ゾイドワイルドエヴォリューション アフターZERO   作:オーガスト・ギャラガー

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  ゾイド_それは優れた戦闘能力と自らの意思を持つ金属生命体である。  
 新地球暦1245年、世界はネオデスメタル帝国という強大な軍事国家が支配していた。  
 各地で帝国に対するレジスタンスが立ち上がり、帝国とレジスタンスが激しい戦争を繰り広げている戦乱の時代となっている中、帝国に捕らえられていたビーストライガーにシーザーと名付け、相棒となった少年ウィルは謎の少女エマと共に冒険の旅に出掛けた。


第15話「ロボットの都市」

 東方、南方のレジスタンスを味方につけることに失敗した同盟軍は西方のレジスタンスを味方につけるためにウィル、エマ、グラッド、クリス、ジョン、リセルが西方のレジスタンスの本拠地に向かった。

 しかし、間もなくグレッゲル准将率いるキャノンブル部隊に追われていた。キャノンブル隊はシーザーたちにナインバーストキャノンを放った。執拗に追いかけるキャノンブル隊を見たグラッドは、

 「ち、このままだと、レックスたちのスタミナが切れてしまう!クリス、ジョン!あいつらを少し足止めしといてくれ!俺たちは隠れる場所を捜し、見つけたら、通信で知らせる!そのときが来たら、直ちに離脱してそこに向かってくれ!」

 

 「了解!ジョン!人働きするか。」

 

 「ああ、ちょいと面倒だが、やるしかない。」

 

 ジャックとキールはキャノンブル隊の前に立ちはだかり、ジャックは翼でキャノンブルの9連キャノン砲を一刀両断し、キールは糸でキャノンブルの動きを止めた。隠れる場所を捜すグラッドたち、そのとき、レックスが何か感じ取ったかのように咆哮を上げる。

 

 「レックスが何か見つけたようだ。後に続け!」

 

 レックスが向かったのは岩山の影に隠れた洞穴だった。洞穴を見たグラッドは、

 

 「よし、あそこに隠れるぞ!クリス、ジョン!隠れる場所を見つけた!直ちに離脱しろ!」

 

 通信を聞いたクリスは、

 

 「よし、ジョン。俺たちは離れるぞ!」

 

 「了解!」

 

 引き上げるジャックとキールを見たグレッゲル准将は、

 

 「くそ、直ぐに後を追え!」

 

 グレッゲル准将の命令で後を追うキャノンブル隊、

 

 「あのスレイマーズとか言うウジ虫を捜索していたら、まさか、あの小僧どもに会うとは思わなかったぜ!ここはデーニッツ中将の領域だが、あのエマとか言う小娘の奪還が最重要命令だから、早く奪えば、いいし!それに奪還が成功すれば、俺も出世出来るからな!」

 

 洞穴にジャック、キールも到着し、

 

 「どうだ?クリス、外の様子は?」

 

 「ラプトールとキャノンブル隊が捜索している!暫くはここにいたほうが安全です!」

 

 「そうか、まさか、こんなときに連中に追われるとはな!仕方ない。連中が引き上げるまでここで待機だ!」

 

 全員、コクピットから降りたそのとき、

 

 「手を挙げろ!」

 

 全員が振り向いたその先には数十体のアンドロイドに似た形状をしたロボットたちが銃を突きつけた。それを見て震えるエマ、

 

 「エマ!お前は俺の後ろにいろ!」

 

 リセルも銃を出そうとするが、グラッドは待てと言うかのように手を出す。

 

 「クリス、お前はどう思う?こいつら!」

 

 「一見、機械兵のようですが、形状が明らかに違います!そもそも帝国の機械兵は普通の人間と見間違える程の形状をしているはずです!」

 

 そのとき、ロボットたちが口を開き、

 

 「こら、そこの者!何をブツブツ言っている!さっさと投降しろ!」

 

 「それに機械兵はあんな流暢に喋りません!」

 

 「お前もそう思うか!」

 

 「どうします!コマンダー?」

 

 「敵の正体が分からない状況、ここは逆らわないほうが良さそうだ! わかった!投降する!お前たちも手を挙げろ!」

 

 グラッドの言葉を聞いたロボット兵は、

 

 「よし、大人しくしていろ!ゾイドたちは我々の手で保護する!」

 

 その言葉を聞いたグラッドは、

 

 「保護だと?ということはこいつら、明らかに帝国軍ではなさそうだ!」

 

 

 

 

 

 グラッドたちは洞穴の奥のほうに連れていかれ、そこに隠されているエレベーターの中に入っていった。エレベーターはどんどん下のほうに行き、開けた場所に入り、突然、エレベーターが前に動き、透明状の通路に出た。通路の外には高度な技術を持った近未来のような都市で、そこには驚くべき光景があった

 そこには、人間サイズや4、5m程の大きさを持つ者、様々な形状をしたロボットたちが住民となってゾイドと一緒に町を歩いたり、子犬サイズのラプトールやガノンタス、トリケラドゴスにリールを付けて散歩をするもの、ゾイドでレースをしているもの、ゾイドと公園で遊んでいるものまでいた。それを見たグラッドは、

 

 「驚いたな!まさか、モグラの巣にこんな大都市があるとは!しかし、一体誰がこんな都市を?そして人間が1人もいないとはどういうことだ?」

 

 ウィルとエマはその光景を嬉しそうに見ていた。エレベーターが止まり、ウィルたちはロボットの誘導にしばらく歩いた後、ウィルたちはロボット兵に牢にいれられ、

 

 「お前たちの処分は議会とお前たちから解放したゾイドたちの進言で決定する!それまで待っていろ!」

 

 それを聞いたウィルは、

 

 「何だよ!それ!シーザーは俺の相棒だ!返せ!」

 

 ロボット兵は無視して牢の扉をロックして立ち去っていった。

 

 

「くそ、何なんだよ!あいつら!」

 

 エマはウィルの肩を優しく触り、

 

 「ウィル、ムキにならないの!」

 

 牢を周りを見てグラッドは、

 

 「それにしても、ここは一体なんだ?一体誰がこんな都市を造ったんだ?」

 

 「やあ、君たちもここに来ちゃったか!」

 

 突然、男の声がし、ウィルたちが振り向いた先には、金髪の青年がいた。

 

 「お前は誰だ?」

 

 「僕はマイク、マイケル・ラモン!」

 

 「お前もここに連れてこられた被害者か?」

 

 「そうなんだ!相棒のトリケラと共に世界を回るゾイドハンターで、ゾイドの発掘作業をしていたら、いきなり、あの変なロボットに襲われてここに連れてこられて、しかも相棒のトリケラも奪われ、牢に入れられて、今、ここにいるってわけ!」

 

 「なるほど、ということは連中は人間を嫌っている者ということか!」

 

 

 

 

 

 

 地底都市の議会、そこには首相や将軍、その他の議員が集まっていた。

 中央には議長にして首相らしきロボットとその横には将軍らしきロボットがいた。議長は将軍に、

 

 「さて、かつて、1200年以上前に地球を救ったあのビーストライガーを連れた人間たちのことだが、話によると、あのライガーたちは人間たちを解放してくれと言っているようだな!」

 

 「これはあり得ないことです!まさか、ゾイドを苦しめている人間にゾイドが寄り添う等、未だかつてなかったことでした!大抵のゾイドは機械のように人間に従わされているのに、こんなことは!」

 

 「とにかく、そのものたちを連れていけ!」

 

 ウィルたちが入っている牢獄に銃を持ったロボットが現れ、

 

 「出ろ!将軍がお呼びだ!」

 

 裁判所に連れていかれ、将軍はウィルたちに、

 

 「どういう理由があるか、知らんが、直ちにあのライガーたちを解放しろ!そして、お前たちはここで処刑されるか、都市から出るか、選べ!」

 

 ウィルは将軍に向かって、

 

 「何言ってるんだ!シーザーは俺の相棒だ!シーザーはきっとそんなことは望んでいない!」

 

 「人間の言うことは信用出来ない!いくら、あのライガーが一緒にいたいと言っても、ゾイドは本来人間と一緒にいるべきではない!」

 

 「違う!そうじゃない!確かにあんたたちの言う通り、人間は争いを起こしたり、ゾイドを道具扱いしている奴かもしれない!だからといって、全ての人間が悪ってわけじゃない!中には、過ちを正そうとしている人もいる!ゾイドと人間はこの星に生きる仲間なんだよ!」

 

 「仲間……!」

 

 将軍はその言葉を聞いて少し迷った。そのとき、突然、爆発が起こり、非常警報が鳴った。

 

 「緊急事態!緊急事態!人間の軍隊が総攻撃を掛けてきた!付近の住民とゾイドは速やかに避難してください!」

 

 ウィルたちが都市を見たとき、都市のあちこちが破壊されていた。そこに帝国軍の大部隊が攻撃していた。

 街にはグレッゲル准将のスティレイザーを筆頭にキャノンブル、ラプトール、ディロフォス、ナックルコング、そして、機械兵とオートブレイク、DMPスーツを装着した兵士が街を破壊し、住民やゾイドたちを容赦なく破壊していった。将軍はウィルたちに、

 

 「見よ!これがお前たち、人間の本性だ!奴らは自分の欲望のために、違う種族はおろか、同じ種族でも平気で殺す血も涙もない化け物だ!だから、我々は人間の味方はしない!そして、人間は信用出来ない!」

 

 将軍はトリケラドゴスに乗り、グレッゲル准将のスティレイザーの元に向かった。

 

 「あの小娘を連れた連中がここに来た情報が入ったが、まさか、我が帝国も知らない技術を持った連中がいるとは思わなかった!こいつは制圧する必要があるな!街は片っ端に破壊しろ!」

 

 そのとき、将軍のトリケラドゴスが現れた。

 

 「なんだ?あのトリケラは!」

 

 「人間!覚悟しろ!トリケラドゴス!本能解放、ワイルドブラストー!!」

 

 「は、どうやら、少しは楽しめそうだ!制御トリガー解除!スティレイザー、兵器解放!マシンブラストー!!」

 

 「フォースインパクト!」

 

 「プラズマウォール!」

 

 互いにぶつかり合うトリケラドゴスとスティレイザー、トリケラドゴスが押しているが、徐々にスティレイザーの方が押すようになった。

 

 「ハハハ、トリケラごとき、このスティレイザーの敵じゃないわ!」

 

 そのとき、

 

 「止めろー!」

 

 ウィルの叫びと共に、シーザーが現れ、スティレイザーに突進する。

 

 「何のつもりだ!人間!我々は人間の手は借りん!」

 

 それに対し、ウィルは、

 

 「確かにあんたたちの言うとおり、人間は信用出来ないかもしれない!でも、全ての人間が悪いわけじゃない!俺たちのようにゾイドを大切に思っている人もいる!

 それに俺はゾイドが大好きなんだ!ゾイドも人間も、そしてお前たちもこの星に生きる仲間だ!」

 

 「仲間……!」

 

 「ふざけおって、だが、これで終わりだ!」

 

 そのとき、マックの乗る黒いトリケラドゴスが現れ、スティレイザーに突進する。

 

 「今だ!ウィル!」

 

 「ようし、行くぞ!シーザー!切り拓け、シーザー!俺の魂と共に、進化 解放!エヴォブラストー!!」

 

 「ビーストオブクローブレイク!」

 

 「フォースインパクト!」

 

 シーザーとトリケラの同時攻撃で大ダメージを負うスティレイザー、

 

 「ぐわぁ!くそ、まだだ!」

 

 そのとき、スティレイザーのコクピットから通信が入り、

 

 「准将!ガトリングフォックスを初め、住民の抵抗で我が軍が抑えられています!」

 

 そのとき、ドリルを持った謎の巨大母艦が現れ、それを見た将軍は、

 

 「住民とゾイドの避難は完了したな!直ちに離脱する!」

 

 トリケラドゴスは後退していき、シーザーとマックのトリケラも付いていった。

 

 「くそ、またもや、逃がしたか!だが、その代わり、我が帝国が知らなかった存在の技術は手に入った!反乱軍め、いずれ思いしることになるだろう!」

 

 母艦に入ったウィルたちは、

 

 「すげぇ、まさか、こんな船があったとは!」

 

 将軍はウィルたちに、

 

 「当然だ!我々には創造主ともいえるコアがあるからな!」

 

 「コア?」

 

 突然、巨大なドアが開き、巨大なキューブが現れた。それを見たエマは、

 

 「これは、リジェネレーションキューブ!」

 

 エマの言葉にウィルは、

 

 「知っているのか? エマ!」

 

 「ええ、私のご先祖がゾイドクライシスで滅んだ地球を再生させるために作った装置よ!」

 

 それを聞いたグラッドは、

 

 「ゾイドクライシス、その名は聞いたことがあるぜ!」

 

 「グラッドも知っているの?」

 

 「ああ、ゾイドが初めて地球に来た日にして地球が一度滅んだ日だ!

 最もそれは伝説に過ぎず、200年前の考古学者たちも、そんなものはただの伝説、旧帝国と旧共和国との戦争の結果によって起こったことだとか、ただの異常気象だとか、または核実験の失敗で起こったことだとか言われていたが、まさか、本当だったとは!」

 

 それに対し、将軍は、

 

 「ゾイドクライシスの後、このリジェネレーションキューブは偶然にかつての地球の遺産であるAIと一体化し、我らの先祖を作りだし、命を与え、1000年以上の月日を経てここまで進化していった!

 そして、我々はキューブを通して、地球、惑星Ziの歴史を知り、人間は同じ種族同士でも争う愚かな生物だと知り、我々は人間に苦しめれているゾイドを助け、地上と隔離して生活していった。

 先程、襲撃してきたあの帝国もゾイドクライシスの後、帝国と共和国が領土覇権という下らないことで争いを起こし、挙げ句、真帝国等という国家に分裂し、互いに潰し合いをした結果、その全てをかっさらったあの帝国が生まれ、のしあがったのだ!」

 だから、私は人間を信用しなかった!だが、お前のような人間に会うことができ、ゾイドと人間は対立すべきものではないと知った!私は大事なことを君に教えられた!ありがとう!」

 

 「いや、俺はただ、ゾイドと人間が共存できる世界を目指したかっただけで!」

 

 「将軍、俺たち同盟軍に入ってくれないか!」

 

 「それは出来ない!お前たちは信用できるが、まだ全ての人間を信用したわけではない!だから、我々は共に行動することはできない!

 そして、これだけは覚えておけ!例え、お前たちがあの帝国を倒したとしても、世界は変わるとは限らない!

 いずれ、人類は再び争いを起こし、同じ過ちを繰り返す!」

 

 「わかっている!」

 

 「それともう一つ、今回の戦いから計算するに、お前たちの帝国に対する反乱の成功する確率は僅か2.3%と出た!勝てる戦争ではないということも肝に銘じておけ!さて、君たちとはここでお別れだ!」

 

 ウィルたちは母艦から出、静かに見送った。グラッドはマックに、  

 

 「さて、お前はどうする!僕はこのまま、旅を続けるよ!それに俺は戦争に出れる人間じゃないからね。」

 

 と言い、マックと黒いトリケラも去っていった。グラッドはウィルに、

 

 「お前は対した奴だ!あんな連中を説得するとは!俺たちができなかったことをお前は成し遂げた!対した奴だよ!」

 

 「俺は自分の思うことをしただけだよ。」

 

 それを聞いたグラッドは少しクスッと笑った。

 

 「さあ、本来の任務に戻る!目指すは西方!あそこのレジスタンスを味方につけ、帝国に対抗できる戦力をつける!後に続け!」

 

 シーザーのコクピットでウィルに抱きつくエマはグラッドたちが向かう方向を見て、

 

 「あそこって確か、メルビルさんが脱走したときに向かった場所…」

 

 

 

 

 

 

 西方レジスタンスの基地、そこに孤児となった子供たちと遊ぶ女性がいた。女性は長い黒髪にふっくらとした顔立ちをし、中々のスタイルをした美しい女性だった。子供たちはメルビルに、

 

 「ねーねー!メルビルお姉さん、もっと遊んで!」

 

 「私も。」

 

 「僕も。」

 

 「待って、順番にね。」

 

 メルビルは地平線の彼方の方を見て、

 

 「レイル、エマ、カティア…あなたたちは今、どうしているの?」

 そのときのメルビルの表情はどこか悲しそうだった。

 

 To be continued




 次回予告
 
 西方レジスタンスの基地に向かったウィルたち、そこに孤児となった子供たちとディメパルサーと遊ぶユリス・メルビルという女性がいた。彼女はエマと知り合いだった。そのとき、リセルは彼女のことを知っているかのように、彼女に近づいていった。
 しかし、そのとき、ディメパルサートランスを連れたデーニッツ中将率いるディメパルサー、ディロフォス隊が襲撃し、マッドオクテット、ファイナルマッドオクテットを喰らわれ、苦しむウィルとエマたち、そしてゾイドたちもマッドオクテットで洗脳され、苦戦を強いられてしまう!
 しかし、そのとき、洗脳されたユリスのディメパルサーに変化が!
 
 次回、「ディメパルサーと少女」

 本能を呼び覚ませ、ライガー!
 

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