ゾイドワイルドエヴォリューション アフターZERO   作:オーガスト・ギャラガー

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 ゾイド_それは優れた戦闘能力と自らの意思を持つ金属生命体である。  
 新地球暦1245年、世界はネオデスメタル帝国という強大な軍事国家が支配していた。  
 各地で帝国に対するレジスタンスが立ち上がり、帝国とレジスタンスが激しい戦争を繰り広げている戦乱の時代となっている中、帝国に捕らえられていたビーストライガーにシーザーと名付け、相棒となった少年ウィルは謎の少女エマと共に冒険の旅に出掛けた。


第10話 「最凶ゾイドの系譜」

  新地球暦1245年、帝都メガロポリス、ネオデスメタル帝国の首都であり、1200年以上前、地球に初めてゾイドが現れたゾイドクライシスが起こる前の21世紀では世界最強の軍事力を持った大国の首都に位置していた。  

 地球の八割を支配する帝国の領土は広く、21世紀の全ての大国はおろか、ゾイドクライシス後に領土覇権を争った帝国、共和国の領土も全てネオデスメタルの領土に含まれていた。

 その帝都は小国に匹敵するほど広大であり、都市の周辺には巨大な城壁に囲まれ、周囲には全身が真っ赤なキャノンブルとバズートルが見張っていてまるで機械の要塞だった。

 この日は帝都の式典であった。帝国の各領域を支配する全ての総督や軍人が帝都の中心にある皇帝ギャラガー三世の宮殿の前に集結していた。宮殿の周辺にはギャラガー親衛隊と呼ばれる皇帝直属の護衛の兵士と機械兵、そして親衛隊専用のギルラプタージョーカー、ラプトール、ディロフォス、キャノンブル、バズートル、ガブリゲーター、ステゴゼーゲ、ディメパルサーが行進する盛大な軍事パレードが行われていた。

 親衛隊の兵士は一般の兵士と違い、赤い装甲服に身を包み、親衛隊専用のゾイドには全身が真っ赤なカラーリングが施されていた。宮殿の前には赤いローブとマントに身を包んだ礼服を着た帝国の皇子アーネスト・ギャラガーがいて、その後ろに付き添いとしてカーター大佐とコナー少佐がいた。そして、その横には四天王のグレッゲル准将、アッカーマン中将、デーニッツ中将、ルメイ大将もいた。

 多くの国民が宮殿の前に集結する中、一人の男が立って演説を行っていた。男はギャラガー親衛隊の隊長にして帝国の事実上のNo2のキル・タッカー元帥だった。

 

 「我が帝国の諸君!かつてこの世界は混沌に道溢れていた。1200年以上前、帝国と共和国が領土覇権を争って人類は愚かな戦争を繰り広げていた!しかし、その戦争は間もなく終わりに近づこうとしている!

 我がネオデスメタル帝国がこの世界を統一したとき、世界に変革をもたらし、新たな世界が創造される!そして、その創造主となられるのが我らが皇帝ギャラガー三世陛下なのだ!皇帝陛下が全世界を支配した暁には、この世に永遠の楽園が築かれる!

 しかし、愚かにも反乱軍は皇帝陛下と我が帝国の理想を踏みにじり、反乱を起こしている!そんな輩を許してよいのか!皇帝陛下と我が帝国の理想と秩序を守るために諸君よ、今こそ立ち上がるのだ!」

 

 「ウォーォォォォー!!」

 

 タッカー元帥の演説を聞いて歓声を上げる帝国国民、

 

 「だが、諸君よ!何も恐れることはない!我らには皇帝陛下がおられる!皇帝陛下は無敵なのだ!これから諸君に皇帝陛下の御力を見せよう!」

 

 タッカー元帥が指差した宮殿の広場にはクローン技術で複製された量産型のナックルコングとスティレイザーがそれぞれ数百体いた。

 そして、そのとき、地面が揺れ、広場の地面が割れ、下から超巨大ゾイドが現れた。それは1200年以上前、ゾイドクライシスで世界の三分の一を壊滅させた伝説の最凶ゾイド、ジェノスピノだった。

 ジェノスピノの頭部には一人の人物が立っていた。その人物こそがネオデスメタル帝国の皇帝ギャラガー三世だった。年齢は30代から40代で、アーネストより派手な赤いローブとマントに身を包んだ礼服を着ていて、威風堂々とし、自信と狂気にも見えるその目はかつて200年前に世界に君臨した帝王ギャラガーそのものだった。

 ジェノスピノは自身の頭部に乗っているギャラガー三世が落ちないようにゆっくり量産型のナックルコングとスティレイザーの元に歩いていった。ギャラガー三世を見た国民たちは一斉に歓声を上げた。

 

 「ウォーォォォー!ギャラガー!ギャラガー!ギャラガー!」

 

 ギャラガー三世は歓声を上げる国民に対して右手を上げた後、すぐさまジェノスピノの頭部からコクピットに乗り移った。合図と共にナックルコングとスティレイザーはジェノスピノに襲いかかった。ジェノスピノはA-Zロングキャノンを撃ち込み、近づいてきたものにはA-Z高熱火炎放射機を放ち、前足と口でナックルコングの首と手足をバラバラにしていった。

 マシンブラストしたスティレイザーのプラズマウォールや砲撃も一切通用せず、ジェノスピノは次々と確実に倒していった。全てのナックルコングとスティレイザーはバラバラに破壊され、時間はわずか三分足らずだった。ジェノスピノの力を見た国民は一斉に歓声を上げた。

 

 「ウォーォォォー!皇帝陛下万歳!皇帝陛下万歳!ネオデスメタル帝国万歳!!」

 

 国民の歓声で帝都中が沸き上がった。盛大な軍事パレードが終わり、皇帝ギャラガー三世は宮殿内の玉座に座っていて、その横にタッカー元帥が立っていた。皇帝の玉座の間は壁一面が真っ赤で部屋は広く、玉座は奥の真ん中に位置し、周辺には親衛隊兵士がいつでも銃を撃てる状態で立っていた。

 アーネストはその前に膝ま付いていて、その後ろに四天王もいた。アーネストはギャラガー三世に、

 

 「戻りました!父上!」

 

 アーネストを見たギャラガー三世は、

 

 「よく戻ってきたな!息子よ!実は、近々私はお前に譲位し、その証としてジェノスピノをお前に与えようと考えている!」

 

 それを聞いたアーネストは驚き、

 

 「帝位とジェノスピノを僕に!ですか?」

 

 「そうだ!その代わり、私は新しいゾイドに乗り換えようと考えている!」

 

 「父上がジェノスピノ以外に乗るゾイド?」

 

 「それはいずれ知ることになるだろう!それに、お前は私の跡を継ぐもの!それに相応しいゾイドが必要だからな!ま、そうなったらあのギルラプターはもう必要ないがな!」

 

 「う……!」

 

 そのとき、アーネストの脳裏にギルラプターエンペラーがエマに寄り添い、笑顔でギルラプターを優しく撫でるエマの姿が写った。

 

 「お言葉ですが、父上!僕は帝位を継ぐにはまだ未熟です!譲位はもうしばらく待ってください!」

 

 「フ、まあいいだろう!」

 

 アーネストはその場を離れ、アッカーマン中将も付き添いとしてその場を離れる。アーネストとアッカーマン中将が去った後、タッカー元帥はデーニッツ中将に、

 

 「ところで、デーニッツ中将!あの小娘はまだ捕らえられないのか?」

 

 「は、手配書のレベルを上げ、小娘を賞金首に賭け、我が帝国の賞金稼ぎ共にも伝え、全力で捜索中です!」

 

 グレッゲル准将はデーニッツ中将に、

 

 「中将、一体なんです?その計画とは!」

 

 タッカー元帥は、

 

 「そうか、諸君らにはまだだったな!では今からご案内しよう!陛下はいかがでしょうか?」

 

 「いや、私は風呂にいかせてもらう!ジェノスピノに乗った後の休息を取りたいのでね!それとあれが完成したら、すぐに伝えろ!何としても早くだ!」

 

 「は!」

 

 タッカー元帥はデーニッツ中将と共にグレッゲル准将、ルメイ大将を宮殿内の研究室に案内した。研究室研究室に入った先のガラス越しにはZ-Oバイザーと拘束部を取り付けられたデスレックスがいて、その横には荷電粒子吸入ファンがあった。

 グレッゲル准将とルメイ大将は驚いた表情をした。それに対し、デーニッツ中将は、

 

 「現在、私とタッカー元帥が行う計画はデスレックスをジェノスピノ以上の最凶ゾイドに改造する計画なのです!」

 

 それを聞いたグレッゲル准将とルメイ大将は口を揃えて、

 

 「デスレックスをジェノスピノ以上の最凶ゾイドに改造だと!?」

 

 「そうです!実はかつて200年前、陛下の先祖たる帝王ギャラガー様が所有していたこのデスレックスが封印されていたデスロッキーにこの荷電粒子吸入ファンが発見されたのです!」

 

 それを聞いたグレッゲル准将は、

 

 「荷電粒子吸入ファンだと!?」

 

 「実は記録によるとデスレックスは1200年以上前、元々一体ではなく、複数いたことが判明し、その中でも突然変異種にしてこの荷電粒子吸入ファンを持つ唯一絶対の存在であるオメガレックスがいたことが判明したのです!」

 グレッゲル准将とルメイ大将は口を揃えて、

 

 「オメガレックス!?」

 

 「オメガレックスは最強兵器、荷電粒子砲を持ち、ジェノスピノを遥かに凌駕する史上最強のゾイドとしてかつて古代秘宝Zと呼ばれたデスレックスの伝説を大きくしたのです!」

 

 ルメイ大将はデーニッツ中将に、

 

 「では、200年前、ジェノスピノの伝説が伝わらなかったのはそのためか!しかし、その計画に何故あの小娘が必要なのだ?」

 

 「こちらをご覧ください!」

 デーニッツ中将が指差したところに巨大なキューブがあった。グレッゲル准将とルメイ大将はそれを見て驚愕した。

 

 「これは!?」

 

 デーニッツ中将は、

 

 「リジェネレーションキューブです!」

 

 「リジェネレーションキューブだと!?」

 

 二人に対してデーニッツ中将は、

 

 「そうです!ところで、皆さんはゾイドクライシスをご存じですか?」

 

 デーニッツ中将の質問にルメイ大将は、

 

 「ああ、確か伝説によると1245年前に地球に初めてゾイドが現れた日だったな!」

 

 デーニッツ中将は、

 

 「実はゾイドは元々、この地球の生物ではなく、ゾイドクライシスで地球に移住した第一世代と言われるものたちが住んでいた惑星Ziの生物なのです!」

 ルメイ大将は、

 

 「惑星Zi!?」

 

 「そうです!実は記録によると、第一世代が地球に移住する際、あるトラブルが起きて、ゾイドクライシスが起きて地球が一度滅ぶ事態になってしまったのです!そして、ある科学者がゾイドクライシスで滅んだ地球を再生させるために開発したのがこのリジェネレーションキューブなのです!

 記録ではリジェネレーションキューブは地球再生に全て使われたとされていますが、この端末は万が一、地球がまた滅びた場合を想定して用意した、いわば保険のようなもの、そしてこの端末を解析し、我が帝国は惑星Ziのオーバーテクノロジーとゾイド因子の仕組みを得、我が帝国はここまで強大になったのです!

 しかも解析の結果、この端末はデスレックスをオメガレックスに進化させる部品にもなることが判明したのです!しかし、既に1200年以上も経っているため、作動方法がわからないのです!」

 

 ルメイ大将は、

 

 「それで、あの小娘が知っているから必要ということか。だが、その根拠は?」

 

 「小娘の名はエマ・コンラッド、そのコンラッドという名に何か引っ掛かりがありませんか?」

 

 「どういうことだ?」

 

 「実はウィルとか言う小僧が脱走させたあのビーストライガーが1200年以上前にゾイドの王、地球の救世主と呼ばれたときのライダーの名もコンラッドで、そして、その妻は第一世代の一人で、リジェネレーションキューブを開発した科学者の孫だったそうだ!」

 

 「名前が同じだけじゃないのか?」

 

 「しかし、元はといえば、ビーストライガーの発掘及び復元をしたのもあの小娘で、しかもあれだけ調教しても従わなかったビーストライガーが唯一なついたほどですから!血の繋がりはあってもおかしくはありません!しかも、ビーストライガーの発掘場所すらも知っていたものですから、リジェネレーションキューブの作動方法も知っているはずです!」

 

 デーニッツ中将の説明にタッカー元帥は、

 

 「とにかく、この件は機密事項で、我ら以外の者には口外するな!陛下は1日も早くオメガレックスの完成を待ち望んでおられるのだ!デスレックスは私が管理し、ルメイ大将ら三人は何としてもあの小娘を帝都に連れて来るのだ!」

 

 デーニッツ中将は、

 

 「ビーストライガーはいかが致しましょう?」

 

 「本来なら、捕獲して戦力にするところだが、生かしておくと後々、面倒になる!ビーストライガーは構わず、スクラップにしろ!バラバラにな!」

 

 三人は、口を揃えて、

 

 「は!」

 

 場所は変わり、帝都の病院でカティアはウィルと戦った後の治療を受けていた。カーター大佐は医師に、

 

 「少尉の容態はどうです?」

 

 「順調に治りつつあります!このまま、安静にしていれば大丈夫です!」

 「

 そうか…、ありがとう!」

 

 起きたカティアはカーター大佐に頭を下げ、

 

 「申し訳ありません、大佐!私が無茶な行動をしたせいで!」

 

 「いいんだ!君は任務を遂行しようとしたまでだ!」

 

 そこにアーネストが病室に入った。

 

 「カティア、大丈夫か?」

 

 アーネストの問いにカティアは、

 

 「大丈夫よ!殿下、ありがとう!」

 

 「大丈夫ならそれで良かった。失礼するよ!」

 

 そう言って!部屋から出るアーネスト、それを見たカーター大佐は、

 

 「相変わらず、無愛想ですな!殿下は!」

 

 それに対し、カティアは、

 

 「いいえ、あれが殿下のいいところなの!殿下は本当に優しいお方なんです!」

 

 そこにお見舞いにきたカティアの同僚がきた。

 

 「ギレル少尉、大丈夫か!」

 

 「ナッシュ!ありがとう!大丈夫よ。」

 

 「良かった!突然、倒れたって聞いたから心配してたよ!でも今日は皇帝陛下とジェノスピノを拝むことが出来たから、嬉しいだろ?」

 

 「え、ええ……。」

 

 そのとき、カティアの腕が震えていた。

 

 「ギレル少尉も俺みたいに機械化すれば、こんな苦しみを受けずに済んだのに!」

 

 それを聞いたカティアは驚愕した!

 

 「え!ナッシュ、あなた、機械化されたの!?」

 

 「そうだよ!」

 

 そのとき、ナッシュは自分の右腕の皮膚を引きちぎり、引きちぎった右腕は超合金でできた完全な機械の腕になっていた。それを見たカティアは青ざめた表情をしていた。ナッシュは自慢するかのように機械の作動音がする右腕の手首を動かしながら、

 

 「見てくれよ!凄いだろ!この前の戦闘なんか、反乱軍の銃を数百発喰らっても全く痛くもないし、傷だってつかないし、しかも反乱軍の兵士共30人も倒したんだよ!これも皇帝陛下のお陰なんだよ!まさに陛下は創造主にして神だよ!陛下には感謝で一杯だよ!」

 

 それを聞いたカティアは、

 

 「そう…、良かったわね……。」

 そのときのカティアは暗い表情をしていた。一方、病院から出たアーネストは宮殿の庭にいた。その横にギルラプターエンペラーが心配そうにアーネストを見ていた。アーネストはペンダントを見ていた。彼はエマの言葉を思い出した。

 

 「レイル、私たちはわかり会うことで未来を築くのよ!」

 

 アーネストはペンダントを握りしめ、

 

 「エマ、お前は甘い!世界を統一するには、対話など不要!ましてやわかり会うことも出来ない!力こそ正義!絶対的な力が必要なのだ!人間もゾイドも圧倒的な力の前には平伏すしかないのだ!」

 

 アーネストはギルラプターを睨み付け、

 

 「ギルラプター、お前もエマのことは忘れろ!お前は俺が皇帝になるための僕だ!俺の支持に従え!」

 

 ギルラプターはアーネストの言葉にうなづく。そのとき、帝都中に設置されているスピーカーからタッカー元帥の出撃命令が出た。それを聞いたアーネストは、

 

 「出撃命令が出たか!ライガーを倒すのはこの僕だ!奴を倒して、父上の後を継いで帝国の皇帝になる!」

 同時に聞いたカティアも。 

 

 「エマ、待ってて必ずあなたを助けるわ!」

 それぞれの思いを持って二人はルメイ大将ら四天王の率いる軍にそれぞれ同行していった。

 

 To be continued

 




 次回予告
 
 帝国軍の進撃に備え、基地の守りを固めようとする同盟軍、しかし、そのとき、エマ奪還のために四天王のグレッゲル准将とブリューゲル大尉が再び襲いかかってきた。
 グレッゲル准将のスティレイザーに苦戦するウィルとリセル、リセルは帝国軍への憎しみに囚われ、冷静さを失ってしまう。果たしてスティレイザーを打ち破ることが出来るのか!

 次回 

 「駆け抜けろ、ウルフ!」

 本能を呼び覚ませ、ライガー!

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