Act.8-1:アイズ・ヴァレンシュタインを探しに24階層へ向かえ
Act.8-2:とある神の使者と会って会話せよ
Act.8-3:とある神と会話し、力を貸せ
Act.8-4:50階層を調査せよ
Act.8-5:59階層にてリヴェリア・リヨス・アールヴを守り切れ
Act.8-6:精霊の分身を殺し、ロキ・ファミリアの安全を確保せよ
Act.8-7:59階層における出来事について、神ウラノスと意見を交わせ
Act.8-8:【New】18階層を調査せよ
「どのようにして、ダンジョンから
数日後。松明の薄明かりに包まれた、ギルドの地下にある祈祷の祭壇。そこでウラノスが呟いた一言に、答えることのできる者はいなかった。
もっとも人物としてもタカヒロとフェルズしか居ないのだが、双方ともに考えが浮かばないのが実情である。腕を組んで明後日の方向を見る行動は、「分からない」の言葉が出されるまで続くこととなった。
ウラノスにとっては自慢話になるが、ダンジョンの蓋であるバベルの塔はギルドによって管理されている。人が多すぎて誰がどこへ、と言ったような管理までは無理ながらも、あれほどの大きさのモンスターが運び出されるようなことは皆無と断言していい程だ。
まさか種のようなモノがあるのかと考えたタカヒロだが、成長となれば多大な栄養が必要であるために、現実的ではないとフェルズが返している。ロキ・ファミリアによって行われた地下水道の調査も、成体が複数いただけで繁殖の気配もないようだ。
そのために、当初タカヒロが口にした「他に入り口がある」という説に辿り着いたわけである。実際のところ過去には27階層と海が繋がっていた地点があるらしく、20年ほど前に封印された歴史がある。
その封印が解かれたのかと推察した点については、幸か不幸かロキ・ファミリアが近々遠征の申請をギルドに行っているようであり、結果は自ずと上がってくることだろう。故にこちらの3人は、他のルートを推察していた。
「1つ気になるのは、なぜ24階層という中途半端な階層で栽培を行う必要があったか」
タカヒロの脳裏に浮かんだ、単純な疑問。単純に見つからないようにするための工夫だと言うならば、もっと深い階層の方が都合が良いだろう。
フェルズもウラノスも気になっていたものの、その問題に対してどうアプローチしていいかが思い浮かばなかったのが実情のようだ。そのために、何か意見が無いかとタカヒロに問いを投げていた。
「意見と言うよりは、このような場合のアプローチ方法の1つなのだが……逆を言えば、24階層より上もしくは下では、栽培を行えない理由があったとも読み取れる」
「なるほど。24階層より上は見つかりやすい点が理由と仮定して……中層の最後と呼ばれる24階層では行えて、25階層からとなる下層では行えない理由があるということか」
その理由が分かれば、どこかにあるかもしれないダンジョンとの連絡通路も判明するかもしれない。タカヒロとしても各階層の特徴はリヴェリアの教導で叩き込まれているし、50階層へのシャトルランで駆け抜けたこともある。
まず、25階層から先。水が豊富にあるエリアながらも、
そんな単純な理由で24階層になったのかと考えるタカヒロとフェルズだが、らしいと言えばらしい事だ。そして、もう1つの推察事項が存在する。
食糧庫の中にあったのは鉄の檻に入れられた
オラリオにおいて、レベル4以上は圧倒的に人口が少なくなる。故に人員的な問題からしても、24階層がギリギリのラインであったならば不思議ではないことだ。
その見解に対しては、ウラノスも納得した様相を見せている。ふとタカヒロの脳裏に1つの事実が浮かび上がったのは、更に数秒してからだった。
時間潰しで行った50階層へのシャトルランを思い返したタカヒロだが、24階層より下では
もっとも24階層についても例の一件でエンカウントしただけだが、リヴェリアが口にしていた殺人事件と合わせると、地上を除けば、少なくとも18階層から24階層という大樹の迷宮のエリアにおいて
今現在において判明している情報は、これだけだ。蓋を開けてみれば第二の連絡通路なんて無いかもしれないし、案外オラリオの地下で大繁殖しているのかもしれない。
それでも、せっかくの推察だ。浅い所からということで、二人は18階層へと向かうこととなる。
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――――これで見えているのだろうか。
水晶に似たブレスレットをフェルズから受け取ったタカヒロは、そのまま18階層へと足を向けていた。かつて24階層の問題の時に訪れた場所であり、青年にとっては二度目である。
ブレスレットについては、ウラノスが祭壇のエリアから周囲の状況を見渡すことができる魔道具だ。どこぞの美の女神も似たような物を所持しており、ダンジョン内部のベルを見てキャーキャー叫んでいたことがある。
その点はさておき、18階層では天井に敷き詰められた輝かしいクリスタルの内部で光が反射し、階層全体を照らす光となって降り注ぐ。熱こそほとんどないものの、光量に関しては太陽と
明るさとしては、今現在は夕方と言ったところだろうか。夕焼けのようなことが起こることはなく光量が変化するだけであり、ゆっくりと闇に包まれるのである。
「御仁、聞こえているかね」
「ああ、便利なものだな」
闇が動くならば、闇に紛れて。そんな妙に説得力がある一文を口にしたフェルズの案により、探索は夜間に行われることとなった。
二人は魔道具を所持しており、ようは無線機のような装置で遠距離で会話を行っている。同じ階層、かつ遮蔽物がない空間においてソコソコの距離で通信することができ、互いに小声ながらも、十分に聞き取れる鮮明さだ。フェルズ曰く暗号化も抜かりないらしく、二つの道具以外では本人ですら通信を傍受できないらしい。
「しかし、本当に見つかるのだろうか?」
フェルズの呟きが魔道具から零れるも全くもって動きがなく、時間だけが刻々と流れてゆく。階層も浅いために
此度の目標は、18階層において動きがあるかどうかを確認すること。昼間の18階層ではなく夜にしたことも、明確な理由がある。
24階層で見つけた“檻の中の
つまり特別なスキルが無い限りは夜目は効かず、何らかの灯りを使用するはず。そのような推察を行ったタカヒロは、身軽なフェルズに大樹の上で見張るよう指示していた。
「け、結構、怖いのだが」
「我慢しろ」
身軽ながらも、あまり高いところは得意ではないらしい。とは言っても地上50メートル程の高さに居るために、怖がるなと言う方が無理があるだろう。
闇に紛れ、周囲を監視し続けて20分ほど。突然と湧き出た灯りを見つけたフェルズは、灯りが向かう方角と目視距離をタカヒロに伝達した。随分と距離があるものの、暗闇における灯りとは遠くからでも分かるものだ。例えば海上においては、煙草の炎も遥か先から視認できると言われている。
「背後についた、接敵する」
深い深い、森と呼べるエリアの一角。フェルズの誘導で目標に辿り着いたタカヒロは、奇襲の一撃でもって二人の足の骨を粉砕した。相手の逃走手段を奪い、続けざまに両腕を無力化し、自爆することすらも許さない。
相手が死兵、闇派閥だということは分かっている。反撃を許さずに四肢は潰したがこの世界にはポーションがあるために、拘束後に使用すれば延命となり、後々拷問にかけることもできるだろう。
暗闇というカモフラージュの中でガチャリと響く鎧の音は、相手からすれば死の宣告に聞こえるだろう。気配すら感じ取る暇もなく無力化され、もはや真っ当な生は望めない。
己を見下ろす、冷酷な気配。相手をモノとも思っていない感情が肌に突き刺さり、仰向けに漆黒の鎧姿を見上げるエルフの青年は、かつてない程の恐怖にかられ、言葉を口にしだした。
「知っている……私は、その
確かに“ケアンの復讐者”的な意味で言えばタカヒロが復讐者である点は間違いではないのだが、それはケアンの地で暴れまわっていたイセリアルとクトーニックに対する復讐者という意味である。ともかく、このオラリオの地においては関係のないことだ。
もう一人の闇派閥の男らしき者は、完全に戦意を喪失してしまっている。フード越しに見下ろすタカヒロの表情は仏頂面を極めており、身体も微動だにしていない。
「名も知らぬ戦士よ……死者は蘇らない。それでも、愛した者と、死別した者と会いたくはないか?」
暗闇でも分かる程の濁った瞳を開ききり、相手のエルフは声を発することを止めそうにない。まるで、前に立つ相手の気を引く為かのように見える。
いや、それも少し違うかもしれない。どちらかと言えば、己が闇派閥にまで入って出会いたい者のために生きることに対し、同情、肯定の類の言葉を掛けて欲しいかのようだ。
「我等が主神に、忠誠を誓え。そうすれば、お前も――――」
「……」
目の前のエルフが、いかにしてそのような絶望に追い込まれたかは分からない。こうでもしなければ自我を保てない程に追い詰められたことは無いタカヒロだが、だからと言って表情も心境も変わることなく、全く興味のない視線をフードの下から向けている。
そう思った直後、突如として短剣が飛来する。察知したタカヒロは盾を使って弾き落とすも、軌道からするに、どうやら狙いは目の前に居るエルフだったようだ。
フェルズによる死兵への攻撃かと考えたが、居るはずの方向が逆側だ。例え死兵に自爆されても何ら問題は無いために、タカヒロは意識をそちらへとスイッチする。
左右それぞれの草木がガサガサと騒めいたかと思えば、黒いフードを纏った二人の人物が場に出てくる。片方はフェルズだがまさに瓜二つの様相であり、区別しろと言われれば非常に難しい程だ。
「……分身魔法でも使えるのか?」
「っ!?」
「違う、全くの別存在だ」
そのためにタカヒロは分身魔法かと口にするも、よくよく見れば片方のフードの下は仮面であり、もう片方は闇が広がっている。この暗闇故に、気づかなかったのは仕方のない事だ。
とはいえ、なぜか仮面の方のフードの人物は驚愕の声を上げている。タカヒロとフェルズが視線を向けると、しまったと言いたげに顔を背けているが、原因は分からない。
故に何事かと、タカヒロはフェルズと顔を見合わせた。仮面の人物が動きを見せたのはそのタイミング、相手が視線を切った一瞬の油断を見逃さない。短剣を突き立て損傷を与えるべく、瞬く間に駆け出した。
そこを狙ったはずなのに、己の短剣による一撃は、いつのまにか構えられた盾に阻まれる結果となった。力に任せて押し切ろうにも微動だにしない現状に、仮面の人物は声を発して次の一手を持ち出すこととなる。
「チッ、
狙いはタカヒロとフェルズだけではなく、死兵もまた対象らしい。向かってくる
この隙を狙って仮面の人物は逃げており、目を見張る程の逃走速度である。フェルズを残して追跡することは良くないかと判断し、とりあえず目の前の
灰になり消えゆくモンスターの死骸を見つめていると、光を弾かない草木や地面とは違う、微かな光が跳ね返ったような印象を受ける。その地点でタカヒロが腰を屈めると、1つの人工物が存在した。
野球ボールほどの球体に瞳が書かれたような、金属製の物体。対面から見るフェルズは何かしらのマジックアイテムだと勘繰っているものの、単体で動作するようなものではなく原理は不明だ。
ならば、何か目的があって所持していたか。先ほどの戦闘に巻き込まれず零れると言う事はポーチなりポケットなりから取り出していた可能性があり、今居る地点からあまり遠くないエリアで使おうとしていたのではないかとタカヒロは推察する。
事実、ここには獣道と呼ばれるような通路がある。獣道とは、その辺りを縄張りにする獣が草木をかき分け定期的に巡回するルートのことであり、草木は自然と生えにくく、少しだけ切り開かれたような道になる点が特徴だ。
そして消された闇派閥の者が向かっていたのは方角的に東であり、二人で連なりながら、その道をひたすらに進行する。暫くすると、18階層を構成する側壁の前に到着した。
「行き止まり?」
「まさか」
獣道は、ダンジョンの壁に達したところで止まっている。しかしながらセオリーとしては「何もありませんでした」で終わるはずがなく、その下にある地面には草木が生えておらず踏み固められている点がそれを証明していると言えるだろう。
故に、何かがある。かつてケアンの地で隠し扉を破壊していた時の要領で“正義の熱情”を放ち、タカヒロはダンジョンの壁を破壊。目的のモノは、崩れ行くダンジョンの外壁と共に現れることとなった。
「いかにも、と言った感じの扉だが……」
「まさか、この扉はオリハルコンではないか……!」
通常の金属を超える強度と耐久を持つ、
フェルズが言うには、この扉はオリハルコンで出来ているらしい。明らかに自然による精製物には程遠く、誰かが何かしらの意図をもって取り付けた代物だ。
その扉の中央には、何かがピッタリと入りそうな球体状の窪みがある。脳内で先ほどのマジックアイテムを横に並べると、大きさ的には一致しそうだ。
セオリーに乗っ取って考えると、この扉を開くための鍵になると予測できる。しかしタカヒロは、それをはめ込むことは行わず元来た獣道へと踵を返し、フェルズもそれに続いていた。
闇派閥の逃走を許さないならば、ダンジョンの外に繋がる出口が分かるまでは突撃は行わない方が良い。ここで扉を開いた痕跡を残してしまうと、相手にこちらが持ち得るカードの情報を与えてしまうこととなる。
闇派閥を追う存在について仮面の者に姿は見られているが、
そのことをフェルズに話すと、フェルズもまた同様の意見を返してきた。マジックアイテムについてはタカヒロが所持することとなり、インベントリの中に納まっている。
帰還した二人は、ウラノスに状況の報告を行うこととなる。出口は不明ながらも、18階層に何かがあるという推察が見事に正解となった点は運が良い結末と言えるだろう。
とはいえ謎の扉の先に何があるかは分からず、どこに繋がっているかは分からない。ひとまず18階層での調査は区切りを迎えており、良くも悪くも情報が外に漏れることはなく、物語は水面下で進むのであった。
漫画版で真面目に見分けがつかなかった。
さて、この子の処遇やいかに……