昔々あるところに、筋肉モリモリマッチョウーマンの世紀末覇王がいました。
筋肉モリモリマッチョウーマンの世紀末覇王は赤いずきんを被っていて多くのヒャッハーを従えていたので、赤ずきん様と呼ばれていました。
ある日、赤ずきんは病気で倒れたおばあさんのお見舞いに行くようにお母さんからお使いを頼まれました。
「赤ずきん、途中でヒャッハーに絡んだり、寄り道をしてはいけませんよ」
赤ずきんのお母さんは優しく言ました。
「委細承知」
赤ずきんが森の中を歩いていると、狼の異名を持つヒャッハーと出会いました。
「おや、赤ずきん様。どちらへ行かれるのですか?」
「森の奥にある祖母の家へ見舞いに行くのだ」
(これは良い事を聞いた。そのババアに成りすまして赤ずきんを亡きものにしてやろう)
そう思った狼は赤ずきんに言いました。
「でしたら花なども持って行かれたら良いと思われます。こちらの道をしばらく行くと、それはそれは美しい花畑がひろがっておりますよ」
「ふむ、それは良い事を聞いた。我はこの道を通るとしよう」
赤ずきんは狼の言った道に進みます。
その間に狼は急いで赤ずきんのおばあさんの家に向かいました。
*
「よしよし、赤ずきんはまだ来ていないな?」
狼は赤ずきんがまだ来ていないことを確認すると、おばあさんの家の扉を叩きました。
「お届け物でーす」
「おやおや。今は腰を痛めていてねぇ、中に運び入れてくれないかい?」
「かしこまりましたー」
(よしよし、ババアが不用心で助かったぜ)
狼は内心ほくそ笑むと、奇声を上げておばあさんに襲いかかりました。
「ヒャッハー! 汚物は消毒だー!」
おばあさんは赤ずきんとは違って争いが苦手だったので、たちまち狼にやられてしまいました。
狼は気絶したおばあさんをクローゼットの中へと隠し、おばあさんの服を着てベッドの中で赤ずきんを待ち構えました。
*
一方そのころ、花を摘んでいる赤ずきんを背後から見つめる目がありました。
(まさか赤ずきんがあのように無防備な姿を晒していようとは……ここで奴を倒し、世紀末覇王の名を我が物とする!)
赤ずきんを見ていたのは毒蝶の異名を持つ毒ナイフ使いのヒャッハーでした。
毒蝶は赤ずきんを背後から奇襲します。
「赤ずきん、覚悟!」
蝶の放つ毒ナイフは銃弾よりも速いことで有名でした。
しかし赤ずきんはそちらを一瞥することもなく周囲に闘気を発します。
「噴ッ!!」
瞬間、赤ずきんに向かっていたはずの毒ナイフは毒蝶へと進路を変えました。
哀れ毒蝶は世紀末覇王の前に立つこともなくやられてしまいました。
「また一つ、矮小なる命を摘み取ってしまった。
……気付けば随分と時間をかけてしまったな。祖母の元へ急ぐとしよう」
赤ずきんは走ります。
人質にとらせた友を救うため、夕日の沈む十倍の速さで走ったというメロスよりも速く走ります。
「祖母よ、我だ。母の使いで赤ずきんが参った」
「おお、赤ずきん。よく来たね。早く中へ入っておくれ」
赤ずきんはベッドで横になっている祖母の変化に気づき、問いかけます。
「うむ。ところで祖母よ、なぜそなたの髪はモヒカンなのだ?」
「最近イメチェンをしたのさ」
「なぜそなたの眼光は鋭いのだ?」
「最近目が悪くなったんだよ」
「では祖母よ、なぜ我のずきんが赤いか知っているか?」
「知らないねぇ。教えてくれるかい?」
「我がずきんの赤はな……貴様らヒャッハー共の血の色だ!」
そう言って、赤ずきんは狼に向かって拳を振り下ろします。
ベッドで寝ていた狼にはそれを避けることができませんでした。
「貴様、初めから気づいて!?」
「貴様のようなババアがいるか!」
赤ずきんは狼に拳をお見舞いし、狼をお星様にしました。
そしてベットリと返り血に塗れた衣服を被っていたずきんで拭います。
こうして赤ずきんのずきんはより赤くなり、おばあさんはクローゼットから助け出されたのでした。
めでたしめでたし。
猟師「何アイツこわ…近寄らんとこ」