本体500円、DLCセットのGrim Dawn Definitive Editionが3000円となっております。
触り程度をやってみたい方は前者、ガッツリという方は後者がお勧めです。
それにしても、春に始まった本小説ですが、もう4か月目の折り返しなのですね。
皆様本当にご愛読頂きありがとうございます。これからもよろしくお願い致します。
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もう、言葉にできないようなイラストを頂いてしまいました。
GrimDawnのメイン(?)である武具の質感が、素晴らしいの一言。特に盾がヤバい(語彙力)
ちなみにですが、これ本小説(=ゲーム内部)の主人公装備と、フードの一部を除いて全く同じというクオリティの高さ。
ご自由にお使い頂ければとのことでして、せっかくなので挿絵として使わせて頂きます。
諸事情でお名前のご記載NGとのことで、この場をお借りして改めてお礼申し上げます。
対峙する二つの勢力。ニヤリと口元を歪めるオリヴァスの言葉で、今にも飛びかからんとばかりにわらわらと湧き出す無数の
一律に険しい表情を浮かべるヘルメス・ファミリアの面々は窪んだ崖を背にし、少しでも防衛する範囲を狭めている。相手の集団を見据える2枚の盾を持った戦士がどのようなことを考えているかは不明ながらも、各々が、戦いを少しでも有利に運べるように工夫しているのだ。
比較的損傷の少なかったパルゥムの3名は自発的に、最大戦力であるタカヒロを援護するべく後ろに並ぶ。持ち場は正に最前線であり、突破したモノは手負いのヘルメス・ファミリアが仕留める算段だ。アスフィの指示により、後方でも戦力が分配されている。
最前線には、ヒューマン1名、パルゥム3名で結成された局地的な4人パーティー。一度だけ背中越しに振り返った、装備に目ざとい青年は、3人のうち一人が持つ槍の存在に気が付いた。
「ほう。それは、どこぞの
「ああ、そうだ。勝手にパルゥムの英雄になってくれやがった、
表情と共にぎゅっと槍を握り締めるポックは、今一度、己が焦がれる存在を思い出す。自分自身が使う武器のことを、こうして具体的に口にされたからだろうか。
それとも、ロキ・ファミリアであるアイズ・ヴァレンシュタインが、リヴェリア・リヨス・アールヴが来たからだろうか。ポックの心に、消えぬ一人の姿が浮かんでいる。
しかし数の差は圧倒的であり、生まれる緊張と恐怖の強さはそれ以上。喉はカラカラに乾き、生と死が隣り合わせになったことが否が応でも認識させられる。
目を閉じて、払い除けるように首を振った。僅かに震える手足に鞭を入れ、なにくそと言わんばかりに、目の前の男に対して咆哮する。
「パルゥムだからって馬鹿にすんなよ。こんな場面でも、俺達だって、少しは役に立てるはずだ」
「馬鹿にする暇があれば君達の力も使う予定だが、自分は未だ何も知らない。威風ある勇気をもって最前線に並んだ、二人の戦士と一人の魔導士は何をこなせる」
言葉を耳にし、ドクンと3人の心が脈打つ。周囲の音は急速に小さくなり、今の一文が再び耳に響き渡る感覚に見舞われた。
この男は、自分達をパルゥムとして扱わない。戦いの場に居る一人の戦力として、しっかりと数えており。それどころか、勇気を持ち合わせた立派な戦力であることを褒め讃えている。
モンスターの群れを相手に微塵も臆することなく直立し背中を見せる姿は、容赦のない恐怖にかられる仲間に対して慰安を与えるかのようだ。同時に付近の仲間を鼓舞するかのようでもあり、傍に立つ三人は、勇気ある偉業を起こさずにはいられない。
そのような者にパルゥムとして譲れぬ1つを認められ、怯えていた心が心底奮い立たされる。小さなその身でも出来ることがあるはずだと、この24階層というバトルフィールドにおける戦士としての在り方を問われていることは容易に分かる。
ならば、応えずには居られない。たとえ青年からすれば微かなことだろうとも、正直なところ怖さが付きまとう内容でも、やってやるさと
ポックの姉であるポット、そして魔導士ながらメリルにおいても同様だ。各々が英雄と掲げる
「アンタからすると笑い事かもしれねぇが……一対一のサシなら、オレや姉貴だってあの花を屠れるさ!魔導士のメリルだって、詠唱が終われば5-6体ならまとめて葬れる!」
「生憎だが、笑いを取るのには向いていない内容だ」
ああ言えばこう言われ、ともかく己の自虐を受け取るつもりはないようだ。仁王立ちの姿勢は崩さないながらも少しだけ肩越しに振り返り、後ろに並ぶ冒険者が見せる姿を確認する。
いつの間にか他の仲間達も武器を手に立ち上がっており、決意の程度は全員が同じと言って良いだろう。勇気はあるかという青年の問いに答えるように短ランスを構え、ポックは覚悟の程を示している。
パルゥムならば名前を知らぬ者は居ない、とある英雄。その姿に焦がれ、目指し、挫折しかけ、ひょんなことから実年齢を知って「先は長い」と空を仰ぎ見た、かつての自分を思い出す。
たとえ英雄と同じ年齢になっても、届くことは雲をつかむようなモノだろう。だからこそ覚悟だけは負けぬようにと、当時の彼は、まずはレベル2になるために気合を入れ直した。
目指すその先に、何度も夢見た背中があるからこそ。たとえ所詮はパルゥムと馬鹿にされようが、ポックとポットの姉弟、そしてメリルは、止まることなく茨の道を走り続けている。
「タカヒロ……?」
直後、一度だけ、それも1秒に満たない時間だが、青年が肩越しに振り返った。目線の先には、恐らく己の姿があっただろう。そう感じ取った彼女からすれば理由は不明ながらも、青年が再び振り返る様相は無い。
あと数秒も経たぬうちに、相手の突撃が始まるだろう。その気配を察知したタカヒロは、無慈悲にも優劣を付けるならば、最も守るべき存在の位置を再度確認したというわけだ。
「やれ、
「総員、剣姫が来るまでここを死守します!ポックとポットは彼の援護を、その他は後方で魔導士の護衛です!負傷した場合は後方支援に徹してください!」
洞窟を揺るがす地響きと奇声と共に、400ほどの数が居る
いくら己の拳を防ぐほどの盾とは言え、この数を前にしては手数が足りない。そう認識しているオリヴァスは余裕の笑みを浮かべており、事の結末を予測して勝手に一人で盛り上がっている。
しかし温い。かつてケアンの地において
彼が左右の手に持つ、それぞれの盾。基本として右手の“全く普通の盾”が攻撃用であり、“性能120点、見た目0点”という彼の美学から幻影によって見た目が変更されている左手の“オーバーローズ・コロッサル フォートレス・オブ ソーンズ”が防御用だ。
とはいえ、それはもちろん基本の運用。状況が変われば運用も変わり、訓練を積んだウォーロードの手に渡れば、盾はただの破れぬ防御というだけではなく手ごわい武器でもある。相変わらず微かな雄叫びすらもない攻撃と防御行動は、まるで機械的な処理が行われている様相だ。
レベル4のアスフィですら目にも留まらぬ速さで振るわれる“左手”による盾の一撃は
――――装備固有である反撃スキル名、“仕返し”。相手の攻撃を受けることに使用された“全く普通の盾”から衝撃波が生じ、近くの敵へと復讐する。
ブロック時において20%の確率で発動する範囲スキルであり、報復ダメージも乗せられる強力な一撃だ。更にはヘイトを稼いだり相手の素早さを3割もダウンさせる追加効果を持つ、乱戦にうってつけの反撃スキルである。
「す、すげぇ……」
「だ、打撃は効かないんじゃなかったの……?」
光景を後ろから目にするポックは、絶対的な身体能力の差による、己にとって何の役にも立たない戦いを見ることになるかと考えたことをすぐさま恥じた。確かに個々の力においても黒いアーマーの戦士はモンスターを圧倒しているが、そこには確かな狡猾さが存在する。
青年が持つ“防御能力”から発揮される、激戦の中でも生きる技。巨体である花のモンスターの一部をあえて生かし、その更に一部を蹴飛ばしたりして後続の進路を制限し、1-2秒の隙をついて効率的に処理する立ち回り。
更には死兵が身を捨てて向かってこようとも、僅かな焦りも見せはしない。爆発による炸裂の範囲を完全に見切っており、先ほどのように進路を制限したエリアへと蹴り飛ばすことで一帯を処理するような“使い方”を見せている。
相手が人間だろうが、青年にとっては関係が無いようだ。扱いはモンスターと同じくモノ同然であり、殺すことに対して何ら抵抗が無いように見受けられる。
如何に数で劣ろうとも、行えることは無数に在る。そのことを見せつけられたポックの中で、自分に何ができるかと、なんとかして何かしてやろうと野心が芽生える。
パルゥムと呼ばれる同種族における
数値だけを見れば、たった一匹。しかしながらその一匹を処理しないという過程は、青年からすれば非常に高い処理効率を生む内容なのだ。
「出番だ、やるぞ姉貴!」
「わかったよポック、サポートは任せて!」
一匹を任されたことを理解し、パルゥム姉弟の緊張が最大限に強くなる。できるはずだ、やってやるさと二人は己の心を奮い立たせ駆け出した。あの戦士が任せてくれたのだから、何としてでも応えるべく槍を持つ手に力を通わせる。
相手は強者、下手な駆け引きは出来はしない。故に一撃でもって相手の口に飛び込み、団長が示してくれた、上顎奥にある魔石を穿ちにかかる。
小さな身体が、大きなモンスターの口に吸い込まれる。しかし瞳は喉奥にチラリと見える魔石を捉えて離さず、勇敢なる者が勇者だと言うならば紛れもない勇者が持つ短槍は、狂いのない狙いでもって確実に突き出される。
焦がれた存在に成るために、たとえ誤差程度の結果しか生まれなくても鍛錬は絶やさなかった。ステイタスを更新する際にも僅かしか上がらない日々に涙を流したことも多々あるが、それでも間違いなく積み重ねてきた己の功績。
たとえ僅か数%の能力向上でも、それは土壇場になって応えてくれる。そこのハクスラ民が完成されたはずの装備を更新する理由の1つであり、オラリオにおいては、冒険者がダンジョンへもぐる前にステイタスを更新する理由の根底と同一であることに他ならない。
「オオオオオッ!!」
生きるか死ぬか、チャンスは文字通りの一度切り。針の穴に糸を通すような正確さが要求される一撃を、決して外すまいと瞳を見開き活を入れる。
小さな身体を活かして相手の牙をかいくぐり放った一撃の結果は成功であり、彼の勝ちだ。魔石を穿つと同時にモンスターは灰へと還り、砕け散る魔石の輝きは、彼の勝利を祝福しているようにも受け取れる。
しかし、攻撃した後の事を考えていなかった。勢いあまって前方へと転がるも、そこはモンスターという波の襲い掛かる打ち際だ。複数が彼に狙いを定め、小さな身体を噛み千切らんと牙を向く。
無論、青年の広い視野は、その結末を見逃さない。オーバーガードを用いて強行突破してからカウンターストライク、そして“仕返し”を発動させて一帯を薙ぎ払い、その隙にポックは後退に成功した。
「た、助かりました!」
「見るに値する勇気と覚悟だ、次に備えてくれ。小さな魔導士、5秒後に右方より来る4体を任せるぞ」
「メリルは詠唱中だから代わりに返事!詠唱もすぐ終わるわ、任せておいて!」
「ついでに確認するが、大きい方は何をやっている」
今まさに詠唱中だ。と言いたげに、余裕綽々の背中に物言いたげな目線を飛ばすリヴェリアは、このような場面においても煽られている。そういった意味では、二人らしい光景だ。
魔法とは、技の威力と引き換えに詠唱が長くなる傾向がある。レベル差もあれどメリルとリヴェリアでは技の威力が雲泥であるために、後者の方が詠唱に時間がかかるのは仕方のない事だ。
タカヒロの言葉通りに現れた4体に対し、メリルは攻撃魔法を放って粉砕する。その後に続く3体もヘルメス・ファミリアの盾役がせき止め、アスフィを筆頭に斬撃を行える者達が処理している状況だ。
後ろから光景が見えているリヴェリアは、己から直線的に放たれる魔法“ウィン・フィンブルヴェトル”では、防衛陣形を一度崩さなければならないと判断。この場において、それは悪手であろうと判断する。故に――――
「閉ざされる光、凍てつく大地。吹雪け三度の厳冬、終焉の訪れ――――間もなく、
ここに、詠唱が繋がれた。
怒涛の勢いで迫り圧力を緩めない大軍を前に選択したのは、攻撃ではなく更なる詠唱。此度の戦闘は相手の数が数だけに、ロキ・ファミリアにおけるパーティーならば、きっと“ウィン・フィンブルヴェトル”を放っていたことだろう。
行わなかったのは、己の前方を中心として立ち回ってくれる、頼もしい背中が在るがため。その存在を目にするだけで、攻撃を受ける不安など生まれた傍から消えている。絶対の安全が確保されると確信できるからこそ、彼女は並行詠唱無しで己の仕事に集中するのだ。
そんな相手であり、てっきり先程と同じく自分ごと巻き込むようにぶっ放してくると思っていたタカヒロだが、「ほう」と小さく呟き、足止めの仕事に戻っている。練度の高い魔法攻撃の準備に応えるように迫る敵のほとんどを引き付けており、盾の役割を成すべく立ち向かう。
さらに高まる魔力の量は、もはや規格外の言葉すらも足りぬ程。ラスボスを見る目でリヴェリアを横目見るメリルは、首の皮一枚で繋がった自制心を保ちながら、なんとかして己の攻撃に集中している状況だ。
二つ名を、
“詠唱連結”と呼ばれる、ハイエルフである彼女にだけ許された特殊な技能。詠唱を繋ぎ、“短文”・“長文”・“超長文”の3段階において効果と威力を変動させることができるのだ。
スロットに在る魔法は、攻撃・防御・回復の3種類。それぞれにおいて先ほどの詠唱連結は適応されるため、それぞれにおいて3段階の魔法が存在する。
「――――焼きつくせ、スルトの剣……我が名は、アールヴ!」
故に、神から与えられた二つ名を
たった一度の攻撃も受けること・避けることなく、詠唱は完成。魔力と連動するように、翡翠の瞳に力が篭る。僅か1つの問題を除いて、完璧と言える大魔法が放たれようとしていた。
「……一応聞いておくが、なぜ自分の下にある魔法陣も光っている」
「“レア・ラーヴァテイン!!”」
冷静かつ呑気な考えが浮かぶタカヒロは念のためにパルゥムの3人が居る地点へ飛び退くと、火山の噴火宜しく、激しい火柱が食糧庫全体を焼き尽くす。やっぱり自分ごと巻き込むつもりだったのかと、軽いため息が漏れていた。
そんなことを言いたげにフード越しに顔を向けると、“君ならば避けられるだろう”と言いたげな目線が返される。実際のところ直撃しても何ら問題ではないのだが、タカヒロとしても、何かと言いたくなる状況だ。
しかしながら魔法の威力と範囲は確かであり、天井に生えていた開花前の
図体の大きさ故に
盛大な爆発音と共に食糧庫の壁が破れたのは、そのタイミングであった。吹き飛ばされたように宙を舞い地を転がるレヴィスと、爆発地点に立つ一人の影。
このような極地でも光り輝く、眩い姿。24階層へとやってきた二人の尋ね人であるアイズ・ヴァレンシュタインは小傷が目立つも、そんな二人が視界に入ってポカンとした様相を示していた。
一方のレヴィスはアイズの目線の先を追うと、燃え上がった一帯と複数の冒険者。そのうちかつて目にしたことのある魔導士を確認し、この惨状の首謀者と認識して舌打ちをすることとなる。
「あの時のレベル6……貴様の行いというわけか」
その言葉に答えることはなく、リヴェリアは据わった表情で相手を睨む。そのリヴェリアから体一つだけラインを外して前に立つタカヒロが居るために、レヴィスもまた迂闊に動けない。
直接的な戦闘を見たことは無いものの、周りとは格が違うと戦闘本能が察知している。膠着状態のなかアイズも崖から降りてきて合流して前に立っており、これにて互いの戦闘員が揃った状況だ。
「やるぞレヴィス。回復しつつある私とお前ならば、奴等など敵では――――」
「――――茶番だな」
突然とオリヴァスの胸を貫く右腕。そして“何か”を取り出し、口に入れたように伺える。
灰となり消えゆくオリヴァスは、急速に意識が薄れゆく。それでも何か言いたいことがあるのか、最後の力を振り絞って、とある人物の名を口にした。
「なん……だと!?貴様、“エニュオ”に肩入れ、するのか……!」
まるでモンスターが消滅するかのように、オリヴァスは2度目の死を迎えることとなる。しかし状況は終わっておらず、アイズは、レヴィスが纏う殺気が膨れ上がったのを感じ取った。
何かが来る。直感的にそう感じ取ったアイズは、背中越しにリヴェリアの位置を確認する。最悪でも彼女だけは守り抜くと決意を固め、すぐさま前方へと向き直った時だった。
対峙する相手から視線を切ってしまった、一瞬の油断。目の前に迫るのはレヴィスの剣であり、リヴェリアですら、今の相手の動きは見えなかった。
まるで別人であり、対応できない。それこそレベルが一つ上がった時のような身体能力の差であり、今までとは雲泥だ。
「隙だらけだぞ、アリア」
回避、不可能。防御、不可能。少しぐらいは身体を動かせるが、そう判断すること以外に何もできない。
一瞬の油断が致命傷になったことを後悔するも手立てはなく、運命を受け入れるほかに道がない。それでも己の顔へと迫る切っ先を捉える瞳が映し出すものは、突然と変わることとなった。
アイズの視界を一人の男が支配し、甲高い金属音が耳をつんざく。リヴェリアの時と同じく間に入るは一枚の盾であり、守るべき対象に対し、僅かにダメージを与えることも許さない。
右横を見上げるアイズの視線の先には、見慣れたフードに隠れた、見慣れた横顔。ブロックではなく相手の剣と腕に対して攻撃することで弾き飛ばしたために報復ダメージは発生しないが、突進していたはずのレヴィスが逆に後方へと大きく吹き飛ばされると共に壁に叩きつけられ、肺の空気が押し出され武器を損失したことも事実である。
「カハッ……馬鹿な、“レベル8”、だと……!?」
オリヴァスの右腕を消し飛ばした時の事を知らないレヴィスは、目の当たりにした光景を信じられない様相だ。口から流れ出る血を手で押さえ、目を見開いて驚く様相を隠せそうにもなく、予想外の戦力を前にして戦意を喪失してしまっている。
更に大きく飛び退いたアレを仕留めに行くべきかどうか、いったい誰がレベル8なのかと考えているタカヒロだが、後ろには護衛対象の全員が居るために隙を作れない。未だ仕事は継続中であるために、残った敵である赤髪のテイマーを視界に捉えて離さないことで威嚇とした。
「チッ!」
正気に戻ったレヴィスは、食糧庫の中央に在って天井まで
洞窟内部に居た者はすぐさま立ち上がり、痛む身体に鞭を打って撤退を開始する他にない。最後まで睨み合うアイズとレヴィスだが、生き埋めにならぬうちに、双方は全員が食糧庫から脱出する。
――――生き残った。
そのことを痛感する満身創痍の面々は、力なく18階層へと足を運ぶ。戦闘に使える体力は僅かにしか残っておらず、道中の敵は、突っ立っているウォーロードが片手間に処理している状況だ。
食糧庫における
18階層へ帰還すると、ヘルメス・ファミリアはすぐさま宿を手配して負傷者の手当てに当たっている。状況が落ち着くと24階層で起こった情報を確認し合い、ここで別れることとなった。
このまま帰還する予定である援軍の3名はアスフィと挨拶を交わし、17階層へと繋がる入り口付近に差し掛かる。少し急げば、日が沈むころには地上へと戻ることが出来るだろう。
「た、タカヒロ、さん……」
たどたどしい様子でアイズが後ろから声を掛けたのは、そのタイミングであった。鎧が鳴るガチャリとした音と共に振り向いたタカヒロは、少し身をよじってモジモジしたアイズを視界に捉えることとなる。
どうにもできない状況で助けられた情景は、彼女の脳裏に焼き付いている。感情表現の薄い彼女は少年によって少しずつ解されており、此度も感謝の念を伝えようとして、それでも「こんな感じでいいのかな」と不安と疑問が芽生えており。あまり面と向かって話したことは無いために、今更ながら、恥ずかしさ交じりにタカヒロへと伝えようとしている格好だ。
「遅く、なっちゃったけど……た、助けてくれて、ありがとう、ございます」
そんな様相を見せる彼女を相手にどのように対応したものかと考え、青年は数秒の間を置いた。数歩ほど離れているアイズへと近づいており、対応がまずかったかなと内心で慌てる彼女だが、不思議と足は動かない。
珍しく緩められる口元と共に、ポンと音が鳴るように、アイズの頭に手が置かれて撫でられる。恥ずかしさが増して振り払おうと少しだけ首を左右に振るが、強めに押し付けられる感触が心地良いために本気になれない。
「敵対する相手の間合いにおいて視線を切るのは、あまり褒められた行動ではないな。ともあれ、無事で何よりだ」
もう覚えてもいないが、かつての父も、同じように撫でてくれたのだろうか。その普通名詞で呼ぶには年の差が小さすぎるが、少し見上げる姿は己を心配してくれる者であり、アイズは嬉しさから薄笑みが浮かんでいる。
無事を喜びつつも、叱ってくれるところは叱ってくれる、その姿。微笑ましい光景を後ろから眺めるリヴェリアは、内心でわずかに芽生えるモヤに疑問を抱きつつも、穏やかな様相を示している。
こうしてモンスターの大量発生を起源としたクエストは、怪我人こそおれど犠牲を出すことなく終わりを迎える。18階層でヘルメス・ファミリアと別れた3人は、日が落ちた頃、無事に地上へと帰還し、各々のホームへと辿り着いた。
原作だとここで59階層へ行けとの会話が発生していますが、本作では既に41話で59階層(単純に未到達領域へのアタック)が決まっているので省いております。
また、漫画版だとポックが持っているフィンの武器のレプリカは短剣ですね。
■メイスである“全く普通の盾”の固有スキル:仕返し(ブロック時20%の確率で発動)
(↓メイス分類のくせして公式で盾って言っちゃってます。ですが盾枠が未装備だと発動しない矛盾…!)
・盾から衝撃波が生じ、近くの敵を刺激する。
*盾を要する。
1.6秒 スキルリチャージ
3.5m 標的エリア
+20% 武器ダメージ
+12% 報復ダメージを攻撃に追加
+250-410 物理ダメージ
標的のヘイトを増加
30% 標的減速を 3秒
■トグルバフ:美徳の存在(レベル15)
・オースキーパーは美徳と信念の鑑であり、それらは付近の仲間を鼓舞する特性である。彼らのそばに立つ者は、勇気ある偉業を起こさずにはいられない。
190 エナジー予約量
12m 半径
100% 次のうち一つを発動
・320 体内損傷ダメージ/5s
・192 出血ダメージ/3s
+157 攻撃能力
+8.3 エナジー再生/s
+152 物理報復
裏設定ですが、トグルバフの数値的な効果が仲間に及ぶことはありません。
もしも及ぶならば、システム的なパーティーに組み込んで、上限は4人(タカヒロ含む)迄ですね。