ゾイドワイルドエヴォリューション アフターZERO 作:オーガスト・ギャラガー
新地球暦1245年、世界はネオデスメタル帝国という強大な軍事国家が支配していた。
各地で帝国に対するレジスタンスが立ち上がり、帝国とレジスタンスが激しい戦争を繰り広げている戦乱の時代となっている中、帝国に捕らえられていたビーストライガーにシーザーと名付け、相棒となった少年ウィルは謎の少女エマと共に冒険の旅に出掛けた。
ネオデスメタル帝国帝都メガロポリス、都市の中央にある皇帝ギャラガー三世の宮殿内で、皇帝は玉座で静かに座っていた。
皇帝は何か気づいたかのように、玉座に隠しているスイッチを押し、そのまま玉座エレベーターのように下に下がっていった。随分下まで行き、着いた先には、巨大な研究施設だった。
周りには、特殊なスーツを着た研究員が死んだゾイドからコアを抜き取り、それらを超巨大なカプセルに供給していた。カプセルの左右にはデスレックスとジェノスピノがコードで接続されていた。そして、カプセルの周りには謎のラインが入った複数のゾイドたちもいた。皇帝は超巨大カプセルを見ていた。そこに1人の科学者が現れ、
「いかがでしょうか?陛下!」
「ドクターマイルスか!」
「ZGの様子は?」
「は、デスレックスとジェノスピノのエネルギーを供給してようやく半分のエネルギーが貯まりました!」
「それで、やっと半分だと!?」
「はい、ZGのパワーは我々の予想を越えるものでして!制圧した反乱軍のゾイドから抜き取ったゾイドコアも全て投入していますが、まだまだ足りません!」
「やはり、オメガレックスのエネルギーも必要か!」
「ええ、ジェノスピノとオメガレックスだけでも、この地球を制圧するには十分な戦力ですが、このZGも完成すれば、地球はおろか、この銀河を支配することも可能でしょう!」
「つまり、我がデスメタルはいずれ全銀河を支配する帝国になる、ということか!」
「はい、左様で!」
「オメガレックスもだが、こいつの完成も出来るだけ早くしろ!」
「は!」
「ジェノスピノにオメガレックス、そしてこのZGの完成した後、この地球を制圧した後に、私の更なる野望が達成されるのだ! フフフ、ハハハ、ウワーッハッハッハッハ!」
宮殿にアーネストが戻り、アーネストはタッカー元帥に事を報告したが、アーネストはタッカー元帥に殴られる。
「この愚か者が!貴様の稚拙な判断で、小娘を逃がした上に、我が親衛隊の精鋭ベケット少佐までが消息不明になるとは!皇帝陛下がこの事を知ったら、どれほど、お怒りになるか!」
「言葉を返すようだが、確かにベケットは反乱軍にいた!それにエマは帝国に戻りたくないと言った!だから、彼女は…、」
バシッ!
再び殴られるアーネスト、
「言い訳など不要だ!帝国の皇子でありながら、勝手な行動をしおって、皇帝陛下からの処分が下されるまで、大人しくしておけ!」
「その前に父上に会わせてくれ!」
「今、陛下はお忙しいのだ!わかったら、さっさと出ろ!」
アーネストは口から吐血した血を吹き、しぶしぶ部屋から出た。アーネストが部屋から出たことを確認したタッカー元帥は小型の通信機を使い、
「私だ!ああ、もちろん、あの若僧には冷たい対応をした!ホントにどうしようもない奴だ!あの小娘にかなり心酔してるからな!」
タッカー元帥の通信相手はベケット少佐だった!
「ありがとうございます!元帥閣下のおかげで、こちらも何かとやりやすくなりました!」
「反乱軍の様子は?」
「今のところ、半信半疑ですが、あの小娘を皇帝にさせるということで、我々と協力してくれました!」
「よし、では抜かりなくやれ!」
「了解しました!」
通信を切ったベケット少佐の元にシーガルが現れ、
「おい、あの皇子を逃がしてしまって、どうするつもりだ!あの皇子がいなければ、我々が有利に立てないのだぞ!」
ベケット少佐は落ち着いたように言い、
「ご心配はありません!皇子はメルビル二世陛下とあの侍女に心酔してますから、必ず来るでしょう!そこで捕らえればいい問題です!」
「その言葉、信じてよいのだな!」
「ええ、それより、ガトリングフォックスを連れた連中はどうしたのです!」
「捜索はしているのだが、中々……」
「あの連中がいると、我々の計画に支障が出てしまう!何としても捕らえなさい!」
「今、兵士たちが捜索している!もうしばらく待て!」
ベケット少佐は小声で、
「(全く、本当に使えない連中ばかりね)!」
基地内の部屋で、エマは、
「レイル!大丈夫かしら!あのとき、私が一緒にいなかったら、あんな目に遇わなかったのに!」
落ち込むエマにユリスは、
「自分を責めないの、あなたは間違っていないわ!」
同様に一緒にいたカティアも、
「そうよ!エマ!」
ウィルは拳を握りしめ、
「くっそ~!俺たちをこんなところに閉じ込めやがって許さない!必ず、ここから出る!」
旧帝国派レジスタンスの基地の離れた場所にグラッドたちがいた。グラッドは双眼鏡で基地を見て、
「あそこにウィルたちが捕まっているな!さて、どうするか。」
アレックスが横で、
「じゃあ、俺たちが連中をぶっ潰してウィルたちを助けようぜ!」
「お前の思考回路はぶっ潰すことしかないのか?だから、石頭って言われるんだよ!」
「ほっとけ!」
その横にいたクリスが、
「それにしても、まさかあの女まで一緒にいるとは驚いた!まさか、あの女、デスメタルを裏切ったのか?」
「いや、あの女はギャラガー三世に心酔している程の忠誠心を持っている!裏切ることは絶対にない!」
「ということは、奴らを何かに利用しようとしている、ということか! まさか、デスメタルに吸収するつもりか!」
「いや、それは無理だ!シーガルら旧帝国派はデスメタルの存在を頑なに認めていない!帝国に従うことなんてあり得ない。」
「じゃあ、何を!」
「わからねぇが!とにかく、黙って見ている訳にもいかん!ジョン、俺とクリスが敵を引き付ける!その間にお前は基地に潜入してくれ!」
「わかった!俺にまかせな!」
そこにジェニファーが現れ、
「待って、私も行かせてもらえないかしら?」
「しかし、お前はジョン程の潜入のエキスパートではないが…!」
「ウィルとリセルには年頃の彼女がいて、感情的になりそうだから、二人を抑える世話役に私が必要よ 」
「よし、わかった!では、ジョンとジェニファーは基地に潜入してウィルたちを助け、通信機で合図を送ってくれ!」
ジョンとジェニファーは口を揃えて
「了解!」
「よし、では、手はず通りに!」
グラッドのレックスとクリスのジャックがそれぞれの位置に配置し、 グラッドはレックスに、
「よし、いくぞ!レックス!」
グラッドの言葉にレックスは咆哮を上げ、光学迷彩で姿を隠し、基地にいる旧帝国派ゾイドに攻撃した。攻撃を受けたキャノンブルとラプトールのライダーは、
「何処だ?どこから攻撃してきた!」
「レーダーに反応無し!敵の姿が分かりません!」
「とにかく、敵を基地に入れるな!」
基地の入口から離れた旧帝国派のラプトールとキャノンブルを見てグラッドは、
「よし、かかったな! クリス、攻撃だ!」
「了解!」
クリスのジャックは空中から旧帝国派のゾイドを攻撃した。応戦するラプトールとキャノンブル、その様子を見たジョンとジェニファーは、
「よし、兵士が基地の入口から離れたな!今回は二人だから、入口のあそこにいる兵士の服を奪って侵入するぞ!」
「了解 」
ジョンは拳銃を取り出し、上空に向けて撃った。銃声に気付いた二人の兵士はジョンとジェニファーの元に近付き、ジョンとジェニファーは回り込んで背後から二人の兵士を気絶させ、その兵士の服を着用した。
「よし、これで、見張りは手薄だ!いくぞ!」
二人はそのまま入口の中に入った。二人は基地の中で、ウィルたちが捕らえられている部屋を捜した。
「ここらへんはいないようだな!上の階に行ってみるか!」
上の階に行った後、兵士が護衛している部屋を見つけた。
「どうやら、あそこみたいだな!」
「どうする? 連中の注意を惹き付けるか?」
「いや、ここは敢えて単純な方法で行こう!とりあえず、先に俺が行く!」
ジョンは兵士の元に行き、
「あ~、そろそろ交代の時間だ!」
「ん?もう、交代か!まだ早いんじゃないか?」
「外で敵襲があってな!直ぐに兵士を出撃しなきゃならない状態になっていて、交代の時間を縮めたようなんだ!」
「そうか!まあ、この状況、ただ見張る訳にもいかないからな!じゃあ、後は任せた!」
そう言い、二人の兵士ほ部屋から離れた。
「敵は手強いらしいから気をつけとけよ!」
ジョンはジェニファーにVサインをし、部屋に入った。
「よう、皆さん!元気しとったか?」
部屋に入ったジョンとジェニファーを見てウィルたちは、
「ジョン!ジェニファー!」
「エマちゃん、ユリスちゃんも大丈夫?」
「大丈夫です!ありがとうございます!」
「ウィル、リセル!エマちゃんたちにへんなことしてないわよね?」
ウィルとリセルを赤面し、
「からかうなよ!」
「ん?」
ジョンは何か気付いたかのように部屋にいた虫を捕った。
「どうしたの?ジョン!」
「いや、何かが、俺たちを見張ってたような気がしたんだが。どうやら、ただの虫だったみたいだ!」
ジェニファーはジョンが捕った虫を見て、
「いや、あなたの予想は外れていないわ!この虫、小型のマイコンチップが入っているわ!」
「何!」
「ふ、やっぱり、ここに来たようね!」
その時、ベケット少佐と兵士が部屋に入った。
「やっぱり、これはあなたのものだったのね!」
「そのゾイドはかつて惑星Ziにいた小型の昆虫型ゾイドを複製し、我がデスメタルの最新技術で改造したスパイゾイドなのよ。」
それを聞いたグラッドは、
「ち、どうやら、貴様の方が一枚上手だったようだ!」
「まあ、この状況じゃあ、他の連中を呼ぶことは出来ないわね!さあ、こいつらを捕らえなさい!」
ジョンとジェニファーは兵士に捕らえられ、部屋から出たベケット少佐は指令部に入った。指令部に入ったベケット少佐を見てシーガルは、
「どうした?一体何をしていた?」
「基地に二匹のハエが入ったので、さっき捕らえました!それより、声明の用意は出来たの?」
「ああ、全ての通信網を乗っ取った!これで全世界に流すことが出来る!」
「これで、ユリス陛下を皇帝メルビル二世として即位させ、真帝国が復活できるわね!」
「それにしても、まさか、現陛下の先祖であるハンナ皇帝陛下の映像をお前が持っていたとは!驚いたよ!」
「我がデスメタルの技術を持ってすれば、それくらい容易に手に入りますわ!それより、早く声明の発表を!」
帝都メガロポリス、皇帝の宮殿の前に大量のキルサイスと親衛隊専用機の赤いキルサイスが帝国の一般兵と機械兵と共に行進をしていた。それをタッカー元帥が見ていた。
「素晴らしい!これならいつでも出撃出来そうだ!」
タッカー元帥の横にいる技術陣が、
「はい、これらのキルサイスは我がデスメタルの最新技術により、更なる改良が施され、パワーと耐久性も反乱軍の愚かな連中が復活しようとしている真帝国時代のものを遥かに上回る性能を持ち、更に量産化も進んでいます!これで、反乱軍も容易に制圧出来るでしょう!」
「後は、オメガレックスが完成すれば、我が帝国軍の戦力は更に磐石なものとなる!皇帝陛下もお喜びになられるだろう!」
そこに兵士が現れ、
「タッカー元帥!一大事です!」
「どうした?」
「テレビをご覧ください!」
帝都や各地の領域に旧帝国派レジスタンスの指導者のシーガルがテレビの映像に現れ、言った。
「世界中の諸君!我々旧帝国派は今の愚かなネオデスメタル帝国を倒し、かつての真帝国を復活させる!そして、我々には希望となられるお方がいるのだ!」
映像にユリスの映像が現れ、その横にはかつての真帝国ハンナ・メルビル皇帝の姿だった。
「このお方は、かつての真帝国ハンナ皇帝陛下の御子孫、ユリス陛下なのだ!我々はこのお方を新たな皇帝メルビル二世とし、ここに真帝国の復活すなわち新帝国の建国をここに宣言する!
諸君!今こそ、メルビル二世陛下を称え、ネオデスメタル帝国を倒すのだ!」
タッカー元帥はテレビを切り、通信機を使い、
「私だ。随分と派手に宣言させたようだな。」
通信相手のベケット少佐は、
「ええ、かつての真帝国宣言を真似てやらせました!これで、旧帝国派は我がデスメタルに宣戦布告したも同然!帝国国民も黙ってはいません!」
「では、そろそろあの皇子に命じるとするか!」
タッカー元帥は通信を切り、アーネストのいる部屋に向かい、
「殿下!皇帝陛下の御慈悲だ!この度のことはおとがめなしだ! ただし、さっき、反乱軍が設立した新帝国とあのライガーを始末せよ!とのご命令だ!
もし、これでしくじったら、次は無いとのことで、失敗したら、王位継承権を剥奪なさるそうだ!絶対にしくじるなよ!」
アーネストは拳を握りしめ、
「わかった!」
アーネストはギルラプターに乗り、
「いくぞ、ギルラプター!あいつらをぶっ倒すぞ! そうだ!僕はデスメタル皇子なんだ!甘さは捨てる!父上に認めてもらえるように!」
ギルラプターは真っ先に新帝国の基地に向かった。
To be continued
次回予告
アーネストは新帝国とライガーを倒すために新帝国の元に向かう。再び合間見えるシーザーとギルラプター!エマたちを守りたいというウィルの思い、父に認められたいというアーネストの思い、それぞれの思いを胸に、互いの力は拮抗していく!しかし、そこにベケット少佐の罠が!
そして、デスメタルでは、反乱軍を迎え撃つ戦力が整い、遂に皇帝に動きが!
次回、「皇帝出陣!」
本能を呼び覚ませ、ライガー!