詭弁ですよ!ヤオヨロちゃん!   作:名は体を表す

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前回のあらすじ

幻想くん「あ、あれ!?『超人モード』になるはずだったのに!?」
神「同じジャンプ漫画だからダメです」
詭弁「いやその理屈はおかしい」


お正月特別編・異世界からコンニチワ!奇跡も魔法もあるんだよ!人喰い妖怪も悪魔も死神も居るけど!

 彼らの勝負は、ようやく『勝負』という体をなし始めた。

 宙に浮かぶ《陰》はその両手に持つ()()()()()()を十全に振り回すだけの踏ん張りを得ることが出来ず、武器を叩きつける先が大気しかない事から先ほどまでのように地面に叩きつけ、その衝撃波で『個性』による攻撃を弾く事が出来ない。

 同じく空を飛ぶ《陽》だが、その身に背負った大岩ごと無理に飛んでいるせいで先ほどのように自在に空を飛び回ることが出来ず、その動きも慣性の法則に乗るように酷くゆっくりとしたものだった。

 《陰》《陽》二人は大幅に弱体化した、と言っても良いだろう。放置するには厄介だが、それでも生徒2、3人で抑えることは出来そうだ。

 

 そして、最も厄介な者が残った。

 黄金色のオーラに身を包んだ彼は、その身に備えていた鋼鉄を超える強度を持つ強靭な皮膚の上から更に可視化するほど濃密な気の鎧を纏った、まさに重戦車に等しい防御力。『個性』を持つ彼らよりも多彩な『魔法』と『退魔術』を繰り出す彼に、魂を燃え上がらせているとはいえども攻めあぐねてしまう。

 

「死ねやァァァァァ!!!」

 

 一人、必殺の意志と覚悟をもって爆炎を燻らせ突撃する。それに対応しようとする隙を狙って氷結攻撃のタイミングを図る者、爆炎を当てる為に牽制として『音』を打ち出す者、『影』を伸ばし隙を作り出す者、酸を飛ばす者、大砲を撃つ者。彼ら全員『我』が強い者達ばかりだが、今この時においてはこれ以上ないほどに連携がとれていた。

 どれか1つの攻撃だけを意識してしまえば、他の攻撃に当たってしまう絶妙なタイミングと間隔。それでいて同士討ちにはならない。全てを避けようとすれば必殺の爆炎が追従し、氷塊に襲われるだろう。

 

「『榴弾砲着弾(ハウザーインパクト)』ォッ!!!」

 

 破壊力ではA組の中でもトップクラスの一撃。それも激しい動きを続けたことで籠手に溜まりに溜まった(爆薬)全てを解放する、『必ず殺す』一撃。

 爆発的みみっちさの爆豪が、それでもなお()()()()()()()気で放った一撃は、ある意味で『それでも立ち上がってくるだろう』という一種の信頼か……敵に向けるには些か場違いにも思える感情。だがその相手は別の世界から来たとは言え、()()『詭弁』である。きっとギリギリで避けるか、防ぐかしてくる筈だ……と、()()()()()()すら超えてくることを想定しながらも尚、全力で()()()()為に、今、右手に、溜まりに溜まった爆炎が―――

 

 

 

 ()()()()

 

 

 

「…………あ?」

 

 『音』が、『影』が、『酸』が、『大砲』が、そしてあらゆるものを消し飛ばす筈の『爆炎』が。

 全てが全てその肉体に直撃し、耳から血を流しつつも、骨が折れつつも、皮膚が溶けつつも、肉が抉れつつも、その半身が焼け焦げ消し飛びつつも。

 その黄金色のオーラには一切の陰りはなかった。

 

「ッッッ!!テメ――」

 

「『魂魄悠々遊惰天衝拳(こんぱくゆうゆうゆうだてんしょうけん)』」

 

 ぺちっ

 

 優しく、非常に優しく。爆豪の頬がはたかれる。ただそれだけで、爆豪の意識が身体から離れていった。

 

 

 ◆

 

 

「『回復魔法(リジェネ)』、『回復術(ヒール)』……よし、これで元通りだ。……服以外はな」

 

 地面に倒れるカッちゃんを後目に、皮膚が吹き飛ぶ程の大怪我をした筈の幻想くんの身体がまるで逆再生する映像のように治っていくのが見えた。

 

「い、今のは……!?」

 

「アイツの再生力もヤベーけど……今、()()()()()()()()()()()()!?」

 

 ()()()()()なんてモンじゃない。幻想くんにカッちゃんがはたかれた直後、カッちゃんの身体から半透明のカッちゃんが()()()()()()()!!

 

「女の子の顔をぶん殴る訳にもいかないしな。ちょっくら()()()()()()()()()()()()()()。まあ10分程度で戻るし、後遺症も無いから安心しろ。……しかし案外居ないモンだなぁ、『魂を視認出来る奴』は。この世界の俺と、紅白髪と、尻尾生えてるのと、梅雨ちゃん……くらいか。いや、案外霊力を扱う才能なんて外の世界でもこんなモンなのか?」

 

「う、わあああああ!!!!」

 

「バッ!?いずくちゃん待っ!!ああもう!『行けデク!!お前の名は、頑張れって感じのデクだ』!!!」

 

 カッちゃんの必殺技が真正面から受け止められ、その上で一撃で意識を奪ったのを見て冷静さを奪われたのか無策に突進するいずくちゃん。何とか『応援』することでサポートをするが……

 

「女の子はともかく、野郎に手加減なんて期待すんなよ?」

 

 『魂魄悠々遊惰天衝拳(こんぱくゆうゆうゆうだてんしょうけん)』!!!

 

 いずくちゃんの『超パワー』による超速機動も一瞬で見切った幻想くんはその拳をいずくちゃんの顔面に突き刺すように殴る。

 

「いやカッちゃんとの落差!!」

 

「ンだから野郎相手に手加減するかよ!」

 

 いずくちゃんの身体はまるで空中で撃ち落とされたかのように地面に落ちるが、その身体から叩き出された(幻想くん曰く)魂は錐揉み回転しながら森の奥へと消えていった。

 直後、景色が一気に切り替わるように氷の世界に変化した。

 

「皆冷静になれ!さっきの攻撃が効いてたなら、攻撃を当て続けりゃ必ず限界がーーー」

 

魂魄悠々遊惰天衝拳(こんぱくゆうゆうゆうだてんしょうけん)』!!!

 

 森の一角を飲み込む程の大氷結攻撃を舞うように跳んで避け、空から刺すように拳が轟焦凍(しょーちゃん)の顔に当たる。しょーちゃんの魂も身体から離れていった。

 

 ほんの短い間でクラスの3トップがやられたという事実は、俺達の戦意を揺るがすには十分だった。

 

「『安無嶺過武瑠』!!」

 

「この技に肉体的な防御力は意味を成さない」

 

 切島鋭児郎(きりちゃん)の魂が弾き跳ばされる。

 

「『アシッドマン』!!」

 

「防ぐには霊的な防御力か、自身の魂をある程度制御出来るだけの力が必要だ」

 

 芦戸三奈(みっちゃん)の魂が弾き跳ばされる。

 

「くそっ!やられる前に捕まえ―――

 

「『レシプロ・エクス―――

 

「それに特別な才覚は要らない。『幻想郷』じゃ大抵の人妖は無意識レベルで行えるし、そもそも霊的な防御力も高い。ま、ネタにもならない『死に技』って奴だ」

 

 瀬呂範田(はんちゃん)飯田天哉(てんちゃん)の魂が弾き跳ばされる。

 

「『黒影(ダークシャドウ)―――

 

「『尾拳・"沼田打―――

 

「まあ、こうして霊力も持たない癖に変な能力を持った『外来人』を触れるだけで倒せるから、完全に『死に技』って訳じゃないけど」

 

 常闇踏影(ふーちゃん)尾白猿夫(まっちゃん)の魂が弾き跳ばされる。

 

 あっという間に6人の魂が跳ばされ、当たりに幽霊のように漂っている。全員が驚愕の表情に染められ、なんとかして自分の身体に戻ろうとしているのが見えた。

 

「お前達の『程度の能力』……『個性』だったか。それらには驚かされたし、ダメージも無視できない以上に食らった。故に……今、俺が出せる全力でもってお相手してやろう!!!」

 

「お前のその上から目線が気に入らん!『だるまさんが転んだ』っ!!!!」

 

 俺の『覇声』を受けて得た()()()()。そこに殺到する『レーザー』、『銃撃』、『投石』、そして『鳥の群れ』。

 

「痛たたた!!!痛いモンは痛いンだぞゴルァ!!『二重結界』ッ!」

 

 その言葉の直後、空気に溶けるように姿を消した幻想くん。

 

「マズいっ!瞬間移動―――」

 

「判断が遅いっ!」

 

 突如後方に現れた幻想くんに殴り飛ばされる砂糖力道(りっちゃん)口田甲司(こうちゃん)

 

「ッ!皆さん、刺又ですわ!距離をとって確保を―――」

 

「力が足りないっ!」

 

 刺又を握り潰され、軽くはたかれる八百万百(モモちゃん)葉隠透(とーちゃん)

 

「ね、『ネビル―――

 

「コッチ来るなよぉ!!『GRAPE R―――

 

「速さが足りないッ!!!」

 

 若干逃げ腰だった所に蹴りを入れられる青山優雅(キラキラ)峰田実(ミッチー)

 

 ほんの僅かの間にクラスメイト達の殆どが幻想くんの凶撃によって倒れ、辺りに皆の魂が漂う。幻想くんの前にまだ立っていられているのは俺と障子目蔵(めっちゃん)麗日お茶子(ちゃこちゃん)蛙吹梅雨(つぅゅちゃん)耳郎響香(ジロちゃん)だけだった。

 

「……絶体絶命ね」

 

「諦めなければ道はある……と言いたいが……」

 

「台風に立ち向かうようなモンだろもうコレ……」

 

「よ、弱気になっちゃあかん!私が幻想くんを浮かせられれば……!」

 

「ウチの『イヤホンジャック』で拘束して―――」

 

 

「あー……盛り上がってるところ悪いとは思うんだが」

 

「俺達を忘れてもらっちゃぁ困るんだがな」

 

 

 光弾が炸裂する音、超重量の鉄塊が振り回される音が耳に届いた事で、俺達は思い出した。人は()()には勝てないことを……。

 

 

 

 俺達は、人の姿をした災厄三人に仲良くブッ飛ばされた。

 

 

 

 

 * * * * *

 

 

 

 

「いやー皆お疲れ様!早速今回の講評をしようかと思ってるんだけどー……あー、幻想くん?何故皆の姿かこう……透けてるのかな?」

 

「やだオール()イト先生、セクハラですわよ」

 

「いや何処が!?というかオール()イトね!オールナイトじゃ徹夜したみたいな感じになっちゃうから!そ、それでコレ皆大丈夫なの!?」

 

「皆()()()()()()ってところかな。死霊は感情が薄いけど、生霊は肉体に残った感情がダイレクトに現れるから……」

 

「……えーっと、つまり?」

 

「いつかは戻るけど、いつ戻るかってのは肉体に残った感情がある程度落ち着いてからだな!早ければ2・3分、遅いと一年は掛かるかも」

 

「差が激しすぎる!!?」

 

「『怒り』とか『悲しみ』とかなら割りと落ち着きやすいけど『恨み』や『恐れ』とかは魂にも刻まれる程の強い感情だからねぇ。それらが落ち着くにはそれくらい掛かるもんさ」

 

「そ、そうか……その、すぐ何とかならない?」

 

 そういってオールマイトは辺りを軽く見回す。幻想くんの回りだけでも数人居るし、A組で唯一無事だった詭弁の回りには幻想くんの三倍近くの幽霊が取り囲んでいるし、残った数人がアホになったままの上鳴の回りに浮いている。

 有り体に言って、混沌とした状況だった。

 

『ブッ殺す!テメェはオレがブッ殺すッッッ!!!!』

 

『バカ止めろ爆豪!その状態で暴れても幻想くんに一切効いてねぇし、暴れる度にお前なんか薄くなってってんぞ!』

 

『くそっ!すまない皆……ボクがクラス委員として不甲斐ないばかりにっっっ!』

 

『お、落ち着けって飯田……ありゃ相手が悪いだけだって……』

 

『うわぁぁん!ごめんねぇぇぇ!ごめんねぇぇぇ!』

 

『ケロッ、大丈夫よ。誰にでも失敗はあるし、今日の事は皆で反省すればいいのよ』

 

「うぇうぇーぃ!?」

 

『……………………』

 

『轟!轟ぃー!!?大丈夫かお前なんか死んだ目してるぞ!!?』

 

『すみません詭弁さん……私が不甲斐ないばかりにこのような面倒事を押し付けてしまって……』

 

「い、いいって事よ……怪我はリカバーちゃんに治してもらえるし、これも救助訓練の一環って事で……」

 

 ボコボコに腫れ上がった顔のまま、複数人を担いで戻ってくる詭弁。大暴れし続ける爆豪(幽霊)。大泣きする飯田(幽霊)と芦戸(幽霊)。死んだように放心し続ける轟(幽霊)。空中で這いつくばるように落ち込む八百万(幽霊)。収集がつかないとはこの事。

 

「……なんとかならない?」

 

「なるんじゃないっすかね」

 

「そんなテキトウな……()()()()()は想定してたけど、流石に今後の授業に大きな支障が出る程の……その、()()()()()は想定外だよ……」

 

「しょうがないなぁ。まぁ皆をすぐに戻す方法はあるよ」

 

「おお!具体的にはどうすればいい!?」

 

「まず服を脱がします」

 

「まって」

 

「そしてケツの中に精神棒をブスッと」

 

「待って待って!!?『せいしんぼう』って何!?ナニをするつもりだい!?」

 

 人の尻には『尻子玉』と呼ばれる目に見えない器官があり、主に人の肉体と魂、或いは精神と繋ぐ役割を持っているとされる器官である。河童が尻子玉を好物としている事は有名であり、尻子玉が抜かれた人間はフヌケになると言われている由縁は尻子玉を抜かれたことで魂、或いは精神が肉体から離れやすくなるためである。

 その尻子玉を強く刺激すると、余りの痛みから死人すら魂引っ提げて現世に戻ってくると言われている。

 

「要するに俺の股間の精神(精子ん)棒で○。。○する事で即座に蘇生が―――」

 

「絶対やらせないからね!!!?」

 

「大丈夫だオールマイト先生。女子は俺に任せろ!」

 

「任せられる要素一つでもあった!!?」

 

 その後詭弁がめっちゃ頑張ってクラス全員蘇生させた。

 

「ほう、この世界の俺は霊使いの素質があるのか」

 

「別の世界の俺はなんというか色々ヤベェって事しか分かんなかったよ……」




オールマイト「い、いや~……まあ何とか無事に終わって良かった!ヨシッ!」
校長「オールマイト。トレーニング施設の一角がほぼ壊滅したって聞いたんだけど?ねえ、元に戻すのだって()()じゃないって……知ってるよね?」
オールマイト「あっ、その……きょ、今日も素敵な毛並みで……」
幻想くん「オールマイトぉー!言われた通り誰も死なせない程度に大暴れしたぜー!」ピースサイン
校長「へえ、オールマイトの、()()かぁ」
オールマイト「あっ、あっ、あっ……か、カハッ(吐血)」
幻想くん「ンだよまた血ぃ吐いてんのか。そーれ『回復術(ヒール)』」
オールマイト「あ、ありがとう幻想くん……」白目
校長「……じゃあオールマイト。二人でお話、しようか」にっこり
オールマイト「…………」

幻想くん「なんかよく分からんが良い笑顔だ!ヨシッ!!」


もうチミッとだけ続くんじゃ。

特に深い意味は無いのですが、直感で選んでください。深い意味は無いです、本当に。

  • ヤオヨロちゃん
  • A組女子
  • B組女子も
  • サポート科、教師、プロ、ヴィラン、全員!
  • ……男子も(TSするかは知らん)

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