ゾイドワイルドエヴォリューション アフターZERO 作:オーガスト・ギャラガー
新地球暦1245年、世界はネオデスメタル帝国という強大な軍事国家が支配していた。
各地で帝国に対するレジスタンスが立ち上がり、帝国とレジスタンスが激しい戦争を繰り広げている戦乱の時代となっている中、帝国に捕らえられていたビーストライガーにシーザーと名付け、相棒となった少年ウィルは謎の少女エマと共に冒険の旅に出掛けた。
西方のレジスタンスの基地、そこにデーニッツ中将の率いる部隊がおり、撤退したグレッゲル准将とブリューゲル大尉がデーニッツ中将と話していた。デーニッツ中将は二人に向かって、
「まさか、またもや、失敗するとは!」
グレッゲル准将は、
「申し訳ありません!」
「仕方ない!グレッゲル准将、お前はあのスレイマーズとやらの討伐を!ブリューゲル大尉は私の部隊に戻り、引き続き、小娘の奪還に務める!」
「いや、しかし!」
「本来、小娘の奪還は私の任務だ!お前は何度も邪魔したあのウジ虫を始末しろ!」
「了解しました!」
場所は変わり、同盟軍本拠地、そこでウィルとリセル彼は話していて、横にシーザーとウルフがいた。ウィルはリセルと話していた。
「なあ、リセル!お前の相棒に名前はないのか?」
それに対し、リセルは、
「そういえば、名前なんてつけていなかったな!そうだな…、デルって名はどうかな?」
「いい名前だね!ウルフ、どうだ?」
ウィルの質問にうなずくウルフ。
「これからもよろしくな、デル!」
二人の元にグラッドが現れ、
「ここにいたのか!今から緊急会議だ!直ぐにこい!」
司令室に全員集まり、グラッドは全員に向かって言った。
「さて、今回、君たちに集まってもらったのは他でもない!帝国の勢力は日々拡大しつつあり、今や、全世界を完全に支配する勢いだ!そこで、俺たちは帝国に対抗するため、味方を増やすために各地のレジスタンスと手を結ぼうとしているのだが、色々と厄介な問題が出ている。
例えば、帝国の力に恐れを成して士気が下がり、帝国に抵抗する派、投降する派に別れて内輪揉めになっているものや、帝国に服従してしまったもの、特に厄介なのが帝国には抵抗するが、ゾイドを帝国を倒すための道具として酷使するものがいて、中々、味方が集まらない状態だ!
そこで、彼らの目を覚まさせるための方法が必要なのだが!」
それを聞いたクリスは、
「となると、俺たちが帝国に対抗できる存在として世界中に知らしめねばならないということか!しかし、今の俺たちにはそれが……、」
「そこで、クルーガーからウィルとエマを彼らを説得する役になって欲しいと言っている!」
それを聞いたウィルとエマは驚いた。
「俺とエマが!?」
それに対し、クルーガーは、
「そうだ!かつて1200年以上前にゾイドの王と呼ばれ、地球を救ったシーザーの相棒である二人にその役を担って欲しい!」
「ちょっと待ってくれよ!いくらなんでも、それは荷が重いよ!」
しかし、エマは、
「私、引き受けます!」
「エマ!」
「皆が帝国に苦しめられている状況を変えるためにも、力になりたいんです!」
クルーガーは、
「わかった!よし、クリス、ジョン、ジェニファーはウィルとエマを連れて東方のレジスタンスの元に行ってくれ!」
クリス、ジョン、ジェニファーは応え、
「了解!」
クリスはウィルたちを連れ、出発の準備をする。グラッドはクルーガーに、
「ホントにいいのか?いくらなんでも買いかぶり過ぎじゃあ…。」
「いや、二人には試練を与えることが必要だ!きっとあいつだって喜ぶはずだ!」
「デイビッドのことか?確か、あいつは俺が同盟軍に入る前、総司令だったあんたの副官だったな!いくら、あいつの息子だからといって、そう上手くいくとは思えないし、それにエマも1200年以上前にシーザーが地球を救い、ゾイドの王と呼ばれたときの相棒と地球を救った少女の子孫だっていう噂があるが、そう簡単にいくとは……。」
「私はあの二人を信じたいんだ!いつか、あの二人が1200年以上前のときみたいに世界を救ってくれると!」
出発するシーザー、ジャック、クーデリア、キール。しかし、エマはグラッドの指示で、引き続き、キールに乗っている。キールのコクピットの中でジョンの後ろにしがみつくエマを見てまた不満そうな顔をするウィル。 クリスは通信でジョンに話し掛ける。
「ジョン、ウィルが不機嫌そうだが、何かあったのか?」
「大したことはないですよ!隊長、あれは男の嫉妬です!」
それを聞いたジェニファーは、
「あら、愛しい女の子を奪われたことの嫉妬!」
二人の会話を聞いたクリスは、
「よし、問題無いな!いくぞ!」
場所は変わり、クリスたちが着いたのは東方のレジスタンスの基地。そこのレジスタンスは帝国に抵抗はするも、ゾイドを帝国を倒すための道具、兵器として酷使する思想を持っていた。
基地の入口にクリスたちは到着するが、入口の兵士たちがクリスたちに向けて銃口を向けた。クリスは兵士たちに向かって、
「我々は反ネオデスメタル同盟軍である!君たちのリーダーと話がしたい!」
銃を向けた兵士たちは少し様子を見た。そのとき、入口の扉が開き、クリスたちは入っていった。不安そうな顔をするウィルとエマ。
場所は変わり、クリスたちはレジスタンスのリーダーと会談を行っていた。クリスは、
「…ということだ!強大になる帝国に対抗するために我々は君たちの力が必要なのだ!」
それに対し、レジスタンスのリーダーは、
「確かに我々と君たちは帝国を憎むもの同士だ!だが、我々は君たちの思想が気に入らない!所詮、ゾイドは人間の道具でしかない!何故、その道具に感情移入するのかね?」
それを聞いてムッとするウィル、
「なんだよ!その言い方!ゾイドは道具なんかじゃない!俺たちと同じ生き物なんだ!一緒に生きていく相棒なんだよ!」
しかし、レジスタンスのリーダーは、
「子供が口出しするもんじゃない!相棒だと?ふざけるな!この世界は弱肉強食!強いものは弱いものに服従するのが掟だ!我々は君たちとは手は組まん!さっさと帰りたまえ!」
やむ無く部屋から退出したクリスたちは、
「やれやれ、どうやら、思った以上に手こずりそうだな!クルーガー将軍はお前を説得役にしたが、まるで聞く耳すら持たない。」
ジョンはクリスに、
「最悪、ここの連中はほっといて、他のレジスタンスと手を組んでいった方がいいんじゃないか?そのうち、帝国の力を知って俺たちと手を組んでくれるかもしれないし!」
「だが、あの思想が厄介なんだよな!このままほっとくと、手を組まないどころか、下手したら、帝国と手を組む危険性だってある。なんせ、帝国には人の弱さにつけこんで懐柔する連中もいるし!」
そのとき、エマがクリスに、
「私がもう一度説得してきます!」
ウィルは、
「エマ!」
「私はあの人たちに教えて上げたいんです!ゾイドと人は共生していくんだということを!」
ウィルとエマは再び、レジスタンスのリーダーと話をした。レジスタンスのリーダーは、
「小娘の分際で、俺たちに説教のつもりか!」
エマはレジスタンスのリーダーに、
「ゾイドは人間の道具なんかじゃありません!ゾイドは、いえ、全ての命あるものは共に生きていかないといけないのです!」
「くだらん!そんな綺麗事通用せん!」
「悪の面だけ見ては駄目です!ゾイドは善の存在にもなれるんです!」
「何度言っても……、」
そこにウィルが、
「だったら、俺とシーザーを見てくれないか!人とゾイドとの絆を!」
場面は変わり、クリスたちとエマとレジスタンスのリーダーは、シーザーを見ていた。
ウィルはシーザーに、
「いくぞ、シーザー!」
ウィルの言葉にうなずくシーザー、
「切り拓け、シーザー!俺の魂と共に、進化 解放!エヴォブラストー!!」
エヴォブラストしたシーザーを見たレジスタンスたちは驚いた。ジョンはレジスタンスたちに、
「どうだ?これが滅びた地球を救い、ゾイドの王と呼ばれたビーストライガーの力さ!」
それを聞いたレジスタンスのリーダーは、
「ビーストライガー!?」
エマはレジスタンスたちに、
「わかっていただけましたでしょうか?」
それを聞いたレジスタンスのリーダーは少し考えて、
「なるほど、あの伝説のビーストライガーを味方にしているとは!どうやら、同盟軍も捨てたもんじゃないということだな!いいぜ、お前たちの仲間になる!そして、ゾイドを大切にするぜ!」
それを聞いて少し安心するエマ、
「でも、一足遅かったかな?」
「え?」
そのとき、レジスタンスのリーダーはエマを捕まえ、頭に拳銃を向けた。ウィルは慌てて、
「エマ!くそ、お前たち、なんのつもりだ!」
レジスタンスのリーダーは、
「俺たちはレジスタンスではなくなった!俺たちは帝国に雇われた賞金稼ぎさ!」
「なんだと!?」
それを聞いて驚くクリスたち、そして銃を持った機械兵とクモのような四本足と殻のようなボディと腕にレーザーガンを搭載したロボット兵に囲まれた。
「帝国が俺たちの自治を認めて、これまでのことを水に流して資金援助をしてくれたんだ!そして、最重要指名手配者のエマ・コンラッドを捕らえれば、もっと金と強力なゾイドをくれるって!案の定、引っ掛かってくれたようだな!」
そのとき、基地からディメパルサーMk-ⅡとガブリゲーターMk-Ⅱ、ディメパルサー、ディロフォス狙撃隊が現れた。ディメパルサーMk-Ⅱからデーニッツ中将が降り、
「どうやら、上手くいったようだな!しかも、エマだけじゃなく、ビーストライガーまで手に入るとは、一石二鳥とはこのことだ!」
デーニッツ中将を見たクリスは、
「デーニッツ!やはり、お前か!」
口笛でゾイドを呼ぼうとするクリスたち、しかし、デーニッツ中将は、ボタンを出し、
「おっと、お前たちがゾイドを呼んだ瞬間、このスイッチ、ディメパルサーのマシンブラストを発動し、マッドオクテットでお前たちのゾイドは一瞬で動きを封じ込められる!それでもいいのかね?」
デーニッツ中将の言葉を聞いて手を上げるクリスたち、
「それでいい!さあ、ウィルとかいう小僧!ライガーから降りて大人しく投降したまえ!」
ウィルは、
「誰が!俺はお前たちを許さねぇ!エマを返せ!」
デーニッツ中将に睨み付けるシーザー。
それを見たデーニッツ中将は、
「やれやれ、相変わらず、世話の焼ける小僧だな!ブリューゲル大尉!殺れ!」
近づくガブリゲーター、シーザーはじっと構える。エマはウィルとシーザーに向かって、
「ウィル、シーザー、逃げて!」
そのとき、同盟軍のクワガノス部隊が狙撃隊に攻撃してきた。クワガノス部隊を見たデーニッツ中将は、
「なに、馬鹿な!ディメパルサーの電波妨害で通信は遮断したはず!」
そのとき、ジョンが発信器を取り出し、
「へへへ、どうやら、俺の発信器までは通用しなかったようだな!こいつは俺が帝国の基地に侵入して手に入れたディメパルサーの情報を基に開発したものだ!」
「中々、やるな!さすが、クモ男と呼ばれるだけのことはある!だが、それでも万能ではなかったようだな!呼べたのはクワガノスだけだ!」
デーニッツ中将は、スイッチを押し、
「制御トリガー解除、ディメパルサー!兵器 解放!マシンブラストー!!マッドオクテット!」
マッドオクテットを喰らい、次々と墜落していくクワガノス、同時にシーザーも喰らい、苦しむシーザー、ガブリゲーターはすかさず、シーザーを喰わえる。ブリューゲル大尉は、
「ハハハ、今度こそ噛み砕いてやるぞ!」
「フフフ、これで身動きは取れまい!」
そのとき、地面から白い塊が現れ、ガブリゲーターに突進してきた。ガブリゲーターはシーザーを離し、ガブリゲーターに絡み付いた白い塊からキールが現れた。それを見たデーニッツ中将は、
「なに?スパイデスだと!どういうことだ?」
ジョンは、
「へへへ、俺のキールの糸は他のスパイデスより粘着性が高いだけじゃねぇ!実は電磁波を防ぐことも出来るのさ!」
キールはディメパルサーのスペクターフィンを掴み、ウィルはシーザーから降り、油断したレジスタンスのリーダーを吹っ飛ばし、エマを救出した。
「エマ、大丈夫か?」
「ありがとう!」
機械兵とロボット兵器がウィルとエマに向けて発泡するが、キールの糸で身動きを封じられ、狙撃隊は駆けつけたジャックとクーデリアが攻撃した。ウィルはエマと共にシーザーに乗る。クリスもジャックに、ジョンはキールに、ジェニファーはクーデリアにそれぞれ乗り、ジョンはウィルたちに向かって、
「こいつらは俺に任せろ!その間に逃げろ!」
シーザー、ジャック、クーデリアは基地から脱出する。狙撃隊が攻撃するが、ジャックとクーデリアの攻撃でそれを防ぐ。基地から3㎞離れたところに止まり、ウィルたちはキールが来るのを待っていた。脱出して二時間が経った。
エマは心配そうに、
「パーカーさん、大丈夫かしら……。」
ウィルはエマを励ますように、
「大丈夫だよ!」
シーザーの目の前にキールがぬっと現れた。
「ウワァァー!!」
それを見て驚くウィル、ジョンはからかうように、
「ハハハ、ビックリした?」
クリスはジョンに向かって、
「無事だったか!」
「なんとか、逃げることは出来たぜ!さあ、早く戻ってこのことを指令に!」
場所は変わり、レジスタンスの基地、
「フ、まさか、あのスパイデスにあんな性能があったとは!とはいえ、これで奴らは味方を増やせなくなったな!次の機会を狙うか。」
本拠地に戻るシーザーたち、ジョンは、
「やれやれ、まさか、既に帝国軍の手が回っていたとは!」
クリスは、
「敵に回ったという最悪の状態になり、オマケにウィルとエマに精神的なショックを与えてしまったようだな。」
クリスがシーザーの方を向いたとき、ウィルとエマは悲しそうな顔をしていた。
To be continued
次回予告
帝国に寝返ってしまったレジスタンス、同盟軍は他のレジスタンスを味方につけようとするが、そこに、アッカーマン中将率いる帝国軍が襲撃する。更にパワーアップしたアッカーマン中将のナックルコングMk-Ⅱとコナー少佐のステゴゼーゲMk-Ⅱ、ウィルとシーザーは再びカーター大佐のスナイプテラと対決するが、苦戦してしまう。
果たしてウィルとシーザーはスナイプテラを倒せるか?
次回、「スナイプテラを攻略せよ」本能を呼び覚ませ、ライガー!