強気なTS娘が世界を救うために武装少女となって戦う物語! ぜったい負けないぞ! メス堕ちなんてしないぞ!

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肩の力を抜いてからご覧ください


TS=メス堕ち

 

 

 

 

 オレの名前は目須落(めすおち) 貞無(てむ)。どこにでもいる普通の男子高校生で、今日も今日とて昔からの男友達である市令加(しれか) 友信(ゆうしん)と一緒に、放課後の自由な時間を謳歌している。

 

「おーいテム、そろそろ帰ろうぜ」

「うぇ、もうそんな時間か?」

 

 ゲーセンでクレーンに悪戦苦闘したり、本屋で新刊の漫画やラノベを漁っていたら、もう空が茜色に染まっていた。二人横並びになって住宅街を進んでいれば、電線の上にいるカラスの鳴き声が聞こえてくる。

 少し遊び疲れた放課後の帰り道──倦怠感と満足感が絶妙に織り交ざっていて、俺はこの時間がたまらなくすきだ。

 

「ふへへ~、見ろよ友信。5冊も買っちゃったぜ」

「図書カード様様だな」

「おう。クッソだるいボランティアだったけど、参加してよかったな!」

 

 書店で買った漫画本の入った袋を片手に、先日のボランティア活動のことを思い出した。なんでも学校主催の運動会的なイベントをやるらしく、その手伝いにオレたち二人は参加していた。

 正確には学校行事ではないためか、報酬ありのボランティアという形で有志を募っていたので、基本暇なオレたちは授業を免除してそこに参加して、その報酬として図書カードを貰って──現在に至る。

 

「なっ、帰ったらすぐ読もうぜ」

「まずテムは風呂入れよ。俺と違って運搬係だったし、結構汚れてんぞ」

「母さんみたいなこと言ってる……」

 

 正直風呂に入るのは面倒くさいが、家主の言葉とあれば無視するわけにはいかない。今日は友信の家に泊まることになっているのだ。

 

「友信って綺麗好きなのか?」

「ただでさえいつも部屋を散らかすテムだから言ってんだよ。せめて体の汚れくらい洗い流してから入れって話」

「へーいへーい、わかりましたよー……っと?」

 

 親友とあーだこーだ話しながら歩いていると、道端に謎の生物が立っていることに気がついた。

 大きさは野良猫と同じくらいだが、世にも珍しい緑色の体毛で、何といっても見た目が女児アニメのマスコットキャラみたいだ、という感想を抱いた。

 

「なぁ友信、何だろあれ」

「ん? ……クマのぬいぐるみ、か?」

 

 

 二人してゆっくり近づいていくと──突然その謎の生物が宙に浮かんだ。

 

 

「ようやく見つけたメス!」

 

 

「……あ?」

「なんだこいつ」

 

 マスコットみたいな謎生物がオレたちに指差し、かなり渋いオッサンみたいな声で叫んだ。

 突然ぬいぐるみが宙に浮かんだので、本当なら驚いて叫んじゃってもおかしくはなかったのだが、親友が隣にいると何故だか冷静に目の前の状況を捉えることが出来た。

 

「きみが目須落テム君メスね! 探すのに苦労したメス!」

「キモい語尾してんなコイツ」

「最後にオスって鳴くタイプもいそう」

 

 よく分かんないけど、無視した方がいいのかな。変なことに巻き込まれそうな気がする。

 

「……二人とも驚かないメスね……?」

「ふふん、オレたちは年中無休365日24時間いつでも心が中二病だからな。適応力が高いんだ」

「トラックに轢かれて異世界転生する心構えはいつでも出来てるぜ」

「なんだこいつら……」

 

 お前には言われたくねぇよ。ていうか語尾外せるのかよ。

 

「お前、名前なに?」

「僕の名前はオスッピィだメス!」

 

 メスッピィじゃないのか(困惑)

 

「あー、じゃあオスピ」

「勝手に略されたオス」

「語尾間違えてんぞ。……で、オスピ。オレはこれから友信の家に泊まりに行くんだ。要件は手短に頼むぞ」

「えっ、聞いてくれるのメス?」

 

 変なことに巻き込まれる可能性がある、と言えば面倒くさく感じる。

 だけど『非日常に巻き込まれる可能性がある』と考えれば、不思議と高揚感が湧き上がってくるのだ。

 中二病はいつでも非日常を求めてる。そして目の前には自分の名前を知る、非現実的な存在。

 これはもう無視できないだろう。もしかたらオレは選ばれし者とか、何かの特別な存在なのかもしれないし、非日常に飛び込めるんならコイツの話を聞くのもありだ。

 

「実は世界がヤバイんだメス!!!!!!」

「スケールでけぇな」

「おいテム、今からでも逃げようぜ」

「よーし逃げるか」

 

 うおぉぉ走れ走れ~!

 

「ちょちょちょ! 待ってクレメンス!!」

「お前の語尾何なの?」

「キャラ付けです! 不快だったらやめますから話を聞いてください!! お願いします!!」

 

 しょうがないな。オレも鬼じゃないからな。

 

「聞いてやろう」

「ありがとうございます!」

「あと語尾戻していいよ」

「そうさせてもらいますメス!」

 

 で、何でオレを探してたんだ。オレに何をさせたいんだい? 話してごらんなさい。

 めっちゃ簡潔にね。難しい説明は無しな。

 

「分かったメス。……実は大昔に封印されてた魔王的なすんごい悪い奴がいて、そいつを復活させようと目論んでる奴がいるメス。魔王が復活したらこの国が吹っ飛ぶメス。最悪地球がぶっ壊れるメス」

「ふむふむそれで?」

「僕は魔王復活を阻止するために大昔に作られたカウンターシステムなんだメス。魔王復活の予兆があれば目覚めることになってたメス。僕が起きたということは割とヤバめな状況なんだメス」

 

 つまりどうすればいいんだってばよ?

 

 

「君には女の子になってほしいメス」

 

 

 ほーん。

 

 よし、やっぱ帰るか。

 

「ま゛っ゛で!!!」

 

 うるせぇよ意味わかんねぇよ死ね。

 

「端折りすぎたメス! ちゃんと説明するメス!」

「テム、話は最後まで聞こうぜ」

「お前は女の子になるって部分が気になってるだけだろ!」

 

 分かったから、とにかく説明をくれ。いきなり女になれとかマジで意味わかんねぇから。

 

「実は魔王復活を目論んでる奴が、”闇のエネルギー”を色々な人間に渡しているメス」

 

 闇のエネルギー(笑)

 

「その闇のエネルギーを貰うと凄まじい力を手に入れるメス。そして力を使うことでエネルギーは増幅されていき、エネルギーが一定のラインを超えると魔王が復活してしまうメス」

 

 つまり敵は複数人いるってわけか。

 

「そうメス。そしてその闇のエネルギーを浄化できるのが、光の戦士であるヒーローだけなんだメス」

「……待てメスピ」

「オスピです」

「うん、オスピ。つまり……そのヒーローってのは、魔法少女的なアレってことか?」

 

 頷くぬいぐるみ。頭を抱えるオレ。

 

「どちらかというと武装少女だけどメス。装備とか諸々はメカっぽい感じメス」

「そこは問題じゃないんだよ」

「嘘つきメス。ちょっと目が輝いてるメス」

 

 確かにメルヘンチックな武器とかよりはメカっぽい方が好きだけども。男の子だから多少はね。

 

「何で女にならなきゃダメなんだ?」

「別に女の子になるのが絶対条件ではないメス。光の戦士は変身すると性別と身体的特徴が反転するんだメス。もし一般的な華奢な女の子が変身した場合はムキムキのボディビルダーみたいになるメス」

「オレが変身するとどうなる?」

「金髪ロリっ子美少女になります」

 

 なんで……。

 

「オレ以外にはいないの? その、光の戦士になれる人」

「いません」

 

 どうして……。

 

「こればっかりは生まれ持った素質が左右するんだメス。現時点で光の戦士に適応できる魂を持った人間はテムくんだけメス」

 

 適正持ちが少なすぎない? これがカッコいいヒーローとか能力者になるとかなら、マジに大喜びしたんだけどなぁ。女の子にならなくちゃいけないのがなぁ……。

 

「テム、テム」

「……どうした友信」

「これ、俺いる? 先に帰ってようか?」

「ダメ!」

 

 他人事じゃないんですよ! 親友が巻き込まれてるんだからお前も残れ!

 

「そうメス。友信くんにも大切な役割があるメス」

「え、なに?」

「友信くんには光のエネルギーそのものを受け取ってほしいんだメス」

 

 ん、オレが光の戦士になるんじゃないの? どゆこと?

 

「光の戦士はいわゆる充電式のヒーローなんだメス。100パーセントまでエネルギーを充電して、それを消費しながら戦う。もちろん100パーセント以上のエネルギーを持つことはできないから、つどエネルギーを補充したり、時には支援をしてヒーローを支える”充電器”という役割の人が必要になるメス」

「マスターとサーヴァント……トレーナーとポケモンって感じか」

「よく分かんないけど多分その認識でいいと思うメス」

 

 段々と分かってきたぞ。つまり悪い奴らと戦うときは、オレと友信の二人でってことだな。

 ……あれ?

 

「その充電器って役割、オスピじゃダメなのか?」

「僕はそろそろ死んでしまうメス……その前に受け取ってクレメンス……」

「マジで」

 

 急にアホみたいなこと言ってんなぁ──なんて軽く身構えていたら、本当にオスピが足元から消え始めていた。お前……消えるのか?

 

「テム君にはこの変身用デバイスの腕時計を」

「お、おう……」

「友信君には光の源を……ハァーっ! テヤーッ! ほぉぉぉあああああっ!!!!」

「うるせぇな」

 

 オレはメカメカしいカッコ良さげな腕時計を貰い、なんやかんやあって友信は光の源とやらを譲渡された。なんか友信の目がちょっと光ってる。

 

 

「ああー死ぬメス! 消えちゃうメス!」

 

 

 そう叫んでいるオスピは既に下半身が無い。心なしか怯えているようにも見えた。

 ……魔王復活の阻止の為だけに生み出されて、問答無用ですぐ消えちゃうってのは……少し可哀想な気がする。

 

「なぁオスピ」

「うわぁぁぁメスー! ……ぁ、はい?」

「オレたち、お前の分までしっかり頑張るからさ。どうか安心して逝ってくれ」

 

 優しく言いながらオスピの頭を撫でると、彼は驚いたような顔をして──そして安堵のため息を漏らして微笑んだ。

 

「ありがとうメス……テム君は優しいメスね」

 

 オスピは光の粒子になって消えていく。

 

「あっそうだ。魔王復活を完全に阻止した暁には、光の源が一つだけ何でも願いを叶えてくれるメス」

「唐突すぎない?」

「つまり君たちの頑張りは無駄にはならないから、どうかそれをモチベーションにがんばアッ消える──」

 

 オレたちは二人並んで、早口で捲し立てながら消えゆく彼を見送ったのだった。

 

 

 

「……消えたな」

「うん」

 

 

 暖かな夕陽に背中を照らされながら、オレたちは茫然とその場に立ち尽くしている。普段から非日常を求めていた妄想癖付き中二病のオレたちでも、今さっきまでの事は聊か情報量が多すぎた。

 オレは微妙に光っている友信の目を、彼はオレの玩具みたいな腕時計を見て、互いに何とも言えない雰囲気になってくる。

 

「……とりあえずウチ来るか?」

「お、おう」

 

 このまま道端でじっとしていてもしょうがないので、とりあえず当初の予定通り友信の家へ向かうことにしたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そういや変身とか充電の方法、オスピから聞いてなかったな」

「……」

 

 

 後日の昼休み。いつも通り友信と同じ机で弁当をつついていると、不意に彼がそんなことを言ってきた。

 俺は言葉を失った。あと床に箸が落っこちた。

 

「……え、ヤバくね?」

「この状況で闇のエネルギー持った奴が出てきたら詰みだぜ」

「どうしよう……!?」

 

 あっけらかんとしている友信とは対照的にオレは焦りまくりだ。世界の運命が掛かってるとか言われた大事な仕事なのに、やり方が分からないとなれば流石に悠長にしてはいられない。

 どうしようどうしよう──とそんな風に焦っていると、解放されている教室の窓から、見覚えのあるぬいぐるみが飛び込んできた。

 

「お待たせメスッ!」

「おわっ!?」

 

 そいつは机の上の丁度弁当が置かれていない位置に着地し、突然のことで驚いたオレはのけ反って椅子ごと転んだ。

 

「いてて……」

 

 痛む頭を押さえながら椅子と体勢を立て直すと、ようやく机の上の存在を認識することが出来た。

 クマのぬいぐるみの様な見た目で、二足歩行のいかにもなマスコットキャラクター──見間違うはずもなく昨日出会ったあの妖精もどきだ。

 

「お、オスピ?」

「はいメス! オスピだメス!」

「何で生きてんの……?」

 

 当然の疑問を投げかけると、オスピは笑顔で答えてくれる。

 

「僕の本体はエジプトの遺跡の中に眠っている古代兵器の水晶なんだメス!」

「……その体は?」

「移動用の肉体メス! 僕の力に耐えられなくて消滅するのが早いけど、予備はあと19190721体いるメスよ!」

 

 少しでも可哀想だとか考えたオレが馬鹿だった。もう絶対こいつに憐れみとか向けねぇ。

 

「……で、オスピ。聞きたいことがあるんだけど」

「何でもどうぞメス」

「まず変身ってどうやるんだ?」

 

 腕に着けた時計を見せながら聞くと、オスピはふわふわなぬいぐるみの手でリューズの部分に触れた。

 

「ここを押し込みながら『武装転身!』って言うと変身できるメス」

「掛け声どうにかならない?」

「無理メス。いっそのこと開き直ってカッコよく叫んだ方が気にならないメスよ」

 

 恥ずかしすぎるぅ……とオレが泣く泣く引き下がると、今度は友信がオスピに声をかける。

 

「俺も質問いいか。充電のやり方聞いてなかったから教えてくれ」

「そんなのもちろん女の子に変身した状態のテムくんとセック「おい」ごめんなさい他にも方法あります」

 

 気がついたら友信がオスピを締め上げてた。オレも締め上げたい気持ちだった。えっちなこと・ダメ絶対。

 

「基本的には充電器が光の戦士の肉体に触れることで充電できるメス。脇やおへそ、胸や口の中とか、エネルギーが通りやすい箇所を長時間触るといいメスね」

「……ゆ、友信……」

「……他に方法はないのか?」

「申し訳ないけど無いメス。僕がセッ……アレを提案したのも”内側から注いだ方が早いから”という理由メス。ふざけて言ったわけではないメス」

 

 でも流石に突然すぎたしそこは本当にごめんなさいメス──そう平謝りするオスピをよそに、オレと友信はお互いに顔を見合わせて言葉を失っていた。

 緊張のあまり首筋に汗が滲む。二人して顔を真っ青にし、喉を鳴らして生唾を飲み込んだ。

 あり得ない。充電の方法があまりにもエロ同人すぎる。女に変身して親友に身体をまさぐられないとヒーローとして戦えないなんて、今時エロゲーでもなさそうなシチュエーションだ。

 

「……ど、どうする、テム」

「そ、そりゃお前……えぇっと……」

 

 わからない。どうしよう。やっぱりやめようかな。 

 

「あっ!!」

 

 うわっ、何だ急にオスピ。

 

「センサーが感じ取ったメス! 街のほうに闇エネルギーをかなり増幅させた悪者がいるメス! 行かないとヤバいメスッ!」

「ちょっ」

「マジか」

 

 こんな状況でそんなこと言われても困るというか、速攻で気持ちを切り替えられるほど人間やめてないというか。

 二人してしどろもどろの立ち往生。ついでに昼休み終了の予鈴。教室に入ってくる他の生徒たち、そして教師。

 なんだあのぬいぐるみ、あの二人何してんだ、さっさと授業の用意しろ──各々の言葉を横から受け、更に焦るオレたちは混乱しきっていて行動に移れない。

 それを察したのか、突然オスピが先日のように宙に浮いて教室の中央へ移動した。

 

「僕たちの事は何か都合よく解釈して勝手に納得しちゃうビーム!!!」

「うわー!」

「ぎゃあー!」

 

 オスピがオレと友信以外の全員に謎のビームを照射した。

 急に何するんだあのぬいぐるみ……といった気持ちで周囲を見渡すと、全員何事も無かったかのように椅子に座り始めている。

 

「目須落と市令加は校外学習行くんだったか?」

「いってら~」

「あんまりガイドのオスッピィさんに迷惑かけないようにな」

 

 クラスメイトや先生たちの変貌ぶりに恐怖する男二人。比喩なしに完全な洗脳をノールックでしてるの怖すぎる。

 

「オスピ……お前……」

「ああぁー! 力使ったから消えちゃうメスぅー!!」

「ちょっと待て! お前まさか俺たちにも洗脳とか──」

「光のエネルギーを持ってる君たち二人には干渉できないシステムが組み込まれてるから安心してほしいメス消えるアッ」

 

 そのまま消滅したオスピにもクラスメイト達は驚かず、授業を受け始めている。

 少し不信感が湧いてきた。あのオスピとかいう謎生物の口車に乗ったのはまずかったのではなかろうか。

 

「……親友ぅ」

「大丈夫だテム。アイツが本当に危険だと思ったらエジプトまで行って水晶をぶっ壊せばいい」

「物騒……」

「とにかく行こう。まずは目先のヤバい奴を何とかしないと」

 

 オスピの事は置いといて、まずは闇のエネルギー保持者を何とかしようという話にまとまり、オレと友信は学校を後にしたのだった。

 

 

 

 

 

 

「着いた! ここだメス!」

 

 ほんの数分で合流した三体目のオスピと共にたどり着いたのは、市街地の外れにある三階建てのビルだった。

 看板にはテナント募集と『新感覚マッサージ体験!』と銘打たれている。控えめに言って怪しさ満点だ。

 

「ここのマッサージを受けた女性たちが次々に被害に遭っている、という噂を耳にしたメス。そして中からは闇のエネルギーを感じるから、ここにいるのは敵で間違いないメス!」

「被害って、具体的にはどんな?」

「店を出た後は記憶が飛んでいて、お財布の中身がすっからかんになってるみたいメス。多分悪徳鬼畜マッサージ師メスねぇ」

 

 マッサージで記憶が飛ぶってヤバくない? 本当にやってるのはマッサージじゃなくて怪しい実験とかじゃないの。

 

「これ以上被害が出る前に悪のエネルギーを浄化して、それから警察にお譲りするべきメス」

 

 とにかくまずは敵を倒すことからメス、という言葉に頷き、オレは腕時計のリューズ部分を押し込んで──叫ぶ。

 

 

『武装転身ッ!』

 

 

 その声と共にデバイスの時計盤が白く輝き、その眩い光はあっという間にオレを包み込んでいく。

 そのまま不思議な空間に移動すると──オレは全裸になった。

 

『っ!? ッ!??』

 

 光に包まれているとはいえ急に街中で全裸になったら焦る。

 だが、自らの体を隠そうとするよりも先に、俺の体には変化が生じた。

 

『うわっ、縮んでる……!?』

 

 下を見ていると自分の体が急速に収縮していることに気がついた。そしていつの間にか旧スクール水着の様なタイツのスーツを纏っており、周囲に出現した機械めいた装備たちが次々とオレの体に装着されていく。

 

『うおぉ……』

 

 正直に言うと装備はカッコよかった。いかにも武装している感じで。

 

『ぉわっ! 髪が!』

 

 しかしそれを気にする余裕もないまま、俺の髪が腰元まで伸びて豪奢な金色に変色してしまった。

 最後にその長い金髪ロングの後ろ髪が一つに纏まってポニーテールになると、次第に周囲の不思議な光は消えていき──

 

 

「……あっ」

 

 

 変身は完了した。

 横を見てみると、目を見開いている友信の姿がある。背丈が同じくらいだった先ほどまでとは打って変わり、オレが彼を見上げる形になっていた。

 

「……お、お前、本当にテムか……?」

 

 頷いたが、友信は額に手を当てて困っている。どうやらこっちの想像以上に衝撃を受けてしまったらしい。

 オレもビルのガラスの入り口に反射する自分の姿を見て、うわぁと変な声が出た。

 

「これがオレかぁ……」

 

 金髪ポニテロリになっている。幼すぎる肉体ではないものの、少なくとも中学生くらいまでは遡っている。

 まじまじと見つめてみても、オレの気持ちに連動して苦笑いしているので、やはり目の前に映っている存在は自分だということを再認識した。

 マジか。まって、これ──

 

「かわいい……!」

 

 めっちゃ美少女だった。案外気分は悪くない。

 

「なぁ友信! オレめっちゃかわいくね!?」

「……確かに可愛いな。女体化したショックで気にしてなかった」

 

 改めてオレの姿を観察すると、友信もちょっと口角が上がった。

 

「なにニヤついてんだよ~」

「う、うっせ。中身がお前じゃなきゃ一目惚れしてるとかそんな事考えてねぇからな」

「お前ロリコンだったの……?」

 

 親友の知られざる秘密を暴いてしまった。これもオレのかわいさ故か。

 大丈夫だ安心しろ。お前がマジのロリコンでもオレは軽蔑せず一緒にいてやるからな、親友だからな。

 

「いやいや、現実のロリには興味ねぇよ? 普通に守備範囲外だよ?」

「外面を気にするロリコンは皆そう言うんだぞ」

「だっ、だから違うんだって。今のテムは……なんつーか、二次元の美少女っぽいっていうか、浮世離れした可愛さというか……」

 

 友信は必死に取り繕いながら手でろくろを回している。その姿は何とも哀れだった。

 

「どうしようオスピ。親友が気持ち悪い」

「最初は決まって戸惑うものメス。それより早く突入しようメス!」

 

 一言で場をまとめたオスピに従い、オレたちはビルの中へと足を踏み入れた。件のマッサージ店は三階にあるらしいので、三人で階段を進んでいく。

 途中ガッシャガッシャとオレの装備が音を鳴らしていて少しうるさいが、重装備をしている実感は何とも心地良い。

 胸や脇、お腹などの大事な部分は覆われていないものの、腕に装着されたガントレットや足を包んでいるメカメカしいブーツはいかにも防御力が高そうな見た目だ。バーニアとか隠された機能もありそう。

 

「ふふふ……」

「……どうしたテム?」

「なんか体の内側から力が溢れてくる感じがするんだ。あとこの装備を使ってこれから戦うってなると……すっげぇ興奮する!」

 

 ヒーローものは嫌いじゃない。幼い頃にはいつも変身をして悪い奴をぶっ飛ばす妄想をしてたし、現実でそれができるとなれば気分も高揚するってもんだ。

 

「バーン!と殴ってドーン!と爆発させてオレが勝つからな! 見とけよ!」

「テムのやつがおかしいんだけど」

「光の装備は人を正直にさせるメス。多分これがテムくんの素の状態なんだろうメスね」

 

 どんな敵が来ても負ける気がしねぇぜ。よく見たら腰回りに取っ手みたいなのもあるし、これ引き抜いたらブレードとかにもなるんだろうな。ワクワクが止まらねぇな。

 

「ふはははー!」

「テム、うるさい。……ていうかオスピ、普通に変身しちゃってるけど、今のテムの電池(エネルギー)残量ってどうなってるんだ?」

「初回変身時は100パーセント充電されてるメス」

 

 何かのキャンペーンみたいだな──何てくだらない事を考えていると、いつの間にか目的地であるマッサージ店のドアの前に立っていた。

 

「開けろ! デトロイト市警だ!」

 

 そのまま勢いよくオレが先行して突入すると、案外広い店内へとたどり着く。一旦安全を確認してから後ろの二人と合流し、待合室らしき部屋から出てカーテンを潜ると、そこには一台のベッドと一人の男が立っていた。

 その男は俺たちの存在に気がつくと、すぐ近くのカウンターにあるノートパソコンを操作してから声を上げる。

 

「おや、本日ご予約の方ではないですね。申し訳ないのですが、受付の時間は三十分前に終了してしまっていて……」

 

 サービス業にしては妙な、まるで客を突っぱねるような声音とセリフを吐くその男に、オスピは果敢にも立ち向かう。

 

「とぼけるなメス! お前が闇のエネルギーを持っていることは既に把握済みメス!」

「なんと……」

 

 大して驚いた様子もなく男はパソコンから離れ、再び俺たちの前に立ちふさがる。

 

「バレてしまっては仕様がない。……そうですか、あなたが」

「むっ」

 

 視線をオスピからオレへと変え、自分の顎に手を添えて興味深そうに頷く男。

 

「エネルギーの提供者が言っていた光の戦士とやらが貴女ですね?」

「そうだ。お前をぶっ飛ばしにきた」

 

 物騒なお嬢さんだ、と男は小さく笑うが、それにかまわずオレは腰のブレードを引き抜いた。

 こっちはさっさと戦闘を終わらせて男に戻って学校に帰らなきゃいけないのだ。いちいち会話をする時間すら惜しい。闇のエネルギーを持っている、という自供が取れたならあとは倒してしまえばいいだけだ。

 

「覚悟しろ! お前なんか三分で撃沈させてやるからな!!」

 

 

 ……

 

 …………

 

 ………………

 

 

 三分後。

 

「んひっ♡ んあぁっ、らめぇっ♡♡」

 

 オレは敗北していた。

 

「ほら、どうですか? こことか……!」

「んくぅぅッ♡ はぅっ、そこグリグリしないれぇっ♡♡」

 

 メカメカしい装備を全て外されて、ピッチリなスーツだけになったオレをマッサージ師はベッドの上で弄んでいる。オレの感じる箇所を、弱い部分をこれでもかというほど刺激して離さない。

 

「声が我慢出来てませんよ? 私を三分で撃沈させるんじゃなかったんですか? ふふっ」

「むりぃ……♡ 三分でまけちゃったぁ……♡」

 

 そう、たった三分で敗北を期してしまったオレは──

 

「ここを刺激すると肝臓の働きが良くなるんですよ……!」

「んひぃぃっ♡♡ 足裏の真ん中を中指の第二関節でグリグリ押し込まれちゃってるぅぅっ♡♡」

 

 ──足つぼマッサージをお見舞いされていたのだった。

 

「親指の付け根を刺激すれば首の凝りが取れますよぉ!」

「ひゃうぅぅ♡ 絶妙な力加減だから痛いのになぜか気持ちいぃっ♡♡」

「目の疲れに効く部分も押しちゃいますからねぇ!」

 

 好き勝手されてるのに……悔しい、でも感じちゃう……。

 

「オラッ! リンパ腺ほぐされてイけッ! 足裏押されまくって健康になれッ!!」

「はひぃっ♡ なりゅっ、なりましゅぅぅ♡♡ 慣れてない足つぼマッサージで血行促進されて体全部が健康になっちゃいまひゅうぅぅぅっ♡♡♡」

 

 ビクンビクン。

 体が跳ね、体中に血液が循環されていく。

 気がつけば肩こりや目の疲れも吹っ飛んでいて、オレは健康体そのものになっていた。

 

「あっ……はぅ……♡」

「ふぅ、いい仕事した。自首しよ」

 

 オレのマッサージを終えた男はベッドから離れ、カウンターの下から金庫と鍵を取り出し、マッサージを傍観していた友信にそれを渡した。

 

「この中に女性のお客様たちから頂いたお金が入ってます。あとリストと連絡先も入っているので、これを警察に渡してください」

「お、おう」

「では失礼しますね。早く出頭しなくては」

 

 オスピと友信に深くお辞儀をしたマッサージ師は、ベッドの上の健康になったオレを放置して、そのままゆっくりと階段を下りていった。

 それを見送った友信は隣で浮かんでいるぬいぐるみに声をかける。

 

「オスピ、あの男本当に自首するのか?」

「嘘は言ってなかったメス。それに完全に闇のエネルギーが浄化されていたし、一応監視用ドローンも付けたから問題ないメスよ」

「わかった」

 

 色々と納得した様子の友信はベッドに赴き、健康体になったはいいものの力が抜けて動けないオレを背負った。

 謎だ。どうしてオレをマッサージしていただけのあの男から闇エネルギーが無くなり──あと二人はどうしてマッサージされてるオレを助けなかったのか。

 

「ゆ、友信……♡ どうなってるんだ……?♡」

「帰ったら説明するよ。とりあえず学校はサボって俺んちに戻ろう」

「わかっひゃぁ……♡」

 

 まだビクビクしたままのオレはそのまま友信の背中に居座り、結局家までおんぶされたのであった。

 

 

 

 

 

 

「……つまり?」

 

 友信の部屋のベッドに座りながら、オレは彼に聞き返す。

 

「……つまりマッサージ師はテムに直接触れてたから闇のエネルギーが浄化されてて、だから俺たちは手出ししなかった。あとお前はいろいろあってまだ男には戻れない」

「なんで!!!」

「今さっき全部説明しただろ!」

 

 無理。最初の説明はオレの脳が自動的に拒否してたから頭に入ってない。もう一回説明しろ。オレが納得する説明をしろ。さもないと怒る。

 後半、とくに男に戻れないって部分を詳しくな!

 

「だから……光の戦士は電池残量が0パーセントになった状態で充電器と()()しないと元の性別に戻れないんだ」

「……」

 

 やっぱり意味わかんないです。

 

「お前の電池残量は今20。戻るにはまた武装転身して、適当に動いて電池を消費させて、最後に俺とキスしなきゃならない」

「いや何で普通に変身解除できないんだよ!? 武装も服装も全部戻せるのに体だけ金髪ロリのままなのおかしいだろ!!」

「それはあのオスピとかいうアホに聞いてくれ……」

 

 アイツはついさっき消えた。代わりのオスピが来るまではまだ時間がかかるので、諸々の説明を友信が引き受けた形になっている。

 

「何なんだよぉ……!」

 

 意味が分からない。どうして戻れない。オレがこの姿を『かわいい』だなんて言って余裕ありげに振舞っていたのは、あくまでこれが『変身』した姿だったからだ。それが簡単には戻れない状態だと分かったなら、この姿への好感度などマイナスに振り切ってもおかしくない。

 

「エネルギーがゼロになってようやく戻れるってのは百歩譲って分かるけど……何で親友とキスしなきゃ戻れねぇんだ……」

「……どうするんだテム? やっぱりエジプトの遺跡行って水晶ぶっ壊すか?」

 

 友信から感じる気遣いは本物だ。オレに寄り添うように、心配を隠しきれてない不安げな表情で解決策を思案してくれている。

 ここで冗談でも『じゃあキスして戻ろうぜ』なんて事は口にしない彼に、オレは心底安心した。やっぱり真に心配してくれる友信は一番の親友だ。

 

「……よしっ!」

「テム?」

 

 ただ、親友だからといって無条件に甘えてばかりではダメだ。

 光の戦士として戦う道を選んだのは、他でもないオレ自身。ならばこの戦いを終わらせるのもオレの役目。

 このオレがしっかり戦って、友信を充電器なんて役目から一刻も早く解放してやるべきなんだ。

 

「男に戻ってまた変身するってなると、単純にキスする回数が増えちまう。……だからオレが男に戻るのは、魔王復活を完全に阻止した後だ!」

「……大丈夫なのか、テム。それってこの戦いが終わるまで、女のままでいるってことだぞ」

「余裕だっつの! むしろ今のうちに金髪ロリを楽しんでやるぜ!」

 

 空元気も突き抜ければマジ元気になる。こうして強がっていれば、きっといつか本当に強くなれる。

 そうだ、オレはこれ以上親友に心配なんてかけさせない。オレは強い。オレは負けない。

 

「それよりさ、戦いが終わった後の願い事何にするか考えようぜ」

「……そうだな」

 

 いつだって親友には笑っていて欲しいんだ。オレのせいで不安になんてさせたくないし、こいつの為にオレは男に戻る。絶対すぐに戻ってみせる。そんで厄介ごとを持ってきた敵の親玉もぶん殴る!

 

 

 

 

 

 

「……それで夜通し話し合いしてて、一回も充電しなかったメス?」

「「ごめんなさい」」

「謝られても困るメス……」

 

 後日。休みの日なのでそのまま友信の家でゴロゴロしてたところ、オレたちは苦い顔をしたオスピに雷を食らっていた。口調は優しいが確実にちょっと怒っている。

 

「いつ敵が現れるか分からないメスよ? エネルギーが足りなくなると武装が解除されて、闇のエネルギーも浄化できなくなるメス。そうなると危ないのは君たちメス」

「うぐ……」

「まさか敵の目の前で充電するわけにもいかないメスし……光のエネルギーは消費が激しくて燃費が悪いから、充電はできるときにやっといた方がいいメス」

 

 ごもっともな指摘であった。オスピに協力している以上オレたちはもうただの被害者ではないし、エネルギー管理は自己責任だ。元々はオスピが持ってきた厄介ごととはいえ、更に元を辿ればそれは魔王復活なんてアホなことを企んだ黒幕に責任があるので、何でもかんでもオスピのせいにするのは筋違いだろう。

 

「今日は二人とも休みメスよね? 出来れば今日のうちに充電をしておいて欲しいメス」

「どれくらい充電すれば十分なんだ?」

「最低でも80パーセントはないと駄目メス。もし充電が間に合わないようだったら僕が何とか時間を稼ぐから、その隙に充電してクレメンス」

 

 それじゃあ僕は邪魔になるだろうから消えるメスねー、といってオスピは霧散した。儚い命である。

 

 

 部屋に残されたのは、オレと友信の二人だけ。

 

 

「「……」」

 

 お互い沈黙してしまっていて、妙な空気が流れている。これからするであろう事を想像すると、そうなってしまうのも当然だ。

 充電の方法はもちろん覚えている。胸やおへそや口の中などのエネルギーが通りやすい場所に──ともかく友信がオレの体を触ればいい。

 それも少し触るだけではなく、エネルギーが浸透するようにじっくり、と。

 

「……っ!」

 

 よし、ここはオレから言おう。行為の内容からしてきっと友信からは言いづらいだろうから。

 

「し、親友よ! 充電なんてさっさと終わらせちまおうぜ!」

「えっ……だ、大丈夫……か?」

 

 余裕に決まってるだろ舐めんな。こんなのただの充電行為。エロ漫画のヒロインじゃあるまいし、お前に体をまさぐられたって何も気にしないから好きなように触ってくれ。んでもって早めに終わらせてくれ。

 

「そう……か? テムが平気なら……ょ、よし、分かった」

 

 渋々ながら覚悟を決めたらしい友信はスマホを取り出し、とあるアプリをタップした。それはオスピが作った充電状況確認アプリで、現在は20%と数字のみが表示されている。これで残量を逐一確認しながら充電しようって話だ。

 

「80パーセントまでいったらすぐ止めるからな。もし途中で気分が悪くなったりしたら遠慮なく俺に言ってくれよ」

「分かってるって。……っと、ほれほれ、早く触れ~」

 

 ベッドの上に仰臥したオレは四肢から力を抜き、全てを友信に任せることとした。オレがどうこう言うより、普段から気配りができる親友に全部任せた方が確実だと思う。きっとオレが苦しくならないような触り方をしてくれる筈だし、そうでなくともコイツが相手なら我慢できるし問題ない。

 

「っ……」

「……友信? 早くしろよ」

「あ、あぁ」

 

 唾を飲み込む友信。女になってるとはいえ、まさかオレに興奮するとは思えないし、きっとかなり緊張しているんだろう。ここはオレが緊張をほぐしてやらないと。

 

「なぁなぁ友信、賭けしようぜ」

「か、賭け?」

「オレってこれからくすぐられるワケだろ? で、オレが笑ったらお前の勝ちで、笑わなかったらオレの勝ちな。制限時間は五分で、負けた方はコンビニ行って高いアイス買ってくる。もちろん奢りな!」

 

 充電のスピードがどんなものかは知らないが、ゲーム感覚で五分もやれば要領を得て緊張もなくなるはずだ。そうなればこの賭けの後の充電はきっと心配ない。

 

「……おう、上等じゃねぇか。絶対負かしてやるからな」

「あっ、脇と足の裏は無しな」

「わかった。……賭けを仕掛けたこと後悔しろ?」

「上等だ! かかってきやがれ!」

 

 ん、少なくともさっきまでの妙な空気はどっかいったな。よしよし。

 

「よっと……」

 

 友信はベッドの上に上がり、オレに覆いかぶさるように膝立ちの四つん這いになった。

 

「……なんか押し倒されてるみたいだな」

「俺がお前を押し倒すときなんざ一生来ないから安心してくれ」

「そりゃそーだ、男同士だからな。ハハッ」

 

 オレが軽く笑うと、友信はもう一度ごくりと喉を鳴らし──右手でオレのシャツを捲って、お腹とへそを露わにした。

 今のオレの恰好はTシャツにパーカーと、高校のジャージの半ズボンだ。どれも女になった今のオレにはブカブカで、友信が軽く触るだけですぐにはだけてしまう。

 

「さ、触るぞ」

「どーんとこい」

 

 余裕を崩さずにそう言うと、ゆっくりと近づいてきた友信の手のひらが、オレのお腹に触れた。

 

「んっ……」

 

 まだ緊張が抜けきらない親友の触り方はおっかなびっくりで、妙にこそばゆくちょっとだけ声を漏らしてしまった。お腹に触れる彼の指先は少し冷えていて、体の小さい女になって平常時の体温が高くなっているオレにはいささか冷たい。

 

「テム?」

「わ、笑ってない。笑ってないぞ」

「……続けても大丈夫か?」

 

 かかってきなさい、と啖呵を切ったオレに後押しされるようにして、友信の触り方に熱が入った。

 オスピが言っていたエネルギーの通りやすい場所──特におへそとその周囲を撫でるように触っていき、時たまへそに軽く指を沈ませてこっちの様子を確認してくる。

 

「んんっ……」

 

 ただへそをなぞられてるだけなのに、どうしてか声が出てしまう。くすぐったさとは別の感覚をじんわりと感じてしまい、背筋が痺れる。

 

「ひぅ……んっ、ぁ……」

「て、テム」

「まっ、まだ笑ってな……はぅっ」

 

 我慢だ、我慢。これは充電をしてるだけなんだから、余計な声を出して友信に気を遣わせちゃダメなんだ。

 

「ぅぁぁ……♡」

「変な声出てるぞ……? や、やめるか?」

「う、うるせぇっ、そんなの出てな……ふあぅっ♡」

 

 お前が変な触り方するから声が出てるんだよ。加減しろバカ。いや言わないけど。

 

「ふぅっ、んっ……♡ へそ、ばっかりぃ……♡」

「ここがエネルギー通りやすいって言ってたからな。……おい、本当にだいじょぶか?」

「ば、ばかっ、こっち見んなぁ……!」

 

 まじまじとオレの顔を観察しようとしてきたので、慌てて両手で顔を隠した。脱力してだらしなくなっている今の表情を見られるわけにはいかない。

 

 

 ──そんなこんなで、決していかがわしくはないが少なくとも健全ではない充電行為が二時間ほど続いて、気がついたらエネルギーは100パーセントになってた。

 

 

 

 

 

 

「ここか。祭りの場所は」

 

 三日後。オレたちはオスピに付いていく形で再び市街地の外れに訪れていた。

 目の前には『ラーメンTS屋』という看板と古ぼけた建物が一軒。どうやら今回はここに闇の手先がいるらしい。

 

「よし行くぞさっさとぶっ飛ばして終わらせるぞ」

「テムくんがやる気に満ち溢れてるけど目が怖いメス」

『武装転身!!!!!!!!!!』

「そして叫び声が凄い」

 

 オレはキレているのだ。まさか親友とあんな事やこんな事までする羽目になったのも、全ては魔王復活を企んでる黒幕のせいだ。もう殴るどころかぶっ殺さないと気が済まない領域にまで達している。あれがあった三日前にオレの怒りの臨界点は限界を超えた。殺す。

 

「いくぞ!!!」

「友信くん、テムくん何かあったメス?」

「充電の内容知ってるくせに本当にわかんねぇのかお前? ぶっ飛ばすぞ」

「二人とも怖い……」

 

 燃費の悪い光エネルギー、そして充電に必要な行為。それらを考えた結果『一刻も早く敵勢力を殲滅しよう』という話になったのだ。親友におへそいじられたりお腹触られ続けるのは流石にまずい。あんなの続けてたら頭がおかしくなる。なので早期決着が急務というわけだ。

 

「悪徳ラーメン屋がぁ!!」

「わわっ、何奴!?」

 

 閉店の看板を無視して勢いよく店内に入ると、厨房でスープの仕込みをしている若い女性が目に入った。

 

「食ったら性別が反転するラーメンを出してる不届き者はテメェか!?」

「むぅ……もう嗅ぎつけられたか」

「ぶっ殺す!!」

「ちょちょちょ待って待って!」

 

 オレがブレードを引き抜いて厨房に乗り込もうとすると、店主の女が両手を挙げた。見るからに白旗のポーズだ。

 それを理解してギリギリで堪えて立ち止まると、女は観念したかのように調理器具をまな板の上に置いた。

 

「こ、降参だよ。見つかったからには店じまいする。闇のエネルギーを使った素晴らしいラーメンの研究はここまでだ」

「本当だな?」

「うん。……でも」

 

 ちらりと鍋の方に目配せする女。何か言いたげな様子なので頷いて続きを促すと、彼女はそのまま喋った。

 

「いろんなラーメンを作ったけど、今回のは正真正銘ただのラーメンなんだ。そして私の最高傑作でもある」

「何が言いたい?」

「私のラーメン、食べてくれないか? 店じまいをするということは、君が最後のお客さんなんだ。これを誰かに食べて貰わないと……死んでも死にきれないよ」

 

 むむ、本気の目をしてやがる。料理人の意地というやつか。

 ……ふん! いいだろう、食ってやる。この目須落テムがてめーのラーメンを食って、散々な酷評をして心に傷を負わせてやる。どうせ闇のエネルギーを使った料理を出してたやつだし、遠慮はいらないはずだ。オレの鬱憤をぶつけてやらぁ!

 

「出しな……てめーの……『最後の……ラーメン』を……ッ!」

 

 

 ……

 

 …………

 

 ………………

 

 

 五分後。

 

「ッ♡ ……っ♡ ~っ♡♡」

 

 オレは美味なるラーメンに敗北していた。

 

「どうですお客さん、うちのラストラーメンは?」

「おっ、おいひっ♡ こってりしてるのに食べやすくてお箸がとまらなひっ♡♡ コクが深くて舌全体に幸福感が染み渡りゅうぅ……っ♡♡」

 

 そいつぁよかった、と満足げに頷く店主の背中からは、黒い靄の様なものが放出されている。

 

「凄いメス……心の底から美味しさを味わってるテムくんの笑顔が、見事に店主の闇のエネルギーを浄化させてるメス」

「それ凄いのか?」

「武器も使わず、この前みたいに直接触れてもいないのにこれはヤバいメス! テムくんは歴代最強の光の戦士かもしれないメス!」

「絵面的にはいつも負けてるんだけどな」

 

 オレが黙々とラーメンを食べ進めている中、店主の女はエプロンを外してオレの隣の席に座った。

 

「ねっ、このラーメン好き?」

「ズズ……モグモグ、ゴクン。──しゅきっ♡ らいしゅきっ♡♡ ンズズ……」

「そっか、料理人冥利に尽きるね。……んじゃあ自首しようかな」

 

 そう言って席を立った女店主は、入り口で立ち往生している友信の肩に手を置いた。

 

「私の中の闇のエネルギーは全部消えたから、それが作用して反転してたお客さんたちの性別も戻ってるよ。安心してね」

「アッハイ」

「あと君の分のラーメンもさっきテーブルに置いといたから、良かったら食べてね。それじゃ」

 

 手をひらひらと振りながら、至高のラーメンを生み出した天才料理人は店を出ていく。この店の目の前に交番があるので、ここからでも自首の様子はよく見えた。料理人としてのプライドなのか、嘘はつかず潔く出頭したらしい。

 

「ズズズ……んぐんぐ、ゴクン。──んひゅうぅぅ♡ おいひぃぃ♡」

「お前それわざとやってねぇか?」

「友信も食えよ。うめぇから」

「素に戻ってるぞ」

 

 なんやかんやあって、今回も無事一件落着したらしい。ゴテゴテな装備を付けてるのにその一切を使わずに事件を解決していることには少々不満があるものの、争わずに済むならそれに越したことはない。

 そんな心境を胸に、オレと友信は天才料理人の最高傑作ラーメンに舌鼓を打つのであった。

 

 

 

 

 

 

「……何でこんなにエネルギー減ってるんだ」

 

 後日、昼休みの教室内にて。オレが友信のスマホを見ながらそんなセリフを吐いた。エネルギー残量が再び20%にまで減っているのだ。

 

「おかしくね? 昨日の事件はオレ武装しただけでほとんど戦ってないぞ? ラーメン食ってただけだぞ?」

 

 オスピに根回しを頼んで女の状態で登校しても周囲に違和感を抱かれなかったオレは、今誰よりも違和感を抱いていた。

 そんなオレを、友信は弁当を食いながら何でもないように相手している。

 

「んぐんぐ……っぅん。えっとなぁ……確かオスピの話だと、光のエネルギーを消費することで闇のエネルギーを浄化してるらしいぞ。だから減ってるんだろ」

 

 思えば最初のマッサージ師と対峙した時もほとんど戦ってなかった。

 一人の闇エネルギーを消すために使うのが80パーセントという計算になるので、もしガチ戦闘をすることになったら20パーセントだけで相手をどうにかしなくちゃならないってことになる。

 

「友信、あのメカ装備ってエネルギー消費量どれくらいなんだ……?」

「分かんねぇよな。なんたってまともな戦闘は一回もしてないからな」

 

 幸か不幸か戦わなかった影響で自分たちの装備を把握しきれていない。

 

「テム、提案なんだけど」

「何だ?」

「装備の試運転してみないか? 敵も毎回自首するやつとは限らないし、練習しといて損はないだろ」

 

 え、やだ。

 

「な、何で?」

「だって使ったらその分エネルギーが減るだろ?」

「そりゃそうだろ。何かおかしいか?」

「……充電がもっと必要になる」

 

 オレのその言葉を聞いた瞬間、親友の箸がピタリと止まった。どうやら充電の事を失念していたらしい。

 

「……やめとくか」

 

 申し訳なさそうな顔をする友信。別にそんな顔をさせたいわけじゃなかったのだが──むっ、待て。

 もし本当にヤバい奴との戦闘になったとき、友信を守れるのはオレだけだ。

 そのオレが装備も使えないクソ雑魚だったら──友信はどうなる?

 

「……」

 

 危険に晒してしまう。最悪守れないかもしれない。

 それは嫌だ。何があってもそれだけは許されない。全てが終わった後の願い事なんてどうでもよくて、オレの戦う理由は巻き込んでしまった親友を解放するためだ。

 それなのに親友を守れないのは本末転倒もいいところ。よくよく考えれば装備の試運転と練習、それからエネルギー消費量の確認は急務だ。

 

「……友信、やっぱり装備の練習やろう」

「え、急にどうした? お前それは……」

「いいんだよ、あんなの別に。それより自分の装備を知らない方がヤバいし」

 

 オレの意思を察したのか、友信はそれ以上食い下がることはなく。

 

「……分かった。じゃあ放課後に特訓だな」

「おう! 終わったらオレの事いっぱい触って充電してくれよな!」

 

 ざわざわ。

 

「ばっバカ! そういうこと大声で言うんじゃねーよ!?」

 

 慌てふためく友信だったが、場を収められるオスピは五分前に消滅したばかりであった。

 

 

 

 

 

 

「て、テム? 本当にやるのか……?」

 

 いつも通り友信の部屋に来たオレを前にして、彼は見て分かるほどに狼狽していた。首に汗を滲ませて、視線は右往左往。

 そんなハッキリとこっちの目を見て話せない親友へ向かって、オレは改めて先ほど言った言葉を復唱する。

 

「おう。オレの口の中に指を突っ込んでくれ」

「何でだよ……」

 

 女になったとはいえ、親友のオレの口内に指を入れるとなれば流石に引いてもおかしくはない。ここは丁寧な説明が必要みたいだ。

 

「オスピは『内側から注いだ方が早い』って言ってただろ? なら体の外から触るより、内側に触れる方が充電も手っ取り早いと思うんだ」

「だからって……お、お前はいいのかよ?」

「いいからこうして話してるんだろ。流石にセッ……アレをするわけにもいかないし、効率を考えたらこの方法が一番早い」

 

 だから頼むよ、親友。

 そう上目遣いで懇願してみると──友信は渋々頷いてくれた。

 今のオレたちには効率重視の考え方が必要だ。毎度毎度おへそを弄られて喘ぐのも、それが最高率なら妥協するが──それよりいい方法があるならそっちにするべきだ。あとちょっと気持ちよくなってしまうのが悔しいので正直アレはやめたかった。

 そんなこんなで現在。オレと友信はベッドの上に座って向かい合い、オレは口を開けて待機して、友信は右手の親指を入れる寸前まできている。

 

「……入れるぞ」

「いい()ー」

 

 オレの返事と共に、友信の親指が口内へと侵入してきた。

 

「んっ、はむっ」

「っ……!」

 

 顎が疲れるから充電行為中は口を閉じる、というのは予め伝えておいたのだが、それでも驚いてしまったのか友信の肩が跳ねた。

 

「……んっ」

「あ、あぁ。動かすからな」

 

 声で続きを促すと、友信は観念して親指を動かし始めた。

 

「ちゅぷ、んぷっ……」

 

 ゆっくりと動かされる指が、口腔内を撫でまわしていく。頬の内側を指の腹で擦ったと思えば、次はヌルヌルな舌の表面を丹念に遊ぶ友信に、オレは少し安心を覚えた。

 

「っん、はむ……ンンンっ」

 

 それは何故か? オスピの話曰くエネルギーの充電とは、充電器の役割を担っている人間の『触る』もしくは『送り込む』という意思が強ければ強いほど、エネルギー供給の効率が良いらしい。

 なので今は、友信に遠慮することなく指でオレの口腔内を弄んでもらう事こそが重要なのだ。

 

「んぷっ……チュぷ……っん、ぐぷっ」

 

 乱暴に、とまではいかなくても、好きなように遊んでもらう程度が丁度いい。だから友信がやりやすいように、それこそ興奮してくれるように此方からも舌を動かしたり、指をしゃぶったりした方がいい。

 

「な、なぁテム……」

「んぅ……♡?」

 

 友信が待ったをかけた。いったいどうしたのだろうか。

 一旦唇を開け、指から口を離した。

 

「んぷぁ……どうした?」

「あの、ちょっと待ってくれ。よく考えなくてもこの状況いろいろとおかしいよな?」

「おかしくねーよ、全部が合理的な判断に基づく行動だろ。オレの口を弄るのは嫌だろうけど……」

「い、いや、そういうわけじゃ……」

「なら中断せずに続けてくれ。ちゃーんと百パーセントになるようにな? にひひっ」

 

 おどけて行為を促し、再び口を開ける。

 すると流石に堅物の友信も折れたらしく、今度は迷った様子もなく口腔内に指を突っ込んだ。

 

「はむぅ……んぢゅっ♡」

「……お前、ちょっと前に『オレって口内性感帯らしいぜ』とか言ってなかったか?」

 

 そういえばそんなことも言ってたっけ。でもよっぽどの事がない限り気持ちよくなったりなんてしないから、安心してオレで遊んでくれよな。

 

「……無理になったら俺の手を叩けよ。すぐ止めるから」

「んんっ」

「それまでは──強めに弄るからな」

 

 

 男に二言はない、とはよく言ったもので。

 宣言をした友信はこれまでとは打って変わって攻撃的な指使いをし、口内性感帯のオレはいつの間にか感じてしまっていた。

 

「ぢゅぷ、るぷぶっ♡♡ んれぇぶ……っむ♡ んぶっ♡♡♡ ンンーッ♡♡」

 

 そんなこんなで、今回の充電はたった三十分で終わりを迎えたのだった。

 

 

 

 

 

 

 数日後。オレたちはピンチに陥っていた。

 

「光の戦士め……ここで息の根を止めてやる!」

 

 住宅街の一角で、筋肉質の大男が叫んだ。その手には巨大な鉈を構えていて、全身を黒い瘴気で包んでいる。

 オスピの情報によれば奴は連続強盗犯。マッサージ師やラーメン屋の店主とは全く異なる、本当にガチでヤバイやつだ。明らかに敵意剥き出しで戦闘は避けられない。

 

『ぶ、武装転身っ!』

 

 変身し、武器を構える。

 だが──

 

(てっ、手が震える……!)

 

 実戦とは想像以上にプレッシャーが重圧になるようで、オレの手は恐怖で痙攣していた。

 今までの人生で凶器を持った人間と対峙をしたことなど一度だってない。目前に迫る死の恐怖に怯え、オレはブレードを持っていても振りかざす勇気を出せなかった。思えば人に本気の暴力を振るったことだってほとんどない。

 

「テム! 大丈夫か!?」

 

 そんな弱気なオレを見た友信が、遠くから此方へ走って来ようとしている。本気でオレの身を案じて、もしかしなくてもこの戦いの場から離脱させようと考えているのかもしれない。

 

「──く、来るな!」

 

 それはダメだ。この敵を見逃すわけにはいかないし、友信を危険に晒すわけにもいかない。

 そうだ、頑張れ目須落テム。ここは勇気を出す時だ──!

 

「うおぉぉっ!!」

 

 体が光る。多分装備と肉体は全力についてきてくれる。後は気持ちだけだ。己を鼓舞して奮起するだけだ。

 

「天が呼ぶ、地が呼ぶ、人が呼ぶ! 悪を倒せとオレを呼ぶ!」

 

 名乗り口上とか決め台詞とか叫んで怖い気持ちを誤魔化すんだ。

 

「ひ、光の戦士ごときが「うるせぇバーカッ!!」っ!?」

 

 喋る隙なんぞ与えねぇ。ここで大人しくオレに倒されやがれ。

 

「お前を止められるのはただ一人! オレだ!!」

 

 ブレードを二刀流にして構えて、吶喊。

 怒涛の勢いで相手を追い詰めていき、早期決着を図って戦った。

 

 

「はぁ……はぁ……見たかこの野郎」

 

 

 十分ほどで決着はつき、オレは無事に勝利を収めた。

 

「やったぜ」

 

 ガッツポーズをわざとらしく友信に見せ──疲弊したオレは気を失った。

 

 

 

 

 

 

 その日の晩。珍しくオレの家に友信が泊まりに来て、オレたちは暗い部屋の中で過ごしていた。

 二人で横並びになって、ベッドに座っている。何を話すわけでもなく、ただずっとそうしていた。

 

「……大丈夫か、テム」

 

 しかしその沈黙は破らねばならないと察したのか。友信は優しい声音で語り掛けてくれた。

 その声に少しだけ安堵しつつも、未だに抜けない戦いの恐怖に身を震わせる。カッコ良さげな装備にはワクワクしていたオレだったが、命のやり取りは正直こわかった。

 

「……ごめん、友信」

 

 涙が出るほどに。

 

「オレがこんなんじゃダメだよな……ぉ、オレが魔王復活を阻止しなきゃ、ダメ、なのに……っ」

 

 最初の敵二人で錯覚してしまっていたが、オレが戦う相手は本来ああいった暴力性の強いバケモノたちなのだ。世界を救うためなのだから当然と言えば当然だが、それだけでさぁ頑張ろうと割り切れる程、ヒーロー染みた精神はしていない。

 

「友信にも、変な事っ、させちゃってるのに……っ」

 

 オレはただの男子高校生で──さらに体の小さい女になったことで、より強烈に恐怖を感じてしまった。倒すべき敵を前にしながら悄然として立ち竦んでしまった。

 

「ひぐっ、ごめん……うぅっ、ごめんっ、なぁ……っ」

 

 そんな自分が情けなくて。でも怖い気持ちを否定しきることもできなくて。

 どっちつかずで精神が疲弊したオレは、無様に泣くことしかできなかった。 

 

「(´;ω;`)」

 

 本当に、無様に。

 

 

「……テム」

 

 それでも友信は狼狽えることなく。

 

「もし戦うのが怖くて、嫌になったのなら……もう、こんなのやめよう」

 

 優しい声音を崩すこともなく、寄り添ってくれる。

 

「俺はお前に傷ついて欲しくないよ」

 

 それがとても温かくて──でもそんな事を言わせてしまっていることも辛くて。

 オレはどうしたらいいか分からなくなって、いつの間にか親友の胸に泣きついていた。

 

「で、でもぉ……! オレが辞めたら……代わりなんていない、し……!」

「オスピが嘘をついているだけかもしれない。あぁ言えば俺たちだって選択肢が無くなるだろ?」

「ほんとのことっ、い、言ってるかもしれない……!」

「それでもきっと代わりはいるさ。この世界は上手く出来てる」

 

 そんな無責任な言葉も、全部オレの為なんだろう。

 

「もし本当にいないんだったら、いろんな手を使って魔王の復活を阻止する」

 

 背中をさすってくれている。

 

「光の戦士がいなくても、特別な適性がなかったとしても」

 

 オレを安心させようとしてくれている。

 

「テムが戦わなくていいように。全部俺が何とかするから」

 

 そっと優しく──抱きしめてくれる。

 

 

「なん、で……?」

 

 分からない。どうしてそこまでしてくれる? オレはお前を巻き込んだ側の人間なのに、どうしてそこまでして味方になってくれるんだ? 

 

「バカだな、テムは」

「え……?」

 

 

「……親友、だろ」

 

 

 その一言で、目が覚めたような気がした。

 オレと友信は親友で。そして親友だから今まで一緒にいて。だからこうして今も一緒にいるのだと、そう言ってくれている。

 どんなに面倒な状況でも、どんなに追い詰められた窮地でも、『親友だから』とだけ言ってオレを助けてくれるのだ、彼は。

 

「ゆう……しん……」

 

 胸の内に熱いものがこみ上げてくる。それは涙と共に、言葉となって外へと吐露されていく。

 

「うぅぅっ、ああぁ゛ぁ゛ぁ……! ごわがっだぁ……! こわがったんだよぉ……!」

「あぁ、頑張ったな」

「うぅ゛ぅ゛ぇ゛ぇ……!」

 

 彼の背中に手を回し、強く強く服を握り締めながら感情を露呈させ、親友に迷惑をかけた。

 そうすることを──彼が許してくれたから。

 

「うぐぅぅ、おえぇぇ……!」

「ばっ、ちょっ、急に吐くなって!」

「うぶえぇぇ……! ゆうしんン゛ぅぅ……!」

「お前、なぁ……」

 

 なので遠慮なく、オレは親友に迷惑をかけまくるのであった。

 

 

 ……

 

 …………

 

 ………………

 

 

 後日。の夜。

 友信以外は誰もいない彼の家の、薄暗くてよく見えない彼の部屋に赴き、オレはベッドの上に仰臥していた。

 

「ほら、こっち来いよ友信」

「お、おう」

 

 オレの声に導かれて、友信はいつかの時と同じようにして、オレの上に覆いかぶさった。彼がどうかは分からないけれど、少なくともオレはあの時と違って緊張していない。

 

「さっ、充電しようぜ」

 

 オスピの話では、闇のエネルギーを持った人間はもういないらしく、あとは黒幕を倒すだけ、とのことで。

 その黒幕の正体や居場所もあらかた予想が付いているので、次が最後の戦いになる。

 

 ──つまりこれが最後の充電行為だ。

 

「服、はだけさせるぞ」

「うん」

 

 友信は前と同じく、オレの服を捲ってお腹を露わにさせる。

 しかし前と違うのは、友信がオレに顔を近づけているというところだ。

 

「……いいんだな、テム」

「もちろん。これが最後の充電だから……女のオレのこと、目一杯楽しんでくれ」

 

 

 そう言って微笑んだ瞬間──彼はオレと唇を重ね合わせた。

 

「んっ……」

「あんぅ……♡ んむっ、ちゅぅ……♡」

 

 ゆっくりとした丁寧な口づけで、友信はオレに充電していく。

 そしてキスを続けたまま、彼は空いた手でオレのへそ回りを触り始めた。

 

「んんんっ♡ ……んちゅっ♡ れぅろ……んむっ……♡」

 

 次第にお互いの閉じていた口を開け、舌を絡ませる。熱い軟肉を口腔内でねちっこく絡み合わせ、唾液と光のエネルギーを交換していった。

 

 

 なぜ、こんな事になっているのか。それはオレから彼に提案したからだ。

 『戦いが終わったら男に戻っちまう。だから今のうちに女のオレを楽しんでおけ』と。

 別に友信相手に発情したわけではない。これはオレなりの恩返しというか、単純なお礼というか、そんな感じの意味での行動だ。

 女になったとはいえ元が男のオレでは興奮しないだろうと今までは高を括っていたのだが、実はへそを触ったり口に指を入れたりしている時から、既に友信は興奮してアレをおっ立てていた事が判明して。

 なら元に戻る前に、彼女のいない親友くんに女体を楽しませてやろう、と思い立ったのだ。もちろん充電という言い訳から逸脱しない範囲で、だが。

 

「んちゅっ、……っぷは。はぁっ、はぁ……♡」

「テム、まだ50%だぞ。大丈夫か?」

「お、オレの事は気にしないで、好きにしろって……♡」

「……っ」

「あっ──んむぅっ♡」

 

 

 そのまま親友に貪られながら、オレは最後の100%を迎えたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 ついに最終決戦の時が来た。

 敵である黒幕の太った中年男は交差点の中央に鎮座しており、周囲には彼の力で意思を奪われた人々が彷徨している。

 黒幕──またの名を催眠おじさん。エロゲーみたいな設定で戦ってきたオレたちの最後の相手は、皮肉にもエロ同人ご用達の最強ヴィランだったのだ。

 

「ぶひひ、ついに来たか光の戦士……いやテムちゃん!」

「……フッ」

 

 怪しく笑う催眠おじさんを前にして、オレも不敵に笑って見せた。

 もう恐怖に脅かされたりなんかしない。オレの後ろにはオスピと親友がいる。仲間が一緒にいてくれているなら、怯える必要なんてどこにもない。

 

『──武装転身ッ!』

 

 掛け声と共に鋼鉄の鎧を身に纏う。これが最後の変身だ。

 変身完了と共に腰から2本のブレードを抜刀し、戦闘態勢へと移行する。

 

「いくぞ催眠おじさん!」

「かかってこいテムちゃん!」

 

 遂に因縁の対決、その火蓋が切って落とされた──!

 

 

 ……

 

 …………

 

 ………………

 

 

「うぐぅぅぅっ!」

 

 強い。催眠おじさんの実力は今までの敵の比じゃない。

 

「ふふふ、やるねテムちゃん。何度も催眠ビームを避けながら攻撃を仕掛け、更にはボクが発動する前に時間停止のウォッチを破壊し、こうして肉弾戦に持ち込んでいる。……だが、まだボクには届かない!」

 

 一見すると弱そうな見た目なのに、まさか接近戦も強いなんて予想外だった。

 お互いにボロボロだが、奴の言う通りこっちが一手後れを取っている。

 

「ブレードの刃が通らないなんて、でたらめな皮下脂肪しやがって……!」

「強靭でないと種付けおじさんは務まらないからね!」

「R18からの迷い人がァァッ!!」

 

 それでも諦めず、オレは果敢に攻めていく。

 

「うおぉぉぉ!!」

 

 キンキンキンキンキンキンキンキン!! ブヨン。

 

「くぅっ、ダメージが少ししか通らない……!」

「効かねぇ! デブだから!」

 

 雑に防御力が高くて嫌気が差してきた。

 ──それが隙を生んでしまったのかもしれない。

 

「今だ! 催眠ビーム!」

「うぁっ!?」

 

 隙をついた彼の攻撃をまともに喰らってしまい、オレはその場に膝をついた。ビーム自体にダメージを与えるような威力はなかったものの、催眠ビームの名に相応しい効力がオレを襲い始める。

 

「あっ、あぁ……♡」

 

 脳が催眠おじさんに支配されていく。その効果はあり得ない速度で進行していき、今にも意識を刈り取られそうだ。

 

「ふふふ……テムちゃんには何をしてやろうかな……」

「く、来るなぁ……♡」

 

 まずいまずいまずい、このままじゃ本当に──

 

 

 

「そこまでだ!!」

 

 

 

 やられる、とそう思った瞬間。オレの耳にどこか聞き覚えのある男性の声が響き渡った。

 一体誰だと顔を上げてみれば、催眠おじさんの後ろには一人の影がある。

 あ、あの人は──。

 

「首ツボマッサージ!!」

「ぐわあぁぁっ!?」

 

 謎の人物が両手の親指で催眠おじさんの首を刺激し、おじさんに隙が生まれたその時。

 

「テムぅーッ!!」

 

 背後から駆けつけてきた友信の跳び蹴り(ライダーキック)が炸裂し、催眠おじさんは大きく吹っ飛ばされた。

 な、何が起きて……?

 

「大丈夫ですか、いつかのお客様?」

「あ、アンタは──あの時のマッサージ師!?」

 

 そう、オレを助けたのは全くの予想外な人物。その姿を見間違えるはずもない。

 最終決戦に姿を現したのは、オレが光の戦士になって一番最初に戦った、あのマッサージ師の男であった。

 

「どうしてここに……?♡ 自首したんじゃ……♡?」

「ふっ、なんやかんやあって今日1日だけの仮釈放をもぎ取ったのですよ。……最後に私のマッサージを受けてくれた貴女を助けるために、ね」

「マッサージ師……♡!」

 

 名前知らないけどありがとう!

 

「いいですとも。それに私だけではありませんよ?」

「ふぇ?♡」

 

 マッサージ師が視線を向けた先を、オレも追うようにして確認する。

 そこには銀色の岡持ちを手に此方へ駆けてくる女性の姿があった。

 

「あの人は……!♡」

「お待たせー! 久しぶり、お客さん!」

「ラーメン屋の女店主!♡」

 

 駆けつけてくれたのは、いつかの日に絶品ラーメンを振舞ってくれたあの天才料理人だった。彼女も自首して捕まったはずだが……。

 

「最後に自慢のラーメンを食べてくれたお客さんだからね! ピンチの時には駆けつけるよ!」

「あ、ありがとう……!♡」

「催眠状態抜けてないでしょ? 状態異常を治すラーメン持ってきたから食べて!」

 

 そう言って女店主は岡持ちの中から一杯のラーメンと割りばしを取り出した。

 オレはそれを受け取り、しっかりといただきますしてから麺を口に運んでいく。

 

「ズズズ……モグモグ、ゴクン。──治った! あと美味い!」

「ふふ、味も効力も妥協しないのが私のモットーだからね」

「ありがとう女店主!」

 

 速攻でラーメン残りを食べ終えたオレはしっかりご馳走様をしてから立ち上がり、再びブレードを構えた。

 

 

「ぐ、ぐぬぬ……! テムちゃんにこれだけの仲間がいたなんて、聞いてない……! 何でここへ来れたんだ!?」

「フフっ……分かんねぇだろ。オレも分かんない」

「ふざけた事を……ッ!」

 

 立ち上がる催眠おじさん。だがもうオレに焦りはない。

 これだけの仲間が、オレを支えてくれている。その実感と喜びはパワーに変換され、オレのブレードの刀身を赤く変色させた。

 

「ハッ!」

 

 その紅蓮の刃で催眠おじさんに斬りかかり──

 

「うぐっ!?」

 

 今度は見事に切り裂き、ダメージを与えたのだった。

 

「な、何故だ! どうして攻撃が通る!?」

「フフっ……分かんねぇだろ。オレも分かんない」

「同じことを言うなぁーっ!!」

 

 催眠おじさんはどこからともなくハンマーを取り出して襲い掛かってくるが、オレはそれを難なく受け止めて見せる。

 

「何ッ……!?」

「でも、オレ一人の力じゃ出来なかった!」

 

 そのままハンマーを弾き飛ばし、大きな斬撃を催眠おじさんにお見舞いしてやった。

 

「仲間がいてくれたから出来たんだ!」

「ぐうぅぅっ!?」

「お前にはここで引導を渡してやる!」

 

 吹っ飛ばされた催眠おじさんが立ち上がるよりも先に、オレは必殺技を放つべくブレードにエネルギー充填を開始した。

 体中の血液が両手に集中していくような感覚と共に、ブレードが紅く輝き始める。

 この最後の一撃を叩き込めば勝利できる──が、輝きが途中で止まってしまう。

 

(エネルギーが足りないのか……!)

 

 考えてみれば当然だった。消費が激しく燃費の悪い光エネルギーここまでの長時間戦闘を続けていれば、ガス欠になるのは自明の理。

 こうなってしまっては手詰まりだ──

 

 

 ──と、以前までのオレならそう考えるだろう。

 

 

「テム、やるぞ」

 

 だが、今のオレにはともに苦難を乗り越えた親友がいる。彼がオレと一緒にブレードを握ってくれたことで、紅い光は輝きを取り戻した。

 いや、それ以上に眩く光り輝いている。オレたち二人の力が合わされば、限界など簡単に超えられるのだ。

 

「あぁ……決着の時だ」

「な、なんだその輝きは……!?」

 

 お前には眩しすぎるだろう。

 これは──(オレ)たちの愛の結晶だ!

 

『いくぞッ!!』

 

 

(コイツが隣に居てくれるなら──)

 

 

 ──オレは絶対に負けない!

 

 

『R18に帰れえええええぇぇぇぇぇェェッッ!!!!』

 

 

 一閃。

 翳した光が振り下ろされる。

 

 

「なっ、なぁっ──」

 

 

 その光は巨悪を包み込み、打ち滅ぼす。

 

 

「ぐううぅぅぅわああああああぁぁっぁぁぁぁぁぁッッ!!!?───………」

 

 

 その断末魔と共に──最後の悪は消え去ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 魔王を復活させ、その力を利用して全世界の人間を催眠状態へ陥らせようと画策していた、悪しき催眠おじさんは無事に討伐され。

 操られていた街の人々は催眠から解放され、各々喜びと安心に浸っている。

 

 そして今、オレと友信の前には『光の源』と呼ばれる光の玉が出現し、オレたちの願いを待っていた。

 魔王復活を完全に阻止した報酬として、オスピが言っていた通りオレたちの願い事を何でも一つだけ叶えてくれるらしい。

 

『なんでも願い事を一つ叶えてあげよう。何がいい?』

 

 割とフランクな光の源に面食らいつつも、友信はそっとオレの背中を押してくれた。

 

「友信……」 

「願いを叶える権利はテムにあるだろ。俺にもお前の願いを聞かせてくれ」

 

 優しく笑いながらそう言ってくれる親友のおかげで覚悟が決まり、オレは改めて光の源に向き直った。

 願い事は決めていた。どれくらい前からかは覚えてないけど、それでもこれ以外の願いはないと確信できる。

 当初の予定通りなら、オレはここで好きな願いを叶えて、その後光の力が無くなって男に戻って、全部元通りプラスアルファの一件落着なハッピーエンドだ。

 

 だけど、そうはしない。オレの心は決まっている。

 

「願いを言うよ」

『どうぞ』

 

 

「オレを──このまま元の姿に戻れない体にしてくれ」

 

 

 その言葉を言った瞬間。

 光の源は一瞬だけ目を背けたくなるほどの輝きを放ち──消えた。

 

 その場に残されたのは、願いを叶えて女のまま戻れなくなったオレだけだ。

 

「て、テム……!? お前……!」

 

 驚きを隠せない友信。だがそんなことは織り込み済み。こいつが驚こうが冷静だろうが、どのみちオレはこのまま抱きつくつもりだったのだ。

 

「友信っ!」

「おわっ!」

 

 正面から彼の胸にダイブしてそのまま押し倒してやった。にひひ、といたずらっぽい笑みを浮かべる俺とは対照的に、親友くんは顔を引きつらせている。

 

「テム、なんで……?」

「逆に聞くけど友信。お前オレにあーんな事やこーんな事しといて、今更普通の親友に戻れると思ってたのか?」

「……」

 

 言葉を失う友信。このオレの選択は半分は自分の意思によるものだが、もう半分は友信の責任でもある。

 だって最後の充電のとき、こいつ口を滑らせて『好きだ……テム……』とか無意識に言っちゃってたし、そうでなくとも体まさぐってディープキスまでしてたんだぞ。

 あとさりげなくお腹周りだけじゃなくて胸とか太ももとか触ってたし、終いにはキスしながら抱きしめておっ立てたアレをズボン越しにお腹に押し付けてたからね。なんで未だにお互い童貞と処女の状態なのか不思議なくらいだからね。

 

「オレも友信のこと好きだぞ。あと全部お前のせいだからな……♡」

「ま、マジで? これ俺のせい?」

「白々しいぞコラ♡ オレのこと女にしたんだから責任とれ♡♡」

 

 グリグリと頬ずりをしていれば、次第に友信は折れて抱き返してくれた。嬉しい。

 

「と、とりあえず立とうぜ?」

「んっ」

 

 手を貸しながら一緒に立ち上がると、洗脳から解けた民衆が皆オレたちに注目していた。

 友信は滅茶苦茶に緊張しているようだが、好きな人の隣にいるとメンタルが最強なオレには人々の視線などそよ風に等しい。

 

「おめでとうメスーッ!」

 

 すると人ごみの中からクマのぬいぐるみが飛んできた。

 彼もまた大切な仲間の一人である。

 

「おぉ、オスッピィ」

「ようやくちゃんと名前で呼んでくれたメスね! あと魔王復活の完全阻止、本当にありがとうメス! それから二人ともおめでとうメス!!」

 

 まるで自分の事のように喜んでくれるオスッピィを見ていると、此方も気分が良くなってくるというものだ。

 ……よし、こうなったら好機の視線に晒されていることを逆手に取って、ここにいる全員にオレと友信の事を知らしめてやる。

 

「オスッピィ、祝え」

「ふ、二人の事をメス?」

「そうだ。ここにいる皆に分かるように、もう一度オレたちを祝ってくれ」

 

 オスッピィの頭を撫でながらそう言って微笑むと、彼は深く頷いて、みんなの注目を集めるように、オレたちの前に浮遊し──叫ぶ。

 

 

「祝えッ! 眩き光で世界を救い、変わりゆく心を受け入れ、新たな道を踏み出した真のTS娘──その名も目須落テムッ! 親友と結ばれ輝く未来を切り拓いた(メス堕ちをした)瞬間であるっ!!」

 

 

 オスッピィがそんな祝福の咆哮を叫ぶと、それに感動した周囲の人間たちは拍手喝采と祝いの声を轟かせた。

 

 世界を救い、その果てにオレは一つの幸せを掴み取ったのだ。

 親友──そして今は恋人となった、この少年との未来を。

 

 そうか、これが、この幸せこそが、メス堕ちってやつなのか──

 

 

「……まぁ、いろいろあったけど──これからもよろしくな、テム」

 

 そう言って握ってくれた手を、オレも強く握り返した。

 

「あぁ──ずっと一緒にいてくれよなっ!」

 

 

 大好きだぜ、友信!

 

 

 




完!

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