ゾイドワイルドエヴォリューション アフターZERO 作:オーガスト・ギャラガー
新地球暦1245年、世界はネオデスメタル帝国という強大な軍事国家が支配していた。
各地で帝国に対するレジスタンスが立ち上がり、帝国とレジスタンスが激しい戦争を繰り広げている戦乱の時代となっている中、帝国に捕らえられていたビーストライガーにシーザーと名付け、相棒となった少年ウィルは謎の少女エマと共に冒険の旅に出掛けた。
西方レジスタンスの基地に到着したウィルたち、入口では、レジスタンスの兵士たちが歓迎しており、ウィルたちは基地内部に入り、司令部で、レジスタンスの指導者に会った。レジスタンスの指導者は、
「ようこそ!会談に応じてくれて感謝します。私がここのレジスタンスの指導者のクライブ・デルタだ!」
「反ネオデスメタル同盟軍総司令のグラッド・バレルだ!」
「あなた方のご活躍は聞いております!我々は反帝国としてあなた方同盟軍に加わらせていただきます!」
「ありがとう!我々は君たち、レジスタンスの参加を歓迎する。」
「ん?あなたの横にいるのはリセルですか?」
「そうだが、知り合いなのか?」
「ええ、彼は過去に我々レジスタンスで活動していましたから!無事で何よりだよ!」
それに対し、リセルは、
「グラッドとデルのおかげです!」
「さて、我々は帝国を食い止めるために……」
そのとき、子供たちが入り、
「ねぇねぇ、何してるの?」
「こら、勝手に入っちゃ駄目じゃないか!」
「だってぇ!」
「その子たちは?」
「帝国の侵略により、家と家族を失い、孤児となった子たちです!帝国は正義と秩序という名の暴力で世界を支配しようとし、その影響がこの形で表れています!」
「まさかとは思うが、レジスタンスの構成員として育ててはいないだろうな?」
「それは大丈夫です!我々はあくまで身寄りのない子供たちを保護しているだけです!最も資金の影響で、全ての子供たちを受け入れることはできないのですが。」
そこにスラリとしたロングの黒髪をした美しい女性が現れた。
「みんな、クライブさんのお仕事を邪魔しないの!」
「だって、メルビルお姉さん!」
その言葉を聞いたエマは、
「え!あなた、もしかして、メルビルさん!?」
「エマ!無事だったのね!」
それを聞いたウィルは、
「え、エマ!知り合いなの?」
「ええ、帝国で私を教育してくれた先生なの!」
そのとき、一人の子供がエマに駆け寄り、
「お姉ちゃん!もしかして、エマお姉ちゃん?」
「ええ、そうよ!」
「僕、知っているよ!エマお姉ちゃんは皆やゾイドのために働いている優しいお姉ちゃんだって!」
「私も知っている!」
「僕も!」
「ねぇ、エマお姉ちゃん、一緒に遊ぼう!」
「え、でも…」
そこにグラッドが、
「いいじゃねぇか!エマ、一緒に遊んでやれ!子供たちも一緒にいたがってるし!」
「わかりました!」
「行こう、エマお姉ちゃん!」
子供たちと一緒に行ったエマとメルビルを見てグラッドは、
「ずいぶんと有名だな!あの嬢ちゃん!」
その横でメルビルに見とれるリセル、
「どうした?リセル!」
「あ、いえ、何でも!」
「おいおい、まさか、あのレディに惚れたんじゃないだろうな~?」
「ち、違います!ただ、コマンダー、少し一人にしてくれませんか?」
そう言い、司令室から出るリセル、
「たく、あいつも年頃だな!」
「実は彼女も帝国の被害者なんです!彼女の兄は元帝国軍大尉でしたが、ある計画を知って反逆罪に問われ、処刑され、彼女が育てた生徒や子供たちと共に脱走したんです!」
「そうか、ところで、ここの戦力はどれぐらいだ?」
「ラプトールにクワーガ、キャノンブル、バズートル等です!」
「全て帝国のゾイドなのか?」
「はい、ここはかつて旧帝国の領土で、旧ネオゼネバスシティがあった地方で、旧帝国派のものが多く、ネオデスメタルはそうしたものたちを徹底的に弾圧して中には大量虐殺事件まであったそうです!」
「ということは彼らは今のネオデスメタル帝国を認めず、かつての旧帝国の復活を望んでいるということか!」
「はい、実は先ほど会ったユリス・メルビルはかつて旧帝国皇帝の血筋を引く家系の人で、彼らは彼女をネオデスメタル帝国に対抗するための帝国皇帝として立てようとしていて、彼女はそれを強く拒否しているんです!」
「何でだ?」
「実は彼女の先祖も血筋を引いていたことで、旧帝国から分離した真帝国の皇帝に立てられたこともあって彼女は先祖と同じ目に遭うのではないかと思っていて、怖がっているんですよ!それに彼女は戦争を望んでいませんし!それにもし、彼女が皇帝になったら、ネオデスメタルは益々弾圧を強化してくることもありますし!」
「なるほど!」
その横に、ジョンが、
「あんな美人が皇帝だったら、大歓迎だぜ!しかもスタイル抜群だったし!絶対付いてくる国民大多数だぜ!」
「ここでは止めろ!下心丸出しだぞ!」
「俺、そういうところはオープンだからいいの!」
その横にクリスが、
「余計悪いだろ!」
「そろそろ、本題に入ります!我々は帝国を迎え撃つために近隣に陣を構え……」
子供たちの遊び部屋、
「エマお姉ちゃん、もっと遊んで!」
「いいわよ。」
メルビルはエマに、
「ねぇ、エマ!どうしてあのとき、レイルも連れて行かなかったの?」
それを聞いたエマは悲しそうに、
「できなかったの!レイルは帝国から離れなかったの、もし連れて行こうとしたら、レイルの自由を奪うんじゃないかって思ったの!でも、私はあの帝国が怖くて結局、レイルを連れて行けず、逃げてしまったの!きっと、レイルはこんな私を許してくれない!」
「優しいのね、エマ!あなたのレイルを想う気持ちは分かるわ!でもいくらあの子が帝国から離れたくないからといって、その通りにするわけにもいかないわ!
私は先祖が皇族だから、旧帝国派のレジスタンスの一人たちから皇帝になれって何度も要求されたけど、私は何度も断ったの!私の先祖も皇帝の血筋を引いていたために真帝国の皇帝にされ、苦しめられたことがあるの!
もちろん、先祖と同じ目に遭うのかということもあったけど、それ以上にもし私が皇帝になったら、ネオデスメタルはもっと弾圧を強めていって多くの人々を殺してしまうんじゃないかと思ったの!だから、私は皆の命を守るために皇帝になることを断ったの!
もしレイルがあの帝国にいてしまったら、きっと私の先祖以上に苦しめられるかもしれない!エマ、レイルを救えるのはあなただけよ!」
コンコン、
そのとき、ドアをノックする音がし、リセルが現れた。リセルはユリスに、
「ちょっといいかな?」
「あの私に何か?」
「あのときのお礼を言いに!」
「お礼って?」
「君は覚えていないかもしれないけど、10年前、俺が旧共和国派のレジスタンスの兵士として帝国と戦い、捕虜になったところを君と君の兄さんが助けてくれたこと、そのときのお礼だよ!」
ユリスはそれを聞いて何かを思い出した。
「もしかして、あのときの君?」
「そうだよ!」
そのとき、青いディメパルサーが現れ、ユリスにすり寄ってきた。
「駄目じゃないのレナ!今は大事な人とお話中なの!」
ディメパルサーを見たリセルは、
「そのディメパルサーは?」
「亡くなったお兄さんと一緒にいたゾイドなの!」
「そうか…、お兄さんは亡くなったのか…!」
「今は私の元で引き取っているの!」
そのとき、近くに発信器らしきものを付けた小さいクワガタのようなものが近くを飛び回っていた。場所は変わり、旧ネオゼネバスシティことネオデスメタル総督府、司令室にデーニッツ中将がレジスタンスの基地の映像を見ていた。
「ふ、惑星Ziに生息していた小型の昆虫ゾイドをクローンで複製、改造したスパイゾイドは思いの外、成果を上げたようだな!あのとき、ブリューゲル大尉に命じてビーストライガーと戦ったときにこいつを何体かばらまいたかいがあったな!
しかも、まさか、あの小娘に次ぐ重要指名手配者のユリス・メルビルまで見つかるとは!」
デーニッツ中将は通信を開き、
「タッカー元帥!朗報です!例の小娘に続き、あの女の居場所も掴みました!」
「そうか、やはり、あの女は旧帝国派の連中がかくまっていたか!」
「しかも、連中はあの女を皇帝に仕立て上げようとし、旧帝国を復活する計画を建てているとの報告がありました!」
「なんだと!!この世に皇帝はギャラガー三世陛下しかいない!その陛下を認めず、あの女ごときを皇帝にするだと!!!!」
「連中はかつての真帝国のように我らネオデスメタル帝国に対抗するつもりでしょう!」
「直ちに総力を上げて連中を壊滅、誰が真の皇帝か、誰が真の支配者か、思い知らしてやれ!そして、例の小娘を捕らえろ!」
「は、ところで、あの女も生け捕りにして貰えないでしょうか?」
「何故だ!」
「あの女はかつての真帝国皇帝の子孫ですから、利用価値があります。殺すのは勿体ないかと思いまして!」
「ほう、あの女を使って何をしようと言うのだ?」
「それはいずれお話しします!それと、あなたのディメパルサートランスもお借り頂けないでしょうか?」
「構わんが、何をするつもりだ?」
「それはお楽しみです!」
西方レジスタンス基地、ジョンはグラッドに、
「すんなり味方になってくれたのはいいが、こちらも面倒なことを背負っているな!旧帝国派の連中はあのレディを皇帝にして真帝国の復活を宣言するつもりらしいが、そんなことしたら、ネオデスメタルが黙っちゃいない!」
「皮肉なものだ!過去の旧帝国と真帝国のお家騒動が再び始まるようになるとは!」
「まあ、ネオデスメタルもわからん!何であんな皇帝を神格化するのかね? 噂では、あの旧デスメタル帝王の一世の子孫とされているが、あいつはこの前の式典でジェノスピノが披露したときしか姿を見せず、それ以外はめったに公や人前に顔を出さないそうだ!四天王や親衛隊はおろか、あの御曹司の皇子ですら、たまにしか会ってないそうだ!」
「皇帝だからって何でも顔を出すもんじゃない!暗殺の危険だってあるからな!」
「しっかし、そこまでして顔を見せないのはどういうことかね!そういや、奴は赤い皇帝と呼ばれているが、他のレジスタンスじゃあ、こうも呼ばれているらしい、顔の無い皇帝、とな!」
「顔の無い皇帝……。」
そのとき、基地の警報が鳴り、
「緊急事態!緊急事態!帝国軍が 全軍直ちに攻撃の準備を!」
クライブはエマとユリスのいる部屋に入り、
「子供たちをシェルターへ!それとエマ、ユリス、君たちもそこへ!」
「わかりました!」
「リセル、行くぞ!」
基地から離れたところで双眼鏡で基地を見るデーニッツ中将、基地からバイザー無しのラプトール、キャノンブル、バズートルが現れた。
「ほう、どれも旧帝国、真帝国時代の旧型か!」
その横にブリューゲル大尉が、
「全く愚かだ!過去の帝国の栄誉にしがみつきやがって!あんな旧型で我がネオデスメタルの新型に敵うとでも?」
「とにかく、手順通りで行くぞ。全キャノンブル、バズートル隊、マシンブラスト発動!」
「制御トリガー解除、マシンブラストー!!」
一斉にマシンブラストしたキャノンブル、バズートル隊が一斉砲撃した。クライブは、
「全軍、こちらもマシンブラストだ!」
レジスタンスのキャノンブル、バズートル隊もマシンブラストを発動するが、デーニッツ中将率いるキャノンブル、バズートル隊の発動の速さと追い付けず、次々と攻撃を受けてしまう!何とかマシンブラストを発動したものが帝国軍部隊に砲撃をするも射程距離が届かない上に、デーニッツ中将のキャノンブル、バズートル隊はどれもレジスタンスより射程距離が長く、破壊力も高いため、苦戦を強いられてしまう。
そこに、ウィルのシーザーとグラッドのレックスたちが現れた。グラッドは、レジスタンスたちに、
「ここは俺たちに任せろ!行くぞ、ウィル!」
「帝国軍め!俺たちが相手だ!」
シーザーを見たデーニッツ中将は待ってましたと言わんばかりに、
「ようやく出てきたな!では、素晴らしいショーを始めるぞ!全ディメパルサー、ディロフォス隊!マシンブラストだ!」
「制御トリガー解除、マシンブラストー!!」
「喰らうがいい!マッドオクテットー!!」
マッドオクテットを喰らって苦しむシーザーたち、
「ウワァァー!何だ、これは?」
「くそ、マッドオクテットを喰らったか!動けるか、レックス?」
グラッドの問いにうなずくレックス、
「よし、皆、今のうちにワイルドブラストだ!」
「そうはさせるか!攪乱せよ!マッドオクテットー!!」
再びディメパルサー、ディロフォス隊がマッドオクテットを放ち、動くことすらまま無くなってしまうシーザーたち、基地のシェルターでは、
「キャアアアー!何、この変な音は?」
ユリスは子供たちを励ますように、
「ここにいれば大丈夫よ!」
苦しむシーザーたちを見たブリューゲル大尉は、
「相変わらず、えげつない技だぜ!専用の耳栓しててもビンビン来るぜ!」
「ブリューゲル大尉、お前はあの小娘と女を連れていけ!」
「了解しました!」
シェルターの方に向かうガブリゲーターMk-Ⅱ、それを見たウィルは、
「ま、待て!」
「キャノンブル、バズートル隊、一斉砲撃!」
キャノンブル、バズートル隊の砲撃を受けて、身体がボロボロになっていくシーザーたち、シェルター内で、子供たちがエマとユリスに抱きつき、
「お姉ちゃん、私たち大丈夫だよね?」
「ええ、大丈夫よ!」
そのとき、シェルターの扉が破壊され、ガブリゲーターが現れた。
「見ーつけた!」
それを見て怖がる子供たち、
「こーんなところに居たのか!探すの結構大変だったぜ!」
ユリスは、
「お願い、子供たちには手を出さないで!」
「別にそんなガキには用はないよ!用があるのはそこの小娘とお前だよ!もちろん、こっちに来てくれたら、子供たちは助けてやるし、もちろん、あのライガーちゃんも助けてあげるよ!」
手が震えるエマは苦しむシーザーたちを見て、
「わかったわ!大人しく従います!」
「エマ!」
「だって、私が行かないと皆が!」
「ほう、いい子じゃないか!じゃ、大人しくこっちにおいで!」
そのとき、青いディメパルサーのレナが現れ、ガブリゲーターに突進した。吹っ飛ばされるガブリゲーター、
「何だ?このディメパルサー!」
ガブリゲーターに向けて咆哮を上げるレナ、
「ガァァー!」
ユリスは、
「レナ!駄目!」
「ディメパルサーの癖に人間様に楯突くとは生意気じゃねぇか!制御トリガー解除、マシンブラストー!!やれ、ガブリゲーター!」
大顎でレナにガブリつくガブリゲーター、
「止めてー!」
「ヘッヘッヘ、人間様に楯突くからこうなるんだ!」
レナの身体を潰す勢いで、噛む力を強めていくガブリゲーター、ガブリゲーターの歯がレナの身体に食い込んでいく。
「ガァァー!!」
苦しむレナ、それを見て泣きそうになるユリス、
「イヤァー!止めてー!」
「止めて欲しかったら、さっさとこっちに来いよ!出ないと、お前のお兄さんみたいにガブっちゃうよ!」
「止めろー!」
そのとき、デルが現れ、ガブリゲーターに突進した。
「げ、まだ動ける奴がいたのか!」
「大丈夫か?エマ、ユリス!」
「私たちは大丈夫よ!」
「こいつは俺が引き受ける!貴様か!俺を助けたパウルスを殺したのは!」
「ああん?別にお前にとっちゃ、関係のないことだろ!」
「お前らネオデスメタルはそうやって平気で人の命を奪いやがって、何が正義だ!秩序だ!絶対に許さない!」
「は、帝国に逆らった奴の末路だ!」
「許さない!許さないぞ!」
「おいおい、そんなこと言っていいのかよ!出ないとアレがきちまうぜ!」
ブリューゲル大尉を見たデーニッツ中将は、遠隔操作すているディメパルサートランスのリモコンを持ち、
「では、そろそろ、フィナーレだ!ディメパルサーMk-Ⅱ、トランス、最大出力だ!ファイナルマッドオクテットー!!」
ガァァー!
Mk-Ⅱとトランスの咆哮と共にマッドオクテットが放たれる。ウィルとシーザーたちはさらに苦しむ。
「ウワァァー!なんだ?さっきと違うぞ!頭が凄く痛い!」
エマやユリスも
「何これ?頭が痛い!」
そのとき、苦しんでいたレジスタンスのキャノンブル、バズートルが動きだし、シーザーたちを囲み、クライブたちはウィルたちに砲搭を向けた。
「皆、どうしたんだ?何で?」
「くそ、洗脳されたのか!」
シェルター内でも突然、子供たちが不自然な動きでエマやユリスの身体を拘束していく。
「待って、どうしたの?」
「やはり、予想以上だな!Mk-Ⅱとトランスのファイナルマッドオクテットを同時に放てば、ライダーとゾイドを同時に洗脳できるのではと踏んではいましたが、ここまでとは!
しかし、あの小僧共と小娘と女はファイナルマッドオクテットを喰らっても洗脳出来ないとは、やはり例の血筋の影響か! だが、ダメージはかなり大きい!」
子供たちは拘束しながら、エマとユリスを帝国軍部隊まで運んでいく。それを見たウィルとリセルは、
「くそ、止めろ!」
そのとき、レナが現れ、子供たちを払いのけ、エマとユリスを助ける。
ガァァー!
ディメパルサーMk-Ⅱとトランスに向けて咆哮を上げるレナ、
「これは驚きました!まさか、ファイナルマッドオクテットを喰らっていながら、洗脳出来ないゾイドがいたとは!しかし、そんなボロボロの状態で何が出来る!」
「ガァァー!」
レナの咆哮と共に、レナの身体が発光し、ゾイドキーが現れた。
「何!ディメパルサーにゾイドキーだと、バカな!」
ゾイドキーを持つユリス、リセルは、
「ユリス、ゾイドキーを差すんだ!そしてワイルドブラストするんだ!」
しかし、ユリスは首を振り、
「駄目!そんなことしたら、レナまで戦争に巻き込まれてしまう!」
「やるんだ!」
「出来ない!もう、私はゾイドを戦争の道具にしたくない!」
「これは、好都合!」
一斉にレナに照準を向けるキャノンブル、バズートル隊、
「お前の、ゾイドを戦争に巻き込みたくない気持ちはわかる!でも、ワイルドブラストしないと全員殺されてしまう!」
「でも!」
躊躇するユリスにレナはそっと身体を寄せ、すり寄る。
「レナが言っている!皆を救いたいと!その力はゾイドを戦争の道具にするための力じゃない!皆を守るための力だ!」
「さあ、フィニッシュですよ!」
レナはユリスを見つめ、
「わかったわ!レナ!」
ユリスはゾイドキーを差し込む。
「ワイルドブラストー!!」
ガァァー!
ワイルドブラストしたレナはマッドオクテットを放つ。突風のような勢いで、後退していく帝国軍部隊。
「うお、バカめ、我が軍の全てのゾイドには電磁波遮蔽コーティングが施されているのだ!さあ、キャノンブル、バズートル隊、一斉砲撃だ!」
しかし、キャノンブル、バズートル隊は動きを見せない。そればかりか、デーニッツ中将のディメパルサーMk-Ⅱ、トランス初め、全ての帝国軍ゾイドがマシンブラストを解除していった。
「どういうことだ?何が起こった!」
通信の兵士は、
「デーニッツ中将!操縦不能です!コンバットシステムがフリーズしています!」
マシンブラストを解除したキャノンブル、バズートル隊、ディメパルサー、ディロフォス隊が勝手に後退していく。
「こ、これは!一体何が起こったと言うのだ?」
同時にレジスタンスのキャノンブル、バズートル隊が正気に戻ったかのような動きをし、コクピットのクライブは、
「あれ、俺たちは一体何をしていたんだ?」
そして、苦しんでいたシーザーたちのダメージが無くなり、まるで元気になったような喜んでいた。
「シーザー!大丈夫なのか!」
グオォー!
ウィルの問いに咆哮を上げるシーザー、
「バカな!まさか、あのマッドオクテットはゾイドにダメージを与えるマッドオクテットを遮断、解除し、同時にファイナルマッドオクテットを喰らったゾイドの洗脳まで解き、回復までしたというのか、こんなことが!
ん?まさか、あの女のディメパルサーは突然変異種だというのか!これは私としたことが、予想外でしたよ!」
グラッドはデーニッツ中将やブリューゲル大尉に向かって、
「どうやら、形勢逆転のようだな!」
しかし、デーニッツ中将は突然、笑いだし、
「フフフ、これは計算外でしたが、万が一のことを想定して保険をかけて正解でしたよ!」
「どういうことだ?」
そのとき、上空から大量のクワーガ、スナイプテラ隊が現れ、
「制御トリガー解除、マシンブラストー!!アブソルートショット!」
「しまった!クワーガとスナイプテラを待機していたのか!」
「残念ながら、陸上部隊は使い物にならないですが、空中部隊は万全の状態です!」
「皆、退避だ!」
「駄目です!間に合いません!」
そのとき、リセルのデルが現れ、
「皆、離れてろ!駆け抜けろ、デル!俺の魂と共に、本能 解放!ワイルドブラストー!!行くぞ!デル!セカンドギア!ハウリングシャウトー!!」
デルのハウリングシャウトで周囲が破壊され、爆風が飛び散る。
「今だ!」
「よし、全員、徹底だ!」
煙が晴れ、そこにはレジスタンスの姿は見えなかった。ブリューゲル大尉は、
「くそ、あと少しだったのに!」
「まあ、いいでしょう!それでも、ここのレジスタンス基地は壊滅した!我々も一旦退きましょう!」
基地から離れたところで、クライブとウィルたちがいた。クライブはグラッドに、
「基地は壊滅させられましたが、まだ各地には旧帝国派、旧共和国派のレジスタンスはいます!
私は彼らを交渉し、反ネオデスメタルの合同軍を結成させます!」
「よろしく頼む!」
「それと、ユリスをあなた方の元で保護していただけないでしょうか?」
「そうだな!過去の真帝国みたいに皇帝にされたら、いろいろと面倒だからな!もちろん、俺たちが責任を持って保護する!」
ユリスはリセルに、
「あの、助けてくれてありがとう!」
リセルは少し照れて、
「い、いや、男として当然のことをしたまでだよ!」
それを見てグラッドは、
「いやー!恋しちゃってるねー!ヤングたち!」
「コ、コマンダー!止めてくださいよ!そんなんじゃありません!」
「あ、そこのレディが皇帝になったら、お前は何になるんだろうな?」
「だから、止めてくださいって!」
「ようし、帰ったら、祝宴上げるか!リセルに彼女が出来ましたーって、」
「もう、いい加減にしてくださいよ!」
そうして、ウィルたちは本拠地に戻っていった。
To be continued
次回予告
ユリスと子供たちを守りきり、保護したウィルたち、しかし、デーニッツ中将の策略により、西方レジスタンスは壊滅され、再び同盟軍は劣勢に追い込まれる。
一方、帝国では、レジスタンスの制圧は順調に行っているものの、オメガレックス完成に必要なエマの奪還が上手く行かないことに苛立ちをしたタッカー元帥は四天王のルメイ大将にエマの奪還命令を下し、同時に親衛隊から女性士官を参謀につけた。
しかし、その女性は帝国内部でも「悪魔」とも呼ばれている恐ろしい女性だった。女参謀の罠にかかり、苦戦を強いられるウィル、そこにアーネストとカティアも現れ、エマに危機が迫る。
次回、「驚異!ダブルドライパンサー!」本能を呼び覚ませ、ライガー!