒険者の間で有名」だったらしい豊饒の女主人へと訪れて、一般的な店と比べて遥かに高額だったことに驚愕していたことをリューはよく覚えている。

 その実、まさに右も左も分からず虎穴に入ってしまった兎の如く。実際のところ猫人(キャットピープル)の給仕約一名が少年の尻を狙いだすという危ない事案も発生しかけたこともまた、豊饒の女主人においては最近の歴史の一コマだろう。

 

 刻まれた歴史において、タカヒロがロキ・ファミリアとひと悶着あった点についても同様だ。未だあの仲人狼(ベート)が吹っ飛んだ理由が分かっていないのはリューもまた同じであり、青年のレベルを測り損ねている。

 己を含めた全エルフが敬拝する対象リヴェリア・リヨス・アールヴと恋仲にあるらしい、謎のヒューマン。かつて「リヴェリアと並ぶには程遠い」と言ってしまったことを思い出し、少し冷や汗を覚えている。

 

 

――――今日、何か、新しいことが分かるのでしょうか。

 

 

 ヘスティア・ファミリアのホームを視界に捉え、そのような事を思った矢先。もう少し大きければ近所迷惑となるような、刃物と鎧が鳴り合わさるような音が聞こえてくる。

 

 

「中庭、かな?」

「うん、そうだね」

 

 

 一行は、金属がぶつかり合い甲高い音が鳴り響く中庭へと移動する。安全だと分かっていても、かつてのトラウマとの対面を目前にしてリュー・リオンの鼓動は強く速く脳裏に鳴り響いていた。

 近づくにつれて、一層のこと甲高く激しく鳴り響く金属音。そこに居るモンスターは目標に向かって攻撃を続けており、ベル達が中庭へ入ってきたと時を同じくして、盛大な雄たけびを発する事となった。

 

 

 

 

 

■■■■■■■―――――(なんでゼロダメージなんだオラアアアアン)!!』

 

 

 

 

 雄たけびと攻撃が向けられているのは、オラリオにおける“一般人”枠。親の仇と言わんばかりのジャガ丸だが、攻撃を向けている相手は、仏の如く清らかな心で受けている。

 本日の昼下がりに、茹る相方を堪能できた事もあって激レア陽気な表情で。95階層産ジャガーノート、その攻撃力2倍バージョンが全力で放つ“破爪”による攻撃をブロックせず真正面から直撃を受けた上で平然としている、一般人らしい何か(善良な一般市民)の姿があった。

 

 

「はは。気迫が足りんぞ、ジャガ丸」

■■■■■(Powerrrrrrrrr)!!』

 

 

 そして部位や効率など無視して、傍から見てもヤケクソに攻撃し続けているのは紛れもなく災害悪であるジャガーノート。攻撃を振るうたびに空気が切り裂かれる音の残響が届いている事実は、ジャガ丸が繰り出す攻撃速度の速さを物語っている。

 レベル6のアイズが目で追いきれぬ程、そして無数に捉えてしまう程に過密な刺突の雨。しかし攻撃が命中しても僅か一ミリも動かずカスリ傷の一つもつかない防具の数々に対し、ジャガ丸は諦めと呆れと同時に憤怒していた。

 

 

 ――――アクティブスキル、“ブレイド バリケード”。盾に付与することができるレア属性コンポーネント、“ミュルミドンの標章”によって付与されるアクティブスキルだ。

 刺突攻撃に対して、 同種の報復をできる力を防具に吹き込む。発動中は刺突耐性が30%上昇するのと同時に、刺突耐性の“上限値”が5%上昇する効果を備えている。

 

 だからこそ、完全なる無効化。ヘファイストスの装備によって90%にまで高められた刺突耐性は、このアクティブスキルによって95%、そして“メンヒルの防壁”や固定値のカットによって実質100%の値に達しているのだ。滅多に達成できない事柄故に、やたら陽気な様相を振りまいていたワケである。

 とはいえそもそもにおいて、スキル未発動時においても90%もカットしている時点でカスダメと同じこと。当該スキル以外の報復ダメージは無効化しているとはいえ、攻撃中であるジャガーノートへと一方的に報復ダメージが入る結末だ。

 

 時間にしてどれほどが経っただろうか。スキルが切れると共にタカヒロも攻撃の殆どをブロックするか受け流す姿を見せており、傍から見れば非常に実戦的な訓練となっている。

 その実、そう言えば戦闘力を知らなかったということでジャガーノートの実力テストを実行しているという内容だ。あまりにも攻撃が通じないのでジャガーノートがムキになっており全力を発揮している点は、仕方のない事と言えるだろう。

 

 やがて今度はタカヒロ側も、ジャガ丸の一撃一撃に合わせる形で盾を使って器用にブロック、攻めているつもりがジリジリと押し返され始めたジャガ丸は、モンスターながらも知恵を絞りつくして応戦中。

 だというのに、突破口は僅かな光の気配すらも見えてこない。一度距離を取るべく、約20メートルの距離を瞬くより早く後退するも、突進スキルによってゼロ距離に戻されるという詰み具合。

 

 なお、タカヒロが受け身に回って僅かに報復ダメージを有効化してみればジャガーノート側が大ダメージを負っている。ポーションを使用して続行するも、あまり結果は変わらない。

 とはいえ、近接物理攻撃をトリガーとして発動する報復ダメージは、ジャガ丸にとっての天敵そのもの。ヘルスに補正がかかっているとはいえケアン基準でも耐久力は高くないのだなと、人間らしい何か(平凡な一般市民)は納得した様相を見せていた。

 

 

 

 そんな光景が行われている“竈火(かまど)の館”へと、豊饒の女主人からやってきた若者三名。現実を目にした上で否定したい光景を目の当たりにして、苦笑もしくは開いた口が塞がらない。

 三名はオラリオにおいても強者だからこそ、ジャガーノートが放つ攻撃の威力は手に取るように分かってしまう。だからこそ、ブロックしたならばともかく、成すがままに受けてノーダメージで耐えるなど、尋常ではない状況なのだ。

 

 

「く、クラネルさん……ジャガーノートの攻撃を真正面から受けて平然など……な、なんなのですか、“アレ”は」

「“アレ”は……比べちゃ、いけない。頼りになるけど、自信を無くす」

「ちょっと基準がオカシイところは否定しませんが、師匠はモノじゃないです……」

 

 

 こちらもこちらで、もはや人間扱いですらなかった。彼女の心に植え付けられたトラウマを軽く上回るオカシな存在はさておくとして、目を見開くリュー・リオンの記憶に有るジャガーノートという存在は圧倒的なモノなのだ。

 今再びあの時に戻って戦っても、勝てるかどうかは非常に怪しい。むしろ負ける確率の方が非常に高く、だからこそ、ソレに対して圧倒的な対応を見せる存在を受け入れることができていない。

 

 青年に挑むジャガーノートを目にしたアイズは、どこか師に挑むベルの姿と重ねている。モンスターと人間という違いはあれど、一心不乱になって挑む姿は同じように受け取れた。

 

 

 愛しい相方が口にした、自分たちに危害を加えないモンスター。テイムされたモンスターの存在こそ知っていたアイズだが、そもそもにおいて、こうしてモンスターを相手に面と向かって対峙するのは初めての事である。

 

 

 とはいえ、タカヒロ側が三人に気づくのも時間の問題であった。攻撃を中断したジャガ丸と共に近寄るも、来訪者のうち一名が目を見開いて完全に腰の引けた反応を見せたために足を止めることとなる。

 試しにタカヒロ側だけ一歩近づいてみれば反応を示さないために、原因がジャガ丸側にあると判断。エンピリオンのガーディアンを一体だけ召喚し、鍛錬の続きとして相手をさせている。

 

 さも当たり前のようにジャガーノートと打ち合う召喚獣のような何かを目にしたリューは、ベルの肩を両手で掴んで答えを求める。しかし生憎とベルも、エンピリオンのガーディアンについては聞いていない。

 故に苦笑で返すしかなく、そのうち近付いてきたタカヒロから「何か用か」と言葉が掛けられた。正直なところ聞きたいことだらけとなった三名だが、ともかく先ほど決めたことを問うために、アイズが静かに口を開いた。

 

 

「正義と来たか……また随分と、小難しい議題だ」

 

 

 教えてほしい内容の単語が出てから、数秒おいて。僅かな溜息と共に思う本音が、青年の口から言葉として出された。

 なにせ、この手の答えに“絶対”や“正解”は存在しない。傍から見ればどれもが正解であり、そのどれもが間違いとなるのだから、厄介な部類に入るだろう。

 

 なんだか以前にも、フィンに対して似たような事をやったことがあるなと思い返したタカヒロ。しかし、相手が己を頼ってくれていることも事実である。

 故に、あくまでタカヒロという男が抱いている考えではあるものの。それを耳にすることで何か参考にでもなればと、青年は静かに口を開いた。

 

 

「答えではなく一つの例、自分程度の考えでいいならば口にする事もできるだろう。しかし、なぜそのような疑問を抱いたか、経緯(いきさつ)を教えてくれ」

 

 

 相談者が抱いているであろう悩み、そして根底にあるだろう問題点。それを知らなければ、マトモな答えなど返せはしない。

 ここに来た以上は、相談する気はあるのだろうとタカヒロは捉えている。暫くして、リューの口から回答が返された。

 

 

 時間が遅いこともあり、ヘスティア・ファミリアに迷惑をかけるために明日にしてほしいというのが第一声。続いては、場所についての内容だ。

 

 場所はダンジョン内部の18階層、“迷宮の楽園(アンダーリゾート)”。そのうち小高い丘になっている、とある場所へと至る場所。

 そこまでの道を口頭で説明するリューだが、タカヒロは話の途中、ギルドが発行している地図を持ってきた。場所と共に時間が指定され、一行は、そこで待ち合わせることとなる。

 




シリアス君、次話こそは。

■ミュルミドンの標章
・"最も恐れ知らずのバトル ロードに 授けられた パワフルな シンボル。"
・(盾に適合)
・レア コンポーネント
+120 ヘルス
+25 防御能力
-15% シールド回復時間
180 物理報復
付与:ブレイド バリケード
■アクティブスキル:ブレイド バリケード (アイテムにより付与)
・刺突攻撃に対して、 同種の 報復を 攻撃者に できる力を 防具に 吹き込む。
62 エナジーコスト
24 秒 スキルリチャージ
8 秒 持続時間
+90% 刺突ダメージ
+30% 刺突耐性
+5% 最大刺突耐性
+424 物理報復

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