ゾイドワイルドエヴォリューション アフターZERO 作:オーガスト・ギャラガー
新地球暦1245年、世界はネオデスメタル帝国という強大な軍事国家が支配していた。
各地で帝国に対するレジスタンスが立ち上がり、帝国とレジスタンスが激しい戦争を繰り広げている戦乱の時代となっている中、帝国に捕らえられていたビーストライガーにシーザーと名付け、相棒となった少年ウィルは謎の少女エマと共に冒険の旅に出掛けた。
壊滅した旧帝国派レジスタンスの基地の崖にベケット少佐が双眼鏡で下を見ていた。そこにルメイ大将の乗るドライパンサーが現れ、コクピットからルメイ大将が現れた。
「どういうことだ? あの小娘二人を捕らえてから、爆撃するんじゃなかったのか!?」
「いえいえ、分散させるには爆撃の後がちょうどいいと思いまして!」
「もし、万一、死んだらどうするのだ?」
「それは心配ないわ!そのことを計算した上での計画ですから、小娘二人の奪還は私に任せてください!あなたは目障りな反乱軍の始末を!」
「ち!」
そう言って、ルメイ大将はドライパンサーに乗ってしぶしぶ去っていった。ベケット少佐は引き続き、双眼鏡で
下を見、
「さて、計画通り、あのわがまま皇子とラプトールの小娘も一緒に落ちていったわね!あの小娘二人はわがまま皇子と親密にいたから、釣餌にちょうどいいわね!
それに、旧帝国派の馬鹿共はあのわがまま皇子を人質に取る計画を立てているという報告もあったし、せいぜい、利用させてもらうわ!それに、死ねば、反乱軍が殺したことにして、国民を戦争に駆り出すことも出来るし、いいカモね!ま、皇太子はあのお方と決まっているから、むしろ、死んだ方がちょうどいいし!
さて、アーミテージも呼んで、早速やりましょう♪」
倒壊した基地の中にグラキオサウルスのゴルドが現れ、ゴルドの下には、レックスたちがいた。グラッドはクルーガーに、
「将軍、助かったよ!ゴルドは大丈夫か?」
「マグマに耐えれる装甲を持つんだぞ!ゴルドにとっちゃ、痛くも痒くもない!」
グラッドは辺りを見渡し、周りには、帝国軍の兵士とゾイドが巡回していた。グラッドは通信を開き、
「クリス、ウィルたちはどうだ?」
「いや、どこもかしこも帝国軍と残骸だらけで、見つけるには、ちと骨が折れそうだ!」
「そうか…。しばらくは奴らに気付かれず、ウィルたちを探すしかないようだな!」
場所は変わり、崖の下に倒れたエマがいた。
「う、う~ん…!」
起きたエマは辺りを見渡した。
「ウィル、シーザー、リセルさん、ユリスさん!皆いないの?」
辺りを見渡したが、どこにもウィルたちの姿はなかった。しかし、1人の少年が倒れていた。アーネストだった。
「レイル!無事だったのね!」
アーネストを見つけたエマは彼の元に行くが、目が覚めたアーネストは銃を出し、
「僕に近づくな!帝国の裏切り者め!」
「待って、レイル!」
「その名で呼ぶな!僕はギャラガーだ!裏切り者は死ね!…… う!」
引き金を引こうとしたとき、突然、アーネストは口から血を嘔吐し、銃を持った右腕は出血した。アーネストは銃を落とし、そのまま倒れた。
「レイル!待ってて、今、手当てするから!」
エマはアーネストの体を運んでどこか安全なまで行った。
一方、爆撃から逃れたシーガルら旧帝国派レジスタンスは、
「まだ、メルビル二世陛下の身元は確認出来ないのか?」
「は、捜索を続けていますが、中々……。」
「何としても見つけ出せ!」
「シーガル閣下、ドライパンサーG3とスティレイザーG3がこちらに向かっています!」
「くそ、直ぐに迎え撃て!」
「いえ、敵から交渉したいとの通信が来ました!」
「交渉だと?」
旧帝国派レジスタンスの兵士とゾイドに囲まれる中、ベケット少佐とアーミテージ大尉はドライパンサーとスティレイザーから降りた。ベケット少佐とアーミテージ大尉に銃を向ける兵士、そこにシーガルとアルドリッジが現れ、ベケット少佐とアーミテージ大尉はひざまずいた。
「シーガル閣下、我々はあなた方旧帝国派と平和的解決を望んでいます!」
シーガルは首を傾げ、
「平和的解決だと?我々を殲滅しようとしていたのに!」
「私はネオデスメタルの武力的な解決にどうも納得出来ません!どうか、交渉の場を!」
「あれだけ、我々を潰しにかかったお前がそんなこと言うとは!信用出来んな!」
「それはあくまで、命令に従ったまでのことです!ホントは誰1人殺したくありませんし、皆の不幸な顔を見たくありません!」
「その言葉、信用していいのか?」
ベケット少佐は真剣な表情で、シーガルを見ていた。シーガルは、
「ふん、まあ、いいだろう!だが、もし変な動きがあったら、直ちに殺すぞ!」
シーガルが後ろを向いたとき、ベケット少佐は不敵な笑みを浮かべた。
「閣下、メルビル二世陛下の捜索に我々も協力していただけないでしょうか?」
「お前が?」
「ええ、実は先ほどの爆撃には我が帝国の皇子のギャラガー殿下とカティア・ギレルも巻き込まれているのです!
そして、カティアは実は旧帝国フィオナ皇帝の血を引く者なのです!」
「何!あのかつての旧帝国フィオナ皇帝の!」
「ええ、その二人を捕らえれば、交渉の場に持っていけますし、容易にメルビル陛下を皇帝に立て、真帝国の復活も可能です!」
シーガルは考え込んだ上、
「わかった!お前にも捜索を命じる!何としても探しだせ!」
「は!」
場所は変わり、崖の下で倒れたウィルがいた。起き上がったウィルが辺りを見渡すが、周りにはシーザーとエマがいない。
「シーザー!エマ! 別れたのか!くそ、早く助けに行かなきゃ!」
また、一方では、カティアが周囲を歩いて行った。彼女もまたラプトールのベティがいず、1人だった。
「待ってて、エマ!必ずあなたを助けるわ!」
他の場所では、リセルがユリスと一緒にいた。リセルは左腕を怪我していて、二人にはデルがいなかった。
「リセル、大丈夫?」
「大丈夫だ!ユリス!」
「待ってて、直ぐ手当てするから!」
場所は変わり、崖下の端に古い小屋のようなものがあり、そこにエマがアーネストの手当てをしていた。アーネストは目が覚め、
「レイル、良かった!」
「僕に触れるな!」
「待って、レイル!動いちゃ駄目よ!」
「その名で呼ぶな!僕は帝国皇子ギャラガーだ!裏切り者のお前の手は借りない!」
「それなら、どうしてこのペンダントを持っているの?」
エマが出したのは、エマとアーネストの二人が移った写真の入ったペンダントだった。
「そ、それは……。」
「私がいなくなって寂しかったのね!」
「ち、違う!」
「ごめんなさい!レイル!私はあのとき、あなたを裏切った訳じゃないの!」
「じゃあ、なんだよ!」
「あの帝国が怖かった!私は見たの!帝国がゾイドと人々に酷いことしてるのを!」
「父上がそんなことをするわけがない!」
「あなたはそう信じてるのかもしれないけど、でも、事実なの!」
「黙れ!なら、何故僕を見捨てた!?」
「レイル、聞いて!私はゾイドや皆を帝国から助けたいために帝国から出たの!そして、あなたを帝国から解放するために!」
「僕を帝国から解放?」
「あなたは知らないだけかもしれない!でも、帝国はあなたが思っている以上に危険な存在なの!詳しいことは言えないけど、あなたのお父さんも実はもっと恐ろしい人なの!」
「嘘だ!そんなはずがない!」
「そのことを伝えなくて本当にごめんなさい!」
「俺はお前のことなんか……!」
その時、エマはペンダントをアーネストの手に置き、そっと両手で優しく握った。
「でも、嬉しい!あなたがそのペンダントを大事にしているのが!」
「こ、これは…!」
「いいの、口に出さなくても、私もあなたと一緒にいたかった!」
「なあ、エマ!お前にとって、俺はなんだ?」
「私の大切な家族よ!」
「家族?」
「私は両親と弟を亡くし、ずっと1人だった!でも、そんな私に手を差しのべてくれたのが、あなただったの!レイル、ありがとう!」
「う、うん…、でも、帝国に戻ることは出来ないのか?」
「それは出来ないわ!」
「そうか…。」
その時、ウィルが現れ、
「エマ!無事だったのか!」
「大丈夫よ!ウィル!」
ウィルは隣にいるアーネストを見て、
「お前は!ギャラガー!!」
「お前は、ライガーの!」
エマは二人の間に入り、
「止めて!レイルは私の家族よ!」
「レイルって?俺と会ったときはそう言ってたけど。こいつはギャラガーだぞ!」
「確かにそうだけど!レイルは私の大切な人なの!」
「え、そうなの?」
それを聞いて顔を剃らすアーネスト、そこにカティアがウィルに銃を突き付け、
「動かないで!大人しくエマと殿下を返しなさい!」
「待って!カティア!ウィルは私の友達よ!」
「でも、エマ!こいつはあなたを誘拐者よ!」
「カティア!エマの言うことは本当よ!」
そこにユリスとリセルが現れ、
「ユリスさん!」
「姉さん!」
「ごめんなさい!カティア!あなたにも黙ってて!」
カティアは銃を捨て、
「いえ、私もごめんなさい!思い違いをしてしまって!」
ウィルはカティアのそばに来て、
「じゃじゃあ、信用してくれるよね!」
「ええ、信じるわ!あ、早々、あのとき、私のラプトールに名前を付けて上げてくれてありがとう!」
「いやぁ、それほどでもないよ!」
「でも、エマやユリスさんに変なことしたら、許さないんだからね!」
ユリスはアーネストのそばに来て、
「レイル!良かった!無事だったの!」
「ね、姉さんこそ無事で嬉しいよ!」
ユリスはアーネストを優しく抱き締める。
「まあ、なんて感動の再会かしら!」
ベケット少佐の言葉と共に、旧帝国派のゾイドがウィルたちを取り囲み、シーガルのナックルコングとアルドリッジのファングタイガー改、ベケット少佐のドライパンサーG3、アーミテージ大尉のスティレイザーG3がいた。ナックルコングから降りたシーガルは、
「お迎えに上がりました!メルビル二世陛下!いえ、ユリス陛下!」
ユリスに近づこうとするシーガルにリセルは、
「ユリスに触れるな!ユリスはお前らの都合のいいように使われる道具じゃないんだぞ!彼女の先祖だって自分たちの帝国を築くために利用されていたんだ!彼女にも同じ思いをさせるなんて許さねぇ!」
「生意気な小僧だ!陛下は真なる帝国の希望なんだぞ!それを邪魔する奴は許さんぞ!」
そこにベケット少佐が、
「まあまあ、そのぐらいにしなさい!さて、殿下!小娘と一緒に我々の元に!」
「お前、帝国を裏切ったのか!?」
「まさか!あくまで、帝国の未来のためよ!」
「お前ごときと一緒には行かない!エマだって渡さない!」
「あら、いきなりどうしちゃったのかしら!その小娘を捕らえらることが皇帝陛下の最重要命なのに!」
その時、ベケット少佐は銃を取り出し、アーネストの右肩を撃つ。
「レイル!大丈夫?」
「さあ、メルビル二世陛下と皇子とエマを捕らえなさい」
その時、シーザー、ベティ、ギルラプターエンペラーが現れ、旧帝国派のゾイドを蹴散らし、ウィルたちの前に立った。アーネストはすかさずギルラプターに乗り、ベケット少佐に襲いかかろうとする。しかし、ベケット少佐はリモコンを押し、ドライパンサーがギルラプターを振り払った。
ベケット少佐に撃たれた右肩が痛み、中々、戦闘に集中出来ないアーネスト、その様子を見たギルラプターはそのままその場を去った。
「待て、ギルラプター!まだ終わっていないぞ!」
逃げるギルラプターを見たシーガルは、
「くそ、逃がさんぞ!」
「まあ、待ちなさい!いずれまた来るわ!それよりメルビル二世陛下たちを!」
ウィルたちは旧帝国派レジスタンスの兵士たちに捕らえられ、そのまま連れていかれた。
グラッドたちは崖の上で、その様子を見ていて、アレックスはグラッドに、
「どうする?俺たちで、連中を蹴散らすか!?」
「まあ、あの戦力なら、俺たちで楽勝だろうが!奴らがウィルたちを人質に取ったら、こちらとて手が出せない!
ここは奴らについていって、ウィルたちを取り戻す機会を待つとしよう!」
ドライパンサーG3のコクピット内で、ベケット少佐はホログラム通信を開き、ホログラムの人物は皇帝ギャラガー三世だった。
「皇帝陛下!旧帝国派の奴らに潜入、例の小娘二人とライガーとそのガキをその中に組み込みました!」
「よくやった!では、そのまま連中の一員として工作しろ!」
「了解しました!」
ホログラム通信を切ったギャラガー三世は宮殿の地下に超巨大なカプセルを見、その左右には、バイザーを取り付けたデスレックスとジェノスピノが巨大カプセルとコードで接続していた。
「いずれ、お前の復活も間近になるだろう!我が分身よ!」
巨大カプセルから巨大なゾイドのような姿が現れ、ギャラガー三世を見て、目が発光した。
To be continued
次回予告
シーガルら旧帝国派レジスタンスに再び捕らえられたウィルたち、グラッドたちはウィルたちを取り戻す策を立てるが、そこにベケット少佐の罠が!
そして、ベケット少佐により、エマとユリスを逃がしたという疑いを掛けられたアーネストはタッカー元帥から処分を受け、1人、部屋に閉じ籠る。
ベケット少佐の口車に乗せられたシーガルはかつての真帝国ハンナ・メルビル皇帝の子孫であるユリスを皇帝にし、真帝国の復活を宣言しようとする。
次回、「新帝国誕生!」
本能を呼び覚ませ、ライガー!