日番谷(偽)でFGO 作:あたらんて
ぼくたちは ひかれあう
水滴のように 惑星のように
ぼくたちは 反発しあう
磁石のように 肌の色のように
――石田雨竜
…もうとっくに偽ジャンヌの霊圧は感じ取れないところまで来た。
しかしこれまで瞬歩を長時間にわたって使用してきたのは体にかなりの負担を強いる。夜通し走っていたので一度休みたい。
「藤丸たちが霊脈を陣取ってサーヴァントも1体撃退したみたいね。私たちも合流しましょう。ここから東に少しよ」
丁度良い。なんとなく藤丸と合流できるように逃げてきたがハッキリと方向を定めて歩き出す。
ただ、まだサーヴァントがいたということに驚く。聖杯があちらにある以上戦力に関しては絶対に勝てないと思っておいた方が良いかもしれない。決戦のときまでに戦力を削って、作戦で勝つしかないだろう。
幸い、今までの動きから見るに相手はこちらのことを大して脅威だと思っていない。突く隙はそこだろう。
そんなこんなで、幾度か魔獣との戦闘を繰り返しながら霊脈へ辿り着いた。
「あっ、日番谷、所長ー!こっちですよー!」
藤丸が手を振ってこちらを呼ぶ。周りには知らないサーヴァントが3騎。
一人は見覚えがある。恐らく彼女が本来のジャンヌ・ダルクであろう。
そして長身で細身の男とどこか高貴な女性がいて、その後ろにはもう召喚を済ませたのであろう、アーサーが佇んでいる。
「よし、じゃあ自己紹介からするか。俺は日番谷冬獅郎。クラスはセイバー。カルデアから来てるサーヴァントだ」
「私はオルガマリー・アニムスフィア。もう伝わっているでしょうけど人理を守るための機関、カルデアというところから来ました。そこの所長を務めているわ」
「わたくしは清姫と申します。クラスはこう見えてバーサーカーですのよ?」
何となくバーサーカーの片鱗は見えているが確かにバーサーカーらしくない。狂化のランクが低いのだろうか…?
「私はエリザベート・バートリー。クラスはランサーよ。敵の一人に因縁があって協力してるわ」
その名を聞くと、マシュが眉を顰める。まあ、彼女の生前の行為からして受け入れるのは中々難しいだろう。
血の伯爵夫人、吸血鬼カーミラのモデル。かつて貴族であった彼女は領民たちの血を浴びて美を保っていたという。彼女の悪名はかなり有名だ。
ただ、一緒に行動している時にそのような気配は見せていない。敵の敵は味方とも言うし、ひとまずは信頼して良いんじゃないかと思う。
「私は藤丸立香って言います。一応カルデアに所属しているマスターです」
「何よ、もっと自信を持って言いなさい」
「あ…は、はい!」
オルガマリーの言葉に藤丸が背筋を正す。なんだかんだで藤丸のことを認めているようだ。藤丸も少し笑みを浮かべている。
「私はマシュ・キリエライトです。先輩と契約しているデミ・サーヴァントです」
「アーサー・ペンドラゴン。セイバーだ」
「わたしはマリー・アントワネット。クラスはライダー。どんな人間なのかは、どうか皆さんの目と耳でじっくり吟味していただければ幸いです」
マリー・アントワネット。『パンが無ければお菓子を食べればいいじゃない』の言葉で有名な革命にて処刑されたフランスの王女だ。高貴な雰囲気を纏っていたのも納得だろう。なにせ王族なのだから。
まあその言葉については実際は言ってないなど諸説あるようで、本人の言った通り前情報とは切り離して人柄を判断するべきだろう。
「ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト。僕も、彼女と右に同じ」
モーツァルト。とんでもなく有名な作曲家である。この姿になる前の自分にはあまりクラシックの趣味は無かったようで曲についてはあまり知らないがそれでも偉大だということはわかる。
ただ、どこかクズな予感がするのは俺だけだろうか…。
「私は、ジャンヌ・ダルクです。その、一応クラスはルーラーなのですが、サーヴァントとしての自覚が薄いというか…ルーラーとしての力は発揮できません」
ジャンヌ・ダルク。言わずと知れたフランスの聖女である。
そして、今回の特異点の鍵ともなる人物であろう。
「それじゃあ、キルケーを召喚した後今後の方針について話しましょうか」
まず、先程戦ったサーヴァントについて。偽ジャンヌ以外の3騎だが、真名がわかった。
槍を扱う男はランサー、ブラド三世。吸血鬼ドラキュラのモデル、串刺し公の異名で有名だろう。ルーマニアの英雄だ。
エリザベート曰く醜いアタシはアサシン、カーミラ。エリザベートをモデルとした吸血鬼だ。確かに醜いアタシというのも納得だ。
そして、中性的な剣士はシュヴァリエ・デオン。この人物については正直知らないが、かつてフランスで活動していたスパイらしい。そして性別もハッキリとしないとのこと。一体どういうことなんだ…?
更には、ジャンヌが見破ったそうなのだが敵のサーヴァントたちには狂化がかけられているという。恐らく聖杯の力によって。
そして、そこから更に読み取ると、マスター無しでサーヴァントが召喚された理由も明らかになってくる。恐らく聖杯戦争が起きていないのに聖杯が獲得されているというバグのような状況に対して聖杯が対抗してサーヴァントを召喚した、ということではないかとのことだ。
次にこれからやるべきことについてだが、どうも先程藤丸は聖女マルタと交戦の末撃退、彼女から助言をもらったらしい。その内容は、リヨンという都市に向かって竜殺しを仲間にしろとのことだ。
「そう。それで所長たちと合流したらすぐに向かおうとしてたんだ」
「なるほど…」
それは全く構わないが、心配なのは藤丸だ。彼女は元気そうに振舞っているが、恐らくさっきまでも敵襲などで眠れていないのだろう。疲れが見える。
俺たちサーヴァントは睡眠が必要ないし、オルガマリーもなんだかんだで優秀な魔術師で、大人だ。1日や2日、眠らなくとも大丈夫だし、覚悟もできている。俺が言うのもなんだが心の支えとして俺という存在もある。
しかし、藤丸は一般人だ。まだまだ世界を背負う覚悟もできていないだろうし1日歩いて戦闘もこなし、睡眠も十分に取れていないのでは疲れがたまるのも当然だろう。
「よし。それじゃあ藤丸は俺がおんぶしよう。その間寝てろ」
「…へ?」
「いや、何を言ってるのセイバー」
周りの皆が驚いた顔をする。
「疲れが溜まっているだろう?そして俺は両手がふさがっていても多少の戦闘はこなせる。ほら、当然の帰結だろ?」
「安珍様、浮気ですか…?」
「いや、確かにボクも男だから君の気持ちはわかるけど手を出すのは…」
「日番谷さん、やっぱり先輩のことを…」
散々な言われようだ。護廷十三隊の誇りに誓ってそんな邪な感情は抱いていないと宣言しよう。というか安珍様って誰だ。
しかし、そこまで言われると俺もムキになるというものだ。
アーサーが獣を狩りに行ってマンガ肉を食い切る間ずっと話し合った結果、女性に背負わせるのは申し訳ないということをごり押してアマデウスはそもそも背負うのを嫌がった結果俺が背負うことになった。勝った…!
「へへ…自分よりちっちゃい男の子に背負ってもらうのって不思議な感じ…」
「黙れよ」
身長のことは禁句である。
「それじゃ、失礼して…」
藤丸をおんぶすると、先程言われた言葉もあって変な気分になる。
そしてそれは藤丸も同じなようで、一向に眠りにつく気配が無い。どことなく藤丸の体温も高く感じる。
「……全然眠れないですわー」
「よし、キルケー。魔術で眠らせてやってくれ」
「良かった…!この話、全く出番が無いまま終わるのかと思ってたよ!」
何を言っているのだろうかこの魔女は。
自分、なんだかアポクリファコラボのガチャでの運が良い気がします。
前のコラボの時は呼符で天草、今回は呼符でジャックが出ました。
テンション爆上がりです。
キルケーで狩っていたジャックがウチに来るとは…!