ナイトローグの正体は氷室幻徳です!
「おっ、ハマーじゃねーか」
「マツ、お前もあいつの墓参りか?」
「ははっ、当たり前だろ。終生の友に老けた顔でも見せてやろうかとおもってな」
駒王町には『赤龍碑』と呼ばれる織主零によって引き起こされた第三次世界大戦の唯一の犠牲者兵藤一誠を奉る石碑兼墓が建てられていた。あの悲劇から早三十年、その兵藤一誠が眠る墓(正確には寝てはいないのだが)にとある二人の男が訪れていた。
片方は坊主頭の男ともう片方は丸メガネが特徴的な男。兵藤一誠の学生時代からの友人の松田博雄と元浜繁である。かつて兵藤一誠をふくめ変態紳士三人組と呼ばれた彼らだが、いまでは家庭を持つ立派な大人である。
因みに松田はスポーツインストラクター、元浜は実家の銭湯の仕事を継ぎ平凡でささやかな幸福な日々を送っていたのである。
だが、彼らはその平凡を得るために一人の親友を失ってしまったという後悔が今でも心の奥深く燻っていたのだ。そういうことからもこの命日には欠かさず墓参りに訪れている。最もこうやって顔を会わせるのは数える程しかないのだが。
「あっハマー、その袋。やっぱあれか?」
「ああ、イッセーはカバンがぎちぎちに成る程詰め込んでいたブツさ……ってマツも持ってきてンじゃねーか」
「俺のはド◯キで買ってきた!」
「そうか、アイツ週四で通ってたもんなー」
そんな他愛も無い話に花を咲かせつつ、山頂の石碑へと向かう階段を上がる。イッセーが元々動物に好かれる性分だったからか途中にある駒王町の町並みを一望できるベンチの置かれた休憩スペースを兼ねた撮影スポットには野良犬や野良猫、雀やメジロ、カラスを始めとした野鳥にツキノワグマ、うり坊、アメリカザリガニ、アメリカシロヒトリ、そして野生のセガサターンが寛いでいた。
「お、見ろマツ野生のセガサターンがいるぞ。もうそんな季節なんだなぁ」
「ああ、そうだな。懐かしいな、アイツ小学生の夏休みの自由研究で野生のセガサターンの観察で最優秀賞とってたっけ」
「いんや、アイツが観察してたのは野生のPCエンジンだったろ」
「え? 野生のPCエンジン?」
「んはあー。ボケが始まってんなーおい」
因みにイッセーが観察していたのは野生のスーパーファミコンである。
そんなこんなで二人は山頂へと辿り着く。日の光に当てられて輝く石碑は赤い龍を思わせる真っ赤な石材で造られており『世界を救った変態、兵藤一誠ここに眠る』と刻まれている。先客がいたのだろうか既にエロ本やチョコモナカジャンボ、やたらとデカイネクタイが供えられている。
松田と元浜はチョコモナカジャンボが詰められた袋をお供えスペースに置き、手を合わせる。
彼らの脳裏にはイッセーと過ごしたアホらしく、馬鹿馬鹿しくも灰色の青春時代をゴールデン青春に替えたあの日々を思い出していた。そして松田が口を開く。
「なあ、イッセー。俺さ来月にもおじいちゃんになるんだぜ? そう、祖父だぞ? おじいちゃんだぞ? GRANDFATHER(ネイティブ)」
「俺はマツとちがって三人も孫がいるがな」
「だまらっしゃい」
二人は思う、もしもイッセーが今生きていればどんな男になっていたのだろうかと。もしかしたらヤリチンは鳴りを潜めて家庭を持っていたかもするかもしてないし、世界中の美女美少女を抱きまくっていたのやもしれない。
二人は、一人の親友を奪ったあのゴミクズ織主零に対してまだまだ並々ならぬ憎しみを抱いていた。
織主の葬式のさいにどの僧侶も供養を拒否し、供養を名乗り出た近所の寺の僧侶が『そこら辺のクズ石で墓を建てよ! そして墓に野良犬と浮浪者を呼び込み、糞尿まみれにして永遠の責め苦を与えるのだ!』と叫んだのを今でも覚えている。
織主零の悪名は世界中に響き渡っており、ネットでは『ガンディーがトラクターで轢き殺すレベルの男』『鬼◯隊と鬼舞◯無惨が協力して全力で殺しにかかられた男』『阿部高和がNGを出した男』『syamu以下』『なろう主人公の方がマシ』と罵倒されている。
「いや、あれから三十年とはな。月日が流れるのは早いもんだよなーハマー……」
「ああその通りだマツ、俺達が織主のヤツに覗きの冤罪を吹っ掛けられてイッセーが金田一少年バリの推理を見せつけて兵藤金田一誠と讃えられたのももっと昔の話なんだな……」
「もうなんもかんも懐かしいな。あいつが英語の授業で粘土からビックバイパー・R-9・シルバーホークSTG御三家自機を錬成したときは驚いたよな……!」
「そうそう、その後其れが中国の富豪に八百万円で落札されたときはもっと驚いたよなぁ」
「その金のお陰で俺達大学行けたんだよな……」
「そうそう、金といやぁ。あいつ駅前の路上ライブで二十万くらいもらってたよあ。俺がキーボード担当したときはおひねりとしてNintend◯ switchが投げ込まれた時は驚いたよ」
「それどころか有名所の芸能事務所にスカウトされまくってたな、芸能入りしたらアイドルとか食い散らかすことができたのになんで断ったんだろーなアイツ」
「そりゃあなハマー。あいつは人の女やアイドルみたいなヤツには手を出さねーからだよ……織主と違ってな」
「あー、そういや織主に妊娠させられてアイドル辞めることになった子がいっぱいいたよなぁ……」
「そうだったな、そう考えると避妊してたイッセーは節操のあるヤリチンってことだな」
「ははっマツ。面白いこと言うな」
彼らはここにはいない大親友の話を肴にチョコモナカジャンボに手を付ける。別に負い目は無い、兵藤一誠という男は、
『お前ら! 夏休みの宿題終わって無いんだって? チョコモナカジャンボ食べるか?』
『おう松田! 元気ねえな! チョコモナカジャンボ食べるか?』
『よっ元浜! テストの結果なんかでくよくよすんじゃねーよ! 世間一般からみりゃ万々歳だぜ? チョコモナカジャンボ食べるか?』
『はははっ。女なんて星の数ほどいるさ! 落ち込むなって! チョコモナカジャンボ食べるか?』
『え? リーマン予想が解けない? んなもん解けなくても苦労はしねーっての。チョコモナカジャンボ食べるか?』
『大学入学おめでとう! チョコモナカジャンボ食べるか?』
『おはようお前ら! チョコモナカジャンボ食べろ(強制)!』
苦しい時も悲しい時も嬉しい時も今週の金ローを録画し忘れた時も、チョコモナカジャンボを分けてくれた。死地へと赴く前日にもイッセーは彼らに自分の冷蔵庫ごとチョコモナカジャンボを渡した位だ。
ばきり、と重なる二つのモナカ特有の咀嚼音。
(なあ、みてるかイッセー、俺達はお前のお陰でここまで老けちまった。俺もマツも皺と白髪増えちまったよ)
(俺は元々ハゲてたがな。まあ、もしもお前がなろうよろしく異世界転生でもしたら、俺達みたいな最高の友達をつくってくれよな……)
彼らの食べるチョコモナカジャンボはちょっとだけ、ほんのちょっとだけだが……塩辛い。
「あいつが死んでから……もう30年も経つのか……」
ここは駒王町の町中にあるモダンなBAR『尾てい骨』、生前兵藤一誠がよく出入りしていたことで有名であり30年がたった今でも客の出入りが多い。
そんなBARの片隅でナッツを肴に酒をあおるホスト風の男が一人、名はライザー・フェニックス。彼もまたこの世界の兵藤一誠のように織主零による被害を受けた男である。そのせいか今では
女好きもなりを潜めてしまっている。
「そうか……もうそんな時期か」
チラリと彼が窓をみやると外のガラス窓に光に誘われたであろう野生のスーパーファミコンが張り付いていた。
彼は思い出す。初めて兵藤一誠という男と出会った日を。
テンプレートの如く織主にボコボコにされて婚約者であるリアス・グレモリー(リアス式海岸とはとくに関係ない)を奪われた挙げ句眷属のハーレムメンバーも根こそぎ奪われた。そして上級悪魔としての地位も。
ヤケクソになった彼は冥界にも帰らず、酒と女に溺れ人間界で自堕落で壊滅的な生活を送っていた。
そんな時にたまたま通りすがった兵藤一誠と出会ったのだ。
(どういう訳か、あの男はやけに気を遣っていたな……)
一誠が彼に気を遣っていたのは預かり知らぬところでヒロインを織主にかっさらわれた経験から来たものなのだが本人は知るよしもない。
グラスに注がれたウィスキーを乾き始めた喉に再度流し込み、溜め息。
『おうおうっ! ライザーさんよぉ女遊びも良いけどな人間の世界にはもっと色々面白いところがあるんだぜ?』
(この俺に女以外の楽しみが出来たのもあいつのせいだな……)
一誠と知り合い、様々な場所へとつれまわされたことを今でも覚えている。
猫カフェで猫ちゃんと戯れたり、野生のスーパーファミコンを乱獲したり、ネバダ州でキャバクラ巡りをしたり、日光東照宮を見に行ったりゲームセンターでアーケードゲーム巡りをしたこともあった。
因みにライザーはiremの名作STGイメージファイトをクリアしたとき感動の余り涙汁をドバーッと出した。なお二週目はクリアで出来なかった模様。
一誠は二週目までノーミスでクリアしていたのだが。
このbarを彼に紹介したのも兵藤一誠その人である。因みに一誠は前世で味わった酒の味が忘れられず年齢を偽って酒を呑みまくっていた。やっぱり人間の屑じゃないか(憤怒)。
(この上級悪魔である俺が人間の、それも赤龍帝の世話になるとはな……あの時あの事件が起こらなければ俺はあのままの垂れ死んでただろうな)
あの事件とは駒王町ではぐれ悪魔達が蜂起し、大混乱を呼んだ事件である。その頃のライザーは一誠に紹介された雀荘で住み込みでアルバイトをしていたのだが紆余曲折あって一誠と共に事態の鎮圧に乗り出した。
その結果、一誠は三大勢力に赤龍帝として認知されたものの悪魔側から感謝状と図書カード500万円分が送られライザーも活躍が認められ上級悪魔として返り咲いた。
やけに絡んでくる一誠に対していつの間にか奇妙な友情を感じるようになっていたのだ。
涙こそ流さないが、その目頭は熱を帯びていた。
(フ……ライザー・フェニックスとあろうものがたかが人間一人に心を動かされるとはな……)
かたん、と音を立て空になったグラスの氷が傾いた。それを見たバーのマスターが彼に声をかけた。
「お客さん、何になされますかな?」
「ん……ああ、そうだな……」
酒を勧められ、ライザーはとある一誠との思い出を思い出す。
『え? もしかしてライザーさんコークハイ飲んだことないの?』
『コークハイ? なんだそれは?』
『そ、ウィスキーにコーラ入れて飲むのさ。有名どころならジャックダニエルが俺は一番理想的だと思うぞ、とあるミュージシャンもほぼ毎日飲んでたらしいしな!』
『こ、コーラだとぉ!? このライザー・フェニックスがそんな子供っぽいもの飲むと思っているのか!?』
『はっはっはっ。好き嫌いはダメだぞ? あっ、すんませーんコークハイ二つ!』
『あっ! お、おい。俺は飲むとは行ってないぞ!』
『ま、試しに飲んでみなよ、飛ぶぞ』
「……そうだなコークハイを二つ、頼む」
「かしこまりました」
マスターがいそいそと準備を始める。ライザーはふとスマートフォンの電源を点ける。
時計は23:19を指し、待ち受けにはアロハシャツを着たライザーとアヘ顔ダブルピースをした一誠が写っていた。
記憶が確かならイメージファイトの二週目までノーミスでクリアされマウントをとられ煽られているところを着いてきた謎のインド人のチャンドラーさんによって撮影されたものだ
(久々にリベンジしに行くとするか……上級悪魔として、敗けっぱなしで終わるわけにはいかないからな……)
小さな決意を固めるライザーにマスターが二人分のコークハイを差し出す。
浮いた二つ氷にそれぞれ月が浮かぶ、彼がグラスを手に取り飲み干す。
「……やっぱり子供っぽいじゃねーか」
その声はかすかに震えていた。
遅れてしまって大変申し訳ありません。コロナのせいで授業が変則的になって慣れるまで時間がかかったりバイト先の先輩が別のところに異動したり辞めたりして忙しくなったりNintendo Switchを欲望に敗けて購入したりアーケードアーカイブスのイメージファイトとかラストリゾートとか実家から持ってきたWiiの中に入ってたVCのグラディウスIIIとr-typelllとスーパーダライアスとスターフォックスにどハマりしたりズバリアンモバリアンドスコアンとメソゾノマヤンチョをモッチャラヘンダさせられたりしていてここまで投稿期間が空いてしまいました。
一応落ち着いてきたので今次のお話の触りの部分を執筆している次第であります。
この度は誠に申し訳ありませんでした。ゆるして。
イメージファイトのペナルティエリア難しい……難しくない?